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株式会社ズキュン代表 加治幸夫氏

 

今回は株式会社ズキュン代表、加治幸夫氏にお話を伺ってきました。

「社長の履歴書」だけの特別なインタビューです。

ぜひご覧ください!

 

 

会社名称 株式会社ズキュン
代表者 加治幸夫
設立 2021年
主な事業 スリランカカレー店、カフェなどのフランチャイズ事業プロデュース
社員数 6名
会社所在地 東京都小金井市東町2丁目20番23号
会社HP https://www.spicecurrylabo.com

 

 

事業内容を教えてください

スパイスカレーのボランタリーチェーン店「スパイスカレー食堂 五反田店」の経営をしています。運営は順調で、2022年9月には2号店目となる渋谷店の出店が決まりました。また、80店舗ほどの飲食店を経営する秋田に本社を置く株式会社ドリームリンクの経営に参画しています。以前より社外取締役としてサポートを行なっていたのですが、この4月より代表取締役会長として本格的に経営の立て直しに取り組むこととなりました。その他、理念推進や企業ブランディングなどを軸に、企業顧問や講演講師を行うことも増えてきました。コロナで冷え込んでしまった飲食業界を盛り上げるために日々尽力しています。

 

学生時代に熱中していたことはなんですか?

兄がギター、姉がピアノをやっていた影響で音楽に夢中になり、中学生の頃からバンドに打ち込んでいました。ビートルズが好きでコピーバンドをしたりして、プロを夢見たこともありましたが、高校3年の時に同じクラスの天才的な同級生に出会って上には上がいることを悟り、プロの道は諦めました。

そんな高校時代、新宿 中村屋で夏休みにアルバイトをし、そこで初めて飲食業の仕事を経験したんです。バイト先の「中村屋サロン」は素敵な空間で、料理やドリンクも楽しめる画廊カフェでした。コックやウエイター、バーテンダーなど別々の役割があって専門的な仕事をしていますが、お客さんを満足させたいという想いは同じ。様々な人が1つのチームとなって全力を尽くしている姿がバンドと似ていると思いました。当時はその仕事スタイルをカッコいいと思って、将来は飲食の世界で働きたいと思い始めたんです。

 

社会人時代で思い出に残っていることはありますか?

最初に勤めた会社は六本木にあり、アメリカの食文化やレストランブランドを日本に持ち込むスタイルの飲食企業でした。バブルの頃だったので、派手な振る舞いの飲食店が人気でした。その頃は独立を目標にしていて、独立する前にもっと色々な経営者のもとで働いてみたいという気持ちがありました。その後、「とんかつ新宿さぼてん」や中国料理「謝朋殿」などを経営する株式会社グリーンハウスフーズに転職しました。グリーンハウスフーズは、創業者の田沼文蔵氏が戦後の食糧難の時代に「戦死した部下たちに報いるためにも、若い学生におなかいっぱいになってもらうことが使命だ」と必死に食糧を調達して、学生たちに食事を提供した学校給食事業からスタートした会社です。「人に喜ばれてこそ会社は発展する」という創業理念に心を打たれ、グリーンハウスフーズという会社を創業した田沼文蔵氏という経営者の近くで人生を学んでみたいと思いました。レストラン部門を任せてもらい、店舗運営や新業態の企画・開発に携わり、結果として24年間お世話になりました。

会社が「食と健康」というテーマを掲げる中で、私は中国料理店の立て直しや、商品開発、新業態の開発など、運営体制などの構造変革に力を入れました。中華料理の歴史を知れば「医食同源」などの考え方もあり本来は健康的な料理なのだと分かりますが、“脂っこい”、“量が多い”という中華料理の持つマイナスイメージや先入観を変えていくことから始めなければならず、大変苦労しました。しかし、地道に取り組み、長い年月をかけて意識改革をし、発展させていきました。ヘルシー思考の発想でお粥料理の専門店や中華惣菜の業態などを企画したりして、成功したものもあれば失敗もたくさんしました。

かれこれ50年ほど飲食業界で働いていますが、様々なプロジェクトに携わって確信したのは、私は0から1を生み出すよりも、1を100に育て発展させるほうが得意ということです。

 

会社名が「株式会社ズキュン」というユニークなお名前ですが由来はなんでしょうか?

ハートにズキュンと刺さる「何か」を社会に提供できる会社にしていきたいと思って、株式会社ズキュンという名前に決めました。まさに、この社名にズキュンと心を動かされたんですね。

私が自分で事業を始めようと考えた時に、これまでの経験を生かしながらも、いつでも何か心が動かされることに携わっていたいという想いがありました。感動や驚き、新たな発見、深く印象に残る出来事など、心を動かされることとは常に楽しくワクワクしませんか?人生には、この「ワクワクする気持ち」が必要不可欠だと思います。そして、飲食業にはこの感動があればあるほど素晴らしいビジネスになると思っています。

 

飲食業には3つのビジネスの「価値」があると思います。

1つ目は空間ビジネスです。

最近ではテイクアウトやデリバリーが注目されていますが、飲食店に行かなければ得られない独自の世界観があります。それはインテリアやBGM、店員さんのファッションなども含めて、そこにしか無い空間の価値があります。外食する理由の大きな要素を占める部分ですよね。

2つ目はピープルビジネスです。

働き手が潤沢でシフトが回っていないと飲食店はうまくいきません。例えば、アルバイトが不足しているラーメン屋でラーメンを食べるとします。友達と行って同時にラーメンが出てこなくて待っていたら、それだけでも満足度は落ちてしまいます。提供までに時間がかかり、スープが冷めてしまいます。ラーメンは温度が5度下がると満足度は20%下がると言われています。人手不足によって味が落ちてしまうんです。また、店員さんが無愛想なお店には行きたくないと思うお客様もいるので、「人」で飲食店の基本価値が変わっていきます。飲食店は、顧客満足の前に従業員満足がとても大切なんです。

最後の3つ目は健康ビジネスです。

食べたものは、人の身体をつくります。食事は健康に直結しているのです。一日のうちに外食する機会が多い人はたくさんいます。その外食が美味しくだけでなく、健康的な食事だったら、外食の価値はもっと高まるでしょう。そんな健康外食を実現し、多くの人に食べる機会を提供したいと思っています。

 

最初からスパイスカレーのお店を経営する予定だったのでしょうか?

元々は違う業態を開業しようと考えていたのですが、友人が四谷にオープンした「スパイスカレー食堂」に食べにいった時に、そのカレーがとても美味しくて、その完成度に感動しました。

スリランカカレーは油をほとんど使わず健康的だったのが好印象でした。そして、今まではカレーは熱々が良いと思っていましたが、スリランカカレーは常温で提供することも新鮮でした。現地では手で食べられる温度が最も消化に適しているという考え方なのです。常温での提供が美味しくて適温ということは、デリバリーにも向いています。

このスパイスカレーは、私がこれからチャレンジしていきたいと志向する健康外食に適している、と「ズキュン」ときたんです。それから友人にお願いして、ボランタリーチェーンのパートナーとなり、五反田店をオープンしました。他店と比べると奥まっていて決して好条件な立地ではありませんが、おかげさまで業績は安定しています。

小さな店舗のため客席も限られますが、スタッフには目の前のお客様を大切にしたいという気持ちで丁寧な接客を心がけてもらっています。お客様にもゆっくり食事を味わって食べてもらえますし、スタッフにも余裕が生まれ、お客様とのコミュニケーションを楽しむことができます。

一皿一皿、1人ひとりを大切に経営することで、店舗面積が6坪と小さくても1店舗の与えるインパクトが大きい商売ができることを皆様に示していければと思っています。

 

スパイスカレー食堂でおすすめはありますか?

最近はベジタリアンやヴィーガンを志向する方も増え、「大豆のベジタブルキーマ&パリップ」が人気です。

また、厚労省が推進する「スマートミール」という健康的な食事メニューとして、スマートミールカレー2種類が認証されました。外食の中でも、カレーというジャンルでスマートミール認証を取得する、というのは業界でも初めての快挙だと思います。健康ビジネスとしても、スパイスカレー食堂の持つ価値をしっかりと発信していきたいですね。

独立してから大変だったことはありますか?

これまでは本社での管理業務や経営者としてのマネジメント業務が中心でしたので、自分自身が手続きをしたり事務作業をしたりすることに時間がかかったり、戸惑うこともありました。細々としたことまで全て自分ひとりで行うことは正直面倒くさかったり大変なのですが、一方でとても新鮮で、今のところ楽しめています。

また、私は常に「現場第一主義」のつもりで、日々店舗をよくする工夫をしています。

例えば、ラーメン店やサービスエリアで食事をしようとする時、券売機の使い方に迷ったことはないでしょうか?スパイスカレー食堂の店舗でも、この「券売機問題」の対策に悩みました。

券売機でスムーズに食券を購入することができずにお客様が戸惑うことが多いと、現場のスタッフは、改善しようとして券売機にお客さんが押し間違えないようにと、すぐにテプラで補足コメントを貼ります。そうした現場での改善策をいち早くキャッチして、利便性にデザイン性を加え完成度を高めることが私の役割です。現場の人がテプラを貼ったら、それを上手にデザインし直して…、といった攻防を10回以上繰り返しましたね。

五反田店では、店舗の外に券売機そっくりの等身大写真を貼り、店内に入る前にメニューや食券の買い方を事前に把握してもらえるようにしたことで、テプラが使われていないにも関わらず、お客様が券売機の操作で迷うことはなくなりました。たまに、本物とそっくりすぎて写真の券売機にお金をいれようとする方もいらっしゃいますが、それも面白がってくださっているので嬉しいです。

私はデザイン経営こそ理想の経営だと考えていますが、誰にでも分かりやすい、ということが大切だと思っています。店内のさまざまな印刷物など人の目に触れるものはすべて、その最たるものです。アイディアを出していくことも好きですし、うまくいかないことを練習して解決していくのも面白さを感じます。お店は小さい失敗と工夫の繰り返しと積み重ねですね。

 

今後の展望はありますか?

スパイスカレー事業は、多店舗での展開は考えていません。業態の特長と立地特性の相性をじっくり考えて、もう1〜2店舗オープンしたいですね。そして健康と食の観点からスマートミールの考え方をもっと広めていきたい。「食と健康」は切っても切り離せないもの。これは、私のライフワークとしてのテーマでもあります。そんなふうに、自分の心に正直に「面白い、ワクワクする!」と感じたものに取り組んでいきたいですね!

 

経営者におすすめの本はありますか?

楠木建さんの『ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件』です。ポジショニングと戦闘能力のどちらかで戦うかが書かれている本で、ちょうど前職で社長に任命される前に読んだ本です。この本の帯が「戦略の本質は思わず人に話したくなるようなストーリー」と書かれているのを見て自分の中で納得してしまいました。今までの仕事を通して、部下に理解してもらうためにストーリーを描いて仕事をしてきました。どんな大きな会社でも個人店でもビジネスには面白いストーリーが必要になってきます。この本は、今まで私のやってきたことが文章にされていると思っています。経営者だけでなく、プロジェクトを進めていく方やリーダーの方に読んでもらいたい本です。

AmazonURL

https://www.amazon.co.jp/dp/4492532706

 

投稿者プロフィール

『社長の履歴書』編集部
『社長の履歴書』編集部
新入社員を含めたフレッシュなメンバーを中心に、出版サポートの傍らインタビューを行っております!

就活生に近い目線を持ちつつ様々な業種の方との交流を活かし、「社長に聞きたい」ポイントを深掘りしていきます。

代表者様のキャリアを通して、組織の魅力が伝わる記事を発信していけるよう、これからも一生懸命運営してまいります!