今回は、株式会社みやこ食品代表取締役、鹿倉弘之氏にお話を伺ってきました。
「社長の履歴書」だけの特別なインタビューです。ぜひご覧ください!
株式会社みやこ食品 会社概要
会社名称 | 株式会社みやこ食品 |
代表者 | 代表取締役 鹿倉弘之(しかくら ひろゆき) |
設立 | 1962年2月 |
主な事業 | 弁当の製造販売/高齢者配食サービス |
社員数 | 70名(取材時) |
会社所在地 | 東京都江戸川区平井7-14-9 |
会社HP | https://emiyako.com/ |
まずは御社の事業内容についてお話を聞かせてください。
弊社は2022年2月で創業60周年を迎えました。創業者の父が22歳の時、江戸川区平井でおつまみを袋詰めにして酒屋さんに卸す商売を始めました。営業力のあった父はどんどん事業を拡大し、名古屋、大阪にも支店を出し、埼玉県に300坪の工場をつくりましたが、酒屋さんがコンビニに変わってゆく時代背景の中、取引先が激減し、工場を売却して、東京へ拠点を移したのが30年前のことです。
その時から弁当の製造販売も開始しました。ほどなくして、江戸川区長から「高齢者にお弁当を配りたい」という協力要請が弁当組合に上がり、1件1食じゃ商売にならないとの意見が多い中、父が「これからは高齢者の時代になる。喜ばれることが先、儲けは後」と、その仕事を請け負いました。父に先見の明があったからこそ、今があると言えます。
そして、現在は売上の9割以上が高齢者配食サービスとなっています。365日・年中無休で、高齢者の方の見守りをしながら、温かいお弁当を届ける仕事です。一人暮らしで寂しい思いをしている方も多いので、手づくりのような温かい状態でお持ちして、デザートやサラダは冷やして、日替わりの手づくりのお味噌汁と、手間をかけた食事と一緒にコミュニケーションを取りながらお届けしています。
また『高齢者の方の見守り』に関しては、配食サービス業界で日本一を目指しています。
基本となるのは、「自分の両親や祖父母だと思って応対する」という思いやりの姿勢。顔を見てお弁当を手渡しするのは当たり前で、もし姿が見えなかったら、お風呂場やトイレなども確認します。そこで倒れたりしていないか確認するためです。
寝ている方は起こします。そこまで徹底することで、年に何人もの命を救うと言ったらおこがましいですが、ご家族に泣いて喜ばれることも何度もありました。そういった経験をした配送員はさらに良い接客を心がけてくれます。
鹿倉さんのこれまでのご経歴を教えてください。
私は4人兄弟の末っ子でしたので家では兄達から使われたり、自宅と会社が一緒になっていたので、機械の音などで落ち着かない家でした。また、江戸っ子気質で短気な父の怒鳴り声で、毎朝目が覚めるような日々だったので、逃げるように中学から中高一貫の全寮制の男子校へ進学しました。
高校では、サッカーに打ち込みましたが、ほとんど勝てないチームでしたので、大学では強いチームでやってみたいと思っていました。しかし、学力も実績もなかったために諦めていましたが、キャプテン推薦がある地方の強豪校の存在を知り、監督の家に泊まらせていただきながら大学の練習に参加をしたところ、下から2番目の成績でしたが、何とか入学させていただくことになりました。
いざ練習に参加してみると、みんな自分よりうまく、経験も豊富なので、これは倍の練習をしないとだめだと思い、誰よりも早く行って遅くまで残って練習しました。また、先輩の言うことを素直に聞くと、可愛がってもらえ、パスをくれるので得点チャンスも増え、だんだん試合にも出られるようになりました。そこでは素直に努力することの重要性を学びました。
大学卒業時は、バブルが弾けた時期で全く就職先がなかったのですが、恩師の紹介で店頭公開したばかりで人気のあった酒のディスカウントの会社に就職できました。入社式の後、100人弱いた同期の中から私一人だけが総務部長に呼ばれ、『君の成績ではこの会社に入れなかったけど、恩師が社長に頼むから無理やり入社させてあげたんだよ』と嫌味を言われる社会人のスタートでしたが、学生時代同様、誰よりも早く出勤して遅く働きました。また、先輩の言うことを『はい、わかりました』と素直に聞いていると仕事もたくさん教えてくれて、そのうち大事な仕事も任せてもらうようになりました。結局、同期の中では一番早く店長になり、3年目には北東北8店舗を任される地区長という役目をいただき、貴重な経験をさせていただくことができました。
そこでの仕事はやりがいのあるものだったのですが、父の会社の工場長をやっていた母が倒れたことと、一番よくやっていた社員が辞めてしまったことで人手不足だと聞き、29歳の時に父の経営する会社へ入ることを決めました。
しかし、部活や前職では『はい、わかりました』と素直に言うことを聞けたのですが、父や長男には身内への甘えからか全く素直になれず、逆にあんな大きな会社で実績を出してきたんだと逆らったり、働きの悪い従業員を怒ったりと家族関係、社内を悪化させるとても迷惑な存在となってしまい、30代のこの時期は、本当に無駄な時間を過ごしてしまったと思っています…。
帰京から10年後の2010年に父が脳梗塞で急逝すると、2年後には母もすい臓がんで亡くなってしまいました。その2ヶ月後に社長であった長男が「俺はやりたいことがあるから今期で社長をお前に任せる」と一方的に宣言し、負債が5000万円ある毎年赤字の会社を託されました。また、兄弟4人で決めた遺産協議によって会社も個人も出費が増大し、経営はさらに厳しくなりました。結局就任1年目は「無理に継がされた」という不平不満の心で経営をしていました。納得ができないながらも、動かさないと会社も自分も潰れてしまう。でも不貞腐れた社長の下では、当然社員も気持ち良くは働けません。会社の雰囲気は悪くなる一方でした…。
これまで苦労したことを教えてください。
社長就任2年目に起きた異物混入事件。マスコミに発表する寸前まで行ったのですが、写真などの物的証拠がないとのトップ判断で、直前に発表は取りやめになりました。ただお客様をかなり怒らせてしまったので、区役所からは毎日のように報告書の催促、保健所からは度重なる指導…と、解決までに半年ほどかかる大事故になってしまいました。
4年目には、大量に販売したお菓子セットの中の飴玉の一つが賞味期限切れだった問題が起こりました。罰金100万円の支払いで済めば良かったのですが、それ以降いただいていた大口の仕事をすべて失い、資金繰りに大きく響きました。
それ以外にも、会社を牽引して一生懸命働いてくれていた期待の従業員が突然辞めたりと、私が至らなかったために人材の部分での苦労は多々ありました。
そのような苦労を、どのようにして乗り越えたのでしょうか?
会社が良くなり始めた一つの大きなきっかけは、経営計画書を作ったことです。
経営理念を週3回の朝礼で唱和し、言った以上は嘘はつけない状況になりました。続けていくうちに不信感を持っていた社員の中に、理念に共感してくれる人が現れはじめました。そして、少しずつ儲けが出たので頑張っている社員に還元したところ、その後、配送効率、経費削減など自分たちで考えて実行してくれるようになり、会社の利益がさらに上がるようになったんです。
また、出た利益は正直に分配しています。1/3は社員に還元、1/3は国家に収める、1/3は会社の貯金です。この貯金は、自然災害などで会社に収入が得られない時でも、社員に給料が払えるようにするためのお金です。
それから地域社会にも還元するようになりました。車の運転や工場の騒音などで迷惑をかけたりしているのでは…という気持ちから、町内のゴミ拾いをしたり、大きな金額ではありませんが地域の行事に寄付をしたりしています。
壁にぶつかった時、私は経営の師匠から言われた『恩寵的試練』と言う言葉を思い返します。苦しい時に誰かのせいにしたり逃げたりしないこと。苦しい事態は神様が与えた『自分を成長させるチャンス』だから、人のせいにしないですべて自分の責任だと受け止めて、前向きに対応することで人間的に一回りも二回りも成長できると思っています。困難が訪れた時の参考になれば幸いです。
現在の御社としての課題を教えてください。
今は主に個人のご高齢の方を対象としていますが、老人ホームなど大口の仕事も取るなどの販路を拡大することも、社員の子供の成長に伴って収入を増やしてゆくためには重要だと思っています。
当社は小さい会社で、私も含め優秀な人材はいませんので、日々コツコツと小さな改善しかできないと思っています。しかし、それを継続することで、5年後、10年後にはその差を大きな差にして、会社を成長させていきたいです。
最後に今後の展望や夢を教えてください。
私は能力がないので、会社の規模をもっともっと大きくしたい! という野望はありませんが、今いる従業員に、『この会社に入って良かったな』と言われる会社になりたいと思っています。
そのためには、働く人の『物心両面』の幸福を追求すること。収入面は先ほどお話しましたが、心の面では、仲間やお客様にたくさんの「ありがとう」をもらえるように実行して、自分自身に『徳を積み』、素晴らしい人生にしていってもらいたいと思っています。
お客様にはどんどん良いサービスを取り入れて、仕入れ先さんにも値切ったりせずに良い関係を保ち、地域社会にも『この会社があって良かった』と言ってもらえるよう努力してまいります。
鹿倉さんが経営者におすすめする本を教えていただきました!
『経営者の教科書―――成功するリーダーになるための考え方と行動』 小宮一慶(著)
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投稿者プロフィール
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新入社員を含めたフレッシュなメンバーを中心に、出版サポートの傍らインタビューを行っております!
就活生に近い目線を持ちつつ様々な業種の方との交流を活かし、「社長に聞きたい」ポイントを深掘りしていきます。
代表者様のキャリアを通して、組織の魅力が伝わる記事を発信していけるよう、これからも一生懸命運営してまいります!
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