
今回は株式会社カンタン代表、大久保 歩美氏にお話を伺ってきました。
「社長の履歴書」だけの特別なインタビューです。
ぜひご覧ください!
| 会社名称 | 株式会社カンタン |
| 代表者 | 大久保 歩美 |
| 設立 | 2023年12月22日 |
| 主な事業 | 医療・介護向けスポットワークサービス「KANTAN!(カンタン)」の運営 ナラシワーク™の提供 有料職業紹介事業 |
| 会社所在地 | 〒541-0047 大阪府大阪市中央区淡路町2-4-3 I.S.O.ビル3F |
| 会社HP | https://kan-tan.net/(KANTAN!) https://kan-tan.co.jp/(会社情報) |
事業内容について教えてください
株式会社カンタンでは、看護師向けのスポットワークサービス「KANTAN!(カンタン)」を展開しています。単発のスポットワークを入り口にして、そこから段階的に現場との関係を築いていく「ナラシワーク」という働き方にも取り組んでいます。ちなみに、ナラシワークという表現は当社のオリジナルです。
このサービスが生まれた背景には、医療・介護の現場に根強く残る課題があります。法人側には、採用しても定着しない、採用コストが経営を圧迫しているなどという悩みがある。一方で看護師の側にも、働きたい気持ちはあっても、いきなりフル勤務に入るのは不安、入職後にギャップがあったという声が少なくありません。
そこでまず働いてから決めるという考え方を取り入れようと考えました。採用の前に実際に働いてもらうことで、法人と看護師がお互いを理解し合える。これがナラシワーク最大の特徴であり、単発の人材サービスとの違いでもあります。現在は大阪府内を中心に、短時間・短期間から現場に入り、働きながら関係をつくっていく仕組みを提供しています。人を紹介して終わりではなく、働く前にお互いを確認できる構造そのものをつくる。そこが私たちの強みだと考えています。
「ナラシワーク」とは、どのような働き方なのでしょうか?
ナラシワークは、いきなり本採用やフル勤務に進むのではなく、短時間・短期間の勤務を重ねながら、職場と少しずつ慣らしていく働き方です。スポットワークを入り口にすることで、看護師の方は職場の雰囲気や業務内容を、法人側は看護師の働きぶりを、それぞれ無理なく確認できます。この働き方を支えているのが、利用のハードルを下げる仕組みです。面接や登録会はなく、1日から働けて、給与は日払い、手数料もかかりません。ブランクがあって復職に不安のある方が、お試し勤務として一歩を踏み出すこともできます。こうして双方が実際に働きながらお互いを見極め、納得したうえで次のステップへ進む。だからこそ採用後のミスマッチを防ぎやすい。そこがナラシワークの一番の利点だと考えています。
ここからは大久保社長ご自身のことについて教えてください。学生時代に打ち込んだことはありますか?
大学時代に打ち込んだのは、飲食店のアルバイトですね。大学が東京だったこともあり、都内のちゃんこ鍋屋さんで4年間働いていました。個人経営で冬場は特に忙しく、50名規模の宴会が2回転も3回転もする。それをスタッフ少人数で回していたので、かなり大変なお店でした。
接客だけでなく、ドリンクづくりや料理の提供、洗い物も並行してこなしながら、店全体を見て動く必要がありました。その中で、どう動けば全体が回るのかを常に考える癖がついたんです。少ない人数でいかに効率よく回すか、それでいて接客が冷たくなってはいけない。このバランスを取るのが、なんだか面白かったですね。
長く続けるうちに、新しく入ったアルバイトに教える立場になることも増えました。地元のお客様や常連さんも多く、夢中になって働いていたのを覚えています。板長のこだわりで、まかないがボリュームたっぷりでとてもおいしかったこと。それも、長く続けられた理由の一つかもしれません(笑)。
学生の頃から経営者になりたいという思いはありましたか?
もともとはまったくありませんでした。大学で学んでいたのは社会心理学で、経営とは縁のない分野でしたし、自分が会社を興すという発想自体がなかったんです。転機になったのは、社会人として現場で働くようになってからでした。医療・介護の構造や採用の仕組みそのものを変えなければ、根本的な問題は解決しない。そう感じるようになったことが、会社を始めたきっかけです。最初から起業ありきだったわけではなく、目の前の課題を突き詰めていった先に、今の経営があったという感覚に近いですね。
看護・医療業界と出会ったきっかけは何だったのでしょうか?
きっかけは就職活動でした。正直に言えば、強い目的意識を持って臨んでいたわけではありません。企業説明会などで情報を集める中で、偶然たどり着いたのが人材業界でした。人材業界に惹かれたのは、人を相手にするビジネスだからこそ正解がない、というところでした。そこを面白そうだと感じて飛び込んだのですが、ご縁をいただいて内定を得た会社が、人材業界の中でも医療系に特化した人材会社だったんです。最初から医療を志していたというより、人材業界への興味と、たまたま得たご縁が重なって、医療人材の領域にたどり着いた。そういう入り方でした。
社会人時代のご経歴と仕事の内容について教えてください
新卒で人材業界に入り、医療・介護や企業の人事領域の人材サービスに約14年間携わってきました。
スタートは看護師向けの派遣コーディネーターです。そこから産業保健の分野へと領域を広げていきました。産業保健とは、簡単に言えば企業が医療職を採用し、従業員の健康を守る取り組みです。健康診断で数値が思わしくない方を重症化する前に企業内でフォローし、生産性を高めていく。私はこの分野の法人営業を担当し、ほかにも技術系アウトソーシング企業で新卒採用のリクルーター業務などを経験しました。
転機となったのが、前職である医療系人材会社の立ち上げへの参画です。看護師向けの単発派遣や転職支援にとどまらず、営業からバックオフィスの統括まで幅広く任されました。現場の業務だけでなく、組織運営や事業全体を見る視点を養えたことが、今の経営の土台になっています。
起業のきっかけを教えてください
人材サービスの仕事を通じて、働きたいのに働けない、という声を数多く聞いてきました。一方で医療・介護の現場からは、採用しても定着しない、本当は採用したいけれどコスト的に難しい、という悩みも聞こえてくる。働き手と現場、その双方が困っているのに、うまくかみ合っていない。この両者をつなげれば、人手不足はもっと解消できるはずだ。そんな思いがずっと心に引っかかっていました。
転機になったのは、その思いを当時の上司に話したときでした。社会人1年目から私を見てくれていた、前職の会社を立ち上げた社長です。相談すると「とりあえずやってみたら?」と背中を押してくれたんです。
とはいえ、起業というと会社を辞めてゼロからすべてやるものだと思い込んでいました。ところがその上司が、「副業という形でもやってみたらいい」と言ってくれて。それならばと、本業と並行して小さく会社を立ち上げました。どんなシステムにするか、どうすれば現場で本当に成立するのか。看護師さんや医療・介護の現場の方に話を聞きながら、少しずつ形にしていきました。
副業から独立に至るまでの経緯を教えてください
シンプルに言えば、このままではどちらも中途半端になってしまう、と思ったからです。副業として小さく始めればリスクは抑えられます。ただ、その分どうしても本業の合間での作業になり、システムの改修ひとつとっても時間がかかってしまう。このペースでは何も成し得ないまま終わってしまうのではないか。そんな危機感が募っていきました。それなら腹をくくって、1本に絞ろうと決めたんです。
とはいえ、いざ専念してみると、やはり大変でした。想定していなかったことも次々と出てきます。この説明の仕方では現場の方に伝わらない、ではどう言えば届くのか。そうやって毎日のように試行錯誤を重ねているというのが正直な現在地です。
経営者として、特に苦労されたことはありますか?
今一番苦労しているのは、ナラシワークという考え方そのものを理解していただくことです。どうしても、既存の単発バイトのサービスや人材紹介会社と同じように見られてしまう。なぜわざわざ段階的に働く必要があるのか、その意義を腹落ちしてもらうまでが、今の大きな壁ですね。
もう一つは、資金面の課題です。システムの開発も事業の立ち上げもコストがかかりますし、実績のない状態では大きく投資するのも難しい。特にシステムの改修が想定以上に長引いてしまい、正直なところ、資金が尽きかけた時期もありました。その局面で支えてくれたのが、前職の上司でした。親会社として支援していただけることになって、今はその支援を受けながら現場で検証を重ね、「KANTAN!」というサービスを一歩ずつ形にしている段階です。
これまでの経験の中で、自分の支えになっていると感じる経験があれば教えてください
少し照れくさいのですが、私はもともと、何かを真面目にやり込むタイプではありませんでした。そんな自分が今踏ん張れているのは、現場で直接いただく声があるからだと思います。
私たちは、大阪府内の病院や介護施設を訪問し、対面でお話しすることをとても大切にしています。その営業の中で「働きながら相性を見られるのは良い仕組みだね」という声をいただくことが増えてきました。「単発で来てもらうよりも継続的に関われるほうが現場としては助かる」と言ってくださる方もいます。
こうした言葉をいただくたびに、自分たちのやろうとしていることは間違っていないと確かめられる。もう少し頑張ってみよう、と前を向けるんです。そしてその積み重ねが、今の自分を支えているのだと感じています。
今後の展望について教えてください
会社として目指しているのは、いきなり働くという選択肢しかない現在の採用構造そのものを変えることです。働きたい人がいてもブランクや不安から現場に戻れない、その一方で現場は定着や教育の負担に悩んでいる。この噛み合わなさを、まず働いてから決めるという段階的な関係づくりでほぐしていきたいと考えています。
その先に見据えているのは、単なる人材のマッチングにとどまらない役割です。働ける人を活かしきれていない構造そのものに向き合い、医療人材のインフラを少しずつ再設計していく。少し大きな言い方になりますが、そこまでやりたいという思いがあります。
ただ、医療・介護の人材は、地域ごとに動き方も課題も大きく異なります。だからこそ、いきなり広げるのではなく、まずは足元の大阪で訪問を重ね、現場の理解と信頼を積み上げることを何より大切にしています。ここでしっかり成立する形をつくれて初めて、都市部を含めたほかの地域へ、本当に機能する仕組みとして広げていける。そう考えています。
組織体制や事業の広げ方は、具体的にどのように考えていますか?
今は私のほかに従業員が3名、内訳は営業が2名と営業アシスタントが1名という、まだ小さな体制です。当面は、このメンバーで大阪府内の営業に力を注いでいきます。手が足りない部分は外部の支援会社の力も借りながら、まずは大阪でしっかり手応えをつかむことが先決だと考えています。
そこで成果が見えてきたら、次は関西圏へと広げていきたいです。そのためには人の力が要りますので、営業職の採用も並行して進めていくつもりです。
さらにその先の広げ方としては、いくつかの選択肢を考えています。一つは、フランチャイズや代理店のような形で、各地のパートナーと一緒に展開していく方法。もう一つは、サテライト的な拠点を設けて地元の方を採用し、その地域に雇用そのものを生み出していく方法です。事業を広げることが、進出先の地域への貢献にもつながる。そんな広がり方ができればと思っています。
最後に、おすすめの書籍とそのポイントを教えてください
漫画なのですが、『キングダム』がとても好きで、よく読んでいます。魅力は、一人の力だけで物事が動くのではなく、仲間や組織の積み重ねが大きなうねりを生んでいくところです。これは経営にも通じるなと、読みながらいつも感じています。それに、理想だけでは前に進めず、現実的な制約や目の前の状況と向き合いながら一歩ずつ進んでいく。その姿は、今の自分たちのようなベンチャーの歩みとも重なるんです。
読むたびに、自分ももっと頑張らなければという気持ちにさせてもらえる。経営の励みとして、背中を押してくれる一冊ですね。
『キングダム』原 泰久(著)
https://www.amazon.co.jp/dp/408877079X/
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企業の「発信したい」と読者の「知りたい」を繋ぐ記事を、ビジネス書の編集者が作成しています。
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