今回は株式会社ソーシャルメディアリスク研究所、田淵義朗氏にお話を伺ってきました。
「社長の履歴書」だけの特別なインタビューです。
ぜひご覧ください!
株式会社ソーシャルメディアリスク研究所 会社概要
会社名称 | 株式会社ソーシャルメディアリスク研究所 |
代表者 | 代表取締役社長 田淵義朗 |
設立 | 2017年12月 |
主な事業 | 教育・研修(ソーシャルメディアのリスクと活用) ソーシャルメディアガイドライン策定支援 誹謗中傷・風評被害対策コンサルティング マスコミ対策支援(危機管理広報) 共同研究(企業・大学連携) |
会社所在地 | 〒104-0061 東京都中央区銀座7-13-6 サガミビル2F |
会社HP | https://e-secure.jp/ |
まずは、田淵様のご経歴から教えてください。
1980年に中央大学法学部を卒業し、宝島社に就職しました。ちょうどファミコンが隆盛期で、私は雑誌編集部でゲーム雑誌を担当していました。その後、引き抜かれた形で映画配給会社のギャガコミュニケーションズに転職し、1年半ほど出版部長をやっていました。それまで編集経験はありましたが、人を管理するのはとても苦手で、結構苦労しました。
ギャガコミュニケーションズでは、ビデオ店に配本する「ビデオインサイダージャパン」というディストリビューション誌を創刊しました。今でいうところの映画のレーティング雑誌ですね。毎月大体500~600本ぐらい制作されていた映画を紹介する雑誌です。
ギャガコミュニケーションズを退職したあとは、ゲーム会社の光栄(現コーエーテクモ)が出版部をつくるというのでそちらに移って、童門冬二先生の「信長の野望」を担当しました。自ら企画して「信長の野望」に出てくる武将を紹介する「武将File」を出版し、ベストセラーになりました。
その後独立し、編集プロダクションを経営していましたが、現在は編集プロダクション業を縮小し、インターネットのセキュリティ関係の事業をメインにしています。
情報セキュリティ関係の仕事を始めたきっかけは何だったのでしょうか?
1990年に明日香出版社から、「ネット攻撃クレーム中傷の傾向と即決対策」という本を出したのがきっかけです。法学部出身なので、ある程度法的な素養はありましたが、セキュリティの専門家ではありませんでした。6~7冊本を出しているうちに専門家になったという感じです。
当時はあまりそういう本はなかったので、最初の本の出版後はかなり反響が多く、いろいろな相談をいただきました。それで依頼を受けて弁護士にも相談しながら、ネット上で誹謗中傷や攻撃、クレームなどしてくる人を特定するというような調査をやって、結構喜ばれていました。
2005年に個人情報保護法が施行されたときは、日経BP社から「45分で分かる個人情報保護」という本を出版し、全国で企業をはじめ、学校や病院など200ヶ所ほど講演依頼が来ました。いわゆるバブルですね(笑)。当初はネット情報セキュリティ研究会という名前でやっていましたが、3年前にSNS問題が顕在化したので、ソーシャルメディアリスク研究所として法人化しました。
法人化した理由は何でしょうか?
おかげさまでいろいろな企業様からご相談をいただけるようになり、企業様の機密に関わる内容を扱っているので、ちゃんとした組織のほうがお客様に安心してもらえるためです。
改めて、ソーシャルメディアリスク研究所としての事業内容をお聞かせください。
まず一つは、ネット上での誹謗中傷や業務妨害などによって会社の売上げや評判が落ちてしまうことを防止するための、技術的なサポートです。法的な対応が必要なケースには、パートナー弁護士や他の弁護士につなぐという形でサポートしています。
二つ目はメディア対応です。SNSなどで問題が起きたときに、拡散してダメージが大きくならないように、広報を通じた対策を打つサポートです。昔で言えば危機管理広報ですね。その会社の広報のメンバーになって、メディアからの問い合わせにどう対応したらよいかということをレクチャーしています。
三つ目は社員教育です。これが売り上げの半分ほどを占めています。企業の社員に対して、ネットでのトラブルを起こさないための情報リテラシー的な教育をしています。現在はそういう教育をしている企業も増えてきましたが、弊社では法的なコンプライアンスに力点を置いた情報セキュリティ、一般的にITコンプライアンスと言われる部分を意識付けする社員教育をしています。
これまでに、田淵さんご自身が苦労されたことがあれば教えてください。
大学時代は父親が事業に失敗して仕送りが途絶えてしまったので、司法試験をあきらめ、いろいろなバイトをして食いつないでいました。就職した宝島社では、地方自治体のPR誌の企画や編集、営業などをやっていました。その後「ファミコン必勝本」というファミコン雑誌をつくっていたんですが、これが隔週で出している雑誌で大変でした。今みたいにDTPもないですから、大きなカメラでスーパーマリオが飛び跳ねている画面の画像を一枚一枚撮って、それを台紙に貼り付けてさらに上から撮影するとか、そんなことをやっていました。
2週間で発行しなければならないので、企画を1日で考えて先割でレイアウトしライターに書いてもらい、さらにプロダクションで写真撮影をするんですが、夏休みや冬休みは編集部に子どもたちが遊びに来るので、その相手もしなければならなかった。
実は当時、私自身「関西のブッチー」というキャラクターで雑誌に出ていたんです。それで、私がやっているキャラクターと、ベースボールゲームで対戦しようっていう企画があると、山ほどやって来る子どもたちと一日中ゲームをしてから編集をしていました。ほとんど寝る時間もなくて、面白かったけれど、めちゃくちゃな生活で大変でした。
一番苦労したのは、自分で起業したときですね。同文書院という出版社の事務所の一角を借りてスタートし、社員20名ぐらいになるまで大きくなりましたが、社員を雇って経営することがいかに大変かわかりました。
少しでも進む方向を間違えると売り上げはパタンと止まってしまう。でも社員を抱えていますから、給料を払わなければならない。そこは非常に苦労しました。
その苦労をどのような気持ちで乗り越えたのでしょうか?
追い詰められると不思議なことに次のアイデアが湧いてくるんですね。編集プロダクションから情報セキュリティに転換したのも、本を書いたことがきっかけでしたが、うまく軌道修正ができた。あまり人がやっていないニッチな市場でやりたいというのはいつもあります。人の真似はしたくないという気持ちでやっていますね。失敗はありますけれど。
現在の課題があれば教えてください。
最近は本当にネットの誹謗中傷やクレーム問題が大きくなってきていて、相談する側の事情も一つひとつ違います。心を開いて相談できるようなところを探している人や企業はたくさんあると思いますが、なかなかこちらから能動的に働きかけをすることもできません。そこでZoomを使って、日本全国どこからでも相談を受けられるようにしました。企業様の悩みに真摯に向き合って、相談に乗りながらネットの問題を解決していくということに一層力を入れていきたいと思っています。
実は、弁護士に相談しても、実際は法的に対応できないものが少なくないのです。裁判で発信情報者(書き込んだ人)の開示に至らなかったり、業務妨害や名誉棄損に当たらないと判断されたりするケースが少なくありません。ですから、そのような企業が救済されないグレーな部分に対しては、別の手段をとるしかないわけです。例えば、企業イメージを悪くするような記事やスレッドを検索エンジンのトップに表示させないようにしたり、Googleのサジェストや関連キーワードから、ネガティブなワードを削除したりといった対応です。
私たちの会社はそういうことができる技術を持っていますが、それを企業様に説明してもなかなかすんなり理解してもらえない部分もあります。なので、弁護士の先生方と一緒に取り組んでいく方向で考えています。法的に対応できない案件に対して、「技術的な対応をしてくれる会社がありますよ」と紹介してもらえるような仕組みやスムーズな流れを、どうつくっていくかというのが大事だと思っています。また弁護士しかできない業務をできると言って請け負う会社もありますが、非弁活動にあたり、違法行為です。削除します! は業者にはできません。そういう理由から弁護士との連携を今後は一層密にして、あらゆる相談に乗れるようにしていきたいと思っています。
田淵さんの未来の展望や夢を教えていただけますでしょうか?
「命の電話」ですね。60代半ばになって人生を考えたときに、何かやり残していると思っているものがずっとあって、いつも心の底から問いかけられています。それが「命の電話」なんです。
最近、いじめられて自殺してしまう人が多いですよね。ネット上に書き込みされたことがきっかけで、亡くなった人もいます。そういうときに、例えば私が話を聞いてあげることで一人でも救われる人がいれば、と思うんです。
メディアで取り上げられなくてもかまわないし、たまたま田淵という人がいるのを知って電話をしたら、話を聞いてくれて自殺するのを思いとどまりましたっていう、そういうことをやりたいです。企業相手の商売ではなく、個人相手の完全ボランティアです。
これは、多分やりますよ。
田淵さんが経営者におすすめする本を教えていただきました!
『堕落論』坂口安吾(著)
昭和初期に活躍した「無頼派」の代表的作家である坂口安吾の評論。 初出は「新潮」[1946(昭和21)年]。「日本文化史観」や「教祖の文学」と並ぶ、安吾の代表的評論。 「半年のうちに世相は変った」という有名な書き出しを枕に、戦後直後の日本人が自らの本質をかえりみるためには、「堕落」こそが必要だ、と説いたことで世間を賑わせた。 現在も賛否両論を集める、過激な評論作品。 Amazon URL:https://amzn.to/3C6hTEV |
投稿者プロフィール
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新入社員を含めたフレッシュなメンバーを中心に、出版サポートの傍らインタビューを行っております!
就活生に近い目線を持ちつつ様々な業種の方との交流を活かし、「社長に聞きたい」ポイントを深掘りしていきます。
代表者様のキャリアを通して、組織の魅力が伝わる記事を発信していけるよう、これからも一生懸命運営してまいります!
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