
今回は株式会社D.HIT代表、杉野 奈央氏にお話を伺ってきました。
「社長の履歴書」だけの特別なインタビューです。
ぜひご覧ください!
| 会社名称 | 株式会社D.HIT |
| 代表者 | 杉野 奈央 |
| 設立 | 2020年3月 |
| 主な事業 | 歯科衛生士向けキャリア支援事業「D.HITキャリココ」 歯科衛生士と歯科医院のマッチングサービス「ハリンク」 人材紹介・歯科医院の経営コンサルティング オーラルケア商品の企画・開発・製造 歯科医院「&DH DENTAL CLINIC DAIKANYAMA」の運営 |
| 会社所在地 | 東京都目黒区中目黒3丁目6番2号 |
| 会社HP | https://dhit.co.jp/ |
事業紹介をお願いします
事業は複数展開していますが、メインに置いているのは「D.HITキャリココ」という歯科衛生士向けのキャリア支援サービスです。
歯科衛生士は国家資格で、有資格者のほとんどは女性です。ただ、臨床の現場で働くことが求められるため、ライフステージが変わると働きづらくなり、資格を持っていても辞めてしまう方がとても多いのが現状です。そうした方々も含めて、歯科衛生士のキャリアに特化したサポートを行い、キャリアを続けられるようにお手伝いをしています。
ご相談に来られるのは30代から40代後半のママ層が中心です。ちょうど働き方を変えなければならない年代で、臨床でフルタイム勤務を続けるのは大変だという声が多いですね。
私どもが提案する働き方は一つではありません。歯科医院の採用支援やSNSの運用代行、ブログのライティングなど、家にいても歯科業界の中で価値提供ができる働き方がありますし、自分が働ける時間の範囲で高単価のスポットの仕事を選ぶ方もいます。臨床で培った経験と知識を、今度は違う形で歯科業界に還元していただく働き方をご提案しています。
業界の中でも珍しい事業だと感じます。強みはどこにあるのでしょうか?
かなりニッチですね。歯科業界には技術的なサポートをする会社はたくさんありますが、歯科衛生士のキャリアそのものにフォーカスする事業はほとんどありません。
強みは、私自身が歯科衛生士であることです。10年ほど臨床を経験してから起業しましたので、私が実体験してきた悩みは、おそらく皆さんと同じ悩みだと思います。それをそのまま商品にできたことが、一番の強みだと考えています。
メンバーも全員が歯科衛生士ですから、歯科衛生士に向けた発信やSNSの運用も含めて、共感が生まれやすくなります。現在は全国で3万人ほどの登録がありますが、共感して集まってくださった、熱い思いをお持ちの方たちが多い点も、大きな強みだと思っています。
【公式SNS・ブログ】
・インスタグラム:https://www.instagram.com/d.hit888/
・TikTok:https://www.tiktok.com/@d.hit
・YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCuh3Ziv3_l5bpiOp2VZd7WQ
・Facebook:https://www.facebook.com/people/%E6%A0%AA%E5%BC%8F%E4%BC%9A%E7%A4%BEdhit/100063475241723/?ref=page_internal
・D.HIT公式ブログ:https://dhit.co.jp/blog/
ここからは杉野社長ご自身のことを伺います。学生時代に打ち込んだことを教えてください
スポーツや部活に打ち込んだ経験はないのですが、高校生のときにマクドナルドでアルバイトをしていました。マクドナルドは組織がしっかりしていて、アルバイトでも役職がつくんです。本社で研修を受ける機会もあり、サービス業の基本をきちんと学びました。
お辞儀の仕方、挨拶の仕方といった基本を教わったことは、後に歯科医院で働くうえでとても役に立ちました。患者さんと関係を築いたり、コミュニケーションを取ったりする場面で活きています。
歯科衛生士は専門学校で歯科のことしか学びません。一般的なコミュニケーションスキルやビジネスマナーはほとんど教わらないまま、就職してすぐ現場に出ます。マクドナルドのような、しっかりした研修プログラムがあって、合格しないと役職が上がらないという環境で学べた経験は、今振り返っても貴重だったと思います。
歯科衛生士を目指されたきっかけを教えてください
私の叔母が歯科衛生士でした。ただ、高校生の私がなりたかったのはエステティシャンで、理由は可愛い白衣を着たかったからです。本当にそれだけの動機でした。
あるとき、叔母から「歯科衛生士ってすごい可愛い白衣が着れるよ」と言われました。エステティシャンは資格ではありませんし、親は手に職を持ったほうがいいという考えがあったので、叔母に説得を頼んだのだと思います。「給料もそこそこよくて、やることは一度覚えたらずっと同じだよ」と言われて、それなら歯科衛生士でもいいか、という安易な考えで歯科衛生士の専門学校に進学しました。
実際に歯科衛生士として働き始めて、どう感じられましたか?
正直に言うと、2年ぐらいで飽きてしまいました。歯科衛生士の仕事は向いていなかったようで、そんなに好きではありませんでしたね。結局10年ほど臨床にいましたが、結婚を機にきっぱり辞めようと決めていました。
ただ、最初に勤めた歯科医院の院長には大きな影響を受けました。とても厳しい先生でしたが、私のやりたいことを応援してくださる方で、税理士さんとの打ち合わせに同席させてくださるなど、経営側を見せてくれたんです。新規開業の医院だったので、ゼロから患者さんを集めるところも一緒にやりました。あのときの経験は、今に活きていると強く感じます。
転機になったきっかけや体験があれば教えてください
臨床を離れた後にベンチャー企業へ移り、そこで予防医療について学ぶ機会がありました。
教えてくださったのは予防医療を専門としている先生で、「健康の入口は口であり、口腔の健康が全身につながっていて、歯がなければ人は生きていけない」というお話をされていました。それを聞いて、初めて歯科衛生士の価値に気づいたんです。同時に、自分が10年間やってきたことは歯科衛生士の仕事ではなかったのだと痛感しました。
もっと衛生士の仕事を全うして、多くの人を健康にしていきたいと思いました。ただ、一人で歯科業界に戻っても、対応できる人数はたかが知れています。それならば仲間を作って、みんなで予防に取り組もうと考え、会社を起こすことに決めました。
ベンチャー企業でのご経験は、現在の事業にどうつながっていますか?
歯科衛生士として働いていた頃は、名刺交換をしたこともなければ、メールを打ったこともありませんでした。業者さんとのやり取りは基本的に口頭で、こちらは常に来ていただく側、営業される側でしたので、自分からアプローチする機会がなかったんです。
ベンチャー企業に入って、初めて商談を経験しました。見積書や請求書を出したり、こちらから提案に行ったりと、社会人経験がほぼゼロのところからいろいろなことを学ぶことができました。
担当していたのは、企業に出向いて口腔ケアの重要性をお伝えする仕事です。健康経営の一環として口腔ケアを取り入れていただく、法人向けのサービスでした。業務であると同時に、私自身がずっとやりたかったことでもあります。
口腔ケアの重要性は、歯科衛生士の知識でお伝えできます。けれど、どの企業にどうアプローチするのか、新しい取引先をどう開拓するのか、決裁権のある方とどう話を進めるのかといった部分は初めての経験ばかりでとても苦労しました。でも、そこさえできるようになれば、歯科医院の外でも予防の大切さを伝えられます。実際、ビジネスのスキルが身についてからは、さまざまな場所でお話ができるようになりました。
歯科衛生士は歯科医院で働くのが一般的だと言われますが、活躍の場が広がれば、予防の重要性はもっと多くの人に届きます。そのためには、歯科衛生士自身がビジネススキルやマナーを身につけていかなければなりません。現在の事業の中にそれを伝える要素を組み込んでいるのは、この考えが根本にあるからです。
経営者になりたいという思いは、いつ頃芽生えたのでしょうか?
起業する半年から1年ほど前で、かなり突発的でしたね。
それまでは、自分が会社の社長や代表をやるとはまったく思っていませんでした。ただ、ベンチャー企業に勤めたことで視野が広がり、いろいろな方にお会いできましたし、会社を起こす場面も身近で見せてもらいました。その中で、自分にも起業ができそうだというマインドセットが生まれたのだと思います。
もう一つの理由は、組織の中にいると自分のやりたいことに制限がかかることです。会社員だと、上司を口説いて決裁を取らなければ動けません。もっと自由にやりたいという気持ちが強くなって、思いつくままに起業しました。
ちょうどその時期に妊娠をしていたので、生まれてしまう前に準備をしなければと急ぎました。出産後しばらくは思うように動けないだろうという読みもあり、妊娠中に準備を進めて、出産の半年後に設立するというスケジュールで動いていました。
起業して、まず何から着手されたのでしょうか?
最初は公庫からの借り入れです。そのために事業計画書を作り、どの商品を売っていくかという戦略を立てました。一番最初に事業計画書として出したのは、歯科衛生士と歯科医院をマッチングするサービスで、この春リリースした「ハリンク」がまさにそれにあたります。
ただ、事業計画書を出したのは2020年で、コロナ禍でした。歯科は唾液が飛ぶから危ないと敬遠される空気の中で、業界は大きく縮小し、歯科医院の経営はとても厳しい状況にありました。当然、採用マッチングはなかなか受け入れてもらえません。開業や経営のご支援も一緒に売っていこうと考えていましたが、先生方はそれどころではなく、結果として案件がなく、売上がまったく立たなくなってしまいました。
そこから、どのように立て直されたのでしょうか?
最初の半年ほどは売上がゼロで、何かしなければという思いからSNSを始めました。
そこで、歯科衛生士1,000人を集めて歯磨き粉を作ろうというプロジェクトを立ち上げたところ、3ヶ月で1,200人ほどの歯科衛生士が集まってくれました。意図していたわけではないのですが、これが自然と市場調査になり、プロジェクト参加者と会話をする中で、どんなことに悩み、何が課題なのかを直接聞くことができたんです。
出てきた課題は、私が抱えていたものとほとんど同じでした。それならば自分が当時欲しかった商品を作ろうと考え、起業して8ヶ月ほどの頃に、歯科衛生士向けのビジネススクールを始めました。一対多の形でしたが、たくさんの方に受講していただきました。
ただ、一対多ではその方のやりたいことに寄り添った支援が難しく、1on1でお話を聞くうちに、パーソナルにしたほうが効果が出るとわかってきました。そこで2年目からパーソナルの支援を始めて、それが現在の「D.HITキャリココ」につながっています。
その後3年ほどは広告を使わず、SNSでの発信だけで続けていましたが、集客に限界を感じるようになり、マーケティング会社と連携して広告を打ち始めてから、また一気に伸びていきました。
印象に残っている受講者の方のエピソードがあれば教えてください
たくさんありますが、パートの歯科衛生士として働いていた方が、自分の強みを活かした商品を作り、最終的に法人化されたケースは印象に残っています。現在は社長としてバリバリ働いていらっしゃって、「D.HITがあったから違う自分に出会えた」と言っていただきました。ああいう言葉はうれしいですね。
また、歯科医院で働くことが精神的に辛くなり、院内から聞こえてくる音を聞くだけで具合が悪くなってしまう状態の方もいらっしゃいました。歯科医院は小さな組織なので人間関係で悩まれる方はとても多く、精神的に無理になってしまい離職されたという方が少なからずいます。その方は今、私たちのサポートを受けて、臨床ではない歯科業界の場所で貢献されています。歯科衛生士の資格を活かした仕事ができることを喜んでくださり、最初に来られたときとは別人のようなお顔で活躍されている姿を見ると、本当によかったと思います。
利用者の方と接する中で、業界に対して感じることはありますか?
業界全体として、選択肢がないところが課題だと感じています。臨床ができなくなったら歯科衛生士ではない、という解釈が根強くあるからです。
けれど女性には、どうしても臨床現場で働けない時期があります。その期間に、歯科衛生士以外の仕事で職場に貢献できれば復帰もしやすくなります。実際、産休・育休中の方やお子さんが小さくて臨床に行けない方が、歯科医院のSNS運用の業務を自宅で請け負い、お子さんが大きくなったタイミングで歯科衛生士として臨床に入るケースも出てきました。
ライフスタイルやライフステージに合わせて働き方を選べることは、今後の業界にとってとても大事になっていくと思っています。
歯科医院も運営されているそうですね
はい。代官山で「&DH DENTAL CLINIC DAIKANYAMA」という歯科医院を運営しています。名前は、私が歯科衛生士1,000人と一緒に作った歯磨き粉「&DH」から取りました。
予防と美容を専門にした、歯を削らずに守る歯科医院です。歯科衛生士は予防をする職種ですから、衛生士が主体になってその人の口の健康を守るというコンセプトになっています。
この歯科医院は経営者の方に喜ばれる仕組みを取っているのも特徴です。保険を使わないので、時間のない方でも一度でクリーニングもホワイトニングも済ませられますし、治療中にもスマートフォンをご使用いただけるので、リラックスしながら仕事もできる空間になっています。
&DH DENTAL CLINIC DAIKANYAMA の詳細はこちらからご覧いただけます。
https://anddhdentalclinic.com/
経営者にとって、口腔ケアはどのような意味を持つのでしょうか?
健康を維持するうえで、口腔ケアはとても大事です。認知症や血管系の疾患についても、口腔の菌から感染するというエビデンスがいろいろと出ています。
特に、経営者の方は、体一つで会社の未来が変わりますから、ご自身の体をとても大事にされていると思います。実際、成功されている経営者の方ほど歯を大事にされているなと感じます。
大事なのは内側のケアだけではありません。歯が白かったり整っていたりすると清潔感が生まれますし、グローバルに活躍される経営者の方であれば、海外では口元がアイデンティティとして見られます。だからこそ、口元の見られ方に意識を高めておくことは、とても大事だと思います。
今後の展望について教えてください
まずは歯科衛生士という職業の認知度と社会的地位を上げたいと思っています。そのためには、歯科衛生士の活躍支援をしていかなければいけません。
必要なのは、今働いている方が辞めずに続けられるようにすることと、新しく歯科衛生士を目指す人を増やすことの両輪だと考えています。
続けられるようにするという点では、「D.HITキャリココ」を通じて働き方の選択肢を広げ、辞めない仕組みを作っていきます。増やすという点では、現在活躍している歯科衛生士の姿を発信していきます。楽しそうに働いている姿や輝いている姿を見せることで、歯科衛生士になりたい人は増えていくはずです。私たちが広報のような役割を担って、歯科衛生士を増やす活動にも力を入れていきたいと考えています。
また、2026年9月6日には『OUR STAGE by D.HIT〜歯科衛生士のキャリアカンファレンス〜』というイベントを開催します。歯科医師とのパネルディスカッション、パート勤務から起業した方のキャリアストーリーのご紹介、歯科衛生士20名がランウェイを歩く「白衣コレクション」、そして一度現場を離れた方の復職を歓迎する「おかえりプロジェクト」の共同メッセージまで、一日かけてお届けします。ぜひ足を運んでいただけたらうれしいです。
イベント概要:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000118687.html
最後に、おすすめの1冊を教えてください
おすすめの本は、稲盛和夫さんの『生き方』です。
私が経営者になって初めて読んだ本で、今でも経営に迷ったときに立ち返る“教科書”のような一冊です。この本をきっかけにフィロソフィー教育について学び、経営は「何をするか」だけではなく、「経営者自身がどう在るか」が大切なのだと知りました。
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企業の「発信したい」と読者の「知りたい」を繋ぐ記事を、ビジネス書の編集者が作成しています。
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