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たかしま耳鼻咽喉科院長 高島雅之氏

今回はたかしま耳鼻咽喉科院長、高島 雅之氏にお話を伺ってきました。

「社長の履歴書」だけの特別なインタビューです。

ぜひご覧ください!

 

会社名称 たかしま耳鼻咽喉科
代表者 高島 雅之
設立 平成19年
主な事業 耳鼻咽喉科 睡眠外来
社員数 13名(取材時)
会社所在地 栃木県宇都宮市材木町1-7
会社HP https://www.takashima-cl.com/

http://m-takashima.com/

 

事業内容を教えてください

今年で開業が16年目になる有床診療所で、2007年にM&Aで法人を承継しました。独立したのは、耳鼻咽喉科と睡眠外来をトータルで診ることのできる診療所を作りたいと思ったのがきっかけです。

 

学生時代に熱中したことを教えてください

学生時代はアメリカンフットボールばかりやっていました。アメリカンフットボールはプレーヤーが入れ替わって試合に出るのが普通ですが、医学部の単科大学のため部員数が少なく、1試合で約2時間、常に出ずっぱりでした。気合や根性、水を飲むな!がまかり通った時代の末期の大学生でした。

 

医者を目指されたきっかけを教えてください

父が医師をしていたので、なんとなく幼いことから「医者になるんだろうな」と思って育ちました。実家が耳鼻科で子供の頃から掃除を手伝わされており、耳鼻科の裏側まで知っていたので、医者になるなら絶対に違う科を目指そうと思い、元々は外科を志望していました。しかし、大学6年生の時に父親から「外科は手術が細かいから歳をとった時に目が見えなくて手術ができなくなるよ」とアドバイスをもらい、気がついたら耳鼻科を選択していました。今思うと、上手く父親に誘導されたなと思います。

 

睡眠外来を始めたのはどうしてでしょうか?

大学院を修了し、医師になって5年目の時に学会で名古屋に行った際、医療機器のブースで教授が「最近はレーザーでいびきを治すらしいよ」と私に話しかけてきました。その時は全く睡眠やいびきなどに興味はなかったのですが、その場で教授がいびき治療のレーザー機器をメーカーから借りてくれました。せっかく借りてもらって使わないのも勿体ないので、一生懸命何十回も説明のビデオを見て、同僚に実験台になってもらい、そこから治療を始めたのが睡眠医療に携わるきっかけでした。

これをきっかけに私は睡眠の世界にはまり込んでいきました。

当時はまだいびき治療のレーザーが日本に入ってきたばかりだったので、片っ端から色々なメーカーのレーザーを試しては学会で発表していきました。私の医局には睡眠の研究をしている人がいなかったので、学会や研究会に行っては知っている人に声をかけて、知識や意見などを頂戴し教えてもらっていましたね。

そうこうするうちに私は睡眠障害の中でも、いびきや無呼吸が専門となりました。

 

独立した理由を教えてください

当時大学病院では、睡眠に関する患者さんの診療が完全分業制となっていました。私は外科的治療の術式や適応などを研究テーマとしていたので、私が担当している患者さんでも、自分の領域外であれば違う科のドクターにバトンタッチします。大学病院という組織が足枷(あしかせ)になってしまったこともあり、もっと自由に患者さんと向き合いたいという思いから独立を考えていました。

しかし決心するまで2年ほどかかりました。

というのも、大学病院を出たら手術ができなくなることへの踏ん切りがなかなかつかなかったからです。しかしある日、お昼を買いに病院の階段を降りているときにふと「手術できなくてもいいや!独立しよう」と決心がついたのでした。

金沢で開業しようと思っていましたが、金沢では睡眠時無呼吸を診ている施設がすでに多く、実家のある栃木県の県庁所在地、宇都宮で開業することになりました。

ですが、物件を探し始めたものの、開業する場所がなかなか見つからずに焦っていました。大学病院にはすでに辞めることを伝えていたので期限も迫ってきていて、どうしようか悩んでいるところ、父親の知人から病院の売却を考えていると連絡があり、突然クリニックの開業場所が決まりました。引き継ぐ前の病院も耳鼻科だったので、集患に苦労することなく開業できたのは大きなメリットでした。4月に開業し、夏から無呼吸の入院検査や治療も本格的に始動しました。

 

開業して大変だったことを教えてください

私は恥ずかしながら医療の勉強ばかりで、経営の勉強を全くしてきませんでした。M&Aで前のクリニックを1億6500万で買ったはずが、結果的には倍の3億3000万円になってしまいました。当時の会計事務所の先生がコンサルタントも出来るとのことで、完全に任せっきりにしており、これがいけなかったのです。今でも銀行の担当者や現在の税理士など、誰に聞いても理解に苦しむ購入方法でクリニックを買ってしまったことで私の借金は2倍になってしまったのです。この事態は、M&A直前に銀行が担保設定だったか何かを理由に貸せないと言い出したことに端を発し、結果、M&A成立の後、法人理事長となった自分から、個人としての自分に土地、建物を売却することで銀行のOKが出るという、至極不可解な取引が行なわれたのでした。法人株の取得と土地建物の取得金額が一緒というのも、クリニックには機器や器具など医療設備が多数あるわけですから、何ともおかしな金額設定でもあることも摩訶不思議な内容です。知識不足と他人任せが一番の原因ではありますが、さることながら、話が進んでしまっていたので後にも引けず、承諾してしまったのもいけなかったですね。結果、個人から銀行返済と法人への返済という、2重の借金返済がスタートし、所得の大半は返済と税金の支払いとなり、私の手元に残るのはせいぜい2万円程度という貧乏生活をしていました。勉強不足で失敗をしましたが、この間、内部留保を高めたことで、クリニックの建て替え時には借り換えや追加融資など資金面での苦労をせずに済んだことや、何といってもクリニックを潰さずに経営し続けることができているのは、苦労の末の報いのように感じています。

 

大変でしたね。他には何かありますか?

クリニックの中の問題としては、やはり人の問題で離職率の高さで苦労しました。前述の通り、私が開業したクリニックは耳鼻科クリニックから引き継ぎいだ病院だったので、開業当初から患者さんに来て頂いてました。だからこそ患者さんに安心して来院頂けるクリニックにしたいという思いが、いつしか粗相があってはいけないという思いへと変化してしまったんでしょうね。その結果、スタッフの細かな言動ばかりが気になり、まるで粗探しのように細々とスタッフに注意ばかりするようになってしまいました。そうすると、スタッフにしてみればいつも私から叱られてばかりだと思ってしまい、働きづらさから離職が増えていきました。「気合いだ、根性だ」で育ってきたことが仇となり、背中を見せれば人はついてくると完全に勘違いしていたんですね。定着率が続かない時期はなんやかんやと9年近く続いたでしょうか。あれこれ本を読んでは色々と実践してみましたが、なかなかうまくいきませんでした。

 

どのように定着率を上げていったのでしょうか?

この間に2回ほど大量離職の危機もあって、自分だけではどうにもできないと感じ、船井総研のコンサルに依頼をしました。するとコンサルの方から「もっとスタッフとコミュニケーションをとりましょう。挨拶やつまらない話でも良いので、スタッフと会話することから始めて下さい。」とアドバイスをもらいました。そこからコミュニケーションをとり始めたり、コンサルタントの介入などもあって離職の問題は落ち着いていきました。

1つクリアすると次の問題が見えてくるものです。それはスタッフが自ら考え行動する自走式な組織への変化です。求めに対して縁というのはあるもので、医療経営大学というコミュニティで私は学ぶこととしました。医療経営大学は開業医を中心とした経営者のための勉強会で「まずは自分が変わらないことには周りは変わらない」ということを学びました。勉強を進めていくと、当クリニックの組織構造にも問題があると気がつきました。看護師である家内は事務も検査も、睡眠ポリグラフ検査でさえできてしまい、日本睡眠学会の認定技師さえ取得してしまったようなスーパーウーマンです。私は家内に頼りすぎてしまい、スタッフも家内に聞けば何でも解決してくれることから、思考を働かすことのない組織となっていたのです。

その結果、全ての負担が妻にいってしまったこともあって、妻が体を壊してしまいました。これを機に家内を現場の仕事から完全に切り離し、リーダーを含めた組織づくりを今年の目標に、工夫しながら動いています。更には経営チームも作り、外部の方にも加わって頂き、当院の未来を考える「10年プロジェクト」がスタートを切った所です。

 

クリニックの経営は思っているよりも大変なんですね

多くの医師がそうですが、医者はそもそも職人気質の方が多いんですよね。しかし、開業すると診察だけでなくマネジメントや経営など医療行為以外にも時間やエネルギーを割かないといけないのは、知っているようで、意外と開業前には軽視されているのかもしれません。プレーヤー気質であるが故、多くの方は自分でなんでもやってしまいたくなります。ですが、自分でできることには限りがあることを今更ながら学びました。今では、私が自分でやらないことを少しずつ決めていき、スタッフへ権限移譲するようにしています。

 

今後のクリニックの展望はありますか?

「睡眠」が当院の大きなテーマなので、更にエッジを効かしていこうと思っています。

無呼吸症候群の患者さんは、寝る時にCPAPという機械を顔に乗せて寝ますが、中にはどうしてもうまく装着できない人もいます。CPAPを扱う業者や経営コンサルとの中には、CPAPは医業として安定収入に繋がると知識や大義を無視して積極的に勧めるケースを見かけることがあります。言葉巧みな誘いに、金のために専門外の医師がCPAPを管理しても更にうまく管理できないことは想像に難くありません。日本では500万人ともそれ以上とも言われる無呼吸患者のうち、実際にCPAP治療をうけられている方はせいぜい50万人です。睡眠を専門とする医師はとても少なく、専門外の先生方の力を借りなければまだ未治療の方達の治療に携わることは不可能です。私はCPAPの使用困難に悩む患者さんをゼロにしたいと思っており、そのためにもCPAPに限らず睡眠に関する情報を発信できる組織やシステムを構築したいと考えています。

もう1つ、私の夢は日本人の睡眠時間を長くすることです。そのためにも睡眠時間の大切さについてもっと謳っていきたいです。日本人はOECD諸国の中で一番睡眠時間が少なく、勤勉さの代償なのか眠りに対する意識が低い国民です。30年前に「24時間働けますか?」というCMがあったように、当時の日本人は寝る暇もなく働いていました。その結果、2025年には認知症患者が700万人にも達すると予想されており、寝てこなかった結果の1つと私は考えています。

人によって必要な睡眠時間はそれぞれ異なりますが、寝ることはサボったり怠けているわけではありません。人は寝ていないと仕事のミスが増え、パフォーマンスも上がりません。普通に当たり前の日常を過ごすためにはしっかり寝る。このことは人間にとってとても大切なことなのです。

眠りに重要なのは、「質」と「量」。この2つにフォーカスを当てて、我々日本人の睡眠をより良いものにするための組織運営や展開ができたらいいなと思っています。

 

経営者におすすめの本はありますか?

清水康一郎さん著書の「絆徳経営のすゝめ ~100年続く一流企業は、なぜ絆と徳を大切にするのか?」です。一言でまとめると利他に尽くすことで、相手と関係性を継続することができる。それによって自分の目指す生き方をしていこうと言う本です。

AmazonURL                 https://www.amazon.co.jp/dp/4910017208

 

また「専門医が教える鼻と睡眠の深い関係 鼻スッキリで夜ぐっすり」という本を昨年12月に出版しました。実は鼻で十分呼吸ができないと、あれこれ困ったことが出現します。それは睡眠にも大きく影響します。鼻呼吸を中心に、睡眠全般について、また治療やセルフケア、症例集など読みやすさを意識した入門書のような本です。もし睡眠に悩まれている方がいらっしゃいましたら、ぜひお手にとって頂けますと幸いです。

AmazonURL                   https://www.amazon.co.jp/dp/4295406309

投稿者プロフィール

『社長の履歴書』編集部
『社長の履歴書』編集部
新入社員を含めたフレッシュなメンバーを中心に、出版サポートの傍らインタビューを行っております!

就活生に近い目線を持ちつつ様々な業種の方との交流を活かし、「社長に聞きたい」ポイントを深掘りしていきます。

代表者様のキャリアを通して、組織の魅力が伝わる記事を発信していけるよう、これからも一生懸命運営してまいります!