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有限会社 大瀬商店代表 大瀬輝也氏

 

今回は有限会社 大瀬商店代表、大瀬輝也氏にお話を伺ってきました。

「社長の履歴書」だけの特別なインタビューです。

ぜひご覧ください!

 

 

会社名称 有限会社 大瀬商店
代表者 大瀬輝也
設立 1967年5月
主な事業 ・大島紬製造卸販売

・薩摩美布屋 (さつまびふや オンラインショップ)

社員数 8名(取材時)
会社所在地 鹿児島県鹿児島市荒田 1−27−16
会社HP https://www.oose.biz/

https://www.oose1930.co.jp/

 

 

事業内容を教えてください

有限会社大瀬商店の創業は昭和5年で大島紬(おおしまつむぎ)を製作・販売しています。大島紬とは鹿児島県南方にある奄美群島の織物です。当社の始まりは私の祖父が鹿児島県の奄美大島 笠利町から中学校卒業を機に上京し、大島紬業界で働き始めたのがきっかけです。我々の業界は昭和52年にピークを迎え、そこから衰退していき今では全盛期の2%以下の生産量になっています。

現在私が3代目として会社を経営しています。私が家業を継いだ当初は、大島紬の反物(たんもの)を製造し問屋に卸していました。しかし反物を作ったとしても業界全体が衰退しているので売れ行きが悪い状況でした。このままでは良くないと思い、問屋が作ってほしい商品を当社で製造し注文品を購入いただくように変更しました。しかし、問屋も売れ行きが良くないと買い取ってくれないことがあり、これでは正当な商売にならないと思って、思い切って問屋との取引をやめました。

そこから洋服や小物を作り始めると、お客様からリクエストをいただいたり、「他にはどんな商品があるんですか?」などのお問合せが多く入り、次第に小物の商品数が増えていきました。そこから洋服を作った端材を小物に回すなど、製造工程にも工夫が生まれてきました。

現在は鹿児島に実店舗「PONGEE」をオープンしさらに百貨店の催事などに出品し、大島紬のある生活をお客様に提案しています。これからはもっと商品開発を進めて、様々な業界の人に大島紬をテキスタイルとして作っていただきたいと思っています。特にインテリアの商品開発に力を入れています。大島紬を着物以外で使ってみたい方がいましたらご連絡ください!

 

大島紬とインテリアの組み合わせはとても面白いですね。

実際に東京のホテルの1部屋をコーディネートさせてもらいインテリアの可能性を感じました。特に大島紬を使った照明器具に力を入れているので、鹿児島の伝統工芸品として広まってほしいと思っています。

 

学生時代に熱中したことはありますか?

私は鹿児島県の田舎で生まれ、高校生まで野球に熱中していました。根性論の時代なので、水を飲めないことや厳しい指導が当たり前でしたが、そのおかげで忍耐強く理不尽なことに耐える力が身につきました。しかし野球が好きになれずやらされている感があったので、大学では空手部に入部しました。

 

就職活動はどのように進められたのでしょうか?

私が大学3年生のときにバブルが弾けてしまいました。4年生になり就職活動をしてみると、面接を受けたくても受けることができなかったり、資料を手に入れることすらできなかったりするような状況でした。1年前は仕事が選び放題だったのが、就職活動はやりたい仕事を探すのではなく、入社できる会社を探すようになっていました。私は入れる会社を探す就職活動に大きな違和感があり、やりたいことを見つけるまではバイトをして生きていこうと決めました。

バイトをしてお金がある程度貯まったので、知り合いが住んでいるアメリカに3ヶ月間滞在して旅行をしました。その旅がとても面白かったので、他の国にも行ってみたいと思っていましたが、私の母親が病気で倒れたことを親族から聞いて旅行は一旦中止になりました。私自身は家業を継ぐことは考えていませんでしたが、祖母から「商売をしたいなら自分の家の家業を考えたらどうか?」と言われ、もし自分が継がなければ家業はどうなってしまうんだろうか、と考え始めるきっかけになりました。それまで全く家業に興味がありませんでしたが、誰も大島紬を継ぐことができないんだったらいつか自分で経営していこうと決意しました。

 

そこから家業を継がれるのでしょうか?

母親に家業を継ぎたいと話をしたところ「大島紬は斜陽産業だからどこかに就職した方が良い」と言われ、そうであれば将来に役立つ大島紬と関連のあるところに就職したいと考え、東京の人形町にある呉服問屋に就職しました。問屋の仕事はやる気のあるスタッフとやる気のないスタッフに分かれていて、成長するのに物足りなさを感じていました。学ぶことのできない環境だったので、転職しようか迷っている矢先母親が再度倒れてしまいました。着物業界の悪い点を理解できたので、環境を変えるためにも良い機会だと思って、家業を継ぐことにしました。私は昔から社長になるのが夢で、一回でも従業員として雇われることが社長になる上で大切だと思っていたので、就職をして組織というものを肌で感じることができてよかったです。

 

大島紬をビジネスとして扱って改めて感じたことなどはありますか?

私は大島紬を仕事として真面目に考えていたので、自分の中の正義を貫きたいと思っていました。人とぶつかったとしても、業界のために働きたいという気持ちを持っています。正直、業界の中に私と同じような感覚でいる人が少ないと思っているので、今現在は呉服業界に仲間を増やしたいという気持ちよりは異業種に仲間を求めたいと思っています。しかし伝統を次世代に受け継いでいくことも大切なので、これからのご縁は大切にしていきたいです。仕事に関しては今までやってきたことを見てくれた人や評価してくれた人から仕事をいただければと思っています。サラリーマンではないので、私は24時間自由です。ただ、24時間拘束されているという見方もできますよね。ストレスを溜めすぎず、熱量を持って仕事をしていくことで仕事が良い方向に行くと思っています。これからもこのスタンスで仕事を続けられると嬉しいです。

 

今後の展望はありますか?

今後は仕事してる感をなくしていきたいです。今とやっていることは変わりませんが、人生の中で仕事を楽しみや日常にしていきたいです。そしてだんだんとフェードアウトして次世代に継いでいきたいです。そして私の子供や後輩から「お父さんのような仕事がしたい」「大島紬の仕事がやってみたい」という雰囲気になれば良いかと思っています。そのためには私が良い人生を過ごしていないと次世代は継ぎたいと思ってくれません。私自身に余裕ができていればスムーズにサポートができると思っています。だからこそこれからの若い世代がお手本になるようなライフスタイルを過ごしていきたいですね。この業界で楽しめる環境や、やる気が出るような状況を整備していきたいです。

 

素敵なご展望ですね。業界の展望はありますか?

私が大島紬を継ぐと決めた時には素敵な先輩がたくさんいました。それは大島紬が成長期だったので余裕があったからかもしれません。私が家業を継ぐ時代になると、大島紬の売上が良くなかったのもあり、母親から「食べていけるだけで十分だから、今までのことをやっていれば良い」と言われることがありました。私が家業を継いだのは、大島紬に世界に誇れる付加価値があったからです。食べていくために稼いでいるのであれば他の仕事の方が良いと思います。だから私がこの仕事の付加価値をみなさんに伝えていきたいですね。

付加価値を伝えるために今までにない新しい挑戦をしています。2代目までは着物業界が大島紬の基本でしたが、今後は新しい領域を開拓していきたいです。例えば今年から大島紬のレンタルを始めます。大島紬は高価なものなので、今までレンタルという概念はありませんでした。まずは若い方に知ってもらわないといけないので、振袖を作って良さを知ってもらいたいです。他には機織り教習を始めます。実際に自分が作った大島紬の製品ができると生徒さんはその大島紬を大切にしてくれます。また技術者も講師料としてお金を稼ぐことができます。今まで技術者は製品を作って売ることだけでしか儲けることができませんでしたが、新たな収入源が増えることでもっと豊かになっていきます。教室の中から本気で大島紬を勉強していきたい方は後継者として育てることで、伝統工芸の後継者問題も解決できるようになっていきます。大島紬教室が体験できる民泊も考えているので、気軽に県外から遊びにきてもっと大島紬に親しんでいただきたいです。

 

経営者におすすめの本はありますか?

うめざわしゅんさんの『ダーウィン事変』です。半分人で半分チンパンジーのヒューマンジーが主人公です。現代人の色んな物事に対しての価値観を考えさせられてしまいます。作者のものの見方がとても面白いですね!

テロ組織「動物解放同盟(ALA)」が生物科学研究所を襲撃した際、妊娠しているメスのチンパンジーが保護された。
彼女から生まれたのは、半分ヒトで半分チンパンジーの「ヒューマンジー」チャーリーだった。
チャーリーは人間の両親のもとで15年育てられ、高校に入学することに。
そこでチャーリーは、頭脳明晰だが「陰キャ」と揶揄されるルーシーと出会う。
「テロ」「炎上」「差別」……ヒトが抱える問題に、「ヒト以外」のチャーリーが、ルーシーとともに向き合うヒューマン&ノン・ヒューマンドラマ。 

【Amazon URL】

https://www.amazon.co.jp/dp/4065213983

 

投稿者プロフィール

『社長の履歴書』編集部
『社長の履歴書』編集部
新入社員を含めたフレッシュなメンバーを中心に、出版サポートの傍らインタビューを行っております!

就活生に近い目線を持ちつつ様々な業種の方との交流を活かし、「社長に聞きたい」ポイントを深掘りしていきます。

代表者様のキャリアを通して、組織の魅力が伝わる記事を発信していけるよう、これからも一生懸命運営してまいります!