
今回はKYCコンサルティング株式会社代表取締役社長、飛内尚正氏にお話を伺ってきました。
「社長の履歴書」だけの特別なインタビューです。
ぜひご覧ください!
| 会社名称 | KYCコンサルティング株式会社 |
| 代表者 | 飛内尚正(とびないなおまさ) |
| 設立 | 2018年10月 |
| 主な事業 | 企業向けリスクデータベースの提供 KYC/AMLに関するコンサルティング |
| 会社所在地 | 東京都千代田区平河町1-7-20 平河町辻田ビル2階 |
| 会社HP | https://www.kycc.co.jp/ |
| サービスサイト | https://riskanalyze.jp/ |
事業紹介をお願いします
当社の中核となる事業は、KYC(Know Your Customer)やAML(アンチ・マネー・ローンダリング)に関わるデータの提供です。
主力サービス「RiskAnalyze」は、企業のリスク管理とコンプライアンス強化を支援する、データベース型の反社・コンプライアンスチェックツールです。国立大学と共同で研究開発したAIを活用し、手動でのチェックと比べて2,000倍の処理速度で98%の工数削減を実現しています。
取引リスクの懸念がある企業・個人を抽出するだけでなく、「特殊犯罪」「暴力団」といった7つのカテゴリーへ自動で分類します。リスク情報のカテゴライズまで完了するため、社内判断の基準が明確になり、担当者による判断のばらつきを抑え効率化も実現します。現在ではSalesforceやSansanといった大手サービスとの連携も実現しています。
KYCコンサルティング株式会社ならではの強みについて教えてください
当社の独自性は、自社でリスク情報のみを集約したデータベースを保有している点にあります。国内の他社はデータベースを保有していないため、データベース型のリスクチェック会社としては日本で唯一の存在といえます。
データベースを自社で持つ意味は、単に検索が速くできるということだけではありません。情報の精査や更新を自社の基準で一貫して行えるため、品質を自分たちでコントロールできる点が大きな強みです。他社のデータを借りる形であれば、どうしてもその品質に依存することになりますから。
おかげさまで「ITreview Grid Award 2024 Fall」の反社チェックツール部門で最高位のLeaderを受賞し、「ASPICクラウドアワード2024」では経営改革貢献賞をいただきました。金融庁・日経新聞社主催のFintech SummitでもRegTech部門で6年連続ノミネートされています。
RiskAnalyzeについて詳しくはこちらからご覧いただけます。
ここからは飛内社長ご自身のことを教えてください。学生時代はどのようなことに打ち込まれましたか?
私は青森の出身でして、高校を卒業し、東京に出てきて中央大学に進学しました。田舎者ですから、東京はもう新鮮なことばかりで。
その中で4年間打ち込んだのが、中央大学で最も古いクラブ「辞達学会」です。1901年にできた弁論部で、中央大学の前身である英吉利法律学校の時代に創設されました。
創設者は私学出身者として初めて弁護士になった花井卓蔵先生という方で、非常に歴史のあるサークルなんです。早稲田の雄弁会、中央の辞達学会というのは、かつて竹下登総理や海部俊樹総理を輩出した母体としても知られていました。
弁論部に入った理由は、実は私が口下手だったからなんです。ただ、辞達学会は、いわゆる青年の主張のような弁論部ではありませんでした。中には弁護士や政治家を目指す者も多かったですが、単に弁論のテクニックを追求する場でもない。人格を高めながら、自らの思いをきちんと言語化して伝える、そういった趣旨の会なんです。
弁論部での経験で、今につながっていることはありますか?
物事を俯瞰して見る見方や、ある事象に対して論理的に組み立てて提言していく力は、非常に学んだと思っています。
加えて、言葉の難しさですね。100言っても1伝わればいいくらいのもので、言葉は一人歩きする。これは今でも常に意識していることです。
古代ローマ時代でもそうですが、一夜にして世の中がひっくり返るのは弁論がきっかけでした。そこには発する側の真心が必要だったのだと思います。
日々人と関わる中で、「口先のことはバレる」。だからこそ真心を持って接しなければいけない。これは社員や取引先の方々と接するうえでも、常に自分に言い聞かせていることです。
大学卒業後の進路について教えてください
大学卒業後は海上自衛隊に入隊しました。私の出身地はいわゆる軍港のある基地の町でして、父も弟も自衛隊でした。ですから、自衛隊に入ることは幼い頃から将来の選択肢の一つだったんです。基地の町で育った人間には割と多い感覚だと思います。
大学卒業時、私には選択肢が2つありました。地元に帰って地方銀行や県庁に入るか、東京や大阪で一般企業や公務員になるかです。地元の地方銀行から内定をいただいていましたが、その後に自衛隊にも合格しました。最後は「国防という目的に、自分の将来を賭けるに値する」と考えて、自衛隊を選んだんです。
幹部自衛官としての入隊だったので、入隊したばかりの若手でも部下が100人ほどできる立場になります。昔の海軍士官と同じ立場ですから、究極的には「死んできてくれ」と部下に言わなければいけない仕事です。自分の部下を危険な場所に送り出す重み。だからこそ、自分自身がしっかりしなければいけない、先頭に立たなければいけない。そういった姿勢は徹底的に叩き込まれましたね。
自衛隊を退官されたきっかけを教えてください
自衛隊の本質は抑止力です。毎日訓練をして練度を保つことで、他国に手を出させない状態をつくる。誰にも拳を握られることのない格闘家のようなものです。その目的は頭では十分に理解していました。ただ、毎日毎日訓練を重ねる中で、「自分たちが果たしている大きな目的」が、ベールの向こう側にあるようなぼんやりとした感覚があったんです。いわば「手応えが悪い」というやつですね。
それならば、もっと直接的に人を助けられる仕事、感謝される仕事に就けないか。そう考えて自衛隊を退官し、民間に移ることを決めました。
退官後はどのようなお仕事に就かれたのでしょうか?
エス・ピー・ネットワーク社に時給制で入社しました。きっかけは求人雑誌で見つけたことで、当時にしては時給が平均より高かったかもしれません。
エス・ピー・ネットワーク社は、企業の危機管理やリスクマネジメントを専門とする会社です。当時はまだ「リスクマネジメント」という言葉自体が世の中に浸透していませんでしたが、自衛隊の中では当時すでにリスクマネジメントや危機管理という考え方がごく当たり前のものとして存在していたので、私は自然と関心を持っていたように思います。
今でこそ社歴が四半世紀を超える会社ですが、私が入った頃はまだ創業間もない頃で、ほぼ創業メンバー的な位置付けでした。
エス・ピー・ネットワーク社の在籍中に印象に残っている経験や、ご担当業務について教えてください
20年以上在籍した中で、大きく分けて2つの業務に携わりました。1つは実務対応の部分です。企業で事件や不祥事が起こった際に、対策本部や第三者委員会、コンプライアンス委員会を立ち上げ、火消しに回る仕事ですね。いわゆる被害の極小化という仕事です。もう1つは、不祥事や事件・事故が起きないよう、体制そのものを整えていくコンサルティングの仕事です。この両面を経験できたことは、今の事業の土台になっています。
その中でリスクマネジメントの本質を思い知らされたのが、ある上場会社で起きた製品偽装の事件です。その会社にはたくさんの事業部があったのですが、偽装を起こしたのは売上全体のわずか5%しか占めない小さな事業部でした。それにもかかわらず、会社全体の屋台骨が揺るがされたんです。
代表取締役の交代、売上の急落、膨大な対策費用。このとき痛感したのは、リスクマネジメントは売上や事業の重要性とはまったく関係のない論理で動くということです。
なぜ起業を決断されたのでしょうか?
もともと起業志向があったわけではありません。当時、私は52歳で、前職では執行役員を務めていましたが、いつかベンチャーを立ち上げたいなどと考えていたわけでもないんです。
ただ、その頃はフィンテックやブロックチェーンが隆盛を極めつつあった時期でした。ネット上で本人確認ができて口座開設が瞬時に行える、そういった新しい金融サービスが次々と生まれていたんです。
ネット上で取引が瞬時に完結する時代になるなら、取引相手の属性確認、つまり「この相手と取引して良いのか」を見極めるデータが、事業者側に絶対に必要になります。
ところが当時、前職では伝統的な手法を大切にし、人の目と手作業による極めて精緻なデータ提供を行っていました。その正確性は大きな強みでしたが、私は、今後加速するデジタル金融の世界には、よりリアルタイム性に特化したシステムが必要になると考えたんです。
組織として長年培ってきた手法を守るという経営判断も一つの正解でしたが、私自身は「新しい時代のニーズに特化した仕組みを、ゼロから構築してみたい」という想いが抑えきれなくなりました。そうして、前職とは異なるアプローチで市場に貢献するため、完全に独立した形での起業を決断したんです。
52歳での起業に、ご家族の反応や当時のお気持ちはいかがでしたか?
家族からの反対は特にありませんでした。とはいえ、日本は50歳を過ぎてからの再チャレンジに対して、環境的に厳しい国だと思います。失敗したときの経済的負担も大きいですから、ハードルが高い。
ただ、創業間もない頃に海外のMBAで有名な学校の卒業生の集まりでピッチする機会があって、そこで「日本にもシニアアントレプレナーがいることを見せてほしい」と言われたんです。「そうか、自分はシニアなんだな」と初めて自覚したと同時に、海外から見ても日本にはシニア起業家が少ないのだな、と実感しました。
シニアには豊かな経験と知識があり、失敗が許されないからこその慎重さもある。これは実は経営に非常に向いているんです。ですから私がこの会社を社員と一緒に大きくしていくことは、シニアや若い方が将来の選択肢を考えるときの、一つの良い例になればと思っています。
そして不思議なことに、失敗する気がしなかったんです。今考えるとずいぶん怖いことですが、当時は恐れのようなものがあまりなかった。そこは勢いでやった部分が大きいかもしれませんが、事業に対する確信のようなものもあったのかもしれません。
経営者としてこれまでどのような苦労があり、どう乗り越えてこられましたか?
やはり一番苦労したのは資金です。これは皆さん共通だと思います。「ランウェイ(資金の残存期間)あと何カ月」といった状況を、何度か経験しました。それでも支払いが滞ったり、給与の支払いが遅れたりしたことは一度もありません。そのたびに不思議と、誰かや何かの会社に助けられてきた感覚があるんです。
私自身も売れるものは売りました。車を売ったこともありましたし、自分の給料を受け取らない月もありました。ただ、それが当然だと思っていたので、違和感はありませんでしたね。
ハードな局面を越えるたびに思うのは、人とのご縁の大切さです。もちろんロジカルな部分や合理性は経営にとって欠かせません。ですが、合理性を抜きにして人とつながる、仕事をするということもあっていいと思っています。いわゆる「損して得取れ」のような姿勢は、経営として十分あり得るんじゃないでしょうか。
当時は無我夢中でしたから、損得はあまり考えずに取り組んでいました。今振り返ると損をしていたこともありましたが、それ以上に一生懸命人と接することで、向こうから良いことが返ってくる感覚があるんです。
日本のKYC領域にはどのような課題があるとお考えですか?
最大の課題は「KYC監査の強制力のなさと法の整備不足」だと考えています。
金融機関や特定事業者にはKYCの実施が法的に義務付けられていますが、中小企業や非金融業の事業者には監査の強制力がありません。規制があっても罰則が弱いため、十分に実施されないケースも見られます。
また、KYCは顧客の身元確認や取引背景調査を通じて個人情報を集めますが、個人情報保護法第21条では顧客の同意なしに情報を第三者に提供することが禁止されています。KYCでの情報共有には同意が必要なため、効果的な実施が難しい面があるんです。
だからこそ、私たちは「世界水準のKYCの社会インフラを構築する」をビジョンに掲げ、国内外の規制に準拠した機能の提供とKYCプロセスの効率化を進めています。
企業理念「Nothing is Value」に込めた想いを教えてください
「Nothing is Value」というのは、「ないことに価値がある」という意味です。
当社のデータベースで取引先や人物を検索したときに、リスク情報がヒットする確率は実は1%もありません。99%は、何もない普通の方々です。もしこれが50%もあれば、日本は無法地帯ですよね。法治国家で1%以下というのは、むしろ誇るべき話なんです。
私たちはどうしても「ヒットすること」に目がいきがちですが、本当に価値があるのは「ヒットしなかった」という事実のほうです。そして99%の方々こそが、この社会を支えている。その方々にもっと光を当てたい、というのが理念に込めた想いです。
具体的には、どのような社会を目指しているのでしょうか?
わかりやすい例が、自動車保険の任意保険です。事故を起こさなければ翌年の保険料が安くなる仕組みですよね。
でも、これは「たまたま事故を起こさなかった乱暴な運転手」と「交通法規を守って他者に優しい運転を続けている運転手」が、同じように保険料が下がる仕組みなんです。これは極めて不公平だと私は思っています。
交通法規を遵守して安全運転をしている方にこそ、より大きな社会的受益を得てもらうべきです。そういった差別化を、データの力で作っていきたい。
足元では悪い人を炙り出すことにフォーカスしていますが、本来目指しているのは99%の方々に、より平等感のある社会的受益を届けることなんです。
今後の展望やサービスの展開について教えてください
「KYCの社会インフラ化」を一つの目的として掲げています。イメージとしては、パソコンにおける「インテル入ってる」のような存在です。表には荒々しく出ないけれども、社会の安全や安心、健全な市場を当然のごとく裏で支える。そんな企業になりたいと思っています。
取引相手を事前にチェックすることは、日本ではまだコストや手間の面で後回しにされがちです。これを「当たり前のこと」として世の中に浸透させていきたい。というより、そもそも取引前のチェックが当たり前の世の中を作っていきたいんです。
サービス面では、現在のリスク情報にとどまらず、さまざまな情報をかけ合わせることで新しい価値を生み出せると考えています。いわゆる「クリエーション」ですね。すでに実験的な取り組みも始めていて、将来的には「データの総合商社」への成長を目指しています。
加えて、海外のKYC企業とのコラボレーションや海外展開も視野に入れており、日本を代表するレグテック企業としての地位を確立していきたいと考えています。
社員の方へ伝えたいメッセージがあるそうですね
読者の方へではなく、恐縮なのですが、社員へこの場を借りてお礼を伝えたいです。この1年半ほどで、会社のメンバーがすごく増えました。みんなに心から感謝しています。
当社は正直、働きやすい会社ではないと思うんです。何をやっているかわかりにくい会社ですし、経験者もほとんどいない領域ですから。そんな会社に未経験で飛び込んで、一生懸命働いてくれています。しかも人数が増えていく中でも、一人ひとりの頑張りが少しも落ちないんです。
私が感動しているのは「人が増えた」という数字ではなく、その一人ひとりの姿勢です。なぜこんなにも頑張れるのか。私だったらできないなと思うことを社員がやってくれていて、その驚きと感動がここ1年半ほど、ずっと私の中にあります。
一方で、こういう気持ちを私が感じなくなったらダメだろうなとも思っています。社員への感謝と驚きをこれからもずっと持ち続けたいです。
余談ですが、どうも社員の間では「社長は圧があって少し怖い」「髪を伸ばしてほしい」と言われているらしく、普段はなかなか直接感謝を伝える機会がありません(笑)。ですので、社員のみんなへこの記事をお借りしてあらためてお礼を申し上げます。いつもありがとうございます。
最後に、おすすめの本を教えてください
3冊あります。
1冊目は三島由紀夫さんの『金閣寺』です。自然の描写や登場人物の感情の描写など三島由紀夫さんは本当に表現の魔術師だなと思う一冊です。
2冊目は戸部良一さん、他5名共著の『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』です。多くの著名人が座右の書にしている名著ですが、リスクマネジメント的に見ると「組織」とその中にいる「人」がそれぞれの思惑と論理で良と悪の両方へ行ってしまうことを考えさせられます。「組織」が「人」へ与える影響、逆に「人」が「組織」へ与える影響の素晴らしさと恐ろしさを考察することができます。
そして3冊目が、宮本輝さんの『錦繍(きんしゅう)』です。時を超えて人の感情や思いがどう変化し、最終的にどう良化していくのかを描いた一冊で、人間はあくまで良い結末を希求するのかなと希望を抱かせる本でした。
私は読書が好きなのですが、学生時代に読んだ本を30代、40代、そして今読み返すと、同じ本でも受け取り方がまったく違います。古典だけでなく当時のビジネス書もそうで、この年齢になって改めて気づくことが多いですね。
『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』戸部 良一(著)、寺本 義也(著)、鎌田 伸一(著)、杉之尾 孝生(著)、村井 友秀(著)、野中 郁次郎(著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4122075939
『錦繍(きんしゅう)』宮本 輝(著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4101307024
投稿者プロフィール

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企業の「発信したい」と読者の「知りたい」を繋ぐ記事を、ビジネス書の編集者が作成しています。
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