
今回は株式会社キャンプ代表、榊原美歩氏にお話を伺ってきました。
「社長の履歴書」だけの特別なインタビューです。
ぜひご覧ください!
| 会社名称 | 株式会社キャンプ |
| 代表者 | 榊原 美歩 |
| 設立 | 2023年8月 |
| 主な事業 | ブラレスウェア専門ブランド「no-bu」の企画・開発・販売 |
| 会社所在地 | 東京都渋谷区千駄ヶ谷5-12-16 益本ビル2階 |
| 会社HP | https://no-bu.shop/ |
事業紹介をお願いします
株式会社キャンプでは、「no-bu(ノーブ)」というブランドで「ブラレスウェア」と呼ぶ新しいジャンルの服の企画・開発・販売をしています。
ブラレスウェアとは、ブラジャーを着用しなくても1枚で着られる服のことです。素肌にそのまま着ても、バストトップが目立たないよう、内側がウレタン製のパッドが入った特殊な縫製になっています。見た目は普通のTシャツやカットソーですが、胸下にゴムがなく締め付けゼロ。そのまま外に出られるのが一番のベネフィットだと思っています。
ブラトップとの一番の違いは、胸の下のゴムがない点です。ブラジャーやブラトップは、胸を支えつつバストトップも目立たなくするという2つの役割を担っていますが、ブラレスウェアはバストトップのカバーという1点のみに機能を絞っています。あえて「支える」機能を外したところが既存製品との最大の違いです。もう一つ大きな違いがあって、ブラレスウェアは下着ではなく洋服なんです。一つのウェアのジャンルとして提案しているところがほかにはない特徴です。
よく誤解されるんですが、「ブラジャーをしないで生活しよう」という考えを推進したいわけではありません。ブラジャー・ブラトップに続く第3の選択肢として、その日の気分や体調に合わせて自分にちょうどいいものを選べる日常を増やしていきたいと思っています。
no-bu公式サイト:https://no-bu.shop
ここからは榊原社長ご自身のことをお聞かせください。子どもの頃はどんな子どもでしたか?
子どもの頃は工作が大好きで、トンカチを使って自分でおもちゃを作ったり、新しい遊び方を考えてクラスで流行らせたりするのが好きな子どもでした。父も祖父も研究者で、研究室によく連れていってもらい、白衣を着て実験している姿を見ていたので、「発明家になりたい」と漠然と思っていました。今考えると研究者と発明家は全く別の職業ですが、当時は博士のイメージと重ねて、そんな夢を小学生の頃は抱いていましたね。
学生時代で印象に残っている出来事や打ち込んだことを教えてください
中学2年生の文化祭で友人2人と一緒に焼き芋屋を出店したことが印象に残っています。
通っていた中高一貫校は文化祭の来場者も多く、文化祭は歩きながら楽しむイベントなので立ったまま食べられるものと相性が良いなと思っていて「寒い時期に焼き芋を売ったら絶対に売れる」と考えていたんです。友人の実家が農家だったため原価をほぼかけずに芋を調達できる環境だったことと、小学生のとき焼き芋大会で美味しく焼けるコツを身につけていたことなど、好条件が重なっていたこともあり、出店に踏み切りました。焼き芋、ものすごく売れたんですよ。当時はビジネスを意識していたわけではありませんでしたが、売上金でクラスの仲が良い友人と焼肉に行ったくらいの大成功でした(笑)。
自分のアイデアで商品が売れる喜びと、目の前で喜んでもらえる嬉しさが結びついた、あの感覚が今でも忘れられません。作って、売って、喜んでもらうというこの流れが、今の事業の原体験になっていると感じています。
大学時代は編集プロダクションでのアルバイトにかなり打ち込みました。雑誌の編集だけでなくDVD制作やイベント運営も手がける会社で、社員もアルバイトも関係なく常に現場が動いているような活気のある環境でした。大学の研究室の先輩から引き継いだ縁でそこで働くことになったのですが、いち早く現場で社会人として働く経験ができたことは、自分にとって貴重な体験でした。何かを作って世の中に出す仕事の面白さや、チームで動く熱量のようなものは、今の自分に確実につながっていると思います。
大学卒業後のキャリアを教えてください
大学時代から、いつか自分で事業をやってみたいという気持ちがありました。ただ、経営者になりたいというよりも、会社に所属しなくても働けるような、個人に紐づく仕事がしたかったんです。今でいう、組織に属さず自分の力で仕事をするような働き方に憧れていたんだと思います。
まずは経営者の近くで働きたいと考え、インターン先から紹介してもらったITスタートアップに就職しました。裁量権が大きく幅広い業務を自分で担う環境で多くを学びました。
その後、新規事業の立ち上げを支援するコンサル会社に転職しました。クライアントの支援をする立場であれば、複数の新規事業の立ち上げやブランディング、成長の過程を並行して見ることができると考えてのことです。転職後は、まだ企業の形になっていない構想段階のものや新規事業のマーケティング調査、ブランドコンセプトの設計からプロモーションまで、クライアントと伴走しながらものを作るプロジェクトに多く携わりました。
そこに3年ほど在籍した後、30歳を前に独立しました。前職の会社からも仕事をもらいながら、新規事業の支援や商品企画の仕事を続けていくというスタートでした。
現在の事業を立ち上げたきっかけを教えてください
独立して数年は、前職のつながりから業務委託として仕事をするスタイルが続いていました。いずれは自分指名で仕事が入ってくるような形にしたいと考えていた頃、「東京ビジネスデザインアワード」の存在を知りました。グッドデザイン賞の団体が主催する、東京の企業が持つ独自技術と新しいアイデアをマッチングさせて事業化を目指すアワードです。
そこに応募したのが、葛飾区にある町工場が持つ布にこするだけで貼れるという接着技術を活かした提案でした。アイロン式の熱転写によるプリントが一般的な中、その会社はこするだけで布地につくという独自の技術を保有していました。これを一般消費者向けにブランド化するというアイデアが評価され、2017年の最優秀賞をいただきました。技術という核を見つけ、そこからブランド化して発売に至るまでの立ち上げを一緒に経験させていただいたことは、その後の自分に大きく影響しています。
この受賞をきっかけに案件の幅が広がり、ニッチトップと呼ばれるような企業の創業者と出会う機会が増えました。世間には知られていないけれど独自技術で高いシェアを持つ企業も多く、そうした方々と関わる中で、「いつか自分のプロダクトを世に出したい」という気持ちが次第に明確になっていきました。。
そして決定打になったのが、37歳で母を亡くしたことです。独立のきっかけの一つが、乳がんが見つかった母を東京に呼び寄せて治療することになったからで、時間の融通が利く働き方を選んだのも、そうした状況が大きく影響していました。7年間の闘病の末に自宅で看取った際、母が最後に残した「悔いの残らない人生がいいわね」という言葉が今も深く心に残っています。その言葉を聞いた瞬間、仕事でやりたいと思いながら置き去りにしてきたことが頭をよぎりました。自社の事業をやりたい、自分で世に出すプロダクトを作りたいという思いが、一気に強くなりました。
ブラレスウェアというアイデアはどこから生まれたのですか?
母を亡くしてから、共同創業者の鈴木とフィンランドへ旅行に行きました。もともとサウナが好きだったということもありますが、事業のアイデアを見つけたいという気持ちも重なっていました。
現地で印象に残ったのが、街の中でノーブラの女性たちが自然に歩いている光景でした。最初は驚きましたが、嫌らしさがまったくなく、自由でリラックスした雰囲気がとても清々しくいいなと素直に感じました。
その時は印象に残ったというだけでその光景が事業のアイデアになるとは思っていませんでした。でも、帰国後、銭湯に行ったときにふと「なんでまた私はブラジャーをつけるんだろう?」と疑問に思いました。せっかくリラックスしていたのに、また下着をつけ直すことに、少し違和感を覚えたんです。気になって周囲の女性にアンケートを取ってみると、7割近くの方がブラジャーに対して不快感を一度は感じたことがあると回答していました。リラックスしたいときはノーブラでいたいけれど、そのまま外出はしにくい。その状況を解決できる選択肢があればという思いから、自分自身が欲しいものとして動き始めたのがno-buのスタートです。
ただ、すぐに事業化へ踏み切ったわけではありません。アンケートをして事業化のアイデアまで固まったものの、それまでの仕事を差し置いて全力で取り組むにはまだハードルがあり、まずはクラウドファンディングで需要を確かめることにしました。事業のアイデアを見つけてから実際に法人として会社を起こすまでには、1年ほどの時間がありました。
実際にクラウドファンディングで出してみると、思った以上の反応がありました。お客様からアンケートを通じてさまざまな意見をいただいたことが大きくて。課題だったり、「こういうものが欲しい」という実際の声がなかったら、事業化するほど踏み込む決め手にはなっていなかったと思います。
クラウドファンディングの成功を受けて、どのようなことを感じましたか?
課題に対して解決策を提示するプロダクトは、その課題感があるからこそ人が注目し、期待してくださる。だからこそ、ちゃんとした製品を届けることへの責任をとても強く感じています。
商売である以上、利益も取っていかなければなりませんし、納期やスケジュール管理などさまざまなことをやりくりしながら進めていく大変さもあります。ただ、責任というのはそうした製品を作ることだけでなく、それを届けて広めていくことにも同様に伴うものだと思っています。
私はもともと0→1でものを作ることが好きで、それをやりたくて起業しました。経営者という役割そのものに強い志向があったわけではありませんが、自分のつくったものを多くの人に届け、持続的に広げていくためには、仕組みやチームをつくる必要がある。そのための経営こそが重要だと、今は考えています。
創業してから一番苦労したことを教えてください
まだ創業から日が浅く、大きな危機や修羅場というものは正直ないというのが現状で、それはこれからなのだろうと鈴木と2人でよく話しています。ただ、2人ともアパレル出身ではないため、最初は何から始めればいいのかわからない状態でのスタートでした。商品開発の苦労は今も続いており、まだ正解が見えていない部分があります。
もう一つ、常に難しさを感じているのがブラレスウェアの認知の問題です。ブラジャーやブラトップが当たり前になっている社会の中で、今まで存在しなかった第3の選択肢をどう当たり前にしていくか。これは世の中の常識をちょっとずつ変えていく挑戦でもあります。商品を作るだけでなく社会の空気感も動かしていく必要があると感じているからこそ、製品開発だけで終わらず自分の言葉で発信し続けることを大切にしています。
今後の展望を教えてください
これからやっていきたいのは、社会の中に埋もれている違和感を見過ごさず、それをプロダクトやサービスという形で解決策として社会に提示していくことです。ブラレスウェアはその第1弾商品だと位置づけています。まず自分自身が感じた違和感を形にしたのが最初の一歩で、これからは自分の感覚だけでなく、女性の暮らしの中にあるさまざまな課題や違和感にも目を向けながら、事業を広げていきたいと考えています。
なぜ女性の課題にこだわるかというと、社会人として働いてきた中で、女性の起業家があまりにも少ないとずっと感じてきたからです。これは裏を返せば、女性の生活にある課題を解像度高く見つめて事業で解決しようとするプレイヤー自体が少ないということでもある。そこは社会課題であると同時に、ビジネスとしてのブルーオーシャンでもあるなと思っていて、その部分をしっかりと掘り下げて、社会的な価値があるものを作っていきたいですね。
その一つとして取り組み始めているのが、ブラレスウェアと防災のかけ合わせです。きっかけはお客様の声でした。クラウドファンディングのコメントの中に「防災用品としても購入しました」と複数枚買ってくださった方がいて、そこから調査を始めました。共同創業者の鈴木が福島県いわき市の出身で、東日本大震災の際に避難所生活を経験した人が周りに何人もいたことから直接話を聞いていくと、それまで知らなかった生活の実態が多くあることがわかりました。ご縁があった福島県矢吹町の住民の方々とのディスカッションを重ねるなど、ブラレスウェアの活用だけでなく、女性の防災を広く考える取り組みとしても続けていきたいと考えています。
商品面では、一般医療機器としてのリカバリーウェアという新しい領域にもブラレスウェアを展開し、商品の幅を広げていく予定です。
最後に、おすすめの一冊を教えてください
『これまでの経済で無視されてきた数々のアイデアの話 イノベーションとジェンダー』です。実はこのパートが一番話したかったというくらい、衝撃を受けた一冊です。
この本にはさまざまな発明品の誕生にまつわる話が収められていますが、中でも印象に残ったのがスーツケースのキャスターのエピソードです。この本によると、現在私たちが当たり前に使っているゴロゴロと転がすスーツケースが発明されたのは1973年のこと。車輪は5,000年前に発明されており、スーツケース自体も存在していたにもかかわらず、なぜ2つが組み合わさるまでにこれほど時間がかかったのか。その理由は技術的な問題ではなく、「引きずって歩くのはかっこ悪い」という社会通念があったからだと書かれていました。その背景にあったのは、男性がマッチョに荷物を持てないことへの心理的抵抗感があり、ジェンダー観や社会通念が人の意思決定を縛っていたということなんです。
この本を読んで、イノベーションとは大きなテクノロジーだけではないと強く感じました。日々の暮らしの中にある「ちょっと不便だな」「ちょっと我慢だな」という感覚を別の視点で見直し、常識や認識そのものを動かしていくことがイノベーションなんだ、と。ブラレスウェアに取り組む理由がこの本の中に凝縮されているような気がして、ぜひ多くの方に読んでいただきたいと思っています。
『これまでの経済で無視されてきた数々のアイデアの話 イノベーションとジェンダー』カトリーン・キラス゠マルサル(著)、山本 真麻(翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4309231373
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企業の「発信したい」と読者の「知りたい」を繋ぐ記事を、ビジネス書の編集者が作成しています。
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