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啓芳堂製薬株式会社代表取締役 中島 健雄氏

 

 

今回は啓芳堂製薬株式会社代表取締役、中島 健雄氏にお話を伺ってきました。

「社長の履歴書」だけの特別なインタビューです。

ぜひご覧ください!

 

 

 

会社名称 啓芳堂製薬株式会社
代表者 中島 健雄
設立 1935年3月3日
主な事業 製薬会社(医薬品製造業)
社員数 8名(取材時)
会社所在地 東京都文京区千駄木1丁目22番3号
会社HP https://www.keihodo.jp/

 

 

 

 

 

現在の事業内容について教えてください

製薬会社を経営しており、頭髪以外の体毛用発毛促進剤ミクロゲン・パスタを製造しています。この薬は、まゆ毛、ヒゲ、胸毛、アンダーヘアなど頭髪、マツ毛以外の部位に効果があるもので、二種類の男性ホルモンを有効成分とする第1類医薬品として厚生労働省から製造販売を認可されているものです。発売以来約70年、ドラッグストアやインターネット通販で定番品として取扱われている商品です。

約70年間にわたりほとんど同じデザインのパッケージを使ってきましたが、2023年9月に製品リニューアルを行い、パッケージデザインを一新、内容量を変更します。年配の方には認知があるブランドですが、若い方に訴求できるようデザインを今風に変え、インバウンド需要を考えて英語表記を入れる予定です。

 

【新商品】 ミクロゲン・パスタ 8g、28g

 

 

【旧商品】 ミクロゲン・パスタ 6g、12g、30g

 

 

学生時代に打ち込んだことはありますか?

大学時代にパソコンが普及し始め、ゲームのプログラミングをやったり、プログラミングのアルバイトをしたりしていました。コンピュータはそのころから大好きで、興味を持っていました。学生時代から色々なものに興味がありましたね。今は自転車や車などが好きです。

 

新卒はどちらに就職されたのでしょうか?

株式会社山種産業(現:株式会社ヤマタネ)に就職しました。物流と食品流通の会社ですが、情報部門を新しく組織し強化していくと聞き、コンピュータに関わる仕事をやりたいと思い入社しました。入社当初は物流システムの開発を手掛けていましたが、社内ベンチャー制度に応募しインターネット事業を企画、事業化しました。丁度、インターネットが爆発的に普及し始めたころで、動画配信や通信実験などの先進的なプログラミングの仕事をしていました。15年ほどヤマタネに在籍しましたが、さらにインターネットの仕事を追求してみたくて、ソフトバンク・ブロードメディア株式会社(現:ブロードメディア株式会社)に転職しました。

ソフトバンクに入社してからは、幾つかの新規事業の立ち上げを経験しました。自分達で資金面、人事、技術を担当して、何回も繰り返し失敗や成功を重ねる経験ができました。その後はソフトバンクの渉外という部署に異動し、業界団体の事務局業務にあたり、シンポジウムや研究会の企画、運営をしていました。このころの仕事を通じて、多くの起業家や有識者に巡り合えたことも私にとって大きな財産になっています。

 

通信系の仕事から啓芳堂製薬株式会社でお仕事をされる経緯について教えてください

啓芳堂製薬は私の祖父が創業した会社です。父や兄が社長業を引き継いできたのですが、数十年の間に薬の製造に関する環境変化が色々と発生し、事業の見直しや改革が必要になりました。これに加え「自分でも事業をやってみたい」という思いもあり、啓芳堂製薬を引き継ぐことにしました。

 

家業の見直し・改革とはどのようなことですか?また別業界への転職は大変でしたか?

GMPという厚生労働省の医薬品製造認可基準に準拠するために、製造手順の見直しや記録の整備など多くの課題がありました。また、ちょうど新型コロナウイルスの流行と重なり売上が落ちている時期でした。当社の製品を買うお客様の約20%がインバウンド顧客だったので、かなりの打撃がありました。インバウンド売上の減少をカバーするために、新たな顧客を開拓し価格の改定を行う必要があります。

転職についてですが、IT業界に長らくいたため薬の業界の慣習やスピード感に違和感を持ちました。なかなか製薬会社のモードに切り替わらなかったので、啓芳堂製薬に入社するタイミングで明治大学大学院に通いながら、並行してコワーキングスペースの会社を起業しました。同時に複数の事業を手掛けていましたが、新たな視点を持つことができよかったと思います。コロナ禍というタイミングも結果的にこの様な活動のベースになってよかったと思います。

 

1番苦労されたことは何でしょうか?

大変だったことは、厚生労働省から製造更新認可を受けるための準備です。私は薬事や薬学の知識はありませんでしたが、前職でソフトウエア開発管理や、通信事業の許認可対応の経験がありました。薬の製造や許認可にもこれらが共通する要素があるので、この経験は多少なりとも役立ちました。薬学、技術的な事項は担当薬剤師と相談しながら手順書や記録の整備を進めました。約70年にわたり同じ製法でミクロゲン・パスタを製造してきましたが、このような近代的な管理手法に対応するための従業員教育、意識改革には苦労しました。

 

会社を変えるマネジメントのためにされていたことは何ですか?

この様な手順書の作成、記録作業について、スタッフは「長年同じ仕事をして製造しているのに何でいまさら手順書化しなきゃいけないのか。何で細かく記録をつけないといけないのか」と思っていたでしょう。製造認可や品質管理の打合せを何度も行い、手順書や記録の意味とその活用を説明しスタッフに理解してもらいました。手順書や記録があるから、製造トラブルに対応ができ顧客からのクレームにも調査ができます。また、作業工程の見直しにも役立ち、今回の様な製品リニューアルもスムーズに進められます。製造許可更新の対応のために行ってきた手順化ですが、二次的にマネジメント体制にも変化をもたらすことが出来ました。大手企業では当たり前のことですが、弊社の様なレガシーな中小企業にはこのような環境変化への対応と改革が必要と思います。

 

展望はありますか?

ミクロゲン・パスタは、昔テレビCMも放映して、長らく新聞や雑誌などに広告出稿していました。この影響か年配の方には一定の認知を得ているブランドですが、今後は30代から50代の方に訴求してみようと思っています。今回のパッケージは旧来の定着したブランドロゴを残しつつ、若い方にも受け入れやすいデザインにしました。今後、広告についてはInstagram、YouTubeなどのネットメディアを使う企画を立てています。まゆ毛を濃くしたい方、ヒゲを生やしたい方、いろいろな体毛の悩みをお持ちの方にアプローチしていきたいです。私はIT業界にいたので、ネットメディアを使い、新しいライフスタイルを訴求するマーティングの再構築ができると考えています。

また、新型コロナウイルスでリモートワークが一般的になりました。私は埼玉でコワーキングスペースの事業を行っているので東京と埼玉の2拠点生活をしています。東京では啓芳堂製薬の他に新卒で入社したヤマタネの執行役員として復帰しDXにも取り組んでいます。この様な働き方もリモートワークやテレワークの時代だからこそ可能になりました。日本ワーケーション協会の活動もしているのですが、個人としてはワーケーションのような新しい働き方についても提案してゆきたいです。

 

他の経営者の方におすすめの本はありますか?

クレイトン・クリステンセン著書の『イノベーションのジレンマ』です。優良企業は、異なる市場に異なる技術やビジネスモデルで参入した新興企業(イノベーター)の台頭によりジレンマに陥るという学説です。例えばユニクロは、従来の高級アパレル企業の発想が及ばないビジネスモデルで参入し、いつの間にファストファッションは高級アパレル企業の顧客層を凌駕しました。コロナ禍や国際秩序の変化の中で、この様なイノベーションの事例が多くみられます。私は大学院で20年前の「ソフトバンクのブロードバンド革命」を研究していましたが、本書は大変参考になりました。変化の時代をとらえ、イノベーションのメカニズムを理解できる一冊だと思います。

【AmazonURL】

https://www.amazon.co.jp/dp/4798100234/

 

 

投稿者プロフィール

『社長の履歴書』編集部
『社長の履歴書』編集部
新入社員を含めたフレッシュなメンバーを中心に、出版サポートの傍らインタビューを行っております!

就活生に近い目線を持ちつつ様々な業種の方との交流を活かし、「社長に聞きたい」ポイントを深掘りしていきます。

代表者様のキャリアを通して、組織の魅力が伝わる記事を発信していけるよう、これからも一生懸命運営してまいります!