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株式会社KAZAANA代表取締役 樫村健太郎氏

今回は、株式会社KAZAANA代表取締役、樫村健太郎氏のお話を伺ってきました。

「社長の履歴書」だけの特別なインタビューです。ぜひご覧ください!

株式会社KAZAANA 会社概要

会社名称 株式会社KAZAANA
代表者 樫村 健太郎(かしむら けんたろう)
設立 2017年09月04日
主な事業 ・ECプラットフォーム「BECOS」の運営(7言語)
https://www.thebecos.com/)・オウンドメディア「BECOS Journal」の運営(7言語)
https://journal.thebecos.com/)・海外向けクラウドファンディング支援事業
https://kazaana.co.jp/crowdfunding/

・STRRET KIMONO「VEDUTA」の運営
https://www.veduta.jp/

・商品の企画・開発
・ウェブサイト・動画の制作及びコンサルティング
・飲食事業「東京唐揚げランド」
・アーティストプロデュース
・歴史的建造物の再生プロデュース

社員数 20名(取材時・業務委託含む)
会社所在地 〒100-0004 東京都千代田区大手町2-6-1
朝日生命大手町ビル3F
会社HP https://kazaana.co.jp/

 

まずは株式会社KAZAANAを立ち上げるまでの経緯を教えてください

2009年4月に、株式会社ノバレーゼというウェディング事業を生業とする会社に新卒で入社しました。そこでは、新卒の採用、ウェディングプランナー、レストランのサービス、そして新店舗の開発など、いろんな部署を経験しました。

当時、株式会社ノバレーゼは、若くてエネルギッシュなベンチャー企業でした。会社というのはどういうふうに大きくなっていくのか、逆にどういうことをしてはいけないのか、そういう成功体験や失敗体験を血肉にすることで、将来の起業に役立つのではないかと思ったのが入社した主な理由でした。

店舗開発の部署では、日本だけではなくて、中国や韓国でも物件を立ち上げました。そして特に力を入れていたのは、歴史的に貴重な物件を再生リノベーションして生れ変わらせるという事業でした。もともと私自身、歴史、庭、建物、お城などが好きでしたし、何百年という歴史を経てきた建物を後世につなげていく事業に非常に共感を持ちました。

そういった中で、地方にはさまざまな食や工芸品があると知りました。また、内装設備・電気工事・水道設備・インテリアに関わる人や、そしてレストランで使うお皿やグラスや食材を地元の工芸品や食材の中から探す過程でも、さまざまな職人さんたちにも出会うことができました。ですが、ITの勉強がしたかったので、丸5年で退職することにしました。

その後、ヴァンテージマネジメント株式会社というITコンサルタントの会社に転職しました。そこでは、主にホームページを作ったり、広告を運用するためのサポートをしたりしていました。そこには3年間所属していました。

8年間サラリーマンをした後、30歳のときに「株式会社KAZAANA」(http://kazaana.co.jp/)という会社を立ち上げました。

 

起業を決意したきっかけは何ですか?

学生の頃から将来は起業したい、と考えていました。また、株式会社ノバレーゼの創業社長の浅田さんは、30歳の時に独立したんです。そういう背中を見ていたので、僕も30歳になったら独立すると決めていました。もちろんリスクについても考えたんですけども、決意どおり30歳で実行したという形です。

 

御社の事業内容について教えてください

「BECOS」(https://www.thebecos.com/)という、伝統工芸品やメイドインジャパン商品を日本・世界で販売するECプラットフォーム事業をメインにやっています。現在、日本語・英語・繁体字・韓国語・ベトナム語・タイ語・イタリア語で運営しています。今、簡体字とロシア語の準備も進めています。

工芸品を選んだ理由は、株式会社ノバレーゼ時代に、全国のいろいろな職人さんたちと出会って、業界の良い面も悪い面も知っていたというのが大きいです。

KAZAANAの名前の由来は、そういった古い業界や慣習を破壊して、古い考え方にとらわれずに新しいことにチャレンジするという狙いから来ています。

職人さんの主な仕事は作ることです。ですが、販売や発信、ブランディングしてくれる人がいないので、百貨店や小売店に置いてもらうというのが今までの古い慣習でした。そうすると、職人さんの名前というのは基本的に表に出ないんです。これは大きな問題だと感じていました。

これからの時代、職人さんたちの名前やメーカーさんの名前が表に出て直接発信していかないと、伝統工芸の業界はますます廃れていく一方ではないかと思ったんです。現にここ15年くらいで、伝統工芸産業は市場規模が半分になってしまいました。

それで、BECOSでは新しいチャレンジを始めました。BECOSのプラットフォームでは、職人さんたちが自らの顔写真、名前を出して作品を売ることができます。それが知名度アップや職人さんたち自身の社会的な地位を上げていくことにもつながっています。また、職人さんのモチベーションを上げたり、責任感を向上したりすることにもつながっています。

また、BECOSは値引をしないというポリシーがあります。伝統工芸が廃れた理由の一つに、僕は値引があると思っているからです。値引がお客様の信用を失う原因になっていたんです。

例えば、催事やセールで、普段は100万円する着物が30万円で売っていることがあります。それをお客様が見たとき、今まで不当に利益を取られていたのではないかと、そこまでの値引をされてしまうと疑問に思ってしまうんです。

ですから、安く大量に売るのではなくて、小ロットでもいいので、付加価値を丁寧に一個一個伝えて売るというモデルにシフトしないといけないと思いました。

日本人は安くクオリティを上げて大量に作ることは非常に得意ですが、いかに価値を伝えていくか、その上できちんと利益をいただくかというブランディング力の部分が苦手なので、そこの強化は重要になってくると思います。

なのでBECOSでは、写真や動画の充実だったり、ブランドさんの商品の説明だったりに力を入れています。

 

「BECOS Journal」では、主にどのような記事を発信していますか?

「BECOS Journal」(https://journal.thebecos.com/)では、職人さんの取材のインタビューや商品の解説、ギフトシーンごとのお勧めのアイテムや工芸品、例えば「開店祝いにお勧めの工芸品〇選」という読み物を用意しています。BECOS Journalも現在、7言語で運営しています。

最初は、ヴァンテージマネジメントでの経験を活かし、リスティング広告やFacebook広告を使って工芸品を売ろうとしました。ただ、半年かけてかなりの広告費を投入したのですが、全く費用対効果が合いませんでした。工芸品に対して、そもそも広告手法が合っていなかったんです。それで始めたのが「BECOS Journal」という自社メディアです。

「工芸品を工芸品として売ってはいけない」と分かったんです。例えば、東京だったら江戸切子、佐賀だったら有田焼、京都だったら西陣織、石川県だったら輪島塗とか、実は全国には約243種類の伝統工芸品があります。しかし、一般的に伝統工芸品というと、お宝鑑定団のような骨董品、古くて高くてダサくて使い方が分からない、田舎のお土産屋に並んでいて、修学旅行生、おじいちゃん、おばあちゃんが買うもの、というイメージがついてしまっています。そのため「伝統工芸品を買おう!」というモチベーションがそもそも一般消費者にはない。それが売れない理由だったのです。

そこで、工芸品を売るのではなくて、プレゼントに最適な商品として工芸品をお勧めするというやり方に変えました。

プレゼントというのは、相手のためにどれだけの時間をかけて考えたのか、なぜあなたのためにこの商品を買うのか、なぜ今あなたにプレゼントしたいのか、という理由付けや商品に込められている想いが本質的な価値だと思っています。

それに対して工芸品というのは、非常にベストマッチするものだったんです。例えば、工芸品にはいろんな伝統的な模様や柄があります。東京オリンピックのときには市松模様のキャラクターがいましたけども、市松模様にも由来があるんです。「こういう由来や願いが込められているので、あなたのために選んだんだよ」と言われると、受け取る側もすごくうれしいですよね。

工芸品には歴史や意味が必ず隠れています。そのような、今では人々が忘れてしまったストーリーをきちんと掘り起こして、商品と一緒に販売すれば、業界に風穴を開けられるのではないかと考えたんです。

 

今までに苦労されたことは何ですか?

経営者になると決めたタイミングは、実は高校生のときでした。

私は土浦第一高校という茨城県の中ではトップの進学校に通っていました。中学校ではトップレベルだったので、その高校に入れたんですけども、高校ではとんでもないモンスター級の天才たちがいっぱいいて、私の成績は大体320人中200番代後半でした。このとき、勉強では勝てないと挫折を感じました。このまま大学に行ってサラリーマンになっても、この人たちと戦って勝つのは無理だと思ったんです。

そういった中で、どうしたら勝てるんだろうかと考えたときに、同じサラリーマンとして戦うのではなくて、経営者になればいいのではないかと考えたんです。同じ土俵でなければ負けることはないと思ったんです。それで、大学も経営学部に行くと決めて、将来、必ず会社を立ち上げようと決意しました。

 

普段から社員さんに伝えていることなどはありますか?

まず、一緒に働いているメンバーに対して、常日頃から感謝を伝えています。BECOSの中の商品を贈ったりもしています。

もともと自分でなんでも一通りやりたいタイプで、以前は細かいことを現場に口を出していました。それを信じて任せるスタイルに意識して変えていくと、BECOSの数字も伸び始めたんです。

そのため、最近は細かいことは言わずに、お客様からの感謝の声やメーカーさんから聞いたフィードバックや、商品の売り上げが伸びていることに関する職人さんの喜びの声などを中心にみんなに共有しています。みんなの頑張り一つひとつが今の結果につながっていること、日本や工芸品、職人さんに対して我々は非常に意義のある仕事をしているので、これからも自信を持って丁寧にやっていこう、という話をしています。

 

株式会社KAZAANAとしての課題などはありますか?

組織も大きくなってきて、新規のメーカーさんからのお問い合わせをたくさんいただいています。現在は登録待ちの会社が30件以上あります。

ただ、一件一件丁寧にやっているので、相当時間がかかるんです。メーカーさん側は売るんだったら早く売ってほしいでしょうし、私たちはクオリティを落としたくないと思うわけです。その辺の体制・組織・環境づくりが今の課題だと思います。

 

未来の展望や夢を教えてください

将来的には、伝統工芸の職人を抱えている企業のM&Aをして、自社の中にメーカーとしての機能も備えていきたいと思っています。

跡継ぎや後継者がいないという理由で廃業していく会社がたくさんあります。何百年と続いてきた看板を下ろすのは簡単なんですが、それをどうすれば残していけるかを本気で考えています。

これから職人を目指したいという学生さんが高校・大学を卒業した後、伝統工芸の道に進むための受け皿や窓口が非常に少ないのは業界の大きな課題です。一方で、伝統工芸は分業制であることも多く、どの分野を選ぶかは、その人の一生を大きく左右することになります。例えば、有田焼の職人でも、絵付けの方は60年絵付けをする、ろくろを回す方は60年ろくろを回すことになります。難しい決断を迫られるわけです。

そういった意味でも、BECOSを中心としたエコシステムが構築できれば、ITもできる、商品開発もできる、広告もできる、マーケティングもできる、一方で、グループ会社へ出向すれば職人として現場に立つこともできる、という環境がつくれます。

もちろん、一つのことを突き詰めたプロフェッショナルな職人も必要なのですが、後輩たちのキャリアや伝統工芸を生業とする企業の在り方を考えると、今後は現場のことも知っている、ITのことも知っている、手に職も付いている、というジェネラリスト的な職人が求められると思っています。そういったエコシステムを株式会社KAZAANAのBECOSを中心としてつくりたいなと考えています。

スポーツや芸能界でもスターという存在は大きいですよね。頑張ってトップになればこれだけの年収を稼げるというスターがいるからこそ、下積み時代も頑張れると思うんです。ですが、職人さんたちの世界はというと、残念ながら人間国宝であっても食べるのに困っていたり、伝統工芸士の資格を取得したりしても、それが売上に繋がるというブランディングになっていない現状があります。

そこで、子どもたちが憧れを持つようなスター職人が業界に1人でもいれば、それはものづくりを志す多くの人たちの希望になります。そのような業界に燦然と輝くスター職人・会社・ブランドというのをBECOSの中からつくっていきたいと思っています。

 

樫村さんが経営者におすすめする本を教えていただきました!

『水滸伝 1 曙光の章』 北方謙三(著) 

北方版『水滸伝』待望の文庫化!
北宋末期、汚濁しきった政府を倒すため、立ち上がった漢たちがいた――。北方謙三が描く壮大な革命譚、ついに文庫版刊行。司馬遼太郎賞受賞作。全19巻+別巻。

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投稿者プロフィール

『社長の履歴書』編集部
『社長の履歴書』編集部
新入社員を含めたフレッシュなメンバーを中心に、出版サポートの傍らインタビューを行っております!

就活生に近い目線を持ちつつ様々な業種の方との交流を活かし、「社長に聞きたい」ポイントを深掘りしていきます。

代表者様のキャリアを通して、組織の魅力が伝わる記事を発信していけるよう、これからも一生懸命運営してまいります!