今回は一般社団法人日本A2ミルク協会代表、藤井雄一郎氏にお話を伺ってきました。
「社長の履歴書」だけの特別なインタビューです。
ぜひご覧ください!
会社名称 | 一般社団法人日本A2ミルク協会 |
代表者 | 藤井雄一郎 |
設立 | 2020 |
主な事業 |
A2ミルクの正しい情報の普及活動
A2ミルクに関する学術的な研究開発
認証制度を含む品質管理基準の推進
日本A2協会牛乳の販売
|
社員数 | 52名(取材時) |
会社所在地 | 北海道富良野市八幡丘 |
会社HP | https://www.japan-a2milk-association.or.jp/ |
事業内容を教えてください
日本A2ミルク協会では様々な事業に取り組んでおりますが、軸となるのはA2ミルクの啓蒙普及を目的とした活動です。
A2ミルクを簡単に言うと「お腹にやさしい牛乳」です。小さいころは平気だったのに、大人になってから「牛乳を飲むとお腹がゆるくなる」と乳糖不耐症の症状を経験された方もいらっしゃるかと思いますが、このA2ミルクを飲むと、症状が緩和される効果があります。世界各国で普及が非常に進んでおり、今後も大きく成長が見込める牛乳です。A2ミルクについては海外論文をもとに国内外の特許や商標の状況、販売についての情報収集や研究開発を進めています。
さらに国内の研究機関である東京農業大学、東京工業大学、北海道大学と連携しながらA2ミルクの学術的な研究活動を支援しています。検査体制を確立させるため、A2ミルクの認証制度も設定し、監査委員会や牛の個体登録のデータベースの構築に取り組みました。
ウェブサイトやSNS、YouTubeでも発信していますのでぜひご覧ください!
https://www.japan-a2milk-association.or.jp/
https://www.facebook.com/japan.a2milk.association/
https://www.youtube.com/@japan.a2milk.association
A2ミルクについてもっと詳しく知りたいです! A2ミルクはどのように作られるのでしょうか?
牛乳にはβカゼインというタンパク質が含まれます。βカゼインには1型と2型の2つの形があり、A2ミルクは2型のみで生産された牛乳です。2型のβカゼインを生産する牛は遺伝で決まっているので、遺伝子検査をして、検査に通った牛のみでA2ミルクを作っています。
何かPRしたいことはありますか?
3年かけて構築したA2ミルク認証制度が2024年からスタートしました。第1号として登録された、日本A2協会牛乳が2024年3月1日から発売されます。牧場での高い衛生管理状況や生産工程の生産記録がしっかり取れている牧場のみで生産されている牛乳で、輸送加工段階でも他の牛乳と混じらないように徹底して管理されている非常に信頼性の高い商品です。
見かけた際はぜひお買い求めいただけると嬉しいです!
販売先に関する情報
https://www.japan-a2milk-association.or.jp/store/
学生時代に打ち込んだことはありますか?
高校・大学でラグビーに打ち込みました。そんなに強いチームではありませんでしたが、高校・大学共に、キャプテンを任されていました。私はチームプレーの方が好きで、ボールを繋ぎ合う一体感に面白さを感じていましたね。
大学では酪農の勉強をしており、アメリカの農場実習に行ったことが思い出の1つです。現地では、科学的なアプローチで酪農を捉えながら、かつ非常に現場でも使える実践的なことを教えてもらいました。牛の遺伝的な能力を100%発揮させるのが酪農家の仕事で、そのための環境を整えるということが大事だと学びました。牛をいかに良い状態にしていくか、経営を良くしていくためにどんなアプローチをしていくかを研究理論的に基づいて解決していくアメリカ式の経営手法を学んで、私が将来取り組みたいことが明確になりました。日本の大学教授は授業で教えてくれますが、酪農・畜産の現場で通用する人はほとんどいませんでしたので、アメリカに行ったことで道がひらけました。
昔から酪農を仕事にしようと考えていましたか?
私の実家が4代前から酪農を営んでいる酪農一家で、代々牧場を守ってきました。元々酪農は身近にありましたが、私が中学1年生の冬に母が亡くなった時、学校の先生から慰めの言葉として「将来は何にだってなれるぞ、君は成績が良いから教師にもなれるんだぞ。」と言われました。その時に酪農家を下に見ているんじゃないかと感じてしまい、見返したい気持ちから「絶対に酪農家になるぞ!」と決意しました。
牧場の経営において一番大切にしていることを教えてください。
当社の経営理念になっている「開拓者たれ」という言葉を大切にしています。開拓者として最前線を走り続けるという意味で、私たち一族のアイデンティティでもあります。知識や情報をしっかりと取り込んだ上で、化学的・合理的に行動し続けています。
藤井牧場について知りたい方は下記URLもご参照ください
どうして一般社団法人日本A2ミルク協会を立ち上げたのでしょうか?
10年前に知り合いの社長から「海外で非常に注目されている牛乳がある」という話を聞きました。その時にちょうど私は家業を継いで牧場の代表になったばかりで当社の商品の付加価値を高めるためにはどうすれば良いかを考えていました。A2ミルクについて調べようとしましたが、日本語の情報がなかったため、一旦断念しました。しかし2019年頃にA2ミルク産業が成長していると改めて聞き、再度調べ始めました。その際にキース・ウッドフォード教授が書いた本『Devil in the Milk』を見つけ、苦労しながら翻訳して読みました。
当時、A2ミルクは日本では全く知られておらず、やはり普及させていく必要があるんじゃないかと思い立ち、A2ミルクを広げていくためには1人では活動しきれないので、協会を立ち上げる形になりました。
代表になってから大変だったことはありますか?
先ほどもお伝えしましたが、A2ミルクについては英語の学術論文が多いため翻訳するのに苦労しました。最初はちんぷんかんぷんでしたが、少しずつ理解をすることができました。ですが、理解をしてから、そもそも当時日本では、生乳を検査する機関がなく、検査することさえもができないことが分かり、大きな課題を感じました。
2024年現在、日本にいらっしゃる9割以上の方がまだA2ミルクについてご存知ないと思うので、大変ではありますが、今後も情報発信を通じて啓蒙活動を続けていきたいです。最近はありがたいことにA2ミルクが少しずつ注目されてきており、インタビューを受ける機会も多くなり、やりがいとともに責任の大きさを感じています。
大変なことが多かったですね。どのような情熱を持って取り組んだのでしょうか?
大変なことに直面しましたが、悲壮感はなく開拓者として乗り越えていこうという気持ちでした。新たな情報をキャッチすると分かってくることもどんどん増えてきて、楽しみながら取り組みを進めることができました。
また新型コロナウイルスのおかげで事業が加速した面もあります。例えばオンライン会議が一般的なものとなり、世界中の人とすぐにミーティングすることができました。DXが進んだことで勉強会や情報共有が一気に進んだともいえます。また海外の論文の翻訳に関してもAIが発達して翻訳ソフトを使いながら専門分野の論文も読めるようになりました。
今後の展望を教えてください
2030年までにどのスーパーでもA2ミルクが手に入るようにしていき、2040年には日本の牛乳の全てをA2ミルクにしていきたいです。当団体は2019年からスタートした後に新型コロナウイルスの問題に直面し、社会的にも混乱した時期を過ごしました。新型コロナウイルスの影響で酪農業界も非常に状況が悪くなってたところ、さらにウクライナ情勢の影響を受け飼料やエネルギー費が高騰してしまい、さらには牛乳の販売不振がありました。現在85%の酪農家が赤字経営と言われているぐらい、非常に厳しい状況ですので、業界全体が盛り上がるようにしていきたいです!
他の経営者におすすめの本はありますか?
先ほど紹介しましたキース・ウッドフォード教授の著書『Devil in the Milk』はいつか日本語訳を出版したいと思っていますが、他にもおすすめの本がありますので紹介します。
ドラッカー氏の著書『ドラッカー名著集1 経営者の条件』
この本は経営者になる前に読んで感銘を受けました。この本に書かれている真摯さは一番大切な資質になっています。
ハンス・ロスリング氏の著書『FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』
酪農も数字や事実に基づいて物事を考える素養を身に付けることを学びました。
入山章栄氏の著書『世界標準の経営理論』
最近読んで非常に感銘を受けました。早稲田のビジネススクールの先生の本で、新型コロナウイルスの先の見えない中で自ら行動して未来を作り出していく大切さが書かれています。
ユヴァル・ノア・ハラリ氏の著書『サピエンス全史 上: 文明の構造と人類の幸福』
人間そのものを理解することが重要になります。人間がどうして一線を画して、力を獲得していったのかが経営にも通じるところがあると思っています。
気になる本がありましたら、ぜひ読んでみてください!
投稿者プロフィール
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新入社員を含めたフレッシュなメンバーを中心に、出版サポートの傍らインタビューを行っております!
就活生に近い目線を持ちつつ様々な業種の方との交流を活かし、「社長に聞きたい」ポイントを深掘りしていきます。
代表者様のキャリアを通して、組織の魅力が伝わる記事を発信していけるよう、これからも一生懸命運営してまいります!
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