今回はStudio ENTRE 株式会社代表、山口哲一氏にお話を伺ってきました。
「社長の履歴書」だけの特別なインタビューです。
ぜひご覧ください!
会社名称 | Studio ENTRE 株式会社 |
代表者 | 山口哲一 |
設立 | 2020年8月 |
主な事業 | toC領域の事業開発
メディア/コンテンツ領域のDXイベント開催 |
社員数 | 6名(取材時) |
会社所在地 | 〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6-23-4 桑野ビル2F |
会社HP | https://entre.studio/ |
自己紹介をお願いします
山口哲一と申します。色々と活動しておりますが、主たる肩書は音楽プロデューサー、エンターテック・エバンジェリストです。自己紹介では「本籍は音楽業界、現住所はITスタートアップ」と言っています。
簡単に経歴をお話しますと、東京都出身で国際基督教大学高等学校卒業後、早稲田大学に進学しました。しかしながら大学へはあまり行かず、在学中から音楽プロデュースに携わっていたこともあり、中退して音楽業界にフェードインしました。1989年に音楽事務所「株式会社バグ・コーポレーション」を設立し、音楽プロデューサー兼音楽事務所社長としてアーティストのマネージメントや新人アーティストをプロデュースしております。
日本の音楽業界のデジタル化の遅れに危機感を持ったことがきっかけで、2010年頃からは著作活動を始めました。著書も多数あるので、気になった方はぜひ読んでいただけると嬉しいです。
並行してデジタル時代に対応した人材育成にも積極的に取り組んでいます。2013年からプロ作曲家育成セミナー「山口ゼミ」を開講し、500人以上を輩出しています。卒業生はCO-Writing Farmというコミュニティを形成していて、海外では一般的でしたが日本では馴染みのなかった「コーライティング」という共創の処方を広げる中心となっています。最近ではヒットも出しています。昨年末にはDa-iCE『CITRUS』でレコード大賞も受賞しました。
様々な活動を経る中で日本のスタートアップ企業、起業家の応援はこれからの日本のために不可欠だと感じ、2020年6月にエンターテック分野の起業家育成と新事業創出を行うスタートアップスタジオ「Studio ENTRE株式会社」を設立しました。
学生時代はどんな音楽活動をされていたんですか?
高校生の時にバンド活動をしていました。バンド活動で人脈を増やしていき、最初はライブハウスシーンからですが音楽界に入っていて、自然な流れで大学を中退しました。
これまで数多くの有名アーティストのプロデュースをされてきましたが、プロデュースのコツなどはあるのでしょうか?
アーティストの個性を活かした作品創り、活動方針というのが基本ですね。2000年代初頭までは、音楽メディアを中心とした生態系が成立しCDショップFMラジオ、雑誌など音楽メディアが機能してたので、個性的な作品はピックアップされて少しずつ広がっていくっていう流れがあったんです。
今はSNSが主流になっていますが、当時はCDショップのバイヤーが気に入ってアーティストを推すとヒットに繋がったり、ラジオ局のヘビーローテーションからヒットが出たりしていましたから、そういう目利き(耳利き)の人たちに会いに行って聞いてもらいました。また、レコード会社の契約を取ると契約金が取れるので、アーティストはバイトを辞めることができてステップアップしていきます。今思えば良い時代でしたね。
Studio ENTRE設立のきっかけについて教えてください
15年ほど前から世界の音楽シーンがデジタルに変わる中、日本のレコード業界の経営者が日本だけは少しでもデジタル化を遅らせるという方針をとりました。音楽制作者連盟という音楽プロダクションの理事をやっていた私には、その方針が見えたので「日本もデジタル化にしていくべきだ!」と考えていましたが、なかなか音楽業界の内側からデジタルに変えて行くのは難しいと感じ、エバンジェリスト的な活動を始めました。書籍を書いたり、セミナーを企画したり、新規事業のアドバイザーをやったりという活動していく中でこれからの日本にとって起業家育成が死活的に重要だということに気づいて、自分のキャリアを踏まえて、エンターテイメントとテクノロジーを合わせた「エンターテック」分野でスタートアップを産み出して応援していきたいと思うようになりました。
現在は世界的な大企業であるApple、Amazon、Google、Spotifyも全てスタートアップからのスタートなので、日本でもそんな企業が必要だと思ったわけです。
最初は仲間と実行委員会を作ってピッチイベントを始めました。2014年から始めた「START ME UP AWARDS」です。スタートアップを支援する活動をしている中で、世界ではスタートアップスタジオという業態が流行っていることを聞いて「これが私のやるべきことだった!」と気づき、エンターテックをテーマしたスタートアップスタジオを2020年に作りました。
スタートアップスタジオとは、どういったものか教えてください
アメリカ西海岸から始まった概念と聞いています。「スタジオ」という言葉は映画スタジオハリウッドを意識しています。スタートアップスタジオという言葉は、ハリウッドが同時並行で素晴らしい映画を連続的に生みだすように、スタートアップ企業を創設しましょう! というニュアンスが込められています。
スタートアップスタジオに行けば起業家にとって必要な情報があり、人脈があり、全てが集まっている環境でいくつものプロジェクトを同時に進めることができます。
資本の論理の前にプロダクト重視というのもポイントです。
ハリウッドで映画を作る場合、1000万円かけて数分の短いトレーラー(試作)を数本作るそうです。その後に作品を選んで100億円規模の映画を作る方法が採用されています。投資家からお金を集める前にちゃんとプロジェクトを確認してチェックしましょう、ということですね。スタートアップスタジオでは、サービスやプロダクトをしっかりスタジオの中で形にしてそれから資金を集める形で新規事業を行っています。。
具体的にはどのような活動をされているのでしょうか?
まず、頻繁にオンラインやリアルでイベントを行っていて、起業家予備軍のコミュニティをつくっています。slack上でのコミュニケーションも盛んです。社内でも有望な技術、成長領域の市場などを日常的にリサーチ議論しています。そんな中で、有望な事業アイデアと創業チームが見えてきたら、予算を組んでプロジェクトを期間限定の社内事業部として作ります。僕らは「案件化」と呼んでいるのですが、原則として。半年以内かつ500万円以内で仮説検証を実際の事業として行うわけです。実際にやってみて成功すれば、投資家を募って法人化していくという流れです。
この方法でやる一番のメリットは、プロジェクトをやってみて失敗した場合、そのプロジェクトを辞める決断ができるところです。通常の起業だと出資してもらった手前、うまくいかなくてもなかなか事業を辞めることができません。しかし、スタートアップスタジオであればダメだった場合はそこで辞めても再度チャンスがありますし、ノウハウと人脈が残ります。エンタメ界で力を持っている方や起業家達が相談役として居ますので、困ったことがあればすぐに豪華なメンターに聞くことができます。もうすぐ会社設立から2年経ちますが、これまで5社、法人を輩出しました。
2022年6月からは神戸市と提携してインキュベーション事業を行うことになりました。また、100年以上の歴史を持つ大阪音楽大学に依頼されて、新たにミュージックビジネス専攻を開講しました。僕自身が特任教授になり、教員もあつめてカリキュラムも考えました。これまで日本になかった産学連携を進めていきます。そんな縁もあり、2025年の万博に向けて盛り上がっていくことが予想される関西でも精力的に活動していきます。
事業を進める中で大変だったことはありますか?
ゼロから事業を作ることは大変なことしかないです。しかし、起業家と一緒に0から1を作るのはとてもやりがいがあります。私たちは法人化するための必要なパーツを適切に提供していくことを心がけています。起業家の方には知見やネットワークなどの付加価値を使っていただきたいです。スタートアップはほとんど失敗しますが、私たちと関わることで成功率を上げていってほしいです。
実は音楽プロデューサーとしてアーティストマネージメントをしてきた時の経験が起業家とのコミュニケーションに役立っています。日本人音楽家は失敗するとスタッフのせいにするマインドを持つ人も少なくないのですが、起業家は自己責任が大前提なので、ストレスが無いですね。
法人化できるスタートアップを見極めるコツはありますか?
爆発的に儲かる可能性を見出すためには、市場に成長性があることが重要になりますし、サービスに何らかの優位性が必要です。また、タイミングを見極めるのも大切です。伸びていく市場に適切なタイミングで参入するのがスタートアップには必要なことですし、事業が伸びていく中で、大手に真似されないアドバンテージを作れるように設計しています。
そして、失敗はできるだけ法人化前にしておきたいので、徹底的に仮説検証を行っています。
今後の展開を教えてください
エンターテイメントという言葉には「人を喜ばす、楽しませる」という意味があります。エンタメを狭義に捉えずに、消費者向けのサービスとは、とても相性が良いと思うのでエンタメ的なノウハウを活かせるサービスを育てていきたいです。そしてグローバルに活躍するスタートアップを輩出して、再現可能で成功するスタートアップ企業のノウハウを構築していきたいです。昔よりも起業するリスクが下がっていますが日本は起業率が少ないので、もっと挑戦する人が増えてほしいですね!
経営者におすすめの本はありますか?
2冊ご紹介します。
1冊は私の著書で『10人に小さな発見を与えれば、1000万人が動き出す。』コンテンツ産業の分野別の近未来予測を2016年に書いています。すでに予測が当たっている部分もありますし、これから起きそうなこともあります。是非、読んでみてください。
そしてもう1冊は、ベン・ホロウィッツさん著書の『Who You Are(フーユーアー)君の真の言葉と行動こそが困難を生き抜くチームをつくる』です。翻訳の浅枝大志くんは、ENTREのメンターもお願いしているシリアル(連続)起業家です。経営者は決断を迫られる孤独な職業ですが、この本は助けになると思います。
詳しい感想はそれぞれ私のnoteに書いてありますので、ぜひ書籍と合わせて読んでいただけると嬉しいです。
https://note.com/yamabug/n/na8f3eacc4027
https://note.com/yamabug/n/n81eae3f7421f
人を動かす新常識! 今を生き抜く、新バイブル登場!! 「フジテレビpresents素敵なスマートライフ」デジタルエンタメワークショップ(2015年5月24日第1回開講)の公式ガイドブックでもある本書は、音楽、映像、放送、新聞、出版、自動車、IoT、UGMなど、エンターテインメント業界を幅広く横断的に捉え、デジタル化による大きな潮流が変えようとしているエンタメ・ビジネスの最新動向をまとめたもので、エンターテインメント・ビジネスに関心を持つ学生・ビジネスパーソン必携本!!
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投稿者プロフィール
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新入社員を含めたフレッシュなメンバーを中心に、出版サポートの傍らインタビューを行っております!
就活生に近い目線を持ちつつ様々な業種の方との交流を活かし、「社長に聞きたい」ポイントを深掘りしていきます。
代表者様のキャリアを通して、組織の魅力が伝わる記事を発信していけるよう、これからも一生懸命運営してまいります!
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