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Taxa Technologies Inc共同創設者兼President of Asia-Pacific 福永 祐一氏

今回はTaxa Technologies Inc共同創設者兼President of Asia-Pacific、福永祐一氏にお話を伺ってきました。

「社長の履歴書」だけの特別なインタビューです。

ぜひご覧ください!

 

会社名称 Taxa Technologies, Inc
代表者 共同創業者兼CEO Xavier M. Segel

共同創業者兼President of Asia-Pacific 福永祐一

設立 2023年1月
主な事業 組換え微生物を用いた有効成分の研究開発、商品開発
社員数 12名(取材時※フルタイム)
会社所在地 135 Mississippi St, San Francisco, CA 94107
会社HP https://www.taxatech.com/

 

 

事業内容を教えてください

Taxa Technologiesはアメリカサンフランシスコに拠点を置く、バイオテックベンチャーです。

「Superpower your skin™︎」をミッションに掲げ、皮膚に常在する微生物、皮膚マイクロバイオームに関する研究開発と商品開発を行っています。一度の塗布で一週間のワキガ防止効果が見込めるデオドラント「Swap」をはじめ、蚊よけや日焼け止めなど、合成生物学を用いた安全かつ効果的な製品開発に取り組んでいます。

 

※補足
 マイクロバイオームとは、 ヒトの体に共生する微生物(細菌・真菌・ウイルスなど)の集団のことです。微生物叢。
合成生物学とは、目的物質の生産をゴールとして遺伝子を活用するための学問分野です。機能性物質の生産などへの応用が期待されます。

 

なぜワキガ防止効果が見込めるデオドラントの開発をされたのでしょうか?

理由は大きく2つあります。1つ目は市場規模の大きさです。デオドラント市場は世界で約4兆円の規模があります。その市場の大半を占めるアメリカにおいてデオドラントは、季節や体臭の強さを問わず、生涯にわたって使い続けることが一般的です。

2つ目は、当社の技術であれば脇の臭いの発生を長期間抑制する画期的な製品の開発が可能であると確信したからです。汗は大きく2種類あります。1つが暑いときなどに体温調節のためにエクリン汗腺から分泌される汗で、これは直接臭いの原因にはなりません。そしてもう1つが緊張した時などにアポクリン汗腺から分泌される汗です。これも汗自体には臭いがありませんが、これを脇にいる微生物が代謝することによって、臭いの原因物質が発生します。当社はこの微生物に遺伝子改変を行うことで、脇の臭いの産生を抑制された組換え微生物の産生に成功したため、この組換え微生物を用いた画期的なデオドラントの開発に着手しました。

当社は、独自の微生物に対するゲノム編集技術を持ち、特定の微生物に新たな機能を加えたり、機能を取り除くことができます。また、微生物を皮膚に長期間定着させる技術を持つことが大きな強みであり、それが従来にない長期間効果が持続する化粧品や医薬品の開発を可能にしています。

 

日本とアメリカではワキガへの悩みは違うのでしょうか?

一番大きな違いはワキガを病気と捉えている方がいるか、だと思います。

日本は世界で唯一ワキガに対して様々な治療の選択肢がありますが、アメリカでは脇に臭いがあることが当たり前のことなので、そもそも病気だと捉えられていません。脇の臭いに外科的手術で対処している国は日本くらいなのです。日本人は約10人に1人がワキガ体質で、残り9割の日本人はABCC11遺伝子乾型耳垢のタイプを持っており、ワキガ体質の方は少ないのです。ワキガ体質でない人が多いからこそ、臭いに悩んでいる人とそうでない人の差がはっきりしている印象です。

 

Swapについて詳しく教えてください

「Swap」は、ワキガ原因菌を無臭菌と置き換えるというTaxa独自の新しいメカニズムにより、脇の臭いを根本から長期間抑えることを目指した、アメリカ・シリコンバレー発の画期的なデオドラントです。

既存のデオドラントは、制汗成分で汗を抑えるもの、臭いの原因菌をアルコールなどで殺菌するもの、香料によって臭いにマスクをするもの、の3パターンに分けられます。いずれも成分がシャワーや汗で流れてしまうため、効果は一時的です。そのため、日本においては、デオドラントを使っても臭いが気になる場合、ワキガ手術やレーザー治療、ボツリヌス毒素注射などの治療を選択する方も少なくありません。しかし、これらの治療法は、皮膚への刺激が強いことや、侵襲性(身体への負担)が高いことなどによるリスクがあります。

一方、我々の製品は、皮膚の微生物の組成そのものを変化させるため、シャワーを浴びても汗をかいても効果が持続します。「Swap」は、2026年にアメリカで販売開始を予定していますが、日本での展開も視野に入れています。日本において「Swap」は、痛みがともなう治療や高額な施術の代わりになりうる製品であると考えています。

 

商品の詳細は下記URLをご参照ください。

URL: https://swap.care/

 

ここからは福永様のことをお聞きしたいです。学生時代のことを教えてください

高校生の時からアメリカの大学に進学したいと思っていました。

そして、アメリカの大学に進学をする際は、高校時代の成績だけでなく課外活動も重視されるので、模擬国連という部活動に注力していました。

全国大会にも出場したのですが、難民問題などをきっかけに国際問題への関心が高まりましたね。また他の高校の生徒を見て、すごく能力の高い高校生が世の中にいることを知り、驚きました。

大学時代は神経科学という脳科学の分野の研究をしており、卒業時には神経科学プログラムの最優秀賞を受賞しました。

 

海外の大学に行きたいと思われた理由を教えてください

将来を見据えた時、私は大学に行くべきかがわかりませんでした。

中高一貫校に通っていたので、ほぼ全員が大学へ行く環境でした。しかし、正直、当時の私には大学に行く必要性がわからなかったのです。

当時、漠然と20歳までにはどんな業界で仕事をしたいかを決めたいと考えており、いつか起業したいという想いもありました。本を読んだり、様々な人の話を聞いて情報収集をする中で、バイオテックやヘルスケアといった分野に興味を持ちました。それらの分野の研究に取り組むためには研究施設が必要になるため、大学に進学することを決めました。

慶應義塾大学に1学期間ほど在籍後、ギャップイヤーを経てウィリアムズ大学に進学しました。渡米するまでは日本の企業でインターンをしていました。

 

どのような会社でインターンしたのでしょうか?

エムスリー株式会社で予防医療の分野で新規事業提案を行っていました。実際に商談にも連れていっていただき貴重な経験を多く積むことができました。メガベンチャーがどんな風に新しい事業を作っていくかを、0からプロダクトになるまでの流れを実際に見て経験することができて本当によかったです。

 

どうやって起業をされたのでしょうか?

大学1年次からずっとルームメイトだったアメリカ人のXavierと起業しました。

当時私は神経科学の研究をしており、大学卒業後はドイツのマックスプランク研究所の博士課程への進学が決まっていました。一方、Xavierが取り組んでいた今の会社の基盤となる研究が順調に進み、事業を一緒にやらないかと声をかけられ、大学4年次に起業しました。大学卒業後は、博士課程での研究とTaxaの事業に並行して取り組んでいましたが、「Taxaの研究・事業内容でマーケットを取れるチャンスは今しかない」と考え、博士課程を中途退学しTaxaに専念することを決めました。

 

どうして決意できたのでしょうか?

若ければ若いほどチャレンジする選択肢は取りやすいと感じていたからです。独身なので養う家族もいませんし、年齢も若いので、失敗してもまた挑戦ができると思いました。そして何よりも4年間アメリカで一緒に過ごした尊敬するXavierと一緒にバイオテックの領域で起業するチャンスは今しかないと思いました。

創業前は、ある程度成長したら会社を売ることも考えていましたが、優秀な仲間に恵まれて、今は会社の持続的な成長にコミットしていきたいと考えています。

 

大変だったことはありますか?

私もXavierも楽観的でしたが、最初の資金調達の時は本当に大変でした。

当時はバイオテック領域への投資が冷え込んでおり、AIに投資マネーが集まっていたこともあり、当社はなかなか投資してもらえませんでした。またバイオテックの領域だと、創業者の平均年齢が30代後半で、20代前半で実績のない私とXavierが話に行くと、本当に大丈夫かと聞かれることが多かったです。

資金調達自体が初めてだったので、投資家とのパイプもなく、どうやって誰に話しに行けば良いかも手探りでした。

創業から半年間ぐらいは非常に大変でした。

 

日本とアメリカの資金調達の違いはありますか?

日本の投資家の方は企業出身者の方が多い印象で、しっかりとプレゼン資料を作ってくることが前提となる初回ミーティングが多かった記憶があります。しかし、アメリカではプレゼン資料を見せることはほぼありませんでした。アメリカでは熱意やストーリーが重要だった印象があります。

自分たちの技術や事業モデルを説明することはもちろん大切なのですが、スライドを作る時間があるならプロダクトを作る時間にあててほしいと考える投資家が多いと感じました。

最終的に有名な投資家の参加が資金調達成功の要因になりました。電話で30分ほど喋って、投資してくれることになり、それをきっかけに次々と決まりました。

 

どのような流れで有名な投資家の方は納得してくださったのですか?

彼は我々と同じウィリアムズ大学の卒業生なのですが、誰にも連絡先を教えないことで有名な方で、なかなか紹介してもらえませんでした。しかし大学の名簿を調べれば住所がわかるのではないかと思ったところ、本当に住所を見つけたので、便箋に手書きで熱い想いを書いて送ったら電話が来ました。

最近アメリカでは手書きの手紙は珍しいので、印象に残ったのだと思います。

 

今後の展望を教えてください

他社にはない技術力により、創業から2年が経ったいま、皮膚マイクロバイオームの領域で良いポジションをとれていると感じています。デオドラント市場は約4兆円の規模があるので、まずはそこでポジションをしっかりとって、ユニコーン企業を目指したいです。また、今後は我々の技術をデオドラントだけでなく、日焼け止めや蚊よけなどに展開し、1つひとつの市場をとっていきたいです。

 

おすすめの本を教えてください

東京大学大学院教授の國分 功一郎先生が書かれた『暇と退屈の倫理学』がおすすめです。暇は何もしない時間であり、退屈は何かしているものの面白くない時間であると書かれており、この本を読んでから、どう今の事業に取り組むことで退屈しないかを考えるようになりました。

経営者は、なぜ今の会社をやっているのかを常々問うべきですし、どうやって会社を作っていくのかを考え続ける必要があります。退屈と感じることは動きも鈍化してしまいます。退屈かそうでないかという視点は、経営者にとって大切だと思います。。

ぜひご覧ください!

『暇と退屈の倫理学』國分 功一郎 (著)

https://www.amazon.co.jp/dp/4101035415

 

 

 

 

 

 

 

 

 

投稿者プロフィール

『社長の履歴書』編集部
『社長の履歴書』編集部
企業の「発信したい」と読者の「知りたい」を繋ぐ記事を、ビジネス書の編集者が作成しています。

企業出版のノウハウを活かした記事制作を行うことで、社長のブランディング、企業の信頼度向上に貢献してまいります。