今回は株式会社FREEDiVE代表、今井渉平氏にお話を伺ってきました。
「社長の履歴書」だけの特別なインタビューです。
ぜひご覧ください!
| 会社名称 | 株式会社FREEDiVE |
| 代表者 | 今井渉平 |
| 設立 | 2016年6月3日 |
| 主な事業 | モバイルWiFiレンタル事業・その他デジタルソリューション提案事業 |
| 社員数 | 98名(パートアルバイト/インターン生を含む。取材時) |
| 会社所在地 | 【本社】〒305-0034茨城県つくば市小野崎260-1 ヒロサワつくばビル1階 |
| 会社HP | https://freedive.co.jp/ |
事業紹介をお願いします
株式会社FREEDiVEは、クライアントファーストを至上命題とし、インフラサービスを提供している企業です。元々はアフィリエイト広告を専門とするウェブ広告代理店としてスタートしましたが、そこから事業の変遷を経て、現在は通信領域を軸に複数の事業を展開する会社へと進化しています。
そのため、かつて事業の一角だった「コアマーケティング」は、今では“1つの事業”というよりも、新しいビジネスを創出していくための価値観や考え方のベースとなっています。
当社の転機となったのはコロナ禍です。当時、新たに立ち上げた モバイルWiFi事業 が急成長し、主力事業となったことから、もともとのウェブ広告代理事業は「株式会社BPX」という関連会社として切り出し、現在は通信事業を中心に展開しています。
具体的には、個人向けモバイルWiFiレンタルサービスとして
- MUGEN WiFi
- AiR WiFi
- 5G CONNECT
の3ブランドを運営しています。いずれも業界トップクラスのシェアを獲得しており、この個人向け事業を起点として、現在は法人向け通信サービスにも事業を拡大しています。
法人向けでは、WiFiだけでなく、PCやヘッドセットといった 周辺機器の提供・販売も行っており、テレワークやリモート環境の整備を包括的にサポートしています。
さらに近年は、海外渡航者の増加に伴い、 eSIMサービス「SkyeSiM」の提供も開始しました。通信というインフラを基盤に、利用者のニーズに合わせて事業の裾野を広げ続けています。
法人向けの事業について、詳しく教えてください
法人向けのWiFi事業では、特に「AiR WiFi」が最も多く利用されています。立ち上げ当初から建築・不動産・病院・学校・官公庁といった業界のお客様に多くご利用いただいており、現在でも非常に大きな割合を占めています。
これらの業界に共通しているのは、「常時接続」ではなく 短期・スポット利用 のニーズが強いという点です。
例えば、建設現場でCADを使った図面作成や作業を行う際に、工事期間だけ使えるホームルーターが必要になるケースがあります。こうした一時的な通信需要に対して、スポットでWiFiを提供できる点が評価され、多くの企業に導入いただいています。
さらに最近では、2年・3年といった中長期契約での導入を希望する企業も増えており、リリースから1年で0社から2,000社、その後は3,500社を超える企業との取引へと拡大しています。
また、WiFiの提供を起点として、 パソコン・ヘッドセット・タブレットといった通信関連機器の提供にも事業領域を広げています。こうした機器をセットで導入したいという企業ニーズが増えているため、ワンストップで対応できる体制を整えています。
加えて、近年特に需要が伸びているのが eSIMです。出張が多い商社などでは、従来のモバイルWiFiルーターを社員に貸与すると、紛失時のリスクや管理コストが課題となるケースがありました。その点、物理的な端末を持たずに通信環境を整えられるeSIMであれば、そうした課題を解消できます。現在、eSIMを積極的に導入しようとする企業が増えており、弊社としても通信インフラ全体をカバーする形で事業を展開しています。
当社の事業については、下記URLをご参照ください。
WiFi、eSIMについてはこちら
- MUGEN WiFi ・・・https://mugen-wifi.com/
- AiR WiFi ・・・https://wifi-airwifi.com/
- 5G CONNECT ・・・https://5g-connect.net/
- SkyeSiM・・・https://e-freedive.com/
SkyeSiMについては公式Instagramも展開中ですのでぜひご覧ください。
https://www.instagram.com/skyesim_official/
ここからは今井社長のことをお聞かせください。学生時代に打ち込んだことはありますか?
学生時代に一番熱中していたのは「音楽」です。もともと小学生の頃までは勉強が得意な優等生タイプでした。しかし、ある時期から勉強そのものに楽しさを感じられなくなってしまい、また「やればできる」という感覚が逆に興味を削いでしまって、だんだんと机に向かわなくなっていきました。
そんな中で、自分の心を強く揺さぶるものを探していたときに出会ったのが音楽です。きっかけは、美容師さんが尾崎豊の曲を聴かせてくれたことでした。そのときの衝撃は今でも覚えています。まさに、自分の心に深く刺さった瞬間でした。
それからというもの、「音楽を通して世の中に何かを届けたい」という気持ちが芽生え、高校時代には本格的に音楽の道を目指すようになりました。当時はちょうどインターネットが普及し始め、ボーカロイドブームの黎明期でもありました。僕自身もその流れに影響を受け、ネット上に自分の音源を投稿したりと、表現の場を広げていきました。
大学生の時に起業を目指されたとのことですが、どのようなきっかけがあったのでしょうか?
大学時代に起業を意識し始めた背景には、音楽業界の大きな変化がありました。
当時、音楽はCDの売上を中心とするビジネスモデルから、ライブやグッズ収益が主流になる過渡期に入っていました。まだストリーミングサービスも普及しておらず、「このまま音楽業界は厳しくなるだろう」と言われていた時代です。
そうした環境のなかで、「人生をかけて音楽を続けることは本当に正しいのか?」と真剣に考えるようになった折、たまたま友人が起業したのを目の当たりにして衝撃を受けました。
さらにそれに影響された同級生が「じゃあ俺たちもやってみようぜ」と声をかけてくれて、本格的に動き始めました。最初はまさに勢いだけのスタートでしたが、実際にやってみると想像以上に難しく、思うような結果は出ませんでした。
私は経営者が身近にいたわけでもなく、経営学を専攻していたわけでもありません。むしろ芸術系の学部、表現を学ぶ学科に所属していたため、ビジネスの世界とはまったく畑が違いました。
その現実に直面したとき、強い悔しさと同時に「ちゃんと学ばなければ」と思いました。
そこから大学3年生の頃には、独学でウェブデザインや経営学を学び始め、ビジネスの基礎を身につけていきました。あの時の経験が、後の事業づくりの原点になっています。
学生時代のビジネスアイデアを教えていただきたいです
起業当初のビジネスアイデアは、正直に言うと全然大したものではありません。
最初に取り組んだのは「ブランド品の買取サービス」でしたが、当時の自分は、“ビジネスモデル”というものへの理解も浅く、企業に対して強い興味があったわけでもありませんでした。とにかく「何かやってみよう」という気持ちのほうが大きかったと思います。
ほかにもいろいろなアイデアが出てはいました。たとえば、雑魚寝ができるスペースを貸すというものや、「あなたに本音だけを伝えます」というちょっと変わったコンセプトのサービスなどです。
当時は「世の中には本音を聞きたいと思っている人が多いんじゃないか」という発想が背景にあり、“完全に主観で本音だけを伝える”という不思議なサービスを真剣に考えたりもしていました。
今振り返ると突拍子もないアイデアばかりですが、それもまた最初の一歩だったと思います。
ちなみに、大学時代に思いついたアイデアが、今の事業として形になっているものはありません。
しかし、今振り返ると当時の発想はすごく柔軟で、マーケットの知識やマーケティングの理論をまったく知らない状態で、ゼロから純粋に考えていたました。だからこそ、感情的というか、エモーショナルな部分も多く、そういうアイデアの中には「面白いな」と思えるものもけっこうありました。
あの頃の発想力や視点は、いつか何かの形で活かしたいと考えています。
就職活動の時はどのような業界、仕事を見ていましたか?
就職活動の際に最も重視していたのは、「将来的に起業するために必要な力をどこで身につけられるか」という観点でした。
経営者になるという目標を逆算して考えたとき、会社経営の仕組みを深く理解できる環境に身を置くことが重要だと考え、コンサルティング業界に目を向けました。経営課題の解決に直接関わることで、事業の構造を体系的に学べると考えてたのです。
ただ、私は芸術系の学部出身ということもあり、エントリー段階で門前払いになるケースも少なくありませんでした。そのため、次に検討したのが不動産業界です。営業力を鍛えるには非常に実践的な環境であり、当時は強い営業組織を持つ企業が多かったことも理由です。
一方で、すべての企業ではないのですが、当時の時代では利益や売上至上主義的な文化の企業も多かったこともあり、そこに違和感を覚える場面もあり、自分の価値観とは合わないと感じました。私はもともと「目の前の誰かに喜んでもらえること」を仕事の軸に置いていたため、営業力の習得以上に「何を目的として働くか」という視点が重要だと気づいたのです。
次に検討したのが金融業界です。経営に深く関与できる可能性が高いと考えましたが、創造的な発想やアイデアを出すことを得意としていた自分にとっては、性質的に合わないと判断しました。当時は「金融=かっこいい」という漠然とした憧れもありましたが、冷静に考えると本質的な理由ではありませんでした。
最終的に強く関心を持ったのが広告・マーケティング業界です。私はもともとデザインを学び、インターネットを通じて音楽配信やネットラジオといった活動を行ってきました。その経験から、広告やマーケティングの世界は自分のクリエイティビティを活かせる領域だと感じたのです。
加えて、「なぜ商品が売れるのか」という本質的な仕組みを学べる点も大きな魅力でした。当時はWebマーケティング業界が急成長しており、サイバーエージェントなどの企業が注目を集めていた時代でした。これからの時代をつくる業界になるという確信もあり、広告・Webマーケティングを志望することにしました。
最終的には、大手企業とベンチャー企業の両方から内定をいただきました。大手の華やかな環境にも惹かれましたが、将来起業するという目標を考えたとき、「どこで一番成長できるか」という観点で判断した結果、ベンチャー企業の方が柔軟に挑戦できる環境があると感じ、そちらを選択しました。ここでの経験が、現在の事業の土台をつくる大きなきっかけとなりました。
転職したきっかけを教えてください
ある程度の実績を積み上げることができた段階で、「これは自分ひとりの力ではなく、多くの仲間の支えがあってこそのものではあるけれど、このままの環境にとどまるのではなく、より広いフィールドでWebマーケティングの知見を深めたい」と強く感じるようになりました。
そうした背景から、より大規模なクライアントワークや先進的なマーケティングに触れられる環境を求め、上場企業へ転職する決断をしました。自身のスキルをさらに磨き、事業の幅を広げるための大きな一歩だったと考えています。
社会人時代に経験したお仕事のなかで「この経験があったからいまの自分がいる」または「この経験が今の事業に活きている」エピソードはお持ちでしょうか?
印象に残っている経験を一つ挙げるとすれば、「朝7時に出社し、夜23時に帰る」というハードな環境で働いていた時期のことです。あの時期が、自分の器を大きく広げるきっかけになったと感じています。
当時は上司こそいたものの、教育制度や研修の仕組みが整っているわけではなく、いわゆる“放り込まれる”ような環境でした。最初は何もできない自分に直面して、正直に言えば苦しい場面もありましたが、目の前の業務に必死で取り組み続けたことで、「本気で力を出せば、自分は想像以上に多くのことができる」という手応えをつかむことができました。
もちろん、Webマーケティングのスキルを身につけたという側面もありますが、それ以上に大きかったのは、自分の力で生き抜く「雑草魂」のようなマインドが鍛えられたことです。この経験があったからこそ、起業したときも「大変だ」と感じることは一度もありませんでした。
また、この時期の経験は、新卒社員との向き合い方にも活きています。多くの企業が「教育制度を整備しなければならない」と考えるなか、私は「現場に出て経験を積むことこそが最大の成長機会」だと確信していました。自分自身がそのような環境で成長してきたからこそ、新卒に対しても本質的な理解を持って向き合うことができたと思います。
25歳で起業されていますが、元々このタイミングでしようという計画があったのですか?
25歳でFREEDiVEを設立するに至った背景には、いくつかのきっかけがありました。詳細は控えますが、当時勤めていた会社では、広告を通じてある特定のパッケージ商品を販売していました。しかし、その商品がなかなか期待通りの成果を出せず、クライアントの満足も得られない状態でした。
結果として、クレーム対応に追われる日々が続き、「このままでは本当にお客様の役に立てているとは言えない」という強い葛藤を抱くようになりました。営業として売り続けることが正しいのか、自分の良心との間で揺れ動いていた時期です。
そうしたなか、「自分が本当にやりたいことはなにか?」と自問自答しました。マーケティング手法などを研究し、自分なりにノウハウを吸収していくうちに、もともと興味のあった起業を決意しました。
起業当初の経営方針を教えてください
創業当初は、正直なところ「明確な経営方針」というものは存在しませんでした。いわゆる中長期の戦略や数値目標を立てるといった形ではなく、「どういう姿勢で仕事に向き合うか」という価値観の部分からスタートしたのが実情です。
そんななかで、唯一明確に定めていたのが「鬼10箇条」と呼んでいた行動指針でした。現在、当社では「クレド(行動規範)」を22項目掲げていますが、その原型となったのがこの鬼10箇条です。
たとえば、「プラス10点の回答をする」「必ず自責で捉えて行動する」「できないとは言わない」など、一つひとつが仕事に対する基本姿勢を示すものでした。とにかくこの指針を徹底し、社員全員が同じ意識を持って行動することを第一にしていたのです。
特に、「お客様にどうすれば喜んでいただけるか」という視点は、当初から最も重視していた部分です。営業としての経験の中で、最後まで諦めずに向き合う姿勢が信頼を生み、それが結果につながるということを肌で実感してきました。
その理念を言語化したものが鬼10箇条であり、創業期の経営方針と呼べるものは、まさにこの“行動の軸”そのものでした。
経営者として仕事をするなかで、どのような苦労がありましたか?
経営をしていくなかでこれが一番大変だったと断定できるものは正直ありません。日々さまざまな課題が発生し続けるため一つに絞るのは難しいのですが、それでも振り返ると「人」と「お金」の2つは、特に大きな苦労の種だったと感じています。
まず「人」に関しては、採用の難しさを痛感しました。人材を採用しても思うように成果が出なかったり、トラブルを起こしてしまったりと、人にまつわる問題は避けて通れませんでした。一人の人材によって組織全体に影響が及ぶケースも少なくなく、採用とマネジメントの難しさを痛感しました。
もう一つが「お金」、特にキャッシュフローです。営業利益は後からついてくるものですが、キャッシュフローがなければそもそも事業を継続することができません。創業期は財務的な管理体制も未整備で、気づいたときには資金が底をつきそうになっている、ということが何度かありました。メンバーにも大きな迷惑をかけてしまった経験でもあります。
特にWiFi事業を立ち上げた背景には、この資金繰りの危機がありました。当時、Webマーケティングで取引していた大口クライアントが相次いで契約を打ち切り、事業の屋台骨が揺らぎました。さらにオフィス移転直後でキャッシュが極端に少なく、このままでは4カ月後に資金が尽きるという状況にまで追い込まれたのです。そこから銀行融資が決まり、なんとか会社を存続させることができましたが、ギリギリの綱渡りでした。
また、意外な意味で難しかったのが事業が成長した後の局面です。市場シェアをある程度獲得した段階になると、新しいチャレンジよりも守りに入らざるを得なくなります。市場の伸びが鈍化し、攻めの姿勢を保ち続けることが難しくなるのです。そのなかで「何を新しく始めるのか」という判断には、常にキャッシュフローの制約がつきまとい、やりたいことをやり切れないもどかしさがありました。
こうして振り返ると、会社の成長段階ごとに課題の質は変わっていきますが、最も重要なテーマは常に「人」と「お金」だったと思います。
採用の際はどのような工夫をされていらっしゃるのですか?
当社では採用時に、「面談シート」を活用して候補者の特性を可視化し、適性を見極める仕組みを設けています。これは感覚的な判断ではなく、タイプ分類に基づいて定量的に評価するための独自のフレームワークです。
具体的には、候補者の特性を「エキスパート(特化力)」「エンパシー(コミュニケーション力)」「イデア(地頭力)」「コンプライアンス(誠実力)」の4タイプに大きく分類しています。さらに、これらの要素を細分化し、25分類にまで落とし込むことで、より精緻なマッチングを可能にしています。
たとえば「エキスパート型」は特定分野に深くのめり込むタイプで、専門性を活かして成果を出す傾向があります。集中力が高く、地頭の良い人材が多いため、どの部署でも活躍できる汎用性の高さが特徴です。
一方、「エンパシー型」は人間関係やチームワークを重視し、仲間と協調しながら成果を上げるタイプ。営業や組織づくりのフェーズでは特に力を発揮しやすい傾向があります。
また、「コンプライアンス型」はルール遵守や誠実な対応を重んじるタイプで、公的機関や管理部門に向いているケースが多いです。「イデア型」はアイデア創出力や論理的思考力に優れ、新規事業や企画領域で強みを発揮します。
さらに、これら4タイプに「ソースエナジー」と呼ばれるエネルギー軸を掛け合わせることで、候補者のポテンシャルを数値化し、採用判断に活かしています。たとえば、ある部署では「イデア×エキスパート型」が成果を上げやすい、といった傾向を分析し、事業モデルとの相性も踏まえた採用が可能になっています。
この仕組みを用いることで、「なんとなく合いそう」といった主観的な判断に頼るのではなく、組織との適性や活躍の可能性を科学的に見極めることができるようになっています。
この独自のフレームワークはどのようなきっかけで作られたのですか?何か参考にされたものがあるのでしょうか?
これは、もともと私自身が採用やチームマネジメントの現場で感じていた“違和感”から自作したものです。どこかのモデルを参考にしたわけではなく、社内で繰り返し起きていた課題を構造化する中で書籍や様々な経営者の話を聞く中で、独自に理論化したものです。
きっかけは、「なぜこの人はこの業務はできるのに、別の業務はうまくいかないのか」という疑問でした。器用に何でもこなせる人がいる一方で、単純な業務が苦手な人もいる。期限を守ることに厳格なタイプと、柔軟性を重視するタイプが対立することもありました。たとえば、あるタイプは「ちゃんと仕事しているんだから多少遅れても問題ない」という考え方をするのに対し、別のタイプは「ルールを守れないのはあり得ない」という認識を持っており、価値観や行動の軸がまったく違うことが目立つことが多々ありました。
また、抽象的な戦略思考が得意な人はロジカルに課題を整理できますが、現場で人の感情を汲み取るのが苦手なケースもあります。逆に、共感力が高くチームを盛り上げるのが得意な人は、戦略設計のような抽象的な思考に弱いこともある。どちらも長所と短所があり、どのタイプが優れているという話ではありません。
こうした違いを構造的に整理し、バランスのよいチームをつくるための基準が必要だと考え、この「4象限+25分類」の面談マップを開発しました。これは昨年、私自身が休暇中にまとめ上げたもので、現在では採用時や人材配置の判断にも活用しています。
実際に、社内で優秀だと評価されているメンバーにテストしてみると、やはり高いスコアが出る傾向があり、一定の相関も見えてきています。今後はさらにデータを蓄積し、より精度の高い採用・配置判断につなげていく予定です。
今後の展望について教えてください
現在、弊社は外から見ると「通信会社」という印象を持たれることが多いのですが、もともと通信事業をやることを目的に創業した会社ではありません。ですので、今後も通信だけに特化していく構想は持っていません。
この考え方は、組織の編成にも現れています。たとえば弊社には「CS部」という部署がありますが、これは一般的な「カスタマーサポート(Customer Support)」や「カスタマーサクセス(Customer Success)」ではなく、「カスタマーサイエンス(Customer Science)」の略称です。個人・法人を問わず多くのお客様に支えられて事業が成り立っているからこそ、そこから得られる「声」や「データ」を一切取りこぼさないことを重視しています。CS部では日々お客様の属性や意見をデータとして蓄積し、分析しています。
たとえば eSIM 事業も、当初から構想していたものではなく、お客様の声を拾い上げる中で生まれた新規事業です。ウィズコロナの影響で海外渡航者が増え、「海外でも使える WiFi が欲しい」という要望が多く寄せられました。しかし深掘りしていくと、お客様が本当に求めていたのは「WiFiルーター」という“物体”ではなく、「通信ができる環境」そのものでした。そこから「物理的な機器を持ち運ぶ必要がない」eSIM というプロダクトの着想に至ったのです。
今後もこのように、お客様の声を丁寧に分解・分析し、そこから見えるインサイトを基に新規事業を生み出していきたいと考えています。10年後には「昔は通信事業もやっていたよね」と言われるくらい、事業の軸が進化している可能性もあると思っています。
とはいえ、通信は生活に密着したインフラであり、お客様のデータを最も集めやすい領域でもあります。だからこそ、通信を軸にしながら事業領域を拡張していくことで、お客様にとってより価値のあるサービスを生み出していく未来を描いています。
最後に他の経営者におすすめの本のご紹介をお願いいたします
私は普段からかなりの数の本を読むタイプですが、僭越ながら実は「おすすめの本」を積極的に紹介することは避けております。というのも、多くの人は自分の課題と直結しない内容だと、結局読まないことが多くお金や本の場所の無駄にさせてしまうからです。だからこそ「誰の何の課題に、どのタイミングで役立つか」を意識してご紹介するようにしています。
その前提とはなりますが「経営者にとって最も重要なこと」と考えるときに「事業選定力」が重要と考えて居ます。そのため、1冊だけ挙げるとすれば、プロダクトマーケティングの観点から強くおすすめしたい本があります。それが、梅澤伸嘉氏による『「梅澤式」だと、なぜ超ヒット商品がこんなに作れるのか』という書籍です。おそらくマーケティング業界でも知らない人が多い本ですが、私自身、プロダクト開発に深く携わってきた中でこの一冊から多くを学びました。
企業経営において本質的に重要なのは「どんな商品をつくるか」であり、人員体制や資金力はその次に来るものです。つまり、商品そのものが事業の成否を左右します。梅澤先生は、この「プロダクトアウト」の観点から商品開発を体系的に言語化しており、その内容は日本でもトップクラス、世界的に見ても非常にレベルが高いと感じています。
世の中には「マーケットイン」のノウハウは多く存在しますが、「プロダクトアウト」でヒット商品を生み出すための理論はほとんど体系化されていません。その意味でも、この本は非常に貴重な一冊です。しかも価格も手頃で、これほどの知見が得られる本はなかなかありません。私にとっては、まさにプロダクトマーケティングの“バイブル”的な存在です。
ぜひご一読ください。
| 『「梅澤式」だと、なぜ超ヒット商品がこんなに作れるのか』 梅澤伸嘉 (著) |
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企業の「発信したい」と読者の「知りたい」を繋ぐ記事を、ビジネス書の編集者が作成しています。
企業出版のノウハウを活かした記事制作を行うことで、社長のブランディング、企業の信頼度向上に貢献してまいります。
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