注目キーワード
  1. 創業
  2. 二代目
  3. 社員
  4. 家業
  5. お金

株式会社アドックインターナショナル代表 小林常治氏

  • 05/16/2025
  • 05/16/2025
  • 仕事
  • 213回

今回は株式会社アドックインターナショナル代表、小林常治氏にお話を伺ってきました。

「社長の履歴書」だけの特別なインタビューです。

ぜひご覧ください!

 

 

会社名称 株式会社アドックインターナショナル
代表者 小林常治
設立 1990年
主な事業 ・情報システムの設計・構築・運用・保守

・通信運用システムの開発・販売・アウトソーシング

・テスティングサービス

・テスティングに関わるプロダクトの販売/構築/運用保守

・テスト自動化、業務自動化(Robotic Process Automation)サービス

・上記に伴う技術教育サービス

・DXに関わる情報通信システム導入サービス

社員数 143名(取材時)
会社所在地 東京都立川市曙町2丁目36-2 ファーレ立川センタースクエアビル 6F
会社HP https://adoc.co.jp/

 

事業内容を教えてください

株式会社アドックインターナショナルはエンジニアリングサービスを提供している会社です。設立35周年を迎え、「IT現場のイノベーションを、常に運用目線から追求する」という想いのもと、大手携帯キャリアのネットワーク構築など国内外のインフラ構築・通信に関する事業を中心に展開しています。

近年はアジャイル、エクストリームプログラミングといった開発手法が変化するソフトウェア品質検証において、テスト自動化を中心に設計から実行まで一貫してカバーする高度なテスティングサービスに取り組んでいます。

 

E2Eテスト自動化ツール『Provar』について教えてください

「Provar」は、Salesforceとその広範なエコシステムにおいて高い支持を得ているE2E(エンドツーエンド)テストの自動化ツールです。Salesforceは、世界中の企業で利用されているクラウド型のCRM(顧客関係管理)プラットフォームで、業務の効率化やデータ活用を支援する非常に便利なシステムです。

日本国内でも7000社以上の企業に導入されていると言われており、それぞれの企業に合わせた柔軟なカスタマイズが可能です。また、Salesforceでは年3回のバージョンアップが実施され、新しい機能や改善が次々と提供されるため、利便性が高い一方で、頻繁な変更への対応が必要となり、運用が煩雑化することもあります。

そこで役立つのが「Provar」です。「Provar」は直感的なアプローチを採用しており、導入後すぐに開発・QA(品質保証)部門の担当者が自動テストを実施できます。当社はロンドンの「Provar」と出会い、日本の販売総代理店として皆様にお届けしています。Salesforceの運用でお困りの方は、ぜひこちらのページをご覧ください。
https://provar-adoc.com/

 

ここからは小林社長のことをお聞かせください。どのような学生時代でしたか?

何よりもバイクが好きな学生でしたね。昔から機械が好きで友達と一緒にバイクをカスタマイズして、舘ひろしさんのようにツーリングに明け暮れていました。機械いじりから段々とソフトウェアに興味を持ち、工業高校では電子科でプログラミングを学んでいました。将来は世界を飛び回るエンジニアになりたいと思っていました。

 

卒業後はどのような会社でキャリアをスタートさせましたか?

叔父が経営をしていた内視鏡メーカーに入社しました。

レンズを作る部署に入社しましたが、驚いたのが設計から製造まで全て手作業だったことです。当時、内視鏡メーカーは日本に2社しかないにも関わらず、約10人で仕事をしていました。

そのとき、コンピューターを使えばすぐ出来ると考え会社に提案をし、叔父の知り合いと協業してプログラムを組みました。

しかし数年後、外資系の企業が内視鏡業界に参入したことから、この会社は倒産してしまいました。

 

その後はどちらに転職されたのでしょうか?

実は近所の人の紹介で通信器メーカーに就職しました。この会社に入ったことで、学生時代に夢に見ていた世界を飛び回るエンジニアになることができました。

当時は電話での通話を電話局の交換機が行っていました。今はルーターですが、私はその交換機を作る仕事をしていました。当時はアナログ式の電話交換機が主流でしたが、世界中のメーカーが商用デジタル交換機の開発・製造を進めていました。自分はハードウェアエンジニアとして取り組んでいましたが、開発はかなり難航していました。そんな開発・製造の最終段階で、海外の電話局への販売が決定してしまいます。製品はまだ完成していなかったのですが、お客様との契約がどんどん増えていきデジタル交換機とともにエンジニアも一緒に現地へ行って、最終調整しながら、製品を納品していくという仕事がスタートしていきます。

アメリカには合計で2年半ほど駐在しましたが、ホテルにも帰らず、土日も夜もなく、ひたすら働いていましたね。2交代制で夜中の仕事が終わったあとも、先輩から「おっ!いいところにいるな。ちょっと手伝って行けよ」と言われ少し手伝うつもりでしたが、気が付いたら昼。食事は3食マクドナルドで済ませていました。

仕事は体力的に大変な部分も多かったですが、システムが完成して電話を使い始めたことを知らせるランプが点灯し始めると、顔も知らない沢山のお客様が自分の開発したサービスを使ってくれていることに感動しました。そして、また次の電話局でも同じように最終調整の仕事に取り組むことができました。

 

本当に大変なご経験でしたね

そうですね。ですが、アメリカに受け入れられたシステムとして世界中に売れるようになり、その後も私は世界中で仕事をしました。

海外での仕事を通じて、忘れたくても、どうしても忘れられない出来事があります。

それは、約束した通りのシステムを作って納品をしたものの、使い勝手が悪くお客様から怒られたことです。

振り返ると、お客様の使い勝手は一切考えておらず、“約束した機能が動けば良い”という気持ちで作っていました。運用面についてお客様と対話もしていません。

そのため、使いづらいと言われてもどうすることもできませんでした。

また、お客様は納得していないのに、約束したシステムは納品されているのでお客様は我々に代金を払わなければなりません。

お客様は納得していないのに代金を払って、そのお金が我々の給料になっていることを自覚したとき、とても辛い気持ちになりました。様々な国で仕事をしながらも、メーカーの仕事のやり方に違和感を感じ、メーカーとユーザーの間に入ったエンジニアリングをする会社を作ろうと決意しました。

 

これまでに経営者になりたいと思ったことはありましたか?

ないですね。会社の社長はすごく優秀な人しかできないと思っていました。自分は中途半端なので、デジタル交換機の仕事を通じて世界で活躍できるエンジニアにはなれたけれど社長は無理だと思っていました。しかし、周りの様々な企業を見ても私の理想を実現しているエンジニアリングの会社は見つけられなかったので、まずは一人で創業することにしました。

そして35年が経ち、現在は150人規模の会社に成長することができました。

 

社長になって大変だったことはありますか?

経営を全く知らずに起業したので、その都度課題が来たら乗り越えて苦労を重ねてなんとかやってきました。

また、本が好きなので図書館へ行ってその時に必要な知識をつけていきました。経営をして35年経ちますが、未だに経営に自信はありません。

しかし、どんなことがあっても乗り越えられる。乗り越えていくという覚悟だけはできていると思っています。

 

経営者とエンジニアの仕事で共通すること、異なる部分はありますか?

0⇨1にするやりがいは同じかもしれないですね。

エンジニアは1人で仕事をすることもできますが、経営者は社員を抱えているので、1人でできることは限られています。起業当初はエンジニアを募集しても応募して来てくれる社員がいなかったので、近所の居酒屋へ行って「まずは海外行って活躍しよう!みんなで仲良くやろうよ」というテンションで出会った若者たちに声をかけていきました。今の時代でやったら怪しい人になってしまいますが(笑)、その当時は昭和の勢いのままに突き進んでいた時代でしたからね。その結果、今では素晴らしく面白い社員が集まる会社になっています。

私は「ポンコツ」という言葉が好きなんです。なぜなら、優秀で頭でものを考えようとする人たちにはできない、ポンコツだからこそできる仕事があると思っているからです。「ポンコツ」というと、出来損ないとかダメなものというイメージがあると思います。確かに最初はできないことが多いかもしれませんが、社内で技術を学ぶことによって、優秀な人にはできない奇抜な発想や斬新な視点でよりよいソリューションやシステムを提供できると思っています。

 

どのような研修をしているのでしょうか?

外部研修も社内研修もありますが、社内では技術的な部分を中心に鍛えています。

現場では実践を通して技術を教えていきますが、これから先の未来に使える技術を教える場として、先輩と新入社員がチームを組み、テーマを好きに決めて1年間かけてシステムを作る研修「ジェダイプロジェクト」を行っています。

社員が興味のあるものや気になっていることをテーマに取り上げるので成長が早く、一流メーカーが作るような高度なシステムを作ってきたり、自分では想像もしないようなプログラムを作ってきたりと毎度驚かされます。

ただ言われたものを作るのではなく、自分で考えて工夫してものを作る力は大切です。そして、何よりも「仕事が楽しい」と思えることが大事ではないでしょうか。月曜日に目が覚めて「会社を休みたい」となるのではなく、土曜も日曜も「仕事したい」と思ってもらえるような自由な環境を提供できるようにしたいです。社員が本当に作りたいものを情熱をかけてつくれることを願っています。

 

今後の展望を教えてください

IT業界はソフトウェア依存の時代へとシフトしていくと考えています。ハードウェアが飛躍的に進化したことで、ほぼどんなソフトウェアでもスムーズに動作できる環境が整ってきたと感じています。ソフトウェアで実現できることが大幅に広がっていますが、ソフトウェアの品質を担保するための試験環境や方法論は、ソフトウェア開発と同じように日進月歩で、まだまだ伸びしろのある分野だと感じています。これからは効果的なテストプロセスの構築を考えて、世界に広げていきたいです。

日本は特に少子化が進み、エンジニア不足が深刻な問題となっています。単に人数を増やすだけでは根本的な解決になりません。人が作業をすれば必ずミスが発生し、重要なインフラが停止するなどの大きな事故につながることもあります。また、人間は体調が基盤となっているので、特に夜間の作業は人間が行うべきではないと思っています。自動化や近年ではAIの活用も進んできていますが、今後はさらにその流れを加速するために貢献していきたいです。

 

経営者におすすめの本を教えてください

「愚者は経験から学び、賢者は歴史から学ぶ」とよく言われます。過去の出来事を振り返ることで、未来へのヒントを得ることができます。私が大好きな作家、司馬遼太郎さんの明治維新を描いた物語は、20代や30代の若者にも「自分たちが世の中を変えられるんだ」という希望を与えてくれました。私自身、大きな影響を受けた作品です。

また、技術というものは、その使い方次第で素晴らしい結果にも、思わぬ問題にもなります。結局、技術の根底には人間の考え方や哲学があると思います。基本的な考え方をしっかりと学ぶことが、技術を社会のためにより良く活用するための鍵だと感じています。最近では、イスラエルのユヴァル・ノア・ハラリ先生の著書がとても参考になりました。

経営や経済に関する本はたくさんありますが、中でもドラッカーさんの本は、時代が変わっても必要とされる考え方が多く含まれていると感じるので、ぜひ一度読んでいただきたい一冊です。

気になったものから、ぜひご覧ください。

司馬遼太郎 作品一覧はこちら
ユヴァル・ノア・ハラリ 作品一覧はこちら
P.F.ドラッカー 作品一覧はこちら

 

投稿者プロフィール

『社長の履歴書』編集部
『社長の履歴書』編集部
新入社員を含めたフレッシュなメンバーを中心に、出版サポートの傍らインタビューを行っております!

就活生に近い目線を持ちつつ様々な業種の方との交流を活かし、「社長に聞きたい」ポイントを深掘りしていきます。

代表者様のキャリアを通して、組織の魅力が伝わる記事を発信していけるよう、これからも一生懸命運営してまいります!