鎌倉パスタ 齋木氏

今回は株式会社鎌倉パスタ代表、齋木健作氏にお話を伺ってきました。

「社長の履歴書」だけの特別なインタビューです。

ぜひご覧ください!

会社名称株式会社鎌倉パスタ
代表者齋木健作
設立2006年3月1日
主な事業生麺専門鎌倉パスタ事業
社員数232人 [2,131人](2025年3月末現在)
※従業員数は就業人員であり、パートタイマーは年間の平均人員(1日8時間換算による年間平均人員)を[ ]外数で記載しております。
会社所在地   岡山県岡山市北区平田173番地104
会社HPhttps://www.saint-marc-hd.com/kamakura/

事業内容のご紹介をお願いします

鎌倉パスタは、生パスタを軸に展開するパスタ専門店です。私たちは、タグラインである「いい時、創ろう」のもと、お客様にとっての「最高のひととき」を創造することを事業の根幹に据えています。

私たちが大切にしているのは、生パスタだからこそ提供できる価値を、味だけでなく、見た目や食事の時間そのものとして届けることです。特に生パスタは調理や提供の仕方によって印象が大きく変わるため、一皿の完成度をどこまで高められるかを重視してきました。温度管理や調理時間、お客様にお出しするタイミングまで含めて、生パスタの価値をどう伝えるかを考え続けていますし、ビジュアルも含めた体験を、付加価値として届けていきたいと考えています。

そして、こうした考え方を軸に、鎌倉パスタから派生したブランドも展開しています。

てっぱんのスパゲッティ」は並盛300gというボリュームのあるスパゲッティを熱々の鉄板で提供する業態です。名物の「1枚ベーコンスパ」をはじめ、20種類以上のメニューを揃え、しっかり食事を楽しみたい方に向けた構成としています。パンチのある味付けは食事としてだけでなく、お酒と一緒に楽しめる点も特徴です。

おだしもん」は店内で仕込む本格的な出汁をベースにしたブランドです。「かけパスタ」や「つけパスタ」など、日本の食文化に馴染みのある出汁を生かした食べ方を提案しています。和スイーツも用意し、食事から喫茶まで幅広い利用シーンに対応しています。

町屋イタリアン ぎをん椿庵」は、出格子や虫籠窓、犬矢来といった京町家の意匠を取り入れた空間で、生パスタを中心としたイタリア料理を提供するブランドです。非日常性のある空間の中で、和と洋が交差する体験を届けています。宇治抹茶を使った和スイーツも用意し、ゆったりとした時間を過ごしていただける構成としています。

このように、利用シーンや価値観に応じたブランド展開を行うことで、鎌倉パスタは新たなお客様との接点を生み出してきました。

また、鎌倉パスタは商品だけで成り立っているブランドではありません。現場で働く一人ひとりが、どのような考え方で仕事に向き合い、何を大切にしているのか。そうした内側のメッセージや会社風土も含めて、鎌倉パスタの価値だと捉えています。

鎌倉パスタの詳細は以下のURLをご参照ください。

https://www.saint-marc-hd.com/kamakura

ここからは齋木社長のことをお聞かせください。鎌倉パスタへの入社を決めた当時の状況を教えてください

当時の私は正直なところ、明確なキャリアの軸が定まっていない状態でした。転職を考えながらいろいろなことを模索していて、落ち着かない時期だったと思います。

入社前の鎌倉パスタに対するイメージも、ほとんどなかったというのが実態です。ブランド自体をよく知っていたわけではなく、「鎌倉」という名前から想像できること以上の情報も持っていませんでした。求人を見たときも、「どんなパスタ屋なんだろう」という程度で、強い先入観はなかったと思います。

一方で、サンマルクグループについては以前から知っていました。創業社長の存在や、成長企業としての印象があり、会社としての話には関心を持っていました。また私は岡山出身なので、学生時代にサンマルクグループ1号店である大元店を利用した経験もあり、その記憶も残っていました。

そうした中で、「鎌倉パスタをこれから大きくしていく仲間を募集している」という求人を目にし、これが一つのきっかけになるかもしれないと感じました。飲食業は未経験でしたが、だからこそ一度飛び込んでみようと考え、入社を決めました。

鎌倉パスタは、店名から鎌倉発祥だと思われることも多いブランドですが、齋木社長ご自身は最初に知ったときにどのような印象を持たれましたか?

私も皆さんと同じように当初は「なぜ鎌倉なのか?」「岡山の会社なのに鎌倉?」という疑問は自然と出てきましたし、社内でも同じような声は多かったと思います。

ただ、その由来を知る中で、鎌倉という地名が持つ「和」や「日本的なイメージ」、そして和と洋を組み合わせるという発想を、パスタという業態に重ねているのだと理解するようになりました。インバウンドを意識して名付けたわけではないと思いますが、日本らしさを連想させる名前をあえて選んだ、という意図は感じました。

当時の鎌倉パスタの社内状況について教えてください

私は2007年9月、33歳で中途入社しましたが、まだどのようなポジションがあるのかも不透明な未成熟の会社、組織でした。店舗数も約30店舗、年商35億円程で、鎌倉パスタを知らない人のほうが多い時代です。しかし、サンマルクホールディングスという母体があり、既に成熟化した業態も存在していたので、それらの業態をイメージし「いつか、鎌倉パスタも有名にしてやるぞ」という思いはありました。そのために自分ができることは…といった概略的なビジョンもありましたが、実際は目の前の店舗運営に精一杯でした。

鎌倉パスタに入社されてから代表就任までにご経験されたお仕事で、「この経験をしておいてよかった」「この仕事をやりきったから今の自分がある」といった印象に残っているエピソードはありますか?

最も大きかったのは、店長時代の現場経験です。入社後約1か月間の本部研修を経て、すぐに香川県高松市にあるイオンモール高松店へ店長として配属されましたが、最初の半年間は接客や調理など、基本的なことを身につけるだけで精一杯でした。

なかでも強く印象に残っているのが、超繁忙日を迎えた朝に、スタッフ4名が同時に病欠した出来事です。当時の私は「店長とは自分が何でもできて、現場を力で回す存在」だと思っていましたし、少ない人数で出勤してくれたスタッフも、私にそれを期待していると感じていました。ただ、その日はどう考えても自分一人でカバーできる状況ではありませんでした。

そのため、途中で完全に吹っ切れて営業中はお客様への事前説明やお詫び、そして厳しい状況の中で働いてくれているスタッフへの声かけに徹しました。それが正解だったのかどうかはその場ではわかりませんでしたが、営業終了後、片付けをしているときにベテランのスタッフから「今日の店長は流石だった」「大変だったけど、働いていて心地よかった」と声をかけてもらいました。

その一言が、それまでの私の考え方を大きく変えました。優秀な店長、優秀な社員とは、自分が何でもできる人ではなく、「誰でもできる状態」をつくる人なのだと気づいたのです。現在社長として会社を動かす立場になっても、その考え方は変わっていません。属人化に頼るのではなく、仕組み化や標準化によって、組織が再現性を持って回る状態をつくることが重要だと考えています。

あの店で、あの日に一緒に働いたスタッフの存在があったからこそ、今の自分があると感じています。

その後のキャリアについて教えてください

当時のサンマルクホールディングスの役員から、「いいお店を一店舗つくるだけでなく、それを広げていく役割を担ってほしい」と声をかけていただき、スーパーバイザーとして関東エリアを担当することになりました。当時はまだスーパーバイザーがエリアの最高責任者という立場だったため、現場に近いところで多くの判断を求められる経験を積みました。

その後、店舗数が増え、組織として営業部の設立が必要になったタイミングで営業部長を経験し、さらに人材開発部や販売促進部など、会社の成長に合わせて必要となる部署を立ち上げ、運営する役割を担ってきました。2011年の東日本大震災の際には、計画停電や不規則な営業時間など、毎日がイレギュラーな状況でしたが、現場と連携しながら何とか事業を継続してきました。

その後、2012年には鎌倉パスタとして初めての海外出店にも関わり、店舗運営だけでなく、経営そのものを意識するようになりました。さらに2014年には、創業社長による経営塾を受講し、企業経営や外食産業の存在意義、そして経営理念について、直接教えを受けました。この経験がきっかけとなり、自分自身がより大きな責任を担う立場に進むことも一つの役割なのではないか、と考えるようになりました。

こうした現場から本部、国内外の事業経験を積み重ねた結果として、2020年4月に代表取締役社長を任されることになりました。

店長からスーパーバイザーになり、現場を見る視点はどのように変わりましたか?

店長からエリアを担当する立場になったことで、自分が直接動けば解決できることは一気に減りました。店長時代は、自分が現場に入って判断し、手を動かせば何とかなる場面も多かったのですが、複数店舗を見るようになるとそれでは通用しません。

特に強く感じたのは、「言葉だけでは伝わらない」ということです。自分の中では当たり前だと思っていることでも、伝え方が曖昧だと、現場では全く違う形で実行されてしまいます。実際に、レシピやオペレーションについても、表現一つで完成形のイメージが人によって大きくずれてしまう場面を何度も目にしました。

この経験から、誰かの感覚や力量に頼るのではなく、「これが完成形だ」という基準を明確にし、仕組みとして伝えなければ店舗の品質は揃わないと痛感しました。エリアを見て回る中でうまくいっていない店舗ほどルールや基準が曖昧で、伝達も属人的になっているケースが多かったと思います。この時期に、標準化やマニュアル化の重要性を強く意識するようになりました。

スーパーバイザーとしてご経験されたことの中で、今に活きていることはありますか?

スーパーバイザーのときは判断を求められる場面も多くさまざまな壁に直面しましたが、その都度同僚やエリア内の店長に支えられながら前に進んできたと思っています。

一方で、自分より年上で社歴も長い店長たちを前にエリア会議を主催することには大きなプレッシャーがありました。事前に提出してもらう業績報告書にはびっしりとメモを書き込み、想定される質問や論点を整理して臨んでいました。上司という立場である以上、その場で答えられないことは極力なくすべきですし、会議での発言やその後の動きはすべて現場に直結します。信頼してもらうためには、言葉ではなく行動で示すしかないと考えていました。

また、この時期に自分の中で強く根付いたのが「自責」という考え方です。当時の組織規模では、「会社が聞いてくれない」「上司が動かない」といった形で責任を外に向けることはできませんでした。変えたいのであれば、自分でつくり、自分で動くしかない。そうした環境の中で、「自分がやれば変えられるかもしれない」という感覚とともに、密かに大きな野心を抱くようになっていました。

コロナ禍での社長就任について、当時の気持ちをお聞かせください

正直に言うと、不安はありました。まさか本当に営業ができなくなるような事態が起きるとは思っていませんでしたし、外食産業全体が大きな打撃を受ける中での社長就任でした。ただ一方で、これまでの経験を振り返ると、厳しい状況のときほど、自分自身がどう動くかが問われてきたとも感じていました。

私の考えとして、一人でも部下がいる立場であれば、その上司である自分が会社から信用されていなければ、部下も正しく評価されないと思っています。自分がより重い役職に就くことで、仲間の役割やポジションを次の世代に渡し、さらに磨いてもらう。その循環をつくることが、組織として前に進むために必要だと考えています。

不安がなかったわけではありませんが、これまで積み重ねてきた考え方と行動を、社長という立場で実行するときが来たのだと受け止めて、就任しました。

また振り返ってみると、コロナ禍は鎌倉パスタにとって、一度立ち止まって「このままでいいのか」を考える時間でもありました。社員として働く中でも現状維持に寄ってしまい、自分たちで考える力が弱くなっているのではないかと感じていた時期でもあります。そうした意味では、気持ちを引き締めるきっかけになった出来事でした。

就任時は経営者としてどのように動こうと思われていましたか?

就任時にまず意識したのは、今後さらに大きく変化していく世の中に対し、組織としての対応力を高めることでした。そのために、仮説を立てる力と課題解決の手法をできるだけ多く持つことを優先しましたが、一方で、売上や店舗数といった定量的なKPIについては、あえて前向きな目標を設定しました。

というのも、当時は組織として疲弊感が出始め、大企業病に陥りかねないフェーズにあったからです。2014年から2018年までの5年間で計103店舗の新規出店を進めた結果、業績は右肩上がりとなり勢いのある店舗や社員も多く存在していましたが、その一方で、既存店の営業状態の悪化や現場の負担増といった課題も見え始めていました。

鎌倉パスタの根底にあるのは、「いいお店を、より多くの土地や人に紹介したい」という考え方です。その結果として、増収や店舗数の拡大、増益といった目標を掲げていますが、当時から数字を追うこと自体を目的にしてきたわけではありません。

そこで最初に取り組んだのが、現場を支える各部門やリーダーの役割を明確にすることでした。顧客満足を創り出す「プロ集団」を目指し、組織体系を見直したうえで、適材適所を重視した人的配置へと切り替えました。誰が何を担い、どこで価値を発揮するのかを整理することで、労働生産性やモチベーション、エンゲージメントの向上につながると考えたからです。

環境変化が激しい中では、過去に立てた計画がそのまま通用するとは限りません。軌道修正や、大きな方向転換も視野に入れながら、変化に対応できる組織づくりを進めてきました。

創業社長による経営塾では、どのような経営者像を教えられたのでしょうか?

経営者像については、創業社長から明確に教えていただいたものがあります。具体的な言葉や内容について、ここで詳しくお伝えすることはできませんが、いくつかの考え方が体系として整理されており、それが一つの大綱として示されていました。

ただし、その大綱をそのままなぞればよい、という教えではありませんでした。創業社長が一貫して伝えていたのは、「それらを軸にしながらも、自分の頭で考えなければいけない」ということです。本や新聞、世の中の情報に触れること自体は大切ですが、書いてあることをそのまま自分の答えにするのではなく、「それは自分の仕事に照らしてどうなのか」「自分はどう考えるのか」を問い続ける姿勢が重要だと教えられました。

また、「守破離」という言葉も印象に残っています。基本を守り、そこから学び、やがて自分なりの形をつくっていく。そのプロセスを大切にするということです。さらに、自分中心ではなく、相手やお客様のことを考える「利他」の心についても繰り返し語られていました。テクニックや手法よりも、最終的にはそうした精神面を大切にすることが、経営者として重要なのだと教えられたと受け止めています。

売上をどう伸ばすか、業界をどうつくるかといった話も当然出てきますが、最後は必ず「人を大切にすること」「経営は自分のためではなく、人に奉仕する価値のある産業であること」に立ち返って締めくくられていました。その考え方は、今も自分の中で大切にしている軸の一つです。

鎌倉パスタを経営するうえで、最も大切にされている判断基準はありますか?

最も大切にしているのは、お客様の声です。365日毎朝、お客様からの声を確認することが日課です。ただし、表に出ている言葉だけでなく、その背景まで読み取ることを意識しています。お客様が何に満足し、どこに違和感を持ったのか。その理由を考えながら判断することが重要だと考えています。

実際の判断としては、一時的に売上や客数が大きく伸びる施策であっても、お店の状態が整っておらず、不満足を生む可能性があるのであれば実施しません。結果として悪い評価が広がってしまう状態は、長い目で見てブランドにとってプラスにならないからです。私の中では、「悪評を押し売りするようなことはしない」という考えが基準になっています。

まずは正しい状態に手当てをすること。そのうえで初めて、新しい施策やチャレンジに進むべきだと考えています。メニューや商品施策についても同じで、現場の状態とお客様の体験が一致しているかを常に確認しながら、意思決定を行っています。

鎌倉パスタでは「味」「雰囲気」「サービス」の3軸を重視されていますが、それぞれどのような価値提供を目指しているのでしょうか?

私たちは、お客様にとって「いいひととき」をつくることを大切にしています。その中核にあるのが、「味」「雰囲気」「サービス」の3つです。どれか1つだけが突出していても十分ではなく、この3つがそろって初めて、鎌倉パスタとしての体験になると考えています。

「味」については、生パスタを軸に、素材や調理の状態を妥協せずに提供することを前提にしています。原価率が上がることもありますが、それ以上に、お客様にとって納得できる一皿であるかどうかを重視しています。

「雰囲気」については、和を基調とした落ち着いた空間の中で、食事の時間そのものを心地よく過ごしていただくことを意識しています。

「サービス」は、単に作業をこなすことではなく、お客様のひとときをどう支えるかという視点で考えています。ご来店からお見送りまでの一つひとつの接点で、迷いなく、気持ちよく対応できる状態をつくることが重要です。

この3つを総合的に整えることで、「鎌倉パスタを選んでよかった」と感じてもらえる価値を提供したいと考えています。

鎌倉パスタの「味」は具体的にどのようなものなのでしょうか?

メニュー開発では、お客様アンケートを軸にしながら、少なくとも年に4回は新メニューを開発しています。開発会議は毎週行っており、私自身も必ず参加していますが、その中で常に確認しているのが、ブランドコンセプトと味が一致しているかどうかです。

判断の際には社長という立場だけでなく、さまざまな立場に自分を置き換えて考えるようにしています。例えば、お一人で来店されるお客様なのか、ご家族なのか、記念日で利用されるのか。そのお客様が召し上がっている姿を具体的に想像し、満足した表情が浮かぶかどうかを自分なりに確認しています。これは感覚的な話ですが、経験を積むことで、表情や会話まで想像できるようになってきました。

もう一つ大切にしているのが、現場がその商品を「売りたい」と思えるかどうかです。味だけでなく、売価や訴求物のデザインイメージも含めて考え、店舗や営業部が前向きに扱える商品であるかを確認しています。なぜなら、自分たちの手で届けたいと思える状態でなければ、ブランドコンセプトとずれてしまうからです。そのため、これらが一致していれば大きな乖離は起きないと考えています。

ブランドコンセプトと一致する味とは、具体的にどのようなものなのでしょうか?

ブランドコンセプトと味を一致させるために、生麺の価値は感覚だけに委ねていません。象徴的なのが、提供時にお伝えしている「こちらは生麺でございます。生麺はソースを吸いやすいので、お早めにお召し上がりください」という一言です。これは、生麺の特性をそのまま言葉にしたものであり、私たちが考える生麺の肝でもあります。

生麺は、麺そのものだけでも、もちもちとした食感やのどごしといった特徴を表現できますが、それ以上にソースとの相性が非常によく、程よい加減でソースを吸い込み、生麺とソースが一体になる状態こそが、鎌倉パスタとして目指している味です。

感覚に頼るのではなく、「なぜ今食べてほしいのか」「どこに価値があるのか」を言葉として伝える。その積み重ねによって、ブランドコンセプトと味の一致を作っています。

現在(2026年2月18日時点)ファミリーマートでのコラボ商品第3弾が販売されていらっしゃいますが、コラボ商品の開発ではどのような点を意識して判断されていますか?

コラボ商品についても、判断の基準は変わりません。「鎌倉パスタとして出す以上、ここまでのクオリティには持っていきたい」というラインが自分の中にあり、そこに届くまで何度もファミリーマートさんと力を合わせて試行錯誤してきました。第1弾のときからコンビニのパスタだからと妥協せず、召し上がっていただいたときに「さすが鎌倉パスタだ」と感じていただけるかを最重要視してきましたし、今回第3弾となりより一層美味しい商品ができました。

第3弾の商品展開の詳細は以下のURLをご覧ください。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002178.000046210.html

和風コンセプトのお店が多くある中、鎌倉パスタの「雰囲気」の独自性はどの部分にあるのでしょうか?

お客様から見れば、鎌倉パスタはパスタ専門店であり、一般的には「洋食」のイメージを持たれると思います。ご指摘の通り、店内意匠や什器を和風にするだけであれば、コンセプトとしては珍しいものではないですし、特に近年はそうした店舗も増えてきました。

鎌倉パスタが独自性として大切にしているのは、「人」を通じたサービスです。私は店内で働くスタッフの所作や言葉遣いも、空間を構成する重要な要素であり、雰囲気の一部だと考えています。

その意味で、鎌倉パスタではサービス面において「和」の特徴であるおもてなしを重視しています。単に装飾が和風であると感じていただくだけでなく、遠くから聞こえてくる接客用語が心地よい和のBGMとして感じられるかどうか、所作や言葉遣いまで含めて空間全体で価値をつくることを意識しています。

そうした「和(おもてなし)と洋の融合」を、現場で働くスタッフ一人ひとりが体現してくれていることが、鎌倉パスタの雰囲気の特徴だと考えています。

「サービス」についてお伺いしたいです。アルバイトでも店舗が回る仕組みづくりと自動化に取り組んでいらっしゃいますが、そもそも、なぜこれを実現しようと思われたのでしょうか?

きっかけは、店長時代の現場経験です。先ほどお話ししたように、飲食は突発的な欠員や想定外の状況が重なることも多く、限られた人数で店舗を回さなければならない場面を何度も経験しました。その中で強く感じたのが、「人が本来向き合うべき仕事はどこなのか」という点です。

洗い場や仕込みなど、どうしても人の手が取られてしまう作業に追われるよりも、スタッフにはお客様と向き合う時間に力を使ってほしいと考えていますし、接客やサービスに集中できる状態をつくらなければ、鎌倉パスタとして大切にしている価値は十分に届けられないと感じるようになりました。

だからこそ、アルバイト中心でも店舗が回る仕組みづくりや、自動化・効率化に取り組んできました。これは人を減らすためではなく、人が本来やるべき「おもてなし」に集中できる環境をつくるためです。現場で働く一人ひとりが、お客様との接点にしっかり向き合えること。それが、サービスの質を高めることにつながると考えています。

鎌倉パスタはどの店舗を利用しても、店員さんの雰囲気や丁寧さに差がないと感じています。しかしながら、これだけの店舗数がある中で、どのように高い質を保っているのでしょうか?

最高のお言葉ありがとうございます。そのように感じていただけたことは、本当にありがたいですし、各地の店舗で働いている社員やアルバイトスタッフ一人ひとりの積み重ねの結果だと受け止めています。あらためて鎌倉パスタで働いてくれているみなさんに感謝の気持ちを伝えたいです。

仕組みとしては、マニュアルを徹底しています。ただし、マニュアルだけで質が保てるとは考えていません。大切にしているのは、採用の段階で接客やサービスに興味を持って入ってきてくれている人が多いという点です。その期待を裏切らないことはもちろん、できれば事前に抱いていた期待を上回る環境を用意したいと考えています。

学生の方から「鎌倉パスタでの経験がその後の人生や仕事につながっている」と言ってもらえることがありますが、そうした言葉を聞くたびにこの環境を現場で作り続けてくれている社員を誇りに思いますし、その積み重ねがどの店舗でも変わらない雰囲気や丁寧さにつながっているのだと思っています。

齋木社長が経営者としてお仕事をされる中で、どのような苦労がありましたか?

プロパーとして入社し、一緒に育ってきた仲間が多いからこそ、社長という立場になったときの線引きには悩みました。現場のことも人のこともわかっている分、どうしても手や口を出したくなってしまう場面がありましたし、自分で判断し、直接伝えたほうが早いと感じることもありました。

ただ、社長として組織を動かしていくうえでは、それではいけないとも感じていました。そこで意識するようになったのが、部門リーダーに対して「やってほしいこと」を明確に伝えることです。細かな指示を出すのではなく、何を期待しているのか、どこを目指しているのかを言葉にして伝えることを大切にしています。

私の言葉をそのまま現場に下ろすのではなく、部門リーダーが現場の言葉に翻訳し、各チームに伝えてくれている。その役割を信頼することで、私自身も距離感を保てるようになり、組織として前に進めるようになったと感じています。

仲間が近い存在だからこそ、任せること、信じることの難しさがありましたが、その線引きを意識することが経営者としての大きな学びだったと思っています。

今後の展望について教えてください

今後については、売上を伸ばし、店舗数を増やしていくフェーズにあることは事実です。ただし、数を増やすこと自体を目的にしているわけではありません。

先述したように、鎌倉パスタにとって「すでに存在している“いいお店”や“いい人”を、まだ知られていない土地に届けていきたい」という思いを実現する手段が出店ですし、お客様に満足していただいた結果として売上がついてくると考えています。この順番を覆す判断はこれまでも、これからも一切しません。

一方で、店舗数が増えれば、自社内での競合が生まれる可能性もあります。そのため、単一業態を広げ続けるのではなく、業態開発にも取り組んできました。「てっぱんのスパゲッティ」や「おだしもん」といった派生業態は、既存店との食い合いを避けるための選択でもあります。ターゲットや利用シーンを明確に分け、限られた坪数や時間帯でも運営できるかといった現実的な視点を踏まえながら、新たなお客様との接点をつくってきました。

あわせて、これは社内のリーダーに向けたメッセージでもありますが、鎌倉パスタで行うすべての取り組みは、最終的に経営理念の実現につながっています。タグラインである「いい時、創ろう」という言葉は、ワークショップなどを通じて社員やアルバイトを含め、みんなでつくり上げてきたもので、全員が共通して使える言葉として大切にしていますが、今後はインナーにとどめることなく、世の中に対しても発信していきたいと考えています。

鎌倉パスタとして守り続けたいのは、創業時からの価値を大切にしながら、時代に合わせて形を変えていくことです。生パスタを軸にした「味」、和を基調とした「雰囲気」、そして人が関わる「サービス」。この3つは、今後も変わらず大切にしていきます。

一方で、環境やお客様の価値観は常に変化しています。過去の成功体験に固執せず、必要に応じて軌道修正できる柔軟さを持つこと。そのためにも、個人の力に頼るのではなく、組織として対応できる状態を維持し続けることが重要だと考えています。

鎌倉パスタを選んでくださるお客様に、これからも「最高のひととき」を提供し続けられるよう、現場と向き合いながら、ブランドを次の世代へつないでいきたいです。

最後に他の経営者におすすめの本のご紹介をお願いいたします

いわゆるビジネス書ではなく恐縮ですが、他の経営者の方におすすめしたいのは、“ショートショートの神様”と呼ばれる星新一さんの作品全般です。おそらく、これまでに1,000編を超える作品を繰り返し読んできたと思います。読み終えたあとに「考えが残る」構造が癖になり、夢中で読み続けてきました。

星新一さんの作品は、直接的にビジネスについて書かれているわけではありませんが、結果として、仕事や経営につながる思考が数多く含まれていると感じています。極めて短い文章の中で、結論や理由、示唆を簡潔に示し、最後にオチとして回収する。そのために「削る」「並べる」「回収する」という編集的な感覚が徹底されており、この構造は、ビジネスにおいて短い言葉で人を動かす力にも通じるものだと思っています。

また、私が社内でもよく伝えている「仮説思考」という点でも、多くの示唆があります。星新一さんの作品の多くは、「もしも」を起点に、社会や組織、人間がどう反応するかを最後まで描き切ります。これは、施策を打ったら何が起きるのか、KPIを置いたら人はどう最適化するのか、ルールを強化したときにどんな抜け道が生まれるのか、といったビジネスにおける論点設計と非常に近いものがあります。

何十年も前に書かれた作品の中には、今では当たり前になったスマートフォンや自動運転を思わせる発想も描かれています。著書『ひとにぎりの未来』に登場する、脳波を読み取り、食べたい料理をつくる自動調理機の話などは今読み返しても新鮮で、「もしかしたら、こうした世界が本当に来るのかもしれない」「自分も関わってみたい」と、5年、10年先の未来を想像してワクワクしてしまいます。

初めて星新一さんの作品に触れたのは小学校高学年の頃で、当時は純粋に物語として楽しんでいましたが、30代で読み返し、さらに社長という立場になってから再読すると、その受け取り方は大きく変わりました。今の自分の思考や判断のベースは、知らず知らずのうちに、星新一さんの作品によって鍛えられてきたのではないか、と感じることもあります。

ビジネス書ではありませんが、だからこそ、自分の頭で考える力を養ってくれる。経営者にとっても、多くの示唆を与えてくれる作品だと思っています。

ぜひご一読ください。

『ひとにぎりの未来』星新一(著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4101098212

投稿者プロフィール

『社長の履歴書』編集部
『社長の履歴書』編集部
企業の「発信したい」と読者の「知りたい」を繋ぐ記事を、ビジネス書の編集者が作成しています。

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