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NPO法人WEL’S代表 橋本 一豊氏

  • 10/25/2024
  • 10/23/2024
  • 仕事
  • 175回

今回はNPO法人WEL’S代表、橋本 一豊氏にお話を伺ってきました。

「社長の履歴書」だけの特別なインタビューです。

ぜひご覧ください!

 

 

会社名称 NPO法人WEL’S
代表者 橋本 一豊
設立 2004年10月1日
主な事業 就労移行支援事業

就労継続支援B型事業

相談支援事業

障がい者就業・生活支援センター事業

ジョブコーチ事業

障害者就労促進に関する調査研究事業

社員数 36名(2024年9月30日)
本社所在地 東京都千代田区神田錦町3-21 ちよだプラットフォームスクエア1036
会社HP https://www.wels.jp/

 

 

事業内容を教えてください

NPO法人WEL’Sは「その人らしく働くことのできる社会づくり」をミッションとして、働きたい障害のある人と、雇用したい企業との橋渡しのできる就労支援活動を行っています。

事業内容としては、厚労省や東京都からの委託による就労支援事業や研修事業、障害者総合支援法に基づく就労支援サービスを提供しています。

 

WEL’Sの活動における特色として、既存のサービスでは解決のできない潜在的な社会生活ニーズを解決するために、地域のあらゆる社会資源と連携しながら、新たな資源の開発に取り組んでおります。

具体的な例としては、昨今のDX化に伴い、オンラインでの就労支援コミュニティづくりがあります。

このサービスは独自開発したシステムであり、例えば地図上で障害者専用求人を検索できるツール、アニメーション動画で働くことを学べるeラーニングといった障害のある人向けのサービスのほか、企業との情報共有をスムーズにするための「ジョブマッチングツール」などが搭載されています。

このシステムを導入することにより、就労支援を行う事業所の業務の効率化を図れるほか、質の高い就労支援を目指すオンラインコミュニティへと発展させ、現在課題となっている就労率と定着率の向上を目指していきます。

 

WEL’Sでは企業支援もおこなっていますよね? 企業が障害者を雇用することでどのよう効果を得ることができるのでしょうか?

あまり認知されていないかもしれないのですが、「障害者雇用促進法」という法律で事業主には障害者雇用率というものが定められております(企業に求められる障害者雇用率は現在2.5%)。一定数の従業員を雇用している事業主は障害のある人を雇用する義務があり、障害者雇用率の達成が求められています。

このような背景があり、当法人でも企業からの雇用相談に対応することも増えております。

企業からの相談が非常に増えている中で、話を進めていくと「障害のある人の雇用を負担に感じている」経営者や人事部の方々も多くいらっしゃることを実感します。

しかし、少し思考転換をしたり環境の調整を図ることによって障害者雇用を進めることで様々な価値を生み出すことができるのです。

かくゆう私自身、職場で障害のある人と一緒に働くことで生産性やパフォーマンスの向上に繋がることを実感しています。

 

障害者雇用を行うことで得られる価値は大きく2つあります。

1つ目は戦略的経営による価値です。昨今、SDGsやダイバーシティといった企業の風土づくりが主流になってきており、特に多様性のある働き方によって活躍させていくことが、ひいては「働きやすい職場」ということにつながっていきます。

障害者雇用を進めることによって、多様性のある個性や特徴を理解して職場環境を整備し、適材適所の配置により全体の生産性を向上している企業も増えてきております。

日本全体が人材不足の状況で、障害者雇用に得られたノウハウは多様性のある人材を活かすマネジメントを行う上で大きな価値に変わります。

例えば障害のある人に分かりやすいマニュアルを作成する必要性があったとしましょう。その際に、私たちのような外部機関を活用しながら、マニュアルの整備や適切な指示の仕方などを共有することで、ノウハウや仕組化が蓄積され、戦略的に進めていけば大きなアドバンテージになります。最終的には、障害のあるなしに関わらず、従業員一人ひとりの特徴に合わせた持続的かつ多様性に対応できる職場風土につながります。

 

そして2つ目は障害のある人と一緒に働くことが楽しく、障害のある人をサポートしたいと思う方もいらっしゃるからです。実際にある中小企業の社長が障害者雇用を始めた結果、元々パートで勤務していた女性が「この会社は良い取り組みをしているからもっと多くの人に知ってほしい」と考え行動され、口コミで採用活動がうまくいった話もあります。人の感情との結びつきを捉えて雇用していくと、価値が生まれると実感しました。

 

障害のある人の雇用を考えている、または既に雇用している事業主に対して雇い入れや雇用管理に関するご相談にも応じています。

もしご興味がありましたら下記よりお気軽にお問い合わせください。

URL:https://www.wels.jp/

 

学生時代に頑張っていたことはありますか?

学生時代にロックバンドのライブに行ったことがきっかけで、自身もバンド活動を始めるようになり、音楽でつながる人やコミュニティに魅了され、趣味で30年以上続けています。

また一人暮らしの貧乏学生だったので、学費を支払いや生活のために新聞配達やガソリンスタンドで働いていました。ある時、ガソリンスタンドによく来ていたトラックドライバーの人に「ホストをやってみたら?」と言われたことがきっかけで、その日のうちに面接に行って、ホストを始めました。ただホストと言っても地元のお店だったので、地域の社長夫人の憩いの場で、カラオケを歌うとチップをくれるようなアットホームな雰囲気でした。

 

その後も長くホストを続けるのですか?

最初のスタートから5年ほど続けましたね。

実は大学卒業後にアーティストとして音楽事務所に所属することが決まっていましたが、それを蹴ってホストとして働き続けました。

その後千葉から六本木のお店に移り、懇意にしてくれている銀座のホステスさんに歌舞伎町の店舗を紹介してもらいました。歌舞伎町はホストとしてステップアップできる憧れの場所でもあったのですが、面接で「この仕事じゃない」と自分の中にある本心に気づき、辞退しました。

その時にホストと全く別の職種で働きたい、人の役に立つ仕事がしたいと考えた際に、「福祉」の仕事が思いつきました。その時は、「自分のような人間に務まるのか」というのが本音でしたが、まずはチャレンジしてみようということで、福祉の仕事探しをして「児童養護施設」という福祉施設に入社しました。

 

福祉業界にキャリアチェンジされた際、社長になりたい将来像はあったのですか?

社長になりたい願望は全くありませんでした。むしろ、経営者にはなりたくないと思っていましたので。

明確なビジョンはありませんでしたが、とにかく福祉に関してはど素人でしたので、先輩方から教えてもらったことを素直に行うほか、夜勤がありましたので福祉に関する本を読みまくりました。

自分の福祉に関するセンスに自信がなかったので、自分の中に根拠が欲しかったのだと思います。

 

これまで、バンドでのライブではステージ上の演出で物を壊すこともありましたし、ホストの仕事をする中で人を傷つけるような場面もありました。ふとしたときに、こんな自分が福祉業界で働いても大丈夫か? と考える場面が多くありましたが、仕事を積み重ねて様々な経験をする中で自分を肯定することが少しずつできました。

当初、福祉の仕事は「誰かに何かをしてあげる」というイメージでしたが、実際には与えるよりも与えられることの方が多かったように思います。

様々な制限がある中で、矛盾を感じながらも自立に向けて自己成長をしていく子どもたち。少しだけ長く生きている僕に相談に来て感謝されることもあり、仕事における存在価値を見い出せるようになりました。

 

どうしてスウェーデンで福祉を学んだのでしょうか?

本を読んでいる中で、スウェーデンが福祉先進国であることを知りました。好奇心から最先端の福祉を学びたいと思うようになり、お世話になった児童養護施設を2年で辞めて、その後4か月間スウェーデンに行きました。現地の人たちとの出会いの中で、福祉のことを学びたいという意識を伝えたところ、重度の障害のある女性との出会いがありその方に家に住むことになりました。

その女性の紹介で、障害者施設や児童施設、教育機関などを見て体験する機会に恵まれました。

それらの体験機会によって多くの学びを得ましたが、それ以上に気づきを得られたのは、その女性の「生き方」です。障害を理由にせずに、ヘルパーさんの力を借りながら自分のやりたいことを次々とチャレンジしていく姿にロック魂を感じました。そして、忘れかけていた「自分の在り方」に気づかせてくれたのです。

つまり、福祉の本質は、クライエントの自己実現を理解し、その人の持つ能力を活かして社会参加を促すことだと実感しました。

 

お世話になったその女性と、帰国後は障害者福祉の仕事に就くことを約束し、東京都の大きな障害者支援施設に就職しました。

その時に障害のある人が就職する場面に立ち会い、社会的な価値を感じました。これまで働いていなかった障害のある人が働くことで、自立につながることはもちろん、納税者となることや人材不足の解消につながっていくことにこの仕事の価値を感じました。もっとこの価値を広げていきたいという想いが込み上げてきたことで、障害者雇用を進める人がまだまだ足りないのであれば、自分がやろうと思って「就労支援」という業界で働くことを決断しました。

その後、国の機関に1年間勤務したのですが、労働時間が決まっていることによって、支援ニーズに十分対応できないという課題を感じ、この価値の高い仕事を時間を気にせずにできる方法を考えたところ「独立する」ということに辿り着いたのです。

 

代表をする中で大変だったことは何ですか?

活動面と資金面ですね。独立当初、私は経営者としての知識やスキルが相当欠落していました。初めての起業のため、福祉業界の方々とのつながりや信頼もなく、銀行などに借入をお願いしますが、どこに行っても断られていました。職員への処遇、活動資金が不足している中で思うように事業運営ができない状況が続きました。

加えて、当時は今ほど障害者雇用支援サービスに対しての理解もなく、誤解されることも多く、うさんくさいと言われることもありました。

自分では社会的に意義のある活動だと思っていることが評価されないことに憤りを感じていました。

 

どのように困難を乗り越えたのでしょうか?

信頼がないことに関しては、実績がないことが明らかな原因だったので、結果を出すのが1番だと考えてとにかく実績を出せるように動きました。例えば、障害者雇用を検討している企業からの相談があった際には、あらゆるオーダーに対してできる方法を考え提案したり、福祉業界の方が有益だと思う情報を積極的に共有するようにしました。

そのように、地道な活動をしていく中で、企業の方や福祉機関の方々とも日常的な連携ができるようになり、大企業からの雇用相談や国からの事業を受けれるようになっていきました。

経営面においては、時間がある時にできるかぎりビジネス本を読むようにしました。経営や会計、福祉など広い分野の本を片っ端から読み、その他経営を学ぶためにセミナーに参加して、インプット量を増やしました。

また、ビジネスコミュニティや交流会に参加して他の経営者の姿勢から学び、半年ほどでビジネスコミュニケーションが理解できるようになってきました。

障害者雇用を行う企業に対して、きちんと何の根拠・法律に基づいた説明を意識するほか、企業が何を重視しているのか、ビジネスの視点を深く理解し相手の立場に立って話をすることが重要であることを実感しました。このように、働きたい障害のある人と企業との橋渡しのできる支援がマッチングを図る上で重要であることから、法人の運営理念にも掲げるようにしました。

 

事業を進めていく上で大切にしていることはありますか?

法人設立の目的は「その人らしく働くことのできる社会づくり」であり、その人の能力を活かして社会で活躍する姿を広めていくことです。

幸い、当法人が支援に関わってきた企業の方々とは、採用前の準備から採用、就労定着までのプロセスを一緒に構築していく、いわばパートナーシップの形成ができたこともあり、ひとり一人が戦力として働き、仕事におけるプライドを言葉にする方の姿に感動する場面もありました。

 

一方で、国が行っている量的調査によるデータを見てみると、就労率は高まっているものの定着率が低いこと、そして中小企業の雇用率が低いことが明確であり、このことが障害者雇用における悪循環であることが大きな課題であることに気づきました。

具体的には、障害者雇用率が注視され、数合わせの障害者雇用が進み、ミスマッチが生じる。このことによって働きたい障害のある人は「もう働きたくない」という気持ちになり当法人に相談にくることもあります。そして、企業は「うちの会社で障害者雇用は難しい」となってしまうでしょう。

この背景には圧倒的な情報不足があります。

その情報不足を解消していくことが私たちの役割であり価値です。

そして、その価値を提供するために必要なアクションは個別ニーズに即した柔軟な対応や情報提供です。

時代の変化に伴い、働く環境も急激に変化してきています。その変化に対応できるように私たち支援者も

これまでの手法にこだわらず、ニーズにあった支援手法が必要になると考え、この部分も運営理念に掲げるようにしました。

 

他にも今後の展望はありますか?

元々、法人の規模を広げようといった方針はなかったのですが、これまで目の前で起こる課題に対して1つひとつ何ができるか向き合ってきたことで、事業が広がってきたという経緯があります。その部分は大切にして今後も課題を解決していくことでもっと世の中が良くなる事例をどんどんしていきたいです。

また、ITが進むことで今まで圧迫されていた業務からスタッフが解放されることもあると思います。そのため、AIやテクノロジーをどのように福祉に盛り込んでいけるかを考えて実現したいです。

このようにこれまで培ってきた業界の文化や考え方は大切にしつつ、テクノロジーを活用することで「情報不足」を解消できるオンラインコミュニティを作り、障害者雇用において課題と捉えている雇用率と定着率を向上させていきたいです。

そして、法人の目的である「その人らしく働くことのできる社会づくり」に貢献できるように活動していく所存です。

 

他の経営者におすすめの書籍を教えてください

鴨頭嘉人さん著書の『賃上げ 値上げ インバウンド』です。

10月30日より全国書店にて発売予定の本ですが、全国で行なっている出版記念講演会でも手にすることができます。

人材不足を課題と感じている経営者には特におすすめです。

人材不足を解消するには、値上げと賃上げをセットで行うこと。そして、業種にもよりますがインバウンド戦略は人口減少という日本の大きな課題を解決するための最良の打ち手です。

この本は「賃上げ・値上げ・インバウンド」の事例を通じてわかりやすく解説しています。

気になったらぜひ読んでみてください。

なお、現在行なっている鴨頭嘉人全国出版記念講演会のうち、2025年2月7日(金)に東京・浅草で行われる出版記念講演会は私が主催させていただきます。

ぜひお越しいただけると嬉しいです

鴨頭嘉人全国講演会申込リンク

https://kamogashira.com/tours/

【Amazon URL】

https://www.amazon.co.jp/dp/4910616136

 

投稿者プロフィール

『社長の履歴書』編集部
『社長の履歴書』編集部
新入社員を含めたフレッシュなメンバーを中心に、出版サポートの傍らインタビューを行っております!

就活生に近い目線を持ちつつ様々な業種の方との交流を活かし、「社長に聞きたい」ポイントを深掘りしていきます。

代表者様のキャリアを通して、組織の魅力が伝わる記事を発信していけるよう、これからも一生懸命運営してまいります!