今回はWAIコンサルティング合同会社代表、谷古宇 啓之氏にお話を伺ってきました。
「社長の履歴書」だけの特別なインタビューです。
ぜひご覧ください!
会社名称 | WAIコンサルティング合同会社 |
代表者 | 谷古宇 啓之 |
設立 | 2021年4月 |
主な事業 | BtoBマーケティングDX |
会社HP | https://wai-consulting.com/ |
事業内容を教えてください
WAIコンサルティングは、マーケティングとITを32年以上実践してきたノウハウと技術で主にBtoB企業をご支援しております。
お客様のご担当者と組織がそれぞれ個性を活かして継続的に成長し、その集大成で未来社会を築いていくことを目指しています。
社名に「コンサルティング」と入っていますが、私の活動の実際は提案するだけではなく、その内容をトップから一般社員にまで「対話と議論と提案によるコーチング」によって、クライアント企業の個性を確立させながら「人財育成」をしています。
ただ提案をするだけでは成果につながらないことは失われた30年を見れば明らかです。なので私は悟らせた上で気付いていただくことを大切にして、経営の立場に立ち返り、現場を知り、そこから必要なことをお伝えするようにしています。
そして現実的にそれが実行できるように、私自身がまずは行動して見せて、それを社員の皆さんと共有することで腹落ちさせ、結果的に自走できるところまでご支援しています。
技術や技能をトランスファーして人財育成をしているところも特徴であり、誰かに相談しなくても自社内で解決していける力を育成する部分まで行っています。
詳細は下記URLをご参照くださいませ。
社会人になる前から意識されていたことはありますか?
小学生の頃から、疑問を持って想像することが多かったと人から言われます。ビジネスにおける私の資質は、未来志向/親密性/個別化/戦略性/分析思考が強いと米ギャラップ社のClifton Strengthで診断されたことも、そのようなことが影響していて、それが今の仕事にも役立っていると実感しています。
またその延長で、物事を工夫することも好きでしたね。
野球をやっていたのですが、トレーニングのためにバットやボールを重くしようと思い、バットに乾電池を巻いたり、ボールの中に砂を入れたりしていましたし、学生野球のコーチをする中でも、選手の個性に合わせて様々な工夫をしていました。
学生の頃に将来のことを考えて物理学の領域に行くことも考えましたが、データを活用して様々な工夫ができることを考えたとき、商品企画に携わりたいと思うようになりました。自分が工夫することが好きだから、工夫した商品を世の中に送り出し、多くの人がそれを使うことで生活が豊かになると思い、そうすると生産技術や市場研究する知識や技術が必要だと思いました。
そして、データを分析する術を学びたいと思い、中央大学理工学部管理工学科でIndustrial Engineering や線形計画法を学び、卒業研究は【ネットワークにおける最適化経路問題】に取り組みました。
振り返ると、社会貢献へ向けて何かに役立てるために自分なりに工夫することが私の個性だと思います。
そして、この工夫が〖提供価値〗であり、人との縁によってその価値が〖誰かのベネフィット〗になっています。これを体現しようとしていたのが私の32年間の実践知になっているのは間違いありません。
谷古宇さんが大学時代に学ばれていた線形計画法とは何ですか?
管理工学の1つの手法が線形計画法です。英語では、「linear programming(リニアプログラミング)」といいます。
物事が決まる際は前提条件がありますが、特定の条件のもと最適解を求めるのがこの学問です。身近で適用されているのが、今では一般的になった「電車の乗り換え案内の最適経路検索」です。A駅からB駅まで向かうとき、最安値なのか、乗り換えが少ないのか、最短時間なのかと条件が異なりますよね。まさに商品企画や新規事業計画など戦略策定にはうってつけの技術なのです。
就活はどの業界をみていらっしゃいましたか?
1989年入社となる私の時代はITと金融業界が盛況でしたが、商品企画ができる会社にこだわって探していました。しかし、当時はその分野の募集がなく、かなり時間をかけて調べました。服部セイコー(現在のセイコーグループ株式会社)に入るときもすんなり内定とはいかずに紆余曲折ありましたが、その業界に必要だと思った他学科の授業の単位を取得した上で業界関係者から信頼を勝ち取り、行動した努力が実りました。
失われた30年といわれていますが、谷古宇さんが働かれている最中はまさか未来でこのような表現をされる時代になっているとは思っていなかったと思います。当時はどのような心境で働かれていましたか?
正直、社会人になりたての経験も浅い状態のときは、すべてが漠然としていて将来を視ることなど到底できず、不安ばかりが先行していました。
ただ、自分の中でこだわったのは、会社に入るときの志です。
誰もが会社に入るときは「御社の理念に共感して~~」と言いますよね。私はそれを着実にやりたいと思っていました。就社ではなく就職にこだわったのです。
志について具体的に教えてください
2つに因数分解できます。
1つは貢献欲求です。自分が不安を感じていた未来ですが、そこへ向けて多くの人たちとの取組で価値を共創していけばよいのであって、そのために人々へ貢献するということです。例えば、被災された方や困っている人に自分の仕事がどのように貢献できるのか、という部分を意識していました。
もう1つは自分と組織の成長欲求です。自分自身が成長していかねば環境変化が激しい中で貢献などできるわけがありません。そして私自身が会社員時代にお世話になったセイコー、横河電機、リコーの3社は素晴らしい会社で、立派に社会貢献をしていますが、その会社が成長していくような試みをやっていかなければいけないだろう、ということを常に考えていました。だから経営品質にもこだわり、それが2回の転職の動機にもなっています。
この2つが自分自身で行動をし続けてきた原動力になっていると思います。
社会人になりたての頃に印象に残っているお仕事はありますか?
服部セイコーに新卒で入社したときの最初のミッションが印象に残っています。商品企画部門を希望していたのですが、実際の配属は情報システム部門でした。IT業界を避けて選んだ会社だったので、IT部門への配属は当時の自分には大きなショックでしたが、学生時代にアルバイトでプログラミングを経験していたので、いかに事業のためのITを構築するか、という考え方を最初のミッションで実践することができ、これがきっかけで会社全体だけではなく、社会全体を考えるようになりました。
何をしたかというと、全国にある代理店在庫をすべて供給元である自社が買い戻して、需要予測に基づく正確な供給管理をしていくというSCM変革の需要予測システムの構築を担当しました。
需要予測の基礎技術であるデータサイエンスを誤ってしまうと、生産と販売、即ち会社全体が間違った方向に進んでしまうので、大変な恐怖を感じていました。入社1年目の夏から始めましたが、まだ半年も社会人をやっていない私にこのビッグプロジェクトの根幹をやらせるのかという驚きもありながら、精一杯がんばろうと思って取り組んだ最初のミッションであり、その後の32年間の会社員生活の基礎になったことは間違いありません。
最初は何からされたんですか?
まずは現状を調査しました。入社数か月目なので事業の実態も当然わかるわけがなく、ひたすら事業部門に通ってベテランの人たちの話を聞きました。「1年のうち売れている月と売れていない月はあるんですか?」とインタビューを繰り返した結果、「腕時計は就職や進学祝いの3,4月と、クリスマスプレゼントで12月が売れる」という答えが多かったので、これを仮説に季節変動指数をデータサイエンスで算出することにしました。しかし、実際のデータを見ていくと、インタビューによる仮説は確認できるものの、それだけではなくもう一つの山を発見することができました。データをドリルダウンしていくと夏の7~8月が年々成長している様子が見えてきました。当時まだマイナーだったダイバーズウォッチが市場で成長していたのです。
それが判明してから更にデータに基づいて事業のベテランと議論を繰り返すことで、商品のモデルグループごとに春夏冬の3つの山を定義することができ、それをもとに需要予測システムの構築を進めていきました。
これは私1人の成果ではなく、一緒に仕事をしたメンバーに恵まれたからこそできたことだと思います。
ミッションと仲間に恵まれると、大きな成果を出せることを経験しました。
新卒時代からご活躍されていらっしゃったんですね
様々な経験をしてきたことで、今は流暢に人前でも話せていますが、実は当時は全く自信を持てませんでした。
1年目は上述のSCM変革プロジェクトでバタバタしていましたが、2年目になって後輩も入ってきて、いろいろ知見もついた途端に自分の技術やビジネスパーソンとしての振る舞いに問題があることに気が付きました。
例えば、会議でコメントを求められただけで舞い上がってしまい、うまくコミュニケーションがとれませんでした。さすがにこのままではまずいと思って、自分で自分自身のキャリアプランを描きました。
今振り返ると、それを描かざるを得なかったというべきであり、しかし不思議とおおかた当時書いた通りに進んできたように感じています。
この頃から将来起業したいと思っていたんですか?
いいえ全く。起業なんて考えたこともなかったですし、あわよくば定年より多少早めにリタイアできるくらいのお給料はもらえるようにしておきたいと思ってセルフキャリアプランに採り入れていました。
現実的に起業について考え始めたのは、40歳を超えた頃に部署の人から「コンサルになったら良いよ」と言われ始め、また50歳直前の時には娘から「お父さん、社長やったら」と言われたときです。以前から職場とは直接関係のない人たちから相談に乗ってほしいという声はかかっていましたが、段々と使命感につながり、娘との会話がきっかけとなって独立を決意した、という経緯です。実はセルフキャリアプランの最後には、自分で自分の立場を定年前にリセットすることを書いていました。早めの定年ではなく起業と捉えたのです。
起業してからどのようなことが大変でしたか?
いかんせん大企業にいたので、独立後はすべて自分で行わなければいけないことが大変でした。
企業に所属しているときは経営についてあれがダメ、もっとこうしなきゃと文句を言っていましたが、いざ自分が経営者として仕事をしてみると、予想外に大変なことが多かったです。
自分ですべてを賄わなければいけないと身をもって知ったことから、周りの人たちに対して感謝することが増えました。また、企業の看板の重みがずっしりと実感できます。有名な企業名の下でビジネスを紹介するのと、起業したばかりの知られていないビジネスを紹介するのとでは、雲泥の違いです。したがって、すべてを戦略的に考えざるを得ませんでした。
谷古宇さんはクライアントの自走まで支援されていらっしゃいますが、その分工数もかかると思います。お仕事はどのように選別されているのでしょうか?
シンプルに手いっぱいになったら、そもそも新しい案件は受けません。
売上額だけを求めてキャパシティを超えた案件を持つと、自分がやりたいことができなくなってしまうことに気が付きました。
事前に想定した工数があったとしても、クライアントとの議論を進めていく中で育成しながら経営品質を高めていくためには現場と経営の理解と共に人の感情や個性の理解は絶対条件であり、そのために結果的に3倍ほどに工数は膨れ上がります。しかし、これこそが私のがやりたかったことなのです。
例えば、経営企画室の人たちと営業力強化プロジェクトを組んだ際、営業最前線の現場の人たちの実態を理解しなければなりません。なので、打ち合わせをして協力者を見つけて、その人と直接会話を重ね、時には営業に同行や現場訪問をさせてもらいます。そうすることで経営方針と現場の苦労や思いをつなぐことができ、そして何よりクライアント企業の個性が理解でき、形式だけのツール導入ではなく、そのクライアント企業と現場担当者だからこその本質提案を自らの行動で示すことができます。それでやっと信頼関係が醸成され、本音で話し合うことができます。このような人と企業の個性を活かすことに私の実践知が役に立つと自負しており、私はそれをやりたいのです。だから想定の3倍ほど工数はかかってしまいますね。
今後のご展望について教えてください
毎日を一生懸命生きていらっしゃる方はたくさんいます。今日やることをこなせればそれでいいという人もいれば、本当はもっとこう工夫してやりたいと悩んでいる方もいると思います。私はそのように、悩みながら考えている人たちと縁をつないでいきたいと考えています。今、日本企業は競争力を失っていますが、人を思いやるという素晴らしい文化は必ずあります。それを上述の現場と経営の思いをつなぐように活用していくために、私の活動の場は東京や大阪だけに限定せず、日本中に拡げていきたいと思います。
去年実際にありましたが、趣味のツーリングをしていると2年前に支援した企業のキーマンから電話がかかってきて、2時間ほどお話ししました。ふとしたときにお客様に頼っていただける存在であることを認識できると、私は働く歓びを感じます。気軽に皆さんが困ったときに相談できる相手でいたいですし、フットワーク軽くどこへでも支援に向かえるよう、活動をしていきたいです。
最後にご著書のご紹介をお願いします
2025年7月4日に『あなたと企業の個性を活かすBtoBマーケティングDX ―失われた30年の過ちを繰り返すな』を出版しました。「BtoBマーケティングDX」は従来の経営が敬遠しがちな分野であったため、競争力と社員エンゲージメントが長期にわたって低下し続ける日本企業にとって最重要課題となっています。本書では経営品質を強化(why)するために、市場での戦い方を策定(what)し、それを実現するITを構築して活用(how)する必要性について述べています。
競争環境が激変する中で、一人ひとりの個性を企業個性とリンクさせて成長させる必要がある現代。失われた30年もの長く続く低迷期と同じ過ちを繰り返さぬように、本書ではこれらの考え方を実践知に基づいて解説しています。表紙の帯部分には、産業技術総合研究所:首席研究員の本村陽一様が「今の時代に深い問題意識を持つ人への実践知」とコメントしていただきました。ぜひご覧ください!
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投稿者プロフィール

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企業の「発信したい」と読者の「知りたい」を繋ぐ記事を、ビジネス書の編集者が作成しています。
企業出版のノウハウを活かした記事制作を行うことで、社長のブランディング、企業の信頼度向上に貢献してまいります。
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