今回は鮨 神楽店主、望⽉ 将氏にお話を伺ってきました。
「社長の履歴書」だけの特別なインタビューです。
ぜひご覧ください!
会社名称 | 鮨神楽 |
代表者 | 望⽉ 将 |
設立 | 2021 年 10 ⽉ 18 ⽇ |
主な事業 | 新橋「鮨 神楽」の運営 |
社員数 | 従業員数 :3 名(2025年9月時点) |
会社所在地 | 東京都港区新橋 3-2-3 千代川ビル 1F |
会社HP | 公式HP:https://sushi-kagura-shimbashi.com/ |
事業紹介をお願いします
鮨 神楽は、新橋駅から少し離れた静かな路地に佇む、隠れ家のような鮨処です。店内は白木のカウンターを中心に据え、照明を落とした落ち着いた空間にジャズを流し、高級感と清潔感を大切にしています。季節の魚介を中心としたコース一本でご提供しており、お料理のみでは25,000円~、お酒を含めて平均30,000円ほどで、食に対して関心やこだわりを持つお客様に多くご利用いただいています。価格的に「気軽」という印象は持たれにくいかもしれませんが、肩肘張らずに和やかにお食事を楽しんでいただける雰囲気づくりを心がけています。
食材のこだわりを教えてください
日々仕入れる食材と真摯に向き合い、最適な形でご提供できるよう努めています。中でも鮪は、信頼を寄せる仲買い「石司」から仕入れており、大間・塩釜・那智勝浦など国産天然物に限定しています。
お酒については、定番品を最小限に留め、店主自身が惚れ込んだ銘柄を積極的に取り入れています。飲みに行った際に出会った新しい銘柄や珍しい酒を取り揃え、「ここでしか味わえない一杯」をお楽しみいただけるよう工夫しています。特に日本酒は、都内では入手困難とされる秋田の「秀よし」をご用意しています。
食材は信頼できる仕入れ先に任せており、常に高品質なものを揃えています。さらに、産地直送の仕入れ先2社とも契約を結び、全国各地の旬や良質な食材を取り入れることで、独自性のある料理を提供しています。
鮨 神楽は、お客様との交流を重視し、「おいしかった、楽しかった」と感じていただけるよう、食材・料理・お酒のすべてにおいて心を込めたおもてなしを大切にしています。
詳細は下記URLをご参照ください。
公式HP:https://sushi-kagura-shimbashi.com/
公式 SNS :https://www.instagram.com/sushikagura1018/
ここからは望月様のことをお聞かせください。学生時代に打ち込んだことはありますか?
私は昔から飽きっぽい性格で、器用貧乏なところがあります。大抵のことはある程度できてしまうので、自分が満足するところまで達すると「もういいかな」と思ってしまうのです。
学生時代はテニス部に所属しており、中学・高校と続けていました。熱中するほどではありませんでしたが、楽しみながら取り組んでいました。ただ、「大会で優勝する」といった強い目標を持つことはなく、エクササイズ感覚での活動でした。また、サッカーも好きで、小学生の頃はサッカー選手になりたいと思ったこともあります。しかし、現実的な性格のため早々に諦め、観戦を楽しむ方に移りました。現在もシーズン中に数試合は現地で観戦しています。
料理に関しては、振り返れば小さな頃から好きだったように思います。高校時代から、見た目に華やかなフレンチやイタリアンに憧れて専門学校に進学しましたが、途中で自分の感覚との違いを感じました。フレンチやイタリアンは食材や要素を「足して」美しく仕上げる料理ですが、寿司は魚と米という極めてシンプルな構成でありながら、引き算によって洗練させていく美学があります。
私はもともとシンプルなものが好きだったため、引き算の美しさに強く惹かれました。シンプルだからこそ誤魔化しがきかず、難しさや奥深さがある。その点に魅力を感じ、寿司の道を選んだのです。
いつ頃自分の店を持ちたいと思われたのですか?
元々、自分の店を持ちたいという気持ちは全くありませんでした。
専門学校卒業後、12年間は銀座の名店「銀座 久兵衛」に勤め、その後は2年間、中目黒の「鮨おにかい」「鮨おにかい+1」という、革新的なスタイルのお寿司屋で経験を積みました。伝統的な店から新しい挑戦をする店へと環境が変わり、とても刺激的で、純粋に楽しかったのを覚えています。
銀座時代は自分のクリエイティブな発想を発揮する場はほとんどなく、与えられた仕事を丁寧にこなす毎日でした。しかし、「鮨おにかい」では月に一度のメニュー会議があり、そこに向けて新しい調理法や表現を自分なりに考えて提案できる機会がありました。アイデアが採用されることもあれば、そうでないこともありましたが、その積み重ねが非常に刺激的で、やりがいのある時間でした。
そうした経験を通じて、「自分の店を持った方がもっと面白いのではないか」という思いが少しずつ強くなっていきました。ちょうどその頃、コロナ禍で勤務先も短縮営業や休業を余儀なくされ、タイミング的にも転機を迎えていました。そんな時に、上の方から声をかけてもらったことから、せっかくの機会だから挑戦してみようと決心しました。
働く中で「35歳までにチャンスがあれば独立してみよう」と漠然と思っていたのですが、実際に話が来たのは34歳のときです。リスクも比較的低いと判断し、独立という道を選びました。
修行期間のなかで、今に活きているご経験はありますか?
先輩・後輩を含め従業員の数が多い業界なので、常に広い視野を持ち、気を配らなければ生き残れない環境でした。正直、プロとしてのこだわりが強い人が多く、その1つひとつに気を使うのはとても大変でしたね。ただ、こだわりがあるとはいえ、みんな良い人ばかりです。ただし、一筋縄ではいかない人も多いので、それぞれの個性をよく見極め、その人に合わせて接し方や気の使い方を変えることが必要でした。
今振り返ると、これはお客様への対応にも通じています。修業時代に様々な性格、価値観の人と接したお陰で、一度二度やり取りすれば、その人の人柄や雰囲気はある程度掴めますし、多くの場合はその感覚が正しいです。従業員との関わりの中で培った「人を観察する力」や「柔軟な対応力」は、結果的に自分の大きな財産になったと思います。
技術面についても、人の数が多い分だけ常に周囲の目があり、少しのミスでも一日中指摘される環境でした。嫌でも「失敗しないようにしよう」と意識するようになり、それが技術の向上に繋がりました。文句を言われないように努力するうちに、「どうせなら先輩を超えてやろう」という気持ちも芽生え、悔しさをバネに成長していった時期だったと思います。
最初にお客様へご自身が握った鮨を出した時はどのようなお気持ちでしたか?
銀座 久兵衛で12年間修業しましたが、実際にお客様の前に立って鮨を握ったのは最後の1年間だけでした。やはり高級店ということもあり、価格に見合った鮨を提供できるかどうか、またお客様も相応の方々が多いため、その期待に応えられるかという不安はありました。
ただ、緊張したのは最初の1組のお客様を担当した時だけです。緊張しても仕方がないと割り切るタイプなので、その後は切り替えて臨むことができました。とはいえ、先日、銀座久兵衛の社長がサプライズで私の店に来てくださった時は、久しぶりに緊張しましたね。
鮨神楽を開業してから、どのようなご苦労がありましたか?
最大の課題は「集客」、つまり「周知」です。お店がここにあるということを知っていただくことが未だに大きな苦労となっています。『ミシュラン 2025 セレクテッドレストラン』選出されことによる影響やSNSからの流入を期待するものの、認知度はまだまだ低く、業界関係者の一部が知っている程度です。
特に新橋というエリアに立地している点に難しさを感じています。一般的に新橋は「飲み屋街」「会社員が気軽に安く飲める街」といったイメージが強く、騒がしい・雑多といった印象を持たれる方も少なくありません。そのため、ご来店いただいたお客様からは「新橋にこんな店があるなんて知らなかった」と言われることが一日に一度や二度はあります。
また、近年は新橋にも鮨店が増えてきていますが、数としてはまだ多いわけではありません。その中でも当店は比較的高価格帯であり、老舗店を除けば最も高い部類に入ります。老舗はさらに高級で敷居も高いため、地元の方々が日常的に訪れることは少なく、当店も新橋にいながら、そもそも存在を知られていないという状況が多いのではないかと考えています。
集客のために具体的にどのようなことをされていらっしゃるのでしょうか?
集客に関しては、Instagramとミシュランガイドへの掲載が大きな動線となっています。
ただし、価格帯が高い分、安易なプロモーションを行うと安っぽい印象を与えてしまうため、無理に広げすぎず、自然に広がっていく形が望ましいと考えています。
具体的には周辺ホテルのコンシェルジュの方々にご挨拶し、「良いお客様がいらっしゃればぜひご紹介ください」とお願いしています。その結果、虎ノ門ヒルズホテルやコンラッド東京からのご予約は比較的多くいただいており、効果を実感しています。
また、価格を22,000円に引き上げたタイミングから、海外のお客様の来店が明らかに増えました。特にラグジュアリーホテルに滞在する方々からすると、20,000円以下の鮨店は「安すぎて本当に美味しいものは出てこないだろう」という印象を持たれることも多く、ホテル側としても紹介しづらかったのだと思います。25,000円に設定してからは、むしろ安心感につながり、海外のお客様のご予約が増えています。
ただし、海外のお客様に偏りすぎるのは望ましくなく、日本人のお客様と海外のお客様のバランス7:3が今はちょうど良いと感じています。したがって、これ以上無理に裾野を広げるよりも、来てくださったお客様に満足していただけるよう、質を深めていくことが重要だと考えています。
若手の育成について、望月様がどのように取り組まれているかを教えてください
開店当初はとにかく即戦力が欲しかったこともあり、人材を育てるというよりは「働ける場所を提供できればいい」という程度に考えていました。ところが、月日が経つにつれて未経験のスタッフも入社するようになり、その人たちの成長のためにも学びを得られる場にしなければならないと感じるようになりました。学ばなければ、そもそも何のためにここに来たのか分からなくなってしまうからです。
私は鮨 神楽で働くのであれば、しっかりと仕事を覚えてもらいたいと思っています。私自身、修業時代は10年かけてようやく毎日鮨を握れるようになりました。それはそれで貴重な経験ですが、後進に同じだけの時間を費やさせる必要はありません。私の役割は、そのノウハウを短縮して伝え、同時進行で実践できるようにすることだと考えています。
また、日々の仕込み作業なども「何のためにやっているのか」「どの工程につながるのか」が分からなければ、ただの作業になってしまいます。しかし、実際には上の人に質問しても「いいからやれ」と言われることが多く、理由が分からないまま取り組むことが多いのが現実でした。そこで私は、作業と提供の現場をつなげることで「この仕込みはこのためだったのか」と答え合わせができるようにしています。そうすることで理解が深まり、精度や丁寧さも自然と高まりますし、「雑にしてはいけない」という意識も芽生えます。
そうした経験を通じて、スタッフにはただ仕事をこなすだけでなく、意味を理解しながら身につけてもらいたいと考えています。まだ自分自身が「育てている」と胸を張れるかどうかは分かりませんが、そうした思いを持ちながら日々向き合っています。
今後の展望について教えてください
基本にあるのは「良いものを仕入れ、良いものを提供し、お客様に喜んでいただく」というシンプルな姿勢です。これは今までも、これからも変わることはありません。ただ、会社としてはその輪を広げ、喜んでいただける機会をもっと増やしていきたいと考えています。
数字の面で言えば、店舗が複数あった方が、1店舗だけで運営するよりも原価をかけやすくなり、より良いものを提供しやすくなります。仕入れや食材の使い方にも相乗効果が生まれますし、価格帯を調整すれば食材の使い回しがしやすくなり、結果としてロスも減らせます。ロスを抑えれば原価をさらにかけることができ、提供する料理の質も上がる。つまり、良い循環しか生まれないのです。
これは決して「利益を最大化しよう」という考えではありません。もちろん利益は必要ですが、それはあくまで結果としてついてくるものだと思っています。正しいことを、信じることを続けていれば必ずプラスにつながると信じているからこそ、これからも事業を広げ、より多くのお客様に満足していただける場を作りたい。その思いを強く持ちながら、基本的に「お客様のための仕事」であり続けたいと考えています。
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企業の「発信したい」と読者の「知りたい」を繋ぐ記事を、ビジネス書の編集者が作成しています。
企業出版のノウハウを活かした記事制作を行うことで、社長のブランディング、企業の信頼度向上に貢献してまいります。
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