今回は株式会社 Spectee代表取締役、村上建治郎氏にお話を伺ってきました。「社長の履歴書」だけの特別なインタビューです。
ぜひご覧ください!
会社名称 | 株式会社 Spectee(スペクティ) |
代表者 | 代表取締役 村上建治郎 |
設立 | 2011年11月 |
主な事業 | AI防災・危機管理ソリューション『Spectee Pro』、AIデータ解析サービス |
社員数 | 95名(取材時) |
会社所在地 | 〒102-0076
東京都千代田区五番町 12-3 |
会社HP | https://spectee.co.jp/ |
まずは、御社の事業内容について教えてください。
会社を登記したのは2011年の11月ですが、東日本大震災のボランティア活動のためずっと東北にいたので、実際に事業を開始したのは2012年の1月頃になります。そのように始まったスペクティは、AI技術を活用して防災や危機管理分野に特化したソリューションを展開している会社です。
当社では、『危機を可視化する』をミッションに様々な情報解析を行なっています。たとえば、一般の人がSNSに投稿した情報から、どこで何が発生しているという情報を、瞬時に解析して自治体や企業の危機管理担当者に提供しています。災害の発生からわずか1分で、発生場所と被害状況がわかります。国内外問わず世界で発生している災害・事件・事故などの情報を扱っており、市区町村や対象や事象など、カテゴリを絞ってユーザーがその時に必要な情報を見ることもできます。
デマやフェイク情報への対応にも力を入れています。過去にあった様々なデマ情報をデータとして機械学習させることで、AIがデマの可能性がどのくらいあるかを判断します。こうしてAIが判断した情報を、24時間体制で、最終的には人間が情報を確認しうえで、正確な情報を届けています。
SNSの情報以外にも、日本各地にある約10,000台の河川カメラや、道路カメラなども連携されており、それらの情報を即時に確認できるようになっています。また、気象情報・交通情報・人工衛星データ・人流データなども統合し、AIで解析。100以上のカテゴリで、防災や危機管理に関係する情報を扱っています。このように様々なデータと連携・解析することでリスクを可視化し、予測することを可能にしたのが、当社の『Spectee Pro』というサービスです。災害や事故が発生した際の被害状況の把握や初動対応を目的に、行政機関や民間企業の危機管理部門に広く認知されています。
主にどのような方へサービスを提供しているのでしょうか?
まず、75%以上の都道府県庁の防災部局で利用されています。
また、インフラ系の企業や、製造・物流・建設・住宅メーカー、さらに大手チェーン店のような全国に店舗展開している会社にも使っていただいています。
村上さん御自身が、起業に至るまでのお話を聞かせてください。
新卒でインターネットコンテンツを扱うソニーのグループ会社に就職しました。コンテンツを企画したり、プロモーションなどをしていました。
私はアメリカの大学を卒業して日本の会社に就職したのですが、入社して5年後くらいに転職。大学の知り合いの誘いがあったので、ボストンを拠点とする医薬品の開発会社に転職し、日本法人の立ち上げのメンバーの一人として活動しました。会社の登記からオフィスの選定など、法人化のために色々とやりましたが、今思うとそれは『起業』に近い経験だったかもしれません。
2年半ほど経って日本法人が軌道に乗った頃、またITの分野に戻りたいと思うようになり、そこで、シスコシステムズというネットワーク機器の会社に転職しました。シスコでは7年ほど勤務しました。そんな時、2011年に東日本大地震が起こりました。
その時はネットのニュースやテレビで情報を得ていましたが、TVを見ながら、「ボランティアで現地に行けないか?」と考えるようになりました。4月頃になり、石巻市のボランティアセンターに全国からたくさんのボランティアが集まっているというニュースを東京で見たのですが、その際、自分が今から行ってもやることはないかもしれないと思いました。それでも、何か役に立てればと、その翌々日頃に石巻市の隣の東松島市に現地入りました。すると、ここにはボランティアの人があまり来ておらず、人手が足りなくて困っているという状況でした。石巻にはあんなに人が集まっていたのに…、と思いました。TVはある一面しか映さない、そこにマスメディアの限界を感じました。
一方で、当時ツイッターの利用者数はまだまだ少なかったものの、被災地の被災状況や「ここでボランティアを募集している」、「ここではこんな物資が足りない」といった情報が上がっており、マスメディアよりもツイッターのほうがより現地のリアルな状況を伝えていると感じました。それからはツイッターをチェックし、手助けを募集しているところにコンタクトを取るようにしました。この経験から、ツイッターの情報をいかにうまく整理し、キレイにまとめるか、それができれば便利なんじゃないか? と思ったのが起業の一つのきっかけですね。私はサラリーマンの傍ら、ボランティアで毎月東北へ行っていました。そこでの経験が活きて、今の会社を立ち上げたという感じです。
村上さんがこれまで苦労したことなどを教えてください。
防災の分野でのビジネスは、今ようやく注目を浴び始めてきていますが、会社を立ち上げてしばらくの頃はビジネスとして大きく注目を浴びることは少なかったです。今はだいぶ変わってきました。地震も多いですし、人々の防災に対する意識も高くなっていると思います。でも、当時は弊社の提供するサービスになかなか価値を見出してもらえず、資金調達に関して苦労した時期は長かったですね。
その苦労をどのように乗り越えたのでしょうか?
弊社のサービスの事業性についてなかなか理解が得られない中、一部ですが可能性を感じてくれる投資家が何人かいてくれました。そして、防災に力を入れている企業の協力があったことも理由です。その人たちの協力で、乗り越えられたと思っています。
たとえば、防災を重要な情報として考えているヤフーもその一社で、防災の分野に進出しているスタートアップ企業に対して理解があり、サービスも連携させていただいています。弊社サービスの良さを見出してくれる企業や人々に出会えたので、乗り切れました。今は防災に対する重要性を多くの会社が意識しているので、業績も上がっています。
最後に今後の展望や課題を教えてください。
今一番力を入れているのは『予測』の部分です。災害が発生した瞬間にデータを用いて、5分後・10分後・30分後にどうなるか予測を立てようということをやっています。水害や積雪の予測に関しては、正確なものが出せるようになってきていますね。今は河川の氾濫で、どこにどのくらいの浸水が発生するか、その被害やリスクをリアルタイムに予測する開発に力を入れています。そうすることで被害が最小限に抑えられると思っています。
現在を可視化することはできていますが、少し先の未来を予測することはまだ課題として残っているので、それをクリアすれば、より満足度の高いサービスになると思っています。
元々SNS情報メインだったものが、今は河川カメラや自動車走行データなど、それ以外の情報のほうが多い状況です。大量にあるデータをどう処理し、捌いていくかが課題だと捉えています。また社員が増えている中で、社員とのコミュニケーションをいかに円滑に保つかということも今後の課題と考えています。
村上さんが経営者におすすめする本を教えていただきました!
『起業家はどこで選択を誤るのか――スタートアップが必ず陥る9つのジレンマ』 ノーム・ワッサーマン(著)、小川 育男(翻訳)
いま注目の学者のひとり、ワッサーマン教授の10年間の研究をまとめた本作。約1万人の起業家データベース、有名・無名の起業家へのインタビュー、全米の起業家調査の収集・分析など、他に類を見ない圧倒的な調査・研究による「濃密なケーススタディ×詳細な統計データ」で読み解く「起業」の本質。
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投稿者プロフィール
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新入社員を含めたフレッシュなメンバーを中心に、出版サポートの傍らインタビューを行っております!
就活生に近い目線を持ちつつ様々な業種の方との交流を活かし、「社長に聞きたい」ポイントを深掘りしていきます。
代表者様のキャリアを通して、組織の魅力が伝わる記事を発信していけるよう、これからも一生懸命運営してまいります!
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