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白金鍍金工業株式会社代表 笹野 真矢氏

  • 09/11/2025
  • 09/12/2025
  • 仕事
  • 15回

今回は白金鍍金工業株式会社代表、笹野 真矢氏にお話を伺ってきました。

「社長の履歴書」だけの特別なインタビューです。

ぜひご覧ください!

 

会社名称 白金鍍金工業株式会社
代表者 笹野 真矢
設立 昭和24年9月
主な事業 表面処理業

樹脂めっき/金属めっき/塗装

成形/組付

社員数 260名(取材時)
会社所在地 名古屋市守山区花咲台2丁目1001番地
会社HP https://www.siragane.co.jp/

 

 

事業内容を教えてください

白金鍍金工業株式会社は創業から75年以上、めっき一筋で事業を展開してきました。

主力事業は売上の約80%を占める自動車部品の表面処理です。特にドアのインサイドハンドルやアウトサイドハンドルといった小物の樹脂めっき製品の加工を長年にわたって手がけてきました。

 

10年ほど前には新たな分野にも進出し、フロントグリルやバックドアガーニッシュなど、大型でめっき加工を施す外装パーツの製造にも取り組んでいます。成形から表面処理、組み立てまで一貫生産できるのが当社の強みです。他にもパチンコ、スロットや宅設備部品のシャワーヘッドなどの仕事も請負い、性能や環境に配慮しながら事業を進めています。

 

白金鍍金工業は高い品質が顧客より支持されていますが、どのような取り組みをされていらっしゃるのでしょうか?

めっきの外観検査はこれまで目視で行ってきましたが、より正確にそして品質保証ができる体制にしたいと考え、2020年7月にめっき外観自動検査装置を導入しました。AI処理と画像処理システムを併用することによって、高精度な検出、合否判定を実現しています。

 

人が目視で確認を行うと、数千万個に1個は流出不良が発生してしまう可能性がありました。加えて、画像検査では光の反射が傷と誤判定されてしまうため、導入ハードルが高かったのですが、AIディープラーニングを活用することで、検査制度が向上し、本格的な運用を開始することができました。

 

環境への取り組みについても教えてください

めっき処理では多くの電気・水を使用しますが、水に関しては環境対策のため2017年にめっき排水リサイクル設備を導入しました。生産で使った水の約20%が再使用可能になり、めっき排水を大幅に削減しました。

電気に関しては、カーボンニュートラル推進活動の一環として太陽光発電設備を2段階かけて導入し、今では年間約30万kWhの発電が可能となりました。生産電力として使用することにより、購入電力の大幅な削減につながりました。

 

3R(リデュース、リユース、リサイクル)活動にも取り組んでおります。

一例ですが、排水処理で使われる薬品使用量をセンサー管理で適正化するシステムの導入により、薬品使用量を約1/3に抑えました。また当社で発生する不良品や廃棄品などを徹底的に分別し、リサイクルできる形を整えました。ニッケルを含むめっきスラッジなどもリサイクルすることで、廃棄物の再資源化に努めています。

 

ここからは笹野社長のことをお聞かせください。学生時代に頑張ったことはありますか?

昔から運動が好きで、小、中学生の時はバスケ、高校ではバレーボールを行っていました。
ずっと球技をしてきましたが、大学では競技ダンス部に入りました。
早稲田大学の競技ダンスは当時強豪チームで、ずっと体育会系の部活にいた私でもキツく感じるハードなトレーニングをしていましたね。ですが、頑張った結果良い成績を残すことができたので、今振り返っても良い経験だったと感じています。

 

昔から社長になることは考えていましたか?

父が中小企業の社長で長男ということもあり、なんとなくですが、将来は家業を継ぐのだと思っていました。それもあって、早稲田大学理工学部応用工学科に入り、めっきの知識と経験を積みました。当社に入社してから、特に社長交代する数年前からは、社内をより良くするためにはどんなことをすれば良いかを真剣に考えました。

 

生産性改善や原価改善、作業環境の改善や福利厚生などできることはなるべく早く実施し、将来任されるタイミングが来た時には、会社の成長だけでなく社員の幸せを実現できる会社にしたいと思っていました。

 

大学を卒業された後のキャリアを教えてください

2011年9月に大学を卒業した後、同月に白金鍍金工業に入社しました。その後、半年ほど奥野製薬工業株式会社で働き、2012年4月からはアイシン精機株式会社(現 株式会社アイシン)で2年ほど生産管理や原価管理を学びました。2014年からは協力会社様(株式会社中央製作所、株式会社スイレイ)で機械設備、排水処理などを学び、2015年に白金鍍金工業に戻ってきました。取引先で働くことで、樹脂めっきを中心とした業界がどのように動いているのかを実務を通して学ぶことができました。
めっきは自社だけで完結するものではなく、様々な企業との強いコネクションがあって成立するので、実際に各企業がどのような取り組みをしているのかを知ることができたのはとても良い経験となりました。

 

修行期間でご経験されて印象的だったことを教えてください

当初はまだ社会を知らなかったので「大きい会社には立派な設備がある」という思い込みがあったのですが、実際は「会社の大きさに関係なく社員の知恵や忍耐によって回っている」ということを知れたのはとても良かったです。一方、設備を導入することで、作業環境が大きく改善されることも知れました。夏場の現場の過酷さを知っているからこそ、今現場を見たときにより良くするためには何が必要かを社員の目線に立って考えることができているように思います。

 

当社に戻ってからはウォータークーラーや空調機の導入による作業環境の改善や設備設計、原価低減、生産性の向上に取り組みました。当社の事業は現場での作業が無くなってしまっては成り立たなくなってしまうので、過去の経験と今現場にいる社員の声を聞きながらより良い環境を整えられるよう邁進しています。

 

社長就任のタイミングはどのように決まったのでしょうか?

2023年7月に代表取締役社長に就任しましたが、正式に決まったのは直前でした。
資本提携を同時に進めていたこともあり、代替わりをするのであれば同時期のほうが良いと思い準備を進めていました。

 

経営者の仕事で苦労したことを教えてください

元々当社はオーナー企業だったので少人数で即断即決で物事を決ることが多かったですが、資本提携後は経営に関する意思決定を、提携先から来ていただいている取締役2名、監査役1名と、当社の叩き上げの執行役員4名で行っています。以前より時間がかかることにもどかしさを覚えることもありましたが、当社の経営を真剣に考える人数が増えたことで意見が揉まれ、精度の良い意志決定ができるようになったことから、以前と比べて精度は格段に上がったように思います。

提携先のやり方を学び、それに合わせて物事を動かしていくので、長年続けてきた方法を一度リセットすることは大変でしたが、双方のいい部分を融合したことにより、組織としての安定感が向上したかと思っています。

 

新しい関係性のもと経営を行うのはとても大変だと思います。笹野社長は経営者としてどのように様々な意見をまとめていらっしゃるのですか?

経営方針を固め、それをもとに意思決定ができるよう情報を整えました。
特に、小難しい形ではなく、シンプルに誰が見ても誤解なく理解することができるようにしています。
現在は6つの経営方針のもと、取締役会や経営会議の場で進捗を確認しながら会社の成長のために各経営陣が奮闘しています。

 

 

6つの経営方針は従業員の方にも共有していますか?

はい。年度始まりには私と各部門長が従業員向けに実績や当年の取り組みについて共有し、達成するためのプロセスを話しています。従業員にも数字の開示をしているので、前のオーナー企業の状態からかなり透明性を高まってきたと思います。また、経営方針の共有を行うようになってから、各部署が自分ごととして、どうすればもっと良くなるかを考えてくれるようになったと思います。

 

現場の方たちの負担を減らすためにどのような取り組みをされていらっしゃいますか?

会社に利益を残すためには新しいことに挑戦しなければいけません。しかし、新しいラインを立ち上げても生産が安定せず不良品が多くなると夜にメンテナンスをしなければならないため、長時間労働に繋がってしまいます。
だからこそ、安定して高品質な生産ができるよう、設備に異常があった段階でしっかりと原因を調査して次同じことが起こらないようにする努力は常にしています。

 

また、設備が止まってしまったり、不良品率が高いとその分余分に生産しなければいけなかったり、廃棄が増えたりするので、無駄を省くためにも設備の整備には目を光らせています。品質を安定させること・生産効率を上げることが従業員の生活にも直結すると考え、できることを1つひとつ行っています。

 

従業員とのコミュニケーションはどのようにされていますか?

派遣や請負の方も含めると300人を超える規模の会社です。経営層とのコミュニケーションのほかに、従業員との情報共有ももっと必要だなと感じていたので、2025年より社内報を始めました。顔は知っているけど、どんな仕事をしているかは知らないことが多くなってきているため、「この会社にはこんな人がいるよ」「こういうことが好きな人なんだよ」というインタビュー記事も届けています。

 

従業員への共有には社内の周知用のLINEを使ったり、食堂への貼り出して、なるべく多くの人に見てもらえるようにしています。お誕生日のお祝いや、ドラゴンズのチケット、提携ホテルの宿泊チケットなどが当たるお楽しみ企画もあり、多くの方に楽しんでもらう工夫をしています。

 

今後の展望を教えてください

売上の約80%を占める自動車部品事業では、テスラのように光沢の少ないシンプルなデザインが増えていることから、近年樹脂めっきの仕事が減少傾向にあります。そのため、塗装など樹脂めっき以外の表面処理にも力を入れています。樹脂めっきでも漆黒/ピンクゴールドやアレルギー対応、環境対応のめっきなど、顧客ニーズの多様化に順応しながら、派生した事業を増やし、ポートフォリオを分散させながら安定的な成長を目指していきたいです。


トヨタは全方位戦略を考えていますが、当社も状況に合わせて戦略を変えていきます。事業を樹脂めっきからめっき、表面処理に広げていき、売上100億を目指して成長していきたいと思っています。

 

経営者におすすめの本を教えてください。

2024年3月に「愛知ブランド企業の底ヂカラvol.3」という本が発刊され、当社が掲載されています。「ものづくり王国」といわれる愛知県で、この実力を広く国内外にアピールして、知名度の向上と世界的なブランドへの成長を支援するため、県内の優れたものづくり企業を「愛知ブランド企業」として県が認定する事業が20周年を迎えました。技術はあるが、PR下手。そんな魅力あふれる知られざる企業を深堀りして紹介する本となっております。ぜひご覧ください!!

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『社長の履歴書』編集部
『社長の履歴書』編集部
企業の「発信したい」と読者の「知りたい」を繋ぐ記事を、ビジネス書の編集者が作成しています。

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