今回は日鉄ソリューションズ中部株式会社代表、岡崎 巧氏にお話を伺ってきました。
「社長の履歴書」だけの特別なインタビューです。
ぜひご覧ください!
会社名称 | 日鉄ソリューションズ中部株式会社 |
代表者 | 岡崎 巧 |
設立 | 1995年12月18日 |
主な事業 | ・コンサルティング
コンピュータ・システム化のコンサルティング 業務改善コンサルティング 経営診断、業務診断、新業務設計 ・システム・インテグレーション コンピュータ・システムの設計・開発 メインフレーム、オープン、Web システム構築の提案、改善 各種ツール、パッケージの導入、提供 ・システム運用 コンピュータの運用管理、保守 アウトソーシング、システム運用、維持管理 業務及びシステムの移行、運用・保守 データセンター ・ネットワーク・インテグレーション 通信、ネットワークサービスの基盤構築 セキュリティ設計・構築 ・システム商品販売、その他 システム機器およびソフトウェアプロダクトの販売 データベース、Webアプリケーションサーバー、セキュリティ製品 等 計算機及び各種コンピュータ製品 |
社員数 | 306名(2025年4月1日現在) |
会社所在地 | 愛知県名古屋市西区牛島町6-1 名古屋ルーセントタワー18F |
会社HP | https://www.nssol.nipponsteel.com/chubu/ |
会社について教えてください。事業内容と強みは何でしょうか?
日鉄ソリューションズ中部株式会社は、日鉄ソリューションズの地域子会社として1995年に設立され、名古屋を拠点に中部エリアの産業を支えてきたIT企業です。日本製鉄の情報システム部門から独立した会社であることから、製鉄業界の高度なニーズに応える中で培われた確かな技術力を活かして、自動車、食品、電力、鉄道など様々な業界の課題解決に関わってきました。
特徴的なのは「最適化技術」への取り組みです。最適化は様々な業界の様々な業務に適用されますが、製造業では、生産計画の立案や部品調達、物流の効率化など、多くの業務で高度な最適化が求められます。たとえば、自動車や自動車部品を運搬する際の最短ルート選定や、ドライバーが無駄な待ち時間を過ごさないようにする配車計画など、数学的なシミュレーションに基づいたシステム構築を行っています。こうした取り組みを長年続けてきたことで、数学的な素養を備えたSEを数多く抱え、お客様のニーズに的確に応える体制を整えてきました。
これまでのプロジェクトは、各企業の個別ニーズに応じたシステム開発が中心でしたが、近年では、そこで培った知見や技術を自社の「アセット(資産)」として蓄積し、新たなサービスやソリューションとして展開を進めています。これにより、既存のお客様への付加価値提供にとどまらず、新たな顧客や市場の開拓も視野に入れています。これまで培った経験と技術を基盤に、より多くの産業分野に向けて価値あるソリューションを届けていきたいと考えています。
また、日鉄ソリューションズグループ全体としては現在、約1万人規模へと成長しています。当然ながら、幅広い領域で事業を展開していますし、先端技術を研究、技術担保する研究所も有しています。私たち日鉄ソリューションズ中部は約300名規模の会社ですが、自社のリソースだけで戦うのではなく、グループ全体の総合力を活用しています。
たとえば、現時点で私たちの組織内にない技術や知見があったとしても、グループ内の人材や研究成果を取り入れることで、より総合的なITサービスを提供することができます。こうした「グループの強みを生かした提案と実装」を通じて、お客様に幅広く、かつ最適なソリューションを届けられる点も、私たちの強みであると思っています。
事業の詳細は下記URLをご参照ください。
https://www.nssol.nipponsteel.com/chubu/
ここからは岡崎社長のことをお聞かせください。学生時代に熱中したことはありますか?
学生時代は主に東京の大型書店でアルバイトをしていました。最初は通常業務から始めましたが、しばらくすると文庫本の売り場全体を任されるようになりました。人気作品は在庫を切らすわけにはいかないため、在庫管理や取次業者への発注業務を担当するなど、責任ある仕事も任せていただきました。
また、特設コーナーづくりにも挑戦しました。特にミステリー小説が好きだったことから、自分なりにおすすめ作家をまとめたコーナーを企画・運営するなど、自由度の高い業務も経験しました。狙い通りに売上が伸びたときの達成感は大きく、とてもやりがいを感じていました。
このアルバイトは大学4年間のうち3年間続けており、時給は決して高くありませんでしたが、本が好きであったこと、そして自分の工夫次第で成果が見えることが大きなモチベーションとなりました。飲食業のアルバイトも一時期経験しましたが、自分にはあまり合わず、結果的に本と向き合う仕事が長く続いたのだと思います。
大学では何を学びましたか?
大学では法律を学びましたが、弁護士を本気で目指す学生の姿を目の当たりにし、少し距離を感じる部分もありました。研究室にこもり、社会との接点を持たずに勉強漬けの生活を送る姿は自分には合わないと感じたからです。
そのため、「国際金融法ゼミ」に所属しました。当時のバブル期の背景もあり、金融の世界に触れてみたいと考えたのが理由です。法学部で金融を扱うゼミは珍しく、M&Aやデリバティブ取引などを法的な観点から学ぶ機会がありました。ただし学びを進めるにつれ、「お金を右から左に動かしているだけ」という印象を持つようになり、金融業界に対する関心は薄れていきました。この経験がむしろ、「ものづくりこそが社会を支える基盤である」という考えに変化し、自分はメーカーで働きたいという方向性を固めるきっかけとなりました。
当時、素材メーカーなどでは新規事業を立ち上げる動きが活発化しており、「新しい挑戦ができる会社」を探す中で、最終的には新規事業の領域に注力する企業を選び新日本製鐵株式会社(現:日本製鉄株式会社)に入社しました。
社会人時代に思い出に残っていることはありますか?
今から10数年前、私が部長に就任した頃に、ネット銀行の立ち上げプロジェクトに携わったことがあります。0からシステムを構築していく大規模なプロジェクトであり、私たちのチームも基幹システムの一部を担っていました。
ネット銀行の開業は深夜0時に行われました。私と部下は六本木にあるお客様のオフィスに入り、夜8時頃から翌朝4時頃まで、会議室に詰めてホームページの公開や関連システムの稼働状況を確認しました。実際に私たちが担当したシステムは朝9時以降にしか稼働しなかったのですが、「人生で何度も新しい銀行の誕生を目の当たりできるものではない、是非ともそれを現場で体験したい」という想いで立ち会ったのです。
当日は多くのベンダーが出入りして挨拶だけして帰る中、私たちは“居残り組”のような形で夜を徹して居続けました。その姿を初代社長が覚えてくださっていて、CIO(最高情報責任者)という立場で出身母体の銀行に戻られた後に「あの時、一緒にいてくれたよね」と声をかけていただきました。そこからのご縁で、深く関わらせていただくことになり、同銀行とのビジネスが大きく広がっていきました。
今振り返っても、「人との出会いと信頼が新しいビジネスを拓いていく」ということを強く実感した、大変印象深いプロジェクトでした。
昔から経営のトップに立つことを目指していたのでしょうか?
自分が経営のトップになるとは、まったく想像していませんでした。新卒で入社したのは新日鉄(現:日本製鉄)でしたが、実際に配属されたのは新規事業部門で、組織としてはほぼベンチャー企業のような状態でした。制度や仕組みが整っているわけではなく、ゼロから事業をつくり上げていく環境でしたし、日々初めての経験の連続で、まさに無我夢中で取り組んでいました。その後事業も大きくなり自分の役割も変わっていきましたが、転職を考える余裕もなく、むしろ新しいことに挑戦する楽しさの方が大きかったため、そのままキャリアを積み重ねてきた、というのが正直なところです。
社長就任の打診はいつ頃あったのでしょうか?
社長就任の1か月前に突然声がかかり、「名古屋に行ってほしい」と言われました。私は前職で別のグループ会社の取締役を1年間務め、社長と非常に近い距離で仕事をしていました。その経験から、「経営者はこんなことを考えているのか」と気づかされる場面が多く、日々学びがありました。規模が大きい日鉄ソリューションズのような会社では、役員であっても常に社長の隣にいることは難しいですが、前職の会社は比較的小規模な組織だったため、社長の考え方や動き方、時には悩みまでも直に触れることができました。時には「今夜ちょっと付き合ってくれ」と声をかけられ、経営の舞台裏を体感する機会も多かったです。
その中で得られた実体験やアドバイスは、私にとって大きな財産となりました。もちろん、経営に関する書籍も多少は読みましたが、本を読むだけで経営者になれるわけではありません。結局のところ、実際に経営の現場に立ち、トライアンドエラーを繰り返すことでしか得られない学びがあると感じています。私自身も、その過程で多くの経験を積み重ねてきました。
経営者としてこれまでに直面した苦労と、その乗り越え方を教えてください
正直なところ、社長として「大きな苦労をした」と感じることはあまりありません。役員や社員とも比較的近い距離感で、本音を交わしながら仕事ができており、温かい関係性に支えられているからだと思います。そのため、日々深刻に悩み続けているということはありません。
ただし、会社経営という観点で見れば、そして業界全体を見渡せば、明確な課題は存在します。今、日本全体が人手不足に直面しており、特に成長産業であるIT分野では、SE人材の枯渇が深刻です。当社にとっても「いかに優秀な人材を確保し、育成していくか」という点は、今もなお解決できていない大きな課題であり、社長として頭を悩ませている部分です。
人材確保のためにどのようなことをされていらっしゃいますか?
現在の課題として感じているのは、やはり「知名度の低さ」です。日鉄ソリューションズ自体は IT・SI の分野において一定のネームバリューを獲得していますが、日鉄ソリューションズ中部という地域会社としては、まだ十分に認知されていません。たとえば、愛知や岐阜にUターン・Iターンを考える方が転職先を探す際に検索しても、当社にたどり着きにくいという状況があるのです。
そのため、今後は積極的にブランディングを強化し、「どんな会社なのか」「どんな価値を提供できるのか」という思いを外部にしっかり発信していく必要があると考えています。
また、採用活動においても改善を進めています。以前の募集要項では「最適化を経験したことがある人」など、非常に間口の狭い条件が記載されており、現実的に該当する人材はほとんどいませんでした。現在は募集要項をよりわかりやすく、魅力的に見えるよう工夫し、幅広い候補者に関心を持ってもらえるよう改善しています。
社員に求める人物像を教えてください
私たちが社員に求めるのは「プロフェッショナル」であることです。常に現状に満足せず、高みを目指す向上心を持ち続けてほしいと考えています。お客様に満足していただける成果を出すために、仕事を突き詰める姿勢が不可欠です。
また、IT技術はもちろん重要ですが、これからの時代においては「技術力」だけでは不十分です。新しいサービスやビジネスが次々と生まれる中で、同時に求められるのは「ビジネスマインド」をいかに醸成するかだと考えています。
技術が高ければ自然に売れるわけではなく、今取り組んでいることが将来的にどのような価値を生むのかを意識できることが大切です。単に技術を学ぶのではなく、その活用の先にある価値創出まで見据えられる人材を育てたいと考えています。
最終的に私たちが目指すのは「お客様に選ばれ続けるかどうか」です。そのために必要なのは、常に最先端の技術そのものではなく、それをいかに効果的に活用できるかという視点です。たとえば、西海岸で生まれた最先端の技術が必ずしもすべての顧客にとって最適とは限りません。お客様の状況や課題に応じて、最適な技術を選択し、実装できることもまた高度な技術力だといえます。
つまり、技術そのものの習得に加え、「どう価値を生み出すか」「どう顧客に貢献するか」を常に意識できるビジネスパーソンを育てていくことが、これからの成長に不可欠だと考えています。
当社の仕事内容や福利厚生、働き方については下記採用サイトにまとめています。
ご興味のある方はぜひご覧ください。
採用ページはこちら: https://www.nssol.nipponsteel.com/chubu/recruitment/index.html
新卒採用特設ページはこちら:https://www.nssol.nipponsteel.com/chubu/recruit/index.html
キャリア採用はこちら:https://www.nssol.nipponsteel.com/chubu/recruitment/career.html
障がい者採用はこちら:https://www.nssol.nipponsteel.com/chubu/recruitment/disability.html
今後の展望を教えてください
現在、当社では新たなビジョン策定に着手しています。その中で私が特に重視しているのは「変化を楽しむ」という姿勢です。ビジネスモデルや会社の在り方は今後も絶えず変わっていくものです。だからこそ、変化やチャレンジを日常的に受け入れ、進化し続ける企業でありたいと考えています。
将来的には、システム開発に限らず、まったく異なる事業へと展開している可能性すらあるかもしれません。重要なのは、その変化に柔軟に対応し、常に挑戦を続けられる体制を築くことです。現在取り組んでいる既存ビジネスの深化はもちろんですが、新しい分野へ積極的に挑戦し続ける企業文化を育んでいきたいと思います。
数値目標としては、今期ようやく売上高100億円規模に到達する見込みです。2030年を見据えた際には、売上高160億円、従業員数450〜500名規模の企業を目標に掲げています。単なる成長ではなく、常に進化を続ける会社としてあり続けたい。この思いを強いメッセージとして発信していきます。
技術継承についてはどのように取り組まれていくのでしょうか?
IT分野は技術革新が非常に速く、従来の技術が次々と新しいものへ置き換わっていきます。一方で、たとえば製鉄や鉄道といった「業務そのもの」に関わる知見は、技術のように急激に変化するわけではありません。むしろ、業務知識やノウハウをいかに継承していくかが重要な課題だと考えています。
当社ではその解決策のひとつとして、ベテランと若手をペアリングし、プロジェクト単位で協働する仕組みを導入しています。経験豊富な人材が持つ知識やノウハウを、日々の開発や実務を通じて若手に伝えていく取り組みです。さらに、人事のローテーション制度を活用し、社員をさまざまな部署や業務に配置することで、特定の人材に知識が固定化されないように工夫しています。
こうした仕組みによって、現場のナレッジを組織全体に広げ、次世代へと着実に継承していく。これこそが、当社が「技術」と「業務知見」の両輪で持続的な成長を目指すうえで欠かせない取り組みだと考えています。
経営者におすすめの書籍を教えてください
まず1冊目は『失敗の本質』です。ご存じの方も多いと思いますが、第2次世界大戦における日本軍の作戦や戦略を題材に、その失敗の要因を詳細に分析した一冊です。上下関係の厳しさや、組織を超えたコミュニケーションの欠如、リスクを回避しようとする姿勢などが重なり、最終的に敗北を招いたと指摘されています。単なる戦史の解説にとどまらず、「戦略的思考が欠如すると組織はどうなるのか」を明らかにしており、現代の企業経営やプロジェクト運営にも大いに通じる示唆が含まれています。歴史的な興味から読んでも面白いですが、組織運営の教訓書としても非常に価値の高い本だと思います。
2冊目は小説『永遠の0』です。映画化もされた有名な作品ですが、私自身もっとも感銘を受けた一冊でもあります。主人公の祖父は特攻隊員として最期を迎えますが、それまで「必ず生きて帰る」という強い信念を持ち続けていました。その葛藤やドラマが丁寧に描かれており、最後の選択に至るまでの過程に深く心を打たれました。単なる戦争小説ではなく、人間の生き方や信念、人生の選択の重みを考えさせられる作品です。経営やリーダーシップに直接関わる本ではありませんが、人としてのあり方を学ぶうえで非常に参考になると思っています。
ぜひ2冊合わせてご覧ください。
『失敗の本質 日本軍の組織論的研究 』
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『永遠の0』
百田 尚樹 (著) |
投稿者プロフィール

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企業の「発信したい」と読者の「知りたい」を繋ぐ記事を、ビジネス書の編集者が作成しています。
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