今回は株式会社ハウジング重兵衛代表、菅谷重貴氏にお話を伺ってきました。
「社長の履歴書」だけの特別なインタビューです。
ぜひご覧ください!
会社名称 | 株式会社ハウジング重兵衛 |
代表者 | 菅谷重貴 |
設立 | 創業:明治32年
ハウジング:平成9年2月20日 リフォーム:平成14年11月20日 |
主な事業 | リフォーム・新築・外壁塗装・中古リノベーション・解体・不動産・カフェ事業・就労支援・複合地域貢献施設・職人育成学校 |
社員数 | 160名(取材時) |
会社所在地 | 千葉県成田市土屋724-2 |
会社HP | https://jube.co.jp/ |
事業内容を教えてください
当社は1899年(明治32年)に創業者である菅谷重兵衛が千葉県香取の地で大工兼材木商を手掛けたところからスタートしました。
創業127年目を迎えた現在は、6代目が「大工の匠と心意気」を受け継ぎ、リフォーム・新築・外壁塗装・中古リノベーション・解体・不動産など「住まい」に関わる事業に加え、カフェ事業・就労支援・複合地域貢献施設・職人育成学校を展開しています。
リフォーム業をより良く、より成長させていこうと考えた際に直面したのが「職人不足」の問題でした。契約をいただいても工事を進めるための職人の手配が年々困難になっていることから、このままではお客様に高品質な工事を提供することが難しいと思い、2012年頃から協力業者を集めて月1回の勉強会を開くようになりました。
心を込めて「ハウジング重兵衛の工事品質とは何か」を伝え続けましたが、なかなか品質は向上しませんでした。その原因を考えたところ、協力業者の職人はあくまで外部の人材であるためお願いすることしかできなかったからだと気づきました。その後は自社でモデル社員をつくり、自社職人集団をつくっていく方向に舵を切りました。
2019年から本格的に職人の新卒採用を始めましたが、当時の新卒は一人も辞めることなく、今では親方として現場の最前線で活躍しています。
新卒・中途採用ともに力を入れ、現在では36名の正社員職人集団を形成しています。
そして、職人不足の問題は自社だけではなく業界全体の課題だと思ったことから、2024年2月、廃校となっていた旧香取市立府馬小学校を利活用し、【Japan Multi-Crafter Academy 多能工職人育成学校】通称「JMCA」を開校しました。
千葉県で職人育成に取り組む理由を教えてください
創業の地から職人を輩出していくこと、そして地元地域で廃校となってしまった小学校を利活用して職人学校の運営+複合施設にすることで、地域の活性化にも繋がると考えたからです。
この学校のカリキュラムには実際のお客様のご自宅での実地研修が組み込まれており、実際の現場でのスキルを身に付けます。また、今の時代は「腕がいい」だけでは通用せず、お客様とのコミュニケーション力や人間力が何よりも大切です。特にリフォームの場合はお客様が住居に住みながら工事をすることになりますので、そこに来た職人が、挨拶ができない・清掃が行き届いていない・マナーや態度が悪いと良い印象を与えませんし、次も当社に依頼してくださる確立はぐんと下がってしまいます。
だからこそ、マインド面(座学)の育成を最も重視し「愛される職人を育み、守る」というコンセプトのもと、お客様対応や人間性を重視して育成しています。
企業理念の「一志団結」にはどのような意味が込められているのでしょうか?
「一志団結」とは、お客様の喜びを自身の幸せと感じ、業界、地域社会に貢献できる真の仲間を作ることです。
これは2015年に作ったもので、以前は先代の作った「匠の技で、善意のお客様と生涯のお付き合いとなるような本物のサービスを提供することにより、社員満足、協力会社満足、お客様大満足を実現する企業を目指す」という理念がありました。
しかし、社員が増えていくにあたり、「匠」という自分の持ち場で輝けるように自分を磨いていく意味を末端まで浸透させることが難しくなってきました。また、「善意のお客様」に対しても大切な価値観を理解してくださるお客様と生涯のお付き合いをしていきたいという思いだったのが、ちょっと細かいお客さんが出てくると「このお客さん、善意のお客様じゃないです」みたいなことを言い始める社員が出てきたこともありました。
細かいということは、それだけ真剣に考えてくれている証拠だろうという風に思いましたが、それを変な風に捉える社員が出てきてしまったので、これはもう少しキャッチーにして、また合言葉のようにみんなに使ってもらえるようなものにしたいと思うようになりました。
そして、先代に理念を書き換えさせてほしいと話し、半年かけて変更しました。
当社の仕事は1人で完結させることはできません。仲間とともに志を持って力を合わせてゴールへ向かうことを「一志団結」と表現しました。
ここからは菅谷社長のことをお聞かせください。学生時代の思い出はありますか?
田舎の生まれだったので、野球、バスケットボール、陸上、水泳、なんでもやりました。中学から野球1本に絞っていき、大学3〜4年までは、プロ野球選手を目指していました。当時の青山学院大学は毎年のようにプロに進む選手がいるような強豪校だったので、自然とその道を志しましたね。
昔から家業を継ぐことを考えていましたか?
父や祖父が家業に携わっており、幼い頃から働く姿を見てきましたが、父からは「継げ」と直接言われたことは一度もありませんでした。しかし、祖父母からは「お前は重兵衛の長男だぞ」とは言われていたので、「継げ」とは言われずともサブリミナル効果はあったかもしれません。
そして大学生になり、プロ野球選手を目指すも打撃が実力不足で志半ばで断念しました。そのため、次に何をしようかと考えた結果、父の姿を思い出しました。
父は私の野球選手の夢を応援してくれていたこともあり、尊敬する父と働きたいと考え、家業を継ぐことを決心しました。
卒業後はすぐに家業に入るのでしょうか?
いいえ。都内ハウスメーカーで3年、大手不動産会社で3年修行した後、ハウジング重兵衛に入社しました。
なぜなら、家業を継ぐことを話した時、父から「いきなり帰ってくるな。他の釜の飯を食ってこい」と言われたからです。外での経験がないことに後悔があったようで、父の紹介で株式会社リバティホームにて3年間修業しました。「3年で10年分の働きしてやめます」と宣言して、一生懸命働きました。今でも関係は良好で、現在は当社でご子息が修行されています。
その後は、宅建を持っていたので三井のリハウス(三井不動産リアルティ株式会社)に入社し、不動産の知識を身につけていきました。草野球が縁で可愛がられ、当初は1年の予定でしたが3年間勤務しました。
ふり返ると、中小企業と大企業の両方で働けたことが良かったと感じています。中小企業では柔軟性や幅広い業務への対応力、大手企業では大勢の人が動くための仕組み化を学べました。
また、会社経営をするための修行だったので、経営者意識を持って会社で働き、人を育てる経験ができたことは大きな糧になっていると思います。
そこからハウジング重兵衛で働くのですね。実際に働いてみていかがでしたか?
外の世界を見てきたからこそ余計に驚いたのですが、当時のハウジング重兵衛は年間休日が60〜70日程度、定時は18時にも関わらず暗黙の了解で21時までは会社にいる、というような環境でした。
働くまではハウジング重兵衛のことは何も知らなかったので、衝撃的でしたね。
また、2011年に入社しましたが、東日本大震災の影響で仕事量が急増したことにより、社員が疲弊するばかりでした。当時は父とぶつかることも多かったですし、最初の3年間は「こんな状態じゃだめだろうと」思うことが多く、衝突が絶えませんでした。
ですが、仕事場では「大好きな父親」に関わっているのではなく、「社長」に関わっていることを意識するようになってからは、関係性がよくなっていき、様々な仕事を任せてくれるようになりました。
社長就任の際も、「社長、いつ譲ってくれるのですか?」と尋ねたら「120周年の時じゃないか」と言われたので、4年間かけて準備をして代表になりました。
経営者になってから大変だったことを教えてください
私自身は前向きな人間なので、これが大変だったとはあえて言わないようにしていますが、強いて言うなら人の問題だと思います。
信頼していた社員が辞めたり、トラブルが起きたりと予想しなかったことが起こるのが大変です。また、社長になる前に信頼していた社員が病気で亡くなったことがあり、よい一層、社員には健康でいてほしいと強く思うようになりました。
また、コロナが流行し始めた初期に当社から数十人目の濃厚接触者が出たため、世間からの風当たりが強かったです。消毒作業などもしましたが、やれることがなかったのでとにかく神頼みしていましたね。その後、緊急事態宣言で2ヶ月ほど仕事のない期間も大変でした。
逆に、経営者になってから良かったことはありますか?
経営者になってからできることが広がったのは良かったことだと思います。
例えば、職人学校の設立や、就労支援事業の立ち上げなどができました。
会社をホールディングス化してビジネスとしてそれぞれを成り立たせるだけでなく、地域貢献、社会貢献ができるところまで会社を成長させることができたのは嬉しかったです。
ナンバー2の時は自分のやりたいこととオーナーのやりたいことが必ずしも合致するわけではないので交渉が必要でしたが、そこの手間がなくなり実現できるものが多くなったので、責任はより重くなりましたが、経営者として仕事をしていてとても楽しいです。
今後の展望を教えてください
2030年までにグループ全体で売上100億円を目指しています。
千葉県と茨城県で圧倒的な会社になれるようにしたいです。そしてお客様から「あの会社なら安心」と言っていただけるような存在になりたいですね。また別部門を立ち上げて、経営者やリーダーを育てていきたいと思っています。
どんな経営者を育てたいですか?
結果も大切ですが、目標に向かって頑張ることの素晴らしさを伝えられる人が社長に向いていると考えています。
目標達成のために人を蹴落とすのではなく、関わるすべての人を幸せにすることが重要です。
2030年には社員が400人規模になると見込んでいますが、私はその一人ひとりの顔と名前を把握し、関わり続ける経営をしたいと思っています。暖簾分けした経営者も、社員を大切にできる人であってほしいです。
他の経営者におすすめの本を教えてください
藤尾 秀昭さんの『プロの条件』がおすすめです。
本の中には松下幸之助さんの「ダム式経営」の話を聞いた人が、「どうやって実践すればいいのか」と尋ねたとき、「まずは思うことが大事」と答えたエピソードが紹介されています。ある人は「思うだけでできたら苦労しない」と思ったそうですが、稲盛和夫さんはとても感動したそうです。同じ話聞いても、感度を高くいるかどうかは素直な心が大切だと思っています。
ぜひ読んでみてください。
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