今回は株式会社フレイ・スリー代表、石田 貢氏にお話を伺ってきました。
「社長の履歴書」だけの特別なインタビューです。
ぜひご覧ください!
| 会社名称 | 株式会社フレイ・スリー |
| 代表者 | 石田 貢 |
| 設立 | 2012年8月1日 |
| 主な事業 | AI動画プラットフォーム事業「1ROLL」 |
| 社員数 | 10名(取材時) |
| 会社所在地 | 東京都品川区東五反田5-22-33 TK池田山2F |
| 会社HP | https://hurray3.com/ |
伝わる力で、世界を最高に楽しく。
野球で鍛えた「諦めない力」と、震災での無力感――その原体験が、AI動画プラットフォーム「1ROLL」を生み出した。
事業内容を教えてください
株式会社フレイ・スリーはAI動画プラットフォーム事業を展開しています。
主力プロダクト「1ROLL」は、動画の制作・配信・解析をワンストップで提供するB2B向けソリューションです。AIを活用したパーソナライズ機能により、企業と顧客の継続的な関係構築を支援し、ビジネス成果の向上に貢献しています。
詳細はこちらをご覧ください
1ROLLについて詳しく教えてください
1ROLLは「一人ひとりに“伝わる”コミュニケーションが必要だ」という想いから生まれました。
従来はマスメディアを通じて、企業の一部分だけを切り取って伝える手法が主流でした。しかし、SNSやスマートフォンが普及し、誰もがメディアを持つ時代になったことで、従来のやり方では限界があると感じました。
そこで私たちは、短時間で伝わるCMの構成をテンプレート化し、誰でも分かりやすい動画を作れるアプリを開発しました。その後、お客様から「効果を可視化したい」という声をいただき、配信機能や視聴ログの分析機能を加えて進化を続けてきました。
現在1ROLLは動画を「作る」、「届ける」、「伝わった確認する」「行動につながったか測定する」―このポジティブなサイクルを回すことで、情報の押し売りではなく、受け手の反応を大切にし、信頼をベースにした双方向のコミュニケーションを実現しています。
1ROLLは外部のCRM( SalesforceやHubspot等) やAIプラットフォームとも連携されているそうですね。 特にSalesforceとの連携について、 きっかけを教えていただけますか?
きっかけは2015年に遡ります。Salesforceが提唱する「カスタマー360」というコンセプト—顧客を360度理解し、最適な体験を提供する—この考え方に深く共感しました。
そこで「動画の視聴データも顧客台帳に組み込めば、より良質なコミュニケーションが実現できる」と考え、2019年に公式連携アプリ「1ROLL for Salesforce」をリリースしました。
1ROLLの動画の強みは、単に再生されたかだけでなく、「視聴者がどこに関心を持ち、何を理解し、どんな行動につながったか」まで可視化できることです。これらのデータをSalesforceに蓄積し、営業やカスタマーサポートに活かせるようにしたのが1ROLLの特徴です。熱意をもって提案を続けた結果、多くの企業様で具体的なプロジェクトとして進められるようになりました。
そして2025年4月、
AIエージェント連携が実現すること
このサービスの根底にある思想は「テクノロジー×ヒューマニティ」です。これまで人が苦手としていた繰り返しの単純作業をAIエージェントが担い、人はより付加価値の高い活動—例えばお客様との信頼構築—に集中できる環境を作ることです。
最初に効果が表れているのは、お問い合わせ対応のシーンです。
お客様がサービス利用で困った際、検索ボックスやチャットに質問を入力すると、従来のような伝達力に限りのあるテキストだけでなく、AIが 1ROLLに蓄積されたナレッジの中から 自動的に最適な操作説明動画を検索し、
これにより、以下の課題が解決されました
・増え続ける製品機能の教育コストの削減
・カスタマーサポートの対応時間の大幅短縮
・お客様の待ち時間によるストレスの解消
さらに、お客様が視聴したログや追加の質問、それに対する回答もすべてSalesforceに自動で蓄積されます。動画とチャットで解決しない場合は、シームレスに専門スタッフへと引き継ぐことも可能です。人では実現が難しい24時間365日の対応を実現し、問い合わせ件数を削減しながら、最適なタイミングでのフォローアップを可能にしています。
これからの時代に求められるバランス
私たちが大切にしているのは、「AIにすべてを任せる」ことではありません。AIには効率的な作業を、人には信頼関係を築く役割を—このバランスこそが重要だと考えています。
だからこそ、「この会社と一緒にビジネスをしたい」「またここから買いたい」と思っていただける顧客体験を提供できる。テクノロジーとヒューマニティが融合した、新しいコミュニケーションの形を、1ROLLは実現していきます。
ここからは石田社長のことをお聞かせください。学生時代に頑張ったことはありますか?
金沢で生まれ育ち、小中学校では野球に没頭しました。時代柄、水も飲ませてもらえないような厳しい環境でしたが、ほとんどの時間を野球に捧げました。
この経験で培った「忍耐力・継続力・あきらめない姿勢」は、今でも経営者としての最大の武器になっています。後にどん底の状況に直面しても踏みとどまり、前に進み続けられたのは、間違いなくこの時の経験があったからです。
人生の転機となった「Think different」
大学進学を機に上京をした際、私の人生観を変える出会いがありました。当時、危機的状況から復活を目指していたAppleの広告スローガン「Think different(シンク・ディファレント)」というメッセージです。
その広告には、ジョン・レノンやアインシュタインといった時代の革新者たちが登場し、「周囲の常識に合わせる必要なんてない」と訴えていました。今は亡きスティーブ・ジョブズからのメッセージでした。当時は就職が厳しい時代で、私はどんな道に進むべきかと悩んでいました。しかし、私はこの広告に強く感銘を受け、「だったら自分の興味関心に正直に進んでみよう」と決意しました。
当時はまだ始まったばかりのインターネットの世界やコンピューターの世界で働きたい想いがあったので、大学で経済学を学びながら、同時に専門学校でデザインや映像編集の技術も身につけました。二足のわらじは大変でしたが、「Think different」の精神が私の背中を押してくれました。
この時の選択が、後に「テクノロジー×クリエイティブ」を掛け合わせた1ROLLの開発につながっていきます。常識にとらわれず、自分の信じる道を進む—それが今の私の原点です。
昔から起業を考えていましたか?
いいえ。ただ「社会の役に立ちたい・人に喜んでもらえることがしたい」思いが根底にありました。自分が何か得意なことで人の役に立ち、その喜びを分かち合えることが一番大切だと考えていました。
どのように就職活動をされていましたか?
当時は就職氷河期という厳しい時代でしたので、私は大量の面接を受ける方法はとらず、作品をポートフォリオにまとめ、直接企業に提案していました。門前払いも多かったですが、あるベンチャー企業で採用いただき、割と自由な環境でWebデザインからサーバー運用、クライアント対応まで幅広い業務を経験させていただきました。インターネットの黎明期に実践的な仕事ができたのは貴重な体験でした。その後、映像会社でプロデューサーとして大企業の広告案件を担当し、多くの人に価値ある情報を伝えるインタラクティブなコミュニケーションの楽しさやCM制作の魅力を知りました。
石田社長は会社員時代に国内外の広告賞を多数受賞されていらっしゃいますが、得に印象に残っている仕事はありますか?
大企業の広告を担当し、映像とデジタルを掛け合わせた広告を数多く手がけていました。
プロデューサーとして国内外の賞を多数受賞し、売上も常にトップ。天職だと感じていました。
主な仕事は、広告を受け取る生活者の方に対して、広告主のお客様、広告代理店、制作会社、タレント・モデルエージェンシー、ディレクター、デザイナー、プログラマー、映像制作者、音楽、美術、ヘアメイク、スタイリストといった超一流のプロフェッショナルな方々と様々な知恵を出し合い、最も伝わる心を動かすクリエイティブにまとめていくことでした。
これらの素晴らしい才能を持つ方々と仕事ができたことは、私の財産です。立場が異なる人達の中心に立ち、それぞれの専門性を最大限に引き出しながら、ビジネスとコミュニケーションを両立させることが私の役割でした。常に期待を超えることを信条に、映像もデジタルもCGもあらゆる表現媒体を融合して、お客様との一瞬の出会いを演出する。チーム全員で創り上げる作品には、いつも大きなやりがいと喜びがありました。
しかし、次第に違和感を覚えるようになりました。いつの間にか「良い広告を作る」という思いから、「賞を取ること」「目新しいことで評価されること」が目的になっていたのです。本来あるべき「生活者に喜ばれる広告」を作りたいと強く思うようになりました。
そんな矛盾を抱えていた2011年3月、東日本大震災が発生。CMやWEB広告が一斉に止まりました。大きな無力感に襲われ、「自分は誰のために、何のために仕事をしてきたんだろう?」という問いが沸き上がってきました。
天職だと思っていた仕事に自分で矛盾に気がつき、無力感を覚えてしまったのは辛い経験でしたね。では、その後どのように独立することになるのでしょうか?
2012年に新規事業を立ち上げ、2016年に独立しました。最初は広告会社の新規事業部として、サブスクリプション型のソフトウェアビジネスをスタートさせました。
雇われ社長という立場で外部資金調達が難しかったため、得意な広告制作で利益を出しながら新規事業を進めていました。しかし、従来の売り切り型ビジネスとサブスク型では利益構造が根本的に異なり、グループ内でカニバリゼーション(事業の競合)が発生し、事業継続の危機に直面しました。
連日、メンバーと早朝会議を重ねて今後について話し合いました。その中でメンバーから「お客様に評価いただいており、私たちも情熱を持って取り組んでいます。この仕事を続けたいです」という言葉をもらいました。
私は覚悟を決め、お客様とメンバー、そしてより良い未来を信じ、独立を決意しました。
経営者として経験したことで、大変だったことはありますか?
2016年の独立当初が一番大変でしたね。
いざ事業を立ち上げると、何をやるにも先に資金が必要になることに直面しました。展示会に出たり、人を採用したり、全てお金が必要だったことに改めて気がつきました。
最初は赤字の補填も必要で苦しいなかの独立でしたが、一度決めたことはやりきる、お客様の期待に応える、「想像力を活かして、世界中に喜びがあふれるようにする」という3つの信念だけで、私もメンバーもより良い未来を信じ、がむしゃらに突き進んできました。
よくその状況から耐えて無事業績を回復されましたね。
もうダメかもしれないと思うタイミングは2回ほど経験しましたが、野球で身についた気合・根性・忍耐・諦めない力が、最大の武器になりました。普段はAIとか動画とかデジタルなどとお話していますが、根っこにあるのは体育会系の汗と泥の世界で育ってきたことが活き、ブレずにやってこれたんだと思います。
今後のご展望を教えてください
想像力を生かして何かを生み出すこと—考えて、企画して、提案して、実行して、形にする—このプロセスが私の原点であり、最も得意とすることです。
2016年頃、ちょうど独立のタイミングで、元スターバックス社長の岩田さんと飛び込み営業のような形で出会いました。「今後のよりどころになるようなミッションを一緒に考えてほしい」と相談させていただき、思いを具体化する手段やプロセスを学びました。その時にできたのが、現在のミッションである「想像力を活かして、世界中に喜びがあふれるようにする」です。
それを進めていくなかでSalesforceやパートナー、お客様など思いに共感してくれるお客様と巡り合えたことで、やりたかったことが少しずつ形になってきました。多くのお客様と接して気づいたのは、「ナンバーワンであるには理由がある」ということです。重要なのは単に「売れればいい」ではなく、「売った後もどう満足してもらえるか」が大切です。お客様の関心事を深く理解し、それに応え続けることが私たちの目標です。
しかし、この想いを組織全体で浸透させるのは容易ではありません。だからこそ、具体的な成功事例で示すことにこだわっています。ソフトウェア企業だからこそ、考え方を変えれば実現できることを、成果として見せていきたいです。
日本はこの30年、ITで遅れをとった言われています。AI時代は絶対に逃せません。
私たちは「1ROLL」にAIを実装するだけでなく、自社の働き方も徹底的に変革しています。作業的な業務はAIに置き換え、人は創造的な仕事に集中する。自分たちがまず実践し、そこで得たノウハウはすべてお客様に還元する—この循環を続けていきたいです。
皆さんと一緒に、日本からAI時代の新しい価値を生み出していきます。
おすすめの本を教えてください
ジム・コリンズさん著書の『ビジョナリー・カンパニー』はこれから起業する方にぜひ読んでいただきたい一冊です。
特に心に刻んでいるのは「3つの円」の考え方です。
①情熱を持てること
②世界一になれること
③経済的な原動力になること
この3つが重なる領域で仕事をすることが、成功への道だと説いています。
創業当初の私もそうでしたが、「世界のために」という理想だけではビジネスは回りません。情熱があっても、経済性がなければ続かない。世界一を目指す志がなければ、価値を最大化できない。
あなたがやることによって、世の中に提供できる価値の最大化につながることを見つけてください。また経営者としては、情熱を持てるかどうかが重要です。創業当初の自分がまさにそうでしたが、「世界のために」だけではビジネスは回りません。
自分が情熱を注げて、世界に誇れる価値を生み出し、それが持続可能なビジネスになる—その交点を見つけることが、経営者として最も重要な仕事だと学びました。
起業を考えている方、ぜひこの本から「自分の3つの円」を見つけてください。
| 『ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則』 |
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企業の「発信したい」と読者の「知りたい」を繋ぐ記事を、ビジネス書の編集者が作成しています。
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