今回は、株式会社 縁の木代表取締役、白羽玲子氏にお話を伺ってきました。
「社長の履歴書」だけの特別なインタビューです。ぜひご覧ください!
株式会社 縁の木 会社概要
会社名称 | 株式会社 縁の木 |
代表者 | 代表取締役 白羽玲子(しらは れいこ) |
設立 | 2014年 |
主な事業 | 珈琲豆と関連商品の焙煎、卸売、小売 福祉作業所・障害者雇用企業とのコラボ商品立案・販売 ギフト、ノベルティの企画、提案、作成 コーヒーサービス イベント・セミナー企画・運営 |
社員数 | 4名(取材時:パート含む) |
会社所在地 | 東京都台東区三筋2-15-20 |
会社HP | https://en-no-ki.com/ |
まずは御社の事業内容についてお話を聞かせてください。
大きく2つあり、メインはコーヒー豆を扱った事業になります。
400gまでしか焙煎できない小さい焙煎機を使い、ご注文をいただくたびに焙煎するコーヒー豆屋であることが特徴です。小さい焙煎機で焙煎する理由は、常に新鮮なものを飲んでいただけること。また売れ残りになってゴミを出すことのないようにするためです。
弊社は福祉事業所や就労移行センターの利用者の方達が、就労訓練のために働く場としての機能を持っています。また、将来的に、知的障害や精神障害の方々が就労した際に、たくさん失敗しても会社に負担が少ないようにという理由から、少量からの焙煎にしているという狙いもあります。小さいことにたくさんチャレンジしてもらい、失敗を積み、やがて大きな注文にも応えられるように…という願いがあります。(施設外就労訓練の受け入れは2020年より見合わせ中)
私が広告営業をやっていたこともあり、主な取引先は企業様です。企業様からご用命いただき、ギフト、ノベルティの企画・提案・作成、オフィスブレンドのご提供もしています。
福祉事業所や障害者雇用企業様とコラボさせていただき、商品を考えて販売もします。それらが売り上げの多くを占めています。それに次いで通販や、ご来店くださる個人の方への販売などが売り上げになります。
2つ目の事業は、2019年に始めたアップサイクルの商品の企画。アップサイクルとは、不用品になったものを原材料に、より付加価値のあるものを作り出すこと。
コーヒー業界は、ゴミの多い業界なんです。ゴミ問題については開店当時から、お店のある同じ蔵前でコーヒーに携わるコーヒー豆仲間と話してはいました。
ただ当時は忙しく、うやむやにしてきてしまったんですね。そこで訪れたのがコロナ禍でした。弊社のお客様のほとんどが企業様なので、コロナでオフィスが開かなくなったことは弊社の売り上げの7割がなくなるほどの大打撃でした。経営的な面では辛かったですが、ゴミ問題に取り組む時間ができたと前向きに考えるようになりました。
私たちがやっているのは、アップサイクルで考えると原材料を作る部分。
蔵前はカフェや焙煎店が多いんですよ。そのため抽出カスや欠点豆など、飲める飲めないに関わらずいろんなゴミがありました。
『各カフェから従来処分されていた珈琲や抽出カスを福祉事業所が集めてくれて、加工し、原材料として企業が仕入れる』というアップサイクルの仕組みを作ったんです。私達は資源を寄付し、渡された福祉作業所はアップサイクルメーカーの指示通りに加工して納品することでお金をいただく、という仕組みです。
私達はこれを『KURAMAEモデル』と呼んでいます。アサヒユウアスと共創した蔵前BLACKや蔵前WHITE、丸紅と実証実験を行うedishはこのプロジェクトから生まれました。この仕組みを活用し、いろんなメーカー様と組ませていただいて新しい商品作りを行っています。
現在に至るまでの白羽さんのご経歴を教えてください。
1994年、バブルが弾けてすぐの就職難の時代に大学を卒業して、大日本印刷株式会社に就職しました。そこで7年、出版社を担当する印刷営業をしていました。営業志望というわけではなかったのですが、就職難の中、「営業で良ければ採用できますがどうですか?」と声を掛けていただいたので就職した形です。私は、どこにでも馴染む性質があるので、志望ではなかった営業職にも馴染み、このままこの会社に定年までいるんだろうな、と漠然と思っていました。
忙しくも充実した日々を過ごしていた矢先、父が癌になり54歳で亡くなりました。一人っ子の私に、母も祖父母も託されたんです。
印刷会社は安定していましたが、製造業なのでお給料は家族3人を養うには足りず、土日の休みが多く取れないことも将来への懸念となりました。そこで転職の道を考え、そのときに担当していた出版社様の紹介で転職。IT関連やマーケティング関連の書籍で有名な出版社である株式会社翔泳社に入社しました。
ここでは広告の企画営業やイベントの企画、企画のスポンサーをご案内する仕事をしました。書籍を直接販売する営業部門の立ち上げで多くの人事や研修、総務部門の方にもお会いしました。そこでもまたすぐに馴染んで14年勤めました。この会社で定年を迎えるだろうと考えていたところ、私の次男が「知的障害を伴う自閉症」だと診断を受けたんです。母にも頼って育てていけばきっと大丈夫と思っていたのですが、息子が診断を受けたその3週間後に脳内出血で母が突然死。障害児子育ての頼みの綱もなくなってしまいましたし、健康に見える人も突然死んでしまうことがあることを実感しました。
親が亡くなった後、知的障害のある子どもはどうやって生活していくのか。わからなくて色々調べた結果、知的障害者の仕事に多様性がないと感じたんです。
クッキーやパンを作ったり、何かを袋詰めしたりとか、清掃、内職。そういう仕事がメインでした。障害があっても得意なことはあります。その得意なことを活かして仕事を選べるような、そんな社会であってほしいと思いました。それで、じゃあまず自分がその仕事先を作り、仕事を依頼する立場になろう! と決意したんです。
そのためにはどうしたら良いかを考えたときに、障害者に仕事をお願いするのは決して効率は良くない、効率が下がる事業を決断するには、このままサラリーマンをやっていては難しいのではないかと考えて、起業という手段を選びました。それが2014年のことでした。
コーヒー豆屋を選んだ理由は、全国の知的障害者が焼くクッキーなどとコラボをするには飲み物が良いだろうというところからでした。
また、弊社では福祉事業所との仲立ちを行いながら、企業様で使用する詰め合わせのお中元やお土産を作ることもできますし、福祉事業所の方でもカフェを立ち上げたいなどというときにお声掛けしていただけたり、双方向のご相談ができると思ったからです。
これまで苦労したことなどを教えてください。
株式会社であるがゆえの悩みが、大きく分けて2つあります。
1つは、『株式会社』というだけで、福祉事業所に受け入れてもらいにくかったこと。
『株式会社=営利の会社』だから、商売のネタにされるのではないかと思われてしまうんです。理解されるのに時間が掛かったのは、苦労したことです。
会社を立ち上げて2年目くらいまでは、60件くらい声を掛けて、お付き合いができたのは3件という結果でした。
「福祉はあまり儲けないほうが良い」という独特の考え方があり、“卸”という概念がなかったり、美味しくできているのにパッケージにこだわらなさすぎて売れにくい…という課題がありました。余れば身内が購入する、という形で売り切りになっている事業所も多い中、それらを「一緒に解決しましょう」と声を掛けて積極的に受け入れてもらえるようになったのは5年目くらいからですね。
もう1つは、逆方向の問題です。
株式会社が福祉作業所と連携する・株式会社が知的障害者の活躍の場を作る…この動きを「当然ボランティアだ」と考えてしまう人がいることは避けて通れません。
私が女性であることも手伝い、KURAMAEモデルのノウハウ提供や、カフェ立ち上げの支援を完全無償で行うだろう、という先入観を持たれ、導入の概算費用を見積もると「障害者を活躍させてあげるのに、その上、縁の木が金まで取るつもりか」といった反応をいただいたこともありました。
そのような苦難をどのように乗り越えたのでしょうか?
事前にボランティアではないことを伝えるようにしました。『会社』ですからね、と。何度も同じような問題に直面したので、そこは学んできました。
今の知的障害者の方の1ヶ月の工賃は平均2万円以下。今の彼らの姿は、何十年後かの息子の姿だから、自分の欲しいものが買える程度には月額の工賃を上げたいと思っているんです。
一握りのパラリンピアンや、芸術的なひらめきを見出された方だけではなく、多くの障害者が今よりも多い工賃を受け取れる社会を実現したいと取り組んでいます。
現在の会社としての課題を教えてください。
今は2つ目の事業である『KURAMAEモデル』が費用持ち出しの段階にあります。これをいかに事業拡大し、利益を出さないまでもトントンで運営できるようにするかというのが課題です。
また、悩ましいのは、「扶養の壁」です。最低賃金が上がってきたのに、133万円という扶養の壁は上がらない。従業員の中でも「扶養の枠を出られないので辞める」という問題が出てきました。主婦のまま稼げるような仕組みがあったら良いのにと思いますね。週2~3くらいしか1人のパートさんにお願いできないのは、会社としても惜しいことです…。
最後に今後の展望や夢を教えてください。
コーヒー事業としては、福祉事業所といかに多く繋がれるかを展望としています。連携できる福祉事業所を、47都道府県に作ることが目標です。日本中どこでもご一緒できる仕組みを作りたいと思っています。一方で、多く繋がるということは、それだけ売れなければいけないので。それには企業様やお客様が価値を感じてくれるご案内の届け方が必要ですよね。
『KURAMAEモデル』は、まずは赤字をなくすこと。定期的に商品ができ、発売されていく流れを作る中で、蔵前という地域の繋がりとか、蔵前が他の地域と違うことをしていてカッコいいと子どもたちが思えるような持続可能な取り組みを醸成するなど、地域のブランディングをしていきたいと思っています。
白羽さんが経営者におすすめする本を教えていただきました!
『ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書』 アレックス・オスターワルダー(著)、イヴ・ピニュール(著)、小山龍介(翻訳)
45カ国のイノベーターによるビジネスモデルのイノベーション実践ガイド。
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投稿者プロフィール
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新入社員を含めたフレッシュなメンバーを中心に、出版サポートの傍らインタビューを行っております!
就活生に近い目線を持ちつつ様々な業種の方との交流を活かし、「社長に聞きたい」ポイントを深掘りしていきます。
代表者様のキャリアを通して、組織の魅力が伝わる記事を発信していけるよう、これからも一生懸命運営してまいります!
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