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株式会社アライブメディケア代表 安田 雄太氏

  • 09/24/2025
  • 09/24/2025
  • 仕事
  • 39回

今回は株式会社アライブメディケア代表、安田 雄太氏にお話を伺ってきました。

「社長の履歴書」だけの特別なインタビューです。

ぜひご覧ください!

 

会社名称 株式会社アライブメディケア
代表者 安田 雄太
設立 1980年6月
主な事業 介護付きホームの企画・運営
社員数 442名(2025年4月現在。非常勤スタッフを含む)
会社所在地 東京都渋谷区神宮前6-19-20プレファス神宮前
会社HP https://www.alive-carehome.co.jp/

 

事業内容を教えてください

アライブメディケアは東京都、神奈川県を中心に介護付き有料老人ホーム「アライブメディケア」を運営しています。有料老人ホームとは民間企業が経営する老人ホームのことで、日常生活にお手伝いが必要になられた方が入るための施設です。特に認知症や身体的な介護が必要な高齢者の方々をお迎えしており、天国の一歩手前の場所として穏やかにお過ごしていただけるよう、質の高いサービスを提供しています。また、「片道30分で行ける、街一番の介護屋」を目指し、地域社会にも貢献できるよう、邁進しております。

 

どのような利用者の方が多いですか?

日本ではトップクラスの金融資産3億円以上をお持ちの富裕層を顧客としており、質の高いサービス提供と価格の両面でプレミアムな価値を提供しています。

ご入居者ご自身は家族に迷惑をかけたくないと考えており、お子様は仕事が多忙であったり、遠方に住んでいたりと自分が介護できないぶん、肉親に良い思い出を残してほしいと思われている方が多いです。

セコムグループの会社であることから、サービス面だけでなく、防犯等様々な面から信頼いただいています。

 

どのような特徴がありますか?

世田谷や杉並などの、高級住宅街にホームを構えており、ご家族がスープの冷めない距離で面会できることを大切にしています。通常の有料老人ホームではご入居者3人に対しスタッフ1人が最低基準ですが、当社ではご入居者3人に対してスタッフを2人配置し、手厚いケアを実現しています。日本で1番手厚く、小規模な介護施設での介護を目指しています。

 

富裕層にターゲティングされたことで、どのようなことが実現できたのでしょうか?

介護保険外のサービスも提供できることから、ご入居者にとって必要なサービスをしっかりと提供できるようになりました。費用面も安く請け負うのではなく必要な分を頂戴する形ですので経営にも安定性があり、従業員にも利益を還元することができています。

 

介護ケア人材はどのような基準で採用されているのでしょうか?

最も大切にしている基準は「無礼ではない人」です。どれだけ経験があっても、礼節を欠く人はチームを壊します。チームが壊れればご入居者へのサービスにも直撃で悪影響が出るため、利他の精神を持って相手のために行動できる、相手に喜ばれることが私の喜びになる人を採用しています。

当社は人数で困っているというよりは、人材の質の部分に課題があったので、介護に対して熱い思いを持っている人を採用するために試行錯誤してきました。

また、採用に関する情報発信の段階から自分の理想の介護ができると思ってもらえるような見せ方になるよう工夫しています。成長や挑戦を強調するトーンにすることで、「一緒に参戦しよう」という熱を持ったメンバーばかりが集まりました。YouTubeも運営していますが、採用したい人物像を語ったところ、他社のエースがどんどん入って来るようになったことから、社員が変わると社内が変わると実感しましたね。

そして、入社したスタッフにはより高いサービスを提供できるように認知症介護、自立支援介護、ケアの倫理を学び直していただいています。その結果、ご入居者の75%がお身体の状態や認知症による症状が改善したり、お薬が平均4剤台に抑えられたりと、数字にも成果が表れました。

アライブでは常に倫理的考察とケアに関する科学的理論の両方を踏まえ、ご本人の「真の望み」に深く立脚したケアをプロフェッショナルとしてご提案しています。

 

ここからは安田社長のことをお聞かせください。学生時代に熱中していたことはありますか?

小学5年生のときからパイロットを目指していました。家族旅行で大分に行くために初めて飛行機に乗った際、パイロットがコックピットに入っていく姿を間近で見て、それがヒーローと重なったことから強い憧れを持ちました。

そのため、中学、高校、大学へと進む中でも一貫して「どうすればパイロットになれるか」を考えて、勉強も体づくりも頑張りました。そして、良い成績であれば、ANAの自社養成パイロットの指定校推薦枠が取れると聞き、航空宇宙工学を専攻し、飛行機そのものについて専門的に学びました。

努力の結果、無事にANAから内定をいただき、パイロットとしての訓練が始まることを心待ちにしていました。

 

長年追い求めていた夢を掴んだのですね!

はい。しかし、内定が決まった年の冬に事故に遭いました。サーフィンが趣味だったのですが、運悪く波に巻かれてサーフボードの先端が左目にあたり、大怪我をしてしまいました。その結果、パイロットに求められる視力がなくなり、審査に通らない体になってしまいました。小学校5年生から夢見てきたことがあと1歩のところで終わってしまい、人生が終わったように感じました。

周りの皆さんが航空機製造会社や整備士の道を勧めてくれましたが、絶望していたため、飛行機に関わりたくない気持ちが大きかったですね。

 

その後はどのように過ごされたのですか?

大学には研究生として1年間残してもらい、その間にサーフボードを持って旅に出ました。波乗りをしながら少しずつ自分を取り戻したことで、「ちっぽけなことで自分を諦める必要もない、そもそも自分はパイロットに向いていたかもわからない」と前向きに考えるようになりました。

私は周りから「人を楽しませたり、喜ばせたりするのが好きだよな」「人を大切にするよな」と言われることが多くあり、自分でもサプライズをしたり、誰かを喜ばせるのが好きなのを自覚していたので、それができる仕事をしようと考えるようになりました。そして、自分の素質を起点に仕事を探し、医療・介護業界に興味を持ちました。

しかし、経験もスキルもなかったので、まずは知識をつけようと大学院を受験しました。医療・福祉の経営について2年間学ぶなかで、これは絶対に来る産業だと確信しました。

 

どのようにキャリアをスタートするのでしょうか?

新卒では、当社の前身である株式会社荒井商店に入社しました。入社後は、医療関連事業部に配属され、入社直後から新規ホーム開設に携わり、介護職員を経て、営業、採用、運営を経験しました。介護現場やホーム長などなんでも引き受け、休みの概念もないほど毎日仕事をしていました。20代での濃い経験が、今の自分をつくっています。

ある時、ご入居者とその家族に「あなたがホームの機長なんだからよろしく頼むよ」と言われました。その時、パイロットにならなくてよかったと思いましたね。解釈次第で人の人生は前に進めると経験しました。あの事故がなかったら、今の自分はなかったと思い、今では感謝しています。

 

どうして起業ではなく、社長就任という道を選んだのでしょうか?

介護付き有料老人ホームは、ご入居者やご家族から大きな信頼と資金を託され、長期にわたり生活を支える事業です。信用・信頼がないとできない事業なので、大きな信用と資本力を持った組織の中で、自分の理想とするサービスをつくりこみ、マネタイズしなければなりません。

起業するのも1つの挑戦ではありますが、アライブをさらに成長させ、介護業界全体を変えていくような存在にできたらという気持ちのほうが強かったので、この会社で社長になることにしました。また、雇われ社長とオーナーではまた出来ることが変わってくるので、将来的には起業家になりたいと思っています。

 

社長就任の背景を教えてください

入社した当時から社長になりたいと決めていました。

そのためには下積みと実績、結果を出していかないといけないと思っていたので、悔しい思いを何度もしましたが、その度にしっかりと耐え忍び、信頼を勝ち得ていきました。国内外問わず「最も割に合わない仕事を黙って引き受けた人が、最後に信頼を得る」という共通点を数多くの本から得ていたので、どんなことが起きても「これは自分の責任です」と言い続けていましたね。

その結果、社長になる時が来ました。就任時、会社は赤字でした。赤字の理由は様々で、現場の問題もあり、経営側の責任もありましたが、元々何をどうすれば解決するかは理解していましたし着々と準備をしていたので、負担はありませんでした。

 

実際に経営者の仕事をされていかがでしたでしょうか?

社内では「ここまでぐちゃぐちゃになった会社を立て直せるはずがない。絶対に無理だろう」と思われていました。ですが、自分のやり方を信じた結果、3年でV字回復させ、過去最高益を出すことができました。私は「合わせる力」と「こらえる力」を持って、最適解を見定めていくスタイルです。元々理系なのでゴールに行くための分析をして、マイルストーンをどうやって置くか決めて、チューニングしながら進めていきます。可視化して進めていくことでゴールが近づいていきますね。足りないことがあるならば、皆で勉強して、絶対にゴールを目指そうとするのが私のやり方です。

また、私は社員が持続的に幸せでいられる会社をつくることが経営者として大切だと考え、人を資本としたウェルビーイング経営に取り組んできました。

 

どのように経営を立て直したのでしょうか?

皆のマインドセットができたことが大きかったです。

ビジョン・ミッション・バリューといった企業が目指すものを言語化して、その言語化されたものと現場をどうやって結びつけるかを重視しました。また、やるべきことを日常生活で話すことによって、モチベートされていく変化をみることができました。

私が社長に就任して変化が起きたことで160人ほどが退職をしましたが、いまでは辞めるメンバーがいなくなり、定着して稼働率もあがりました。良いことも悪いことも、全部皆で話し合って「誰が悪い」から「何がそうさせたのか?」「どうしたらうまくいくのか?」の思考ができる組織になっていきました。

 

今後の展望を教えてください

当社のビジョンの1つに「日本の介護を牽引する」というものがあります。今後は介護業界を国や政治に頼る選択肢は、事実上ありません。次の介護保険改定でも、事業者にとってポジティブな要素はほとんどないと思います。国としても、高齢化、生産人口の減少、そして財源がないので、企業が自助努力で勝ち残るしかないと考えています。

そのためにも、価値を上げることが重要です。

例えば、当施設の食事を月額4~5万円へ値上げしました。「物価が上がったから、原価が上がったから、人件費が足りないから値上げします」との言い訳をせずに、価値を上げて提供しています。金目鯛や真鯛、A4・A5ランクの和牛等の良い食材を使うだけでなく、これまで以上に栄養バランスも整えることで、ご入居者にも喜んでいただけます。値上げをした分は1円も自社の利益にはせずに厨房業者や食材、生産者に投資すると決めています。そうすることで他の業者も価値が上がっていくと考えていますし、社員たちも自分達が何をしたら価値を上げることができるかを考えて行動してくれるようになると思っています。

 

入居者は何を求めているのでしょうか?

富裕層の行動心理は、5年、10年で変わってきています。かつては明治・大正生まれの方が中心だったので「私にはもったいないから…」と謙虚な方が多かったです。しかし、現在は戦後生まれの方ばかりなので活力が溢れており、90歳になっても、認知症があっても、みなさん夢を捨てていません。

夢を追うことで実際に元気になる事例もあるので、活動的なシニアライフを応援できるようなビジネスもしたいと考えています。例えば、ご入居者の全員が東京に住みたいわけではないので、春は京都、夏は北海道、冬は別府など自分の好きな季節に好きな場所に住めるよう、全国で当社のサービスが受けられるようにしたいです。

 

介護業界の人材不足にはどのように取り組みますか?

介護の担い手は220万人いますが、2035年には60万人足りなくなると言われています。若い人は介護職になりたいとは思っていませんが、海外の人材の中には日本人よりも有能な方がたくさんいます。インド・インドネシアから、看護師資格を持った優秀な人材が毎年30人継続的に来日しているので、今後も文化を学びながら、日本でしっかり活躍してほしいです。また、当社からウェルビーイングの経営モデル、海外人材の活用、場所にとらわれない介護のかたちを発信していくことで、業界をより良くしていきたいと考えています。

 

経営者におすすめの書籍を教えてください

平井 一夫さん著書『ソニー再生 変革を成し遂げた「異端のリーダーシップ」』がおすすめです。現場の人たちと対話して、Emotional Intelligence(感情知能)を活用してソニーを再生させていく過程に感動しました。ソニーほど大きい企業ではありませんが、私も同じように経営してきました。

また、呉 兢『貞観政要 』もおすすめです。

徳川家康も愛読していたとされているので、日本の社長さんの中でも読んでいる方は多いと思います。「上に立つ者は、謙虚に民に耳を傾けなさい」「諫める言葉から逃げてはいけない」という人を統べるために必要なことが学べます。慢心・おごり・諦め・怠惰・怠慢が国を滅ぼしますが、企業も同じだと思って経営しています。組織が崩壊する6つの段階に「トップの心」があります。経営者はまっすぐ道の真ん中を歩く、太陽みたいな生き方が必要だということを学びました。

ぜひ2冊合わせてご覧ください。

『ソニー再生 変革を成し遂げた「異端のリーダーシップ」』 平井 一夫 (著)

https://www.amazon.co.jp/dp/4532324122

『貞観政要 』呉 兢 (著),   (編集), 守屋 洋 (翻訳)

https://www.amazon.co.jp/dp/4480096957

 

 

 

 

投稿者プロフィール

『社長の履歴書』編集部
『社長の履歴書』編集部
企業の「発信したい」と読者の「知りたい」を繋ぐ記事を、ビジネス書の編集者が作成しています。

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