今回は株式会社山本仏具店4代目、山本 裕基氏にお話を伺ってきました。
「社長の履歴書」だけの特別なインタビューです。
ぜひご覧ください!
会社名称 | 株式会社山本仏具店 |
代表者 | 代表取締役:山本 晴彦
4代目:山本裕基 |
設立 | 創業 大正5年(西暦1916年) |
主な事業 | 家庭用仏壇・仏具・位牌
寺院用荘厳仏具・納骨壇・家具・記念品 修理・修復(仏像修理・仏具修理・工芸修理) |
社員数 | 4名(取材時) |
会社所在地 | 東京都台東区元浅草2-10-12 |
会社HP | https://www.yamamotobutsuguten.co.jp/ |
事業内容を教えてください
株式会社山本仏具店は大正5年(西暦1916年)から続く仏壇、仏具、工芸品を取り扱うお店です。
家庭用の仏壇仏具だけでなく、寺院荘厳仏具の企画製作・販売、仏像・仏具工芸の修理修復事業も展開しています。
【写真 上:家庭用の仏壇 下:寺院荘厳仏具】
当社の一番の強みは、仏像修理専門の技術者(石井幹男氏)が自社工房内で修理を担当しているところです。特に、作られた当初の作風を保ちながら修理する技術に長けており、文化財指定を受けた仏像の修理実績もございます。仏像修理のお仕事では、彫刻・漆塗り・金箔押し・彩色・金工等、古い時代の技術に多く向き合うことになり、必然的にそういった技術に関する学びの機会を得られ、仏像以外の仏具・工芸の修理にあたっても、その知識を活かすことができる点が強みとなっております。
【仏壇修理 石井幹男氏】
また、そのようなノウハウを活かして、お客様のご希望に合わせたオリジナル仏具の企画製作も当社の得意とするところです。
カタログ掲載された規格品の仏具をそのままつくるだけでなく、ご要望に合わせた仏具をお作りします。寺院様向けに限らず、一般のお客様向けにもオリジナルデザインの仏具や工芸品をお作りします。
創業以来積み重ねてきた知識・経験・技術を活かし事業を展開しておりますので、仏具に関することでお困りの際はぜひご相談ください。
URL:https://www.yamamotobutsuguten.co.jp/contact.html
創業当初はどのような事業からスタートされたのでしょうか?
主にご家庭用の仏壇・仏具位牌の販売から始まったと聞いています。創業者が1つひとつお客様の要望に応えていき、次第に寺院関係のお仕事も数多く承るようになり、現在の事業展開になりました。修理修復事業は以前から事業としてはありましたが、3代目の父の代から特に力を入れ、社内に仏像修理を行なう専門技術者を招き、当社の事業の柱として育て始めました。
当社の手がけるお仕事の詳細はHPの他SNSでも発信しておりますので、ぜひご覧ください。
URL:https://www.yamamotobutsuguten.co.jp/
FBURL:https://www.facebook.com/yamamoto.butsugu/?ref=embed_page
Instagram:https://www.instagram.com/yamamoto_butsugu/
ここからは4代目ご自身のことをぜひお伺いしたいです。学生時代はどのようなことに熱中されていましたか?
スポーツばかりしていた学生時代でした。中学ではバスケットボール、高校では野球をしており、大学受験で一浪したので、大学ではもうスポーツはしないつもりでしたが、先輩から勧誘されたことがきっかけでラクロス部に入り、結局スポーツばかりの学生時代でした。
男子ラクロスは激しいコンタクトスポーツで、試合中にぶつかり合い、スティックで叩かれることもあるため、ヘルメット等のプロテクターを付けていても生傷が絶えることはありません。このようにお話すると、随分怖いスポーツという印象を持たれるかもしれませんが、実際にやってみると、エキサイティングでとても面白いスポーツです。
ラクロスのどのような部分に面白さを感じていましたか?
選手たちのプレイスタイルに特色がある部分に面白さを感じました。
他の多くのスポーツと違い、ラクロスはプレイヤーの大半が大学から競技をスタートするので、試合中はプレイヤーが以前やっていたスポーツの特色がプレイスタイルに出ます。野球選手は強いシュートを打つのが得意だったり、バスケットボール経験者は相手を抜き去ってゴールに向かう走り込みが上手だったり、サッカー経験者はとにかく走り続けることや広い空間の使い方が上手だったり、ラグビー経験者は当たりが強かったりと多彩なスポーツ文化を感じることができました。
もちろん、必ずしもこういった特徴だけに限るわけではありませんが、それぞれが経験してきたスポーツがプレーの中で垣間見れるというのもラクロスの面白さの1つだと思います。
学生の頃に山本仏具店を継ぐことを意識されていましたか?
父からは家業を継ぐ継がないについてあまり言われていなかった一方、祖母や母からは「あなたは将来この店を継ぐんだよ」と言われた記憶が強く、意識せざるを得ませんでしたが、あまり前向きには捉えられませんでした。なぜなら、当時の私は、将来好きな仕事をやりたいという気持ちが強く、正直家業を継ぎたいとは思っていなかったからです。
ちなみに、学生時代の私は勉強熱心ではなく成績も目も当てられないほどで、さすがに父から「何の目的もなくてフラフラしてるんだったら大学で何か学んできなさい」と怒られました。そのため、何を学ぼうかと考えた結果、たまたま高校の授業で興味を持った心理学を学べる大学に入ろうと決め、それからは受験勉強にも身を入れて頑張りました。
そして、学習院大学 文学部 心理学科卒業後、北海道大学 大学院 文学研究科心理システム専攻に進み、その後はオフィス家具メーカー・株式会社岡村製作所(現・株式
オフィス家具メーカーで経験した仕事の中で印象に残っていることはありますか?
1年目に担当したお客様から大きな影響を受けました。
お客様のオフィス移転のため、新オフィスの立ち上げに携わったのですが、その会社の社長は若くして人材派遣の会社を起業された方で、新しい働き方を世の中に提供し、会社を大きくしていきたいという理想を持って働いており、若手の私から見てとてもカッコよい経営者だと感じました。私にとっては初めて色々お話のできた経営者の方だったので、大きく印象に残っています。
また、その社長さんが「今の仕事も良いと思うけど、家業も良いんじゃないの?」と仰ってくださったことで、家業への見方が変わりましたね。
その頃は家業に対して思い入れはいませんでしたが、その後のキャリアを深く考えるきっかけになったと思います。
家業を継ごうと決めたきっかけを教えてください
父の入院がきっかけです。幸いにも大したことはなくすぐ退院しましたが、これを機により現実的に家業について考えるようになりました。
それまでは、2人いる私の妹のどちらか、もしくは、家業の会社で働いている従業員の誰かがが継げばいいだろうとか楽観的に考えていましたが、私が継がなければ家業を閉めることになるだろうというのが父の考えでした。
話を聞いている中で、ふと「自分が生まれ育ってきた実家の家業であり、およそ100年続いてきた会社がなくなってしまう」と思った時に、「この会社を守っていきたい」という気持ちが芽生えました。ただし、古くからの伝統ある業界なので、「昔ながらの形式を崩さずに、そのまま守っていかなければならない」という印象が強く、自分には合わないのではないかという懸念がありましたが、父からは「衰退してきていて変化が必要な業界だから、新しいことへのチャレンジはむしろした方が良いと思う」という言葉があり、それが家業を継ぐことへの後押しとなりました。
また、富山県高岡市にある金属工芸品のメーカー株式会社能作様の作品に出会ったのも仏具業界で生きていこうという決心の後押しになりました。
当時、何かおしゃれな仏具はないかな? とネットサーフィンしていたところ、素敵な作品を見つけました。それが能作様の作品でした。気になって詳しく調べると、三越日本橋店や表参道の展示会でその作品が展示されていることを知り、実際に足を運んで見てみると、とても魅力的でかつ、現代の住空間にも調和しそうな素敵な作品で、感動しました。能作様は100年続く老舗メーカーで、自社の持つ「錫」という金属を加工する技術を強みに新しいチャレンジをし、テーブルウェア等の日常生活で使いやすい工芸品を世の中に出されているのですが、こういった老舗が新しいチャレンジなさっている姿に大変共感し、良い刺激を受けたことを今でも覚えております。
当社のONLINESHOP「BUTSUGU LIFE」でも能作様をはじめ様々な工芸品を取り扱っていますので、気になったものがありましたらぜひお買い求めいただけますと嬉しいです。
https://www.yamamotobutsuguten.co.jp/webshop.html
前職から山本仏具店に入られる経緯を教えてください
そうですね。丁度大きな仕事も任されるようになったタイミングでのことだったので、退職をするか、留まるか長考しました。辞める決心がついた時も同僚や先輩、お客様に迷惑をかけないよう、大きなプロジェクトが区切りを迎えるまでは会社に在籍し、その後退職しました。
そして2013年から山本仏具店に入社しました。
実は入社時から取締役の肩書が用意されていたのですが、何も知らない実績もない若造が、突然取締役として入社したら、いくら跡継ぎだといっても昔から働いてくれている従業員は働きづらいだろうと思い、社内に対しても対外的にも、いち社員として働き始めました。
いつから取締役と名乗るようになったのでしょうか?
6年ほど勤務してからです。
その頃には新規顧客の開拓、大型案件の受注等、それなりの実績を残し、1人前に仕事ができるようになりました。
また、仏具組合の活動でも役職を任されるようになったことで肩書をきちんと名乗る必要がある場面が増えました。
周りから自身の仕事を認めて頂けるようになったこと、肩書が必要とされる仕事に関わるようになったことから、取締役と名乗り始めました。
仏具店の仕事においてオフィス家具メーカーでの経験はどのように役にたちましたか?
オフィス家具メーカーで営業や提案の仕方を学べたのは非常に役に立っています。
入社時からお寺への営業を中心に仕事をしてきましたが、お寺の大型案件では競合他社とのコンペになることもあるので、勝ち抜く力を身につけることができたのは良かったです。
また、仏壇や仏具以外に、お寺に設置する家具・備品、デザインについても相談いただくことがありますが、そのようなケースで良い提案ができるようになったのは前職時代の経験があるからだと思います。
お寺へデザインの提案をする際に工夫していることはありますか?
古いものを研究するようにしています。博物館に展示されている昔の仏具や古い仏具の資料・文献を始め、様々な作品を見ることでヒントを得ています。「本堂新築にあたって、ありがちなデザインの仏具ばかり並ばないようにしたい」というお客様のご希望を頂いて新しいデザインを考えた時には、「鎌倉時代に創建された寺なので、当時の質実剛健の印象を受けるデザインにしよう」と考え、古い時代の仏具の文献や古寺の仏具を見学し、それらを参考にデザインを考え提案することもありました。古いものが新しい提案のヒントにつながることもあるのだなという貴重な経験でした。
実際にご要望に合わせたオリジナルデザインの仏具を作り上げた時、お客様がとても感動してくださったのは良い思い出です。
その他に、仏教分野と関係ない美術館の展示にも足を運ぶこともありますし、個人的に漆教室にも通い、体験を通して工芸についての見識を深めようと努めています。これらのこと通して、何か新しい仏具提案の良いヒントになってくれれば、と思っています。
今後の展望を教えてください
古くから伝わるもの、現代的なものも含めて、今後も積極的に仏具や仏教文化をゆかりのある工芸品を発信していきたいです。
現代は不景気であることもあり、大量生産できる安価な物の方が需要があるかもしれませんが、少しお値段が張るものの、魅力的な仏具や工芸品も世の中にはあります。ただし、これらの工芸品は作り手の技術を要するものなので、いったんその技術者が途絶えてしまうと、復活させるのは極めて難しくなります。私たちの時代まで繋がれたきたこのような技術や文化を、現在においても守り、次の時代に繋いでいけるように努めていきたいと思います。
その為には、古くから伝わってきたものを、ただそのまま受け継ぐだけではなく、新しい考え方を取り入れ、現代に適合させながら世の中に発信していくことが大事であると思います。寺院関係のお客様、一般のお客様に対しても、こういった活動を続けていきたいです。
【写真 上:蓮の花の工芸品 下:蒔絵の香合】
他の経営者におすすめの本を教えてください
イギリスの哲学者ローマン・クルツナリックさん著書の『グッド・アンセスター わたしたちは「よき祖先」になれるか』をおすすめします。この本を読むことで、今の自分の選択や行動が50年後・100年後・200年後の未来の子供達を担っているということを強く自覚することができます。
また、この本の翻訳をされたのは僧侶の松本紹圭さんなのですが、この長期思考の考えが、仏教と通じていると思います。
本書には未来の子孫にとって「よき祖先」となるために、私たちは今、どう行動すべきか? という問いが投げかけられています。
毎日の経営・マネジメント・会議・プレゼンなど、経営者は日々大変なことが多いと思いますが、一旦立ち止まって、人類や地球など広い範囲で世界を捉えてみてはいかがでしょうか?案外、それがこれからの経営のヒントになるかもしれません。
気になった方はぜひ読んでみてください。
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投稿者プロフィール
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新入社員を含めたフレッシュなメンバーを中心に、出版サポートの傍らインタビューを行っております!
就活生に近い目線を持ちつつ様々な業種の方との交流を活かし、「社長に聞きたい」ポイントを深掘りしていきます。
代表者様のキャリアを通して、組織の魅力が伝わる記事を発信していけるよう、これからも一生懸命運営してまいります!
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