
今回はVALANCE株式会社代表、渡邉俊氏にお話を伺ってきました。
「社長の履歴書」だけの特別なインタビューです。
ぜひご覧ください!
| 会社名称 | VALANCE株式会社 |
| 代表者 | 渡邉 俊 |
| 設立 | 2025年7月14日 |
| 主な事業 | 中小企業を中心に、AIを活用したサプライチェーンマネジメントシステムを開発 |
| 社員数 | 約7名(取材時) |
| 会社所在地 | 東京都渋谷区渋谷二丁目19番15号宮益坂ビルディングザ・渋谷レジデンス1204号室 |
| 会社HP | https://valance.co.jp/ |
VALANCE株式会社の事業内容と強みについて教えてください
弊社は、AIを活用した新しい基幹システムを開発している会社です。領域としては、在庫・発注・納品といった「モノの流れ」を管理するサプライチェーンマネジメント(SCM)にあたります。
これまでのソフトウェアは「人間が操作するもの」が前提でしたが、弊社が目指しているのは、AIが自律的に業務を動かす時代に対応したシステムです。
特に解決したいのが、日本の中小企業における「モノの管理ができていない」という課題です。
きちんと管理しようとすると、システム導入だけで1,000万〜1億円規模の初期投資が必要になる――それが現実でした。弊社のサービスはAIを活用して構築するため、数十万〜数百万円規模での提供が可能です。これにより、原価・粗利の管理といった経営の基盤を、中小企業でも無理なく整えられるようになります。
さらに、それらの経営データが整うことで資金調達にも変化が生まれます。これまで「情報が不十分」という理由で融資を受けられなかった企業が、財務状況をスムーズに開示できるようになり、数日単位での資金調達も現実的になってきます。モノの管理から、経営・財務の改善までをつなげていくのが、弊社の目指す姿です。
ターゲットとする顧客層や業種について教えてください
メインターゲットは、従業員2,000名以下の中小・中堅企業です。大企業はAI時代において内製化を進める方向に向かうと見ており、弊社は自社だけでは対応しきれない中小・中堅企業をしっかり支援することに集中しています。
業種は、製造業・商社・卸売・小売など「モノを扱うビジネス」全般が対象です。日本の産業構造で見ると、こうした有形ビジネスは全体の約7割を占めています。また、この領域の企業は、弊社のサービスを必要とするような課題を多く抱えているので、弊社にとって最も貢献できる市場だと考えています。
「社長の履歴書」を通じてアピールしたいことはありますか?
ここ10〜20年、中小企業には「DXで経営が変わる」「IT投資が必要だ」と言われ続けてきました。私自身、前職のフリー株式会社(以下、freee)でも同じようなサービスの展開に携わっていました。しかし率直に言うと、中小企業は本当に変わったのか――変わっていない企業のほうが、まだまだ多いのが現実だと思っています。
その大きな理由の一つが、人手不足です。DXをやりたくても、それを推進する人材や時間が社内にない。これは技術の問題ではなく、リソースの問題でした。
ただ、ここ1〜2年のAIの進化は、この状況を大きく変える可能性を持っています。AIを活用することで、人手に頼っていた部分を補いながら、経営管理の基盤を一気に整えることができる時代が来ています。弊社のサービスは、まさにその入り口となるプラットフォームです。
弊社のロゴにはカエルのモチーフが入っていて、「リープフロッグ」という言葉を掲げているのも、この想いを表しています。カエルが大きくジャンプするように、中小企業がAIを使って一足飛びに前へ進める――そんな未来をつくりたいというメッセージになっています。
弊社の事業の詳細はこちらをご覧ください。
ここからは、渡邉社長のことをお聞かせください。学生時代に打ち込んでいたことはありますか?
学生時代の95%はサッカーでした。小学生の頃から本格的に取り組み、高校生まではプロサッカー選手を本気で目指していました。しかし夢が叶わず、卒業後に一念発起して受験勉強をスタート。当時の偏差値は30ほどでしたが、二浪を経て慶應義塾大学SFCに合格し、最終的には修士課程まで進みました。
大学でもサッカーは続けていましたが、学部の後半から修士にかけては研究にのめり込んでいきました。サッカーを長年続ける中で「選手の動きや能力って、どうやって正しく評価するんだろう」という疑問をずっと持っていて、それをテクノロジーで解けないかと興味が広がっていったんです。
大学ではどのような研究をされていたのですか?
修士論文のテーマは、体に小さなセンサーを取り付けて「人の動きをデータで分析する」というものでした。
人が走っているのか、歩いているのか、ボールを蹴っているのか――映像なら目で見てわかりますよね。それをカメラなしで、センサーのデータだけで判別しようという研究です。今でいうウェアラブルデバイスに近いイメージで、当時はまだ珍しい分野でした。
さらに、AIのニューラルネットワークを自分で一から作り、「どんな動きをすると良い選手になれるか」をデータで分析するモデルも開発していました。スポーツの指導現場では、選手の評価は指導者の経験や感覚に頼るのが当たり前。それをデータで客観的に「見える化」したいという、サッカー少年ならではの問いが研究の原動力でした。
サッカー一筋だった学生時代が、修士課程でテクノロジーへの興味へと変わっていく。今思えば、現在の事業につながる原点は、この頃にあったのかもしれません。
経営者になりたいと思ったのはいつ頃ですか?
学生の頃から、「自分はサラリーマンには向いていないな」という感覚がありました。なので、卒業後の選択肢として考えていたのは、博士課程に進むか、起業するかのどちらかでした。
起業するなら何をやるか――真っ先に浮かんだのが、スポーツとテクノロジーを組み合わせたビジネスです。サッカーを長年続けてきた経験から、スポーツの世界にテクノロジーを持ち込むことへの興味は、学生時代からずっとありました。
ただ、研究も本当に楽しくて、勉強すればするほど興味が広がっていく感覚があったんです。そのため修士課程の頃は、「次は博士課程に進んで、その先で起業できればいい」という気持ちのほうが強かったですね。起業はあくまで、その延長線上にあるものとして考えていました。
社会人としてのキャリアについて教えてください
修士2年の頃、やりたい研究テーマがどんどん大きくなる中で、「これを実現するには、自分でお金を稼げるようにならないといけない」と気づきました。研究機関からの助成金だけでは制約が多く、本当にやりたいことを追求するには限界があると感じたんです。
そこでインターンを経験するうちに、「自分がこれまで積み上げてきたITの知識やプログラミングのスキルって、意外と社会で役に立つんだな」という感覚が芽生え、一度サラリーマンとしてやってみようと思いました。
そして最初に入社したのがアクセンチュアです。テクノロジーを使って幅広い企業にサービスを提供している会社という印象があり、「技術をビジネスにどう転換するかを、お金をもらいながら学べる環境」として選びました。
ところが入社後は金融部門に配属され、毎日24時間以上働くような激務が続きました。「人の2倍働いているのに、時給換算したら大したことないな」と感じることもありましたが、体力には自信があったので生き残れました。学びは多く、結果的に6年半お世話になりました。
その後、フリー株式会社に転職された経緯を教えてください
アクセンチュアを辞めた後、最初に考えたのは、やはり起業でした。ただ、そこで気づいたのが、アクセンチュアで学んだコンサルという仕事は「企画」は得意でも「実行」の経験が乏しいという現実でした。「自分は本当に事業をやったことがあるのか」と問い直したとき、答えはノーでした。起業前にもう一度、事業会社で経験を積もうと考え、選んだのがfreeeです。
freeeを選んだのは、会社の志に共感したからでもあります。当時はビットコインブームで「お金儲け」を前面に出したスタートアップが多い中、freeeは「日本の中小企業に新しいクラウド会計ソフトを届ける」という社会的な意義をしっかり持っていました。面接で会った役員の方々も志が高く、「ここならアクセンチュア以上に学べる」と直感しました。
アクセンチュアでの経験はフリー株式会社でも活きましたか?
正直に言うと、アクセンチュアでの業務経験が直接活きたかというと、あまりなかったと思います。それよりも、サッカーを通じて身につけた「自分を客観的に見る力」のほうがはるかに役立ちました。「なぜ今日の試合に負けたのか」「なぜレギュラーになれないのか」と自分を振り返り、足りないものを考え続けてきた姿勢です。
事業会社では、コンサルのようにじっくり考える時間はありません。素早く判断して、うまくいかなければすぐ切り替えて次に進む――その感覚はサッカーとまったく同じでした。「自分はコンサルより事業側のほうが向いている」と強く実感しましたね。アクセンチュアで「企画」を学び、freeeで「実行」を学ぶ。結果的にはバランスの取れた経験ができたと思っています。
社会人時代の経験で、今の事業に活きているエピソードはありますか?
華やかな成功体験というよりも、freee時代に「やりたかったけれど実現できなかったこと」が、今の事業の原点になっています。
当時は、中小企業に本当に必要な価値を届けたいという思いで仕事をしていました。しかし思うように実現できないことが多く、お客様から厳しい声をいただくこともありました。その度に「ビジネスって本当に難しいな」と感じていましたね。
ただ、今振り返るとその悔しさがVALANCE創業の出発点になっています。「freeeでできなかったことを、今度こそ実現する」という思いがベースにあり、さらにAIの力を組み合わせることで、当時描いていた理想をより大きなスケールで形にしようとしています。うまくいった経験よりも、うまくいかなかった経験のほうが、今の自分を動かす原動力になっていると感じています。
起業のきっかけや経緯を教えてください
「何歳までに起業する」という目標を決めていたわけではありません。ただ、「freeeの次はサラリーマンをやらない」ということだけは、自分の中でずっと決めていました。アクセンチュアとfreeeを経て、会社員として経験すべきことはやり切ったという実感があったので、次は自分でやる以外の選択肢は考えていませんでした。
もともとfreeeは2年ほどで辞めて起業するつもりでした。ところが、思いのほか良い経験をさせてもらえたことや、お客様やパートナーとの約束が積み重なっていったこともあり、気づけば8年半が経っていました。
起業を決断したのは、「自分がここに居続けても意味がないな」と感じたタイミングでした。お客様へのコミットも一段落し、自分の役割を果たしたという感覚が生まれた頃、当時の社長に「来年は起業させてください」と直接お願いしました。
正式に決意したのは2024年の3〜4月頃。学生時代からずっと頭の中にあった「いつかは起業」という思いが、ようやく現実になった瞬間でした。
経営者として、これまでどのような苦労がありましたか?
正直なところ、苦労をあまり苦労と感じないタイプなんです。起業する前からある程度の覚悟と心の準備をしていたこともあり、今のところ想定外の出来事はそれほどありません。AIの進化スピードを除けば、事業はだいたい描いていたシナリオ通りに進んでいます。
人のマネジメントはfreeeで長年経験を積んできたので、今の組織規模であればむしろ楽に感じるくらいです。資金調達も共同創業者の山口がいる安心感があり、すべて想定の範囲内で動けています。
一番大変だと感じているのは、市場環境の変化の速さです。AIがどんどん進化していくので、1週間前の前提が翌週には変わっているということが日常的に起きています。今は組織が小さいのでメンバーと密に話し合いながら柔軟に対応できますが、組織が大きくなればなるほど、この変化に合わせて素早く意思決定していくことが難しくなってくる――そこがこれからの本当の課題だと感じています。
事前の準備があったからこそ、困難にも冷静に対応できているのですね
そうですね。起業が大変なことはわかっていましたし、ただ大変だと嘆いてもしょうがない。それに、サッカーの練習のほうがよっぽどきつかったので、あれに比べれば楽なものです。失敗したら厳しく叱られて、ひたすら走らされた経験があるので、今の苦労はその頃に比べれば大したことないと思っています。子どもの頃から積み上げてきたサッカーの経験が、経営者としての土台になっているのかもしれません。
今後の展望について教えてください
今は、「早くマーケットシェアを取らないと生き残れない」という危機感を持ちながら事業を運営しています。AIの進化スピードが非常に速く、ソフトウェア自体の価値がどんどん下がっていく時代が来ると見ているからです。その中で勝ち続けるためには、どれだけ早く顧客基盤を広げられるかが勝負です。この1〜2年が最大の正念場だと思っています。
そのカギを握るのが採用です。ただ、AI時代の採用の考え方は、これまでとは大きく変わると感じています。MBAや高度な専門知識がなければ戦えない――そういう時代ではなくなってきました。知識やノウハウはAIに任せられるからです。
では、これからの時代に必要な人材とは何か。私が思うのは、「人間味があって、一緒にいて気持ちいい人」です。きちんと挨拶ができる、とにかく頑張れる、一緒に働いていて楽しいと思える、そういう人の価値がこれから一気に上がると考えています。
AIがどれだけ賢くなっても、人間はなかなかAIを素直に信頼しません。ただ、信頼できる人から「これを使ったほうがいいですよ」と言われると、使ってみようと思う。それが人間の心理ではないでしょうか。テクノロジーの磨き上げはCTOやCDOに任せながら、ビジネスの現場では人間味のある人材を揃えて社会課題に挑んでいきたいと思っています。
AIの進化によって、市場環境も大きく変わりそうですね
これまでレッドオーシャンだった市場も、AIの登場でプレーヤーが入れ替わると思っています。そして何より大きいのは、「これまで届けられなかった領域に、届けられるようになる」ということです。
中小企業向けのシステムは、コストが高すぎてビジネスとして成り立たない領域がずっとありました。安く提供しようとしても人件費がかかりすぎて採算が合わない――そんな壁があったんです。しかしAIを活用することで、その壁を一気に超えられる時代が来ています。これまで誰も手をつけられなかった領域が、これからのブルーオーシャンになっていく。そこに大きなチャンスがあると確信しています。
他の経営者の方におすすめしたい本はありますか?
『三位一体の経営』という本をおすすめしたいですね。freee時代に読んだ本ですが、今でも大切にしている一冊です。
テーマはシンプルで、「会社は誰のためにあるのか」という問いです。その答えとして、経営者のため、投資家のため、従業員のためという3つの視点が挙げられています。
VCから資金調達するスタートアップは、どうしても投資家を向いた経営になりがちです。一方、日本の伝統的な企業は、経営者自身のために会社を動かしているケースも少なくありません。どちらも一方向だけを向いた経営で、残りの2つがおろそかになってしまう――そういう現実が多くあったのではないかと感じています。
私がこれから目指したいのは、この3つをバランスよく満たす経営です。中でも特に大切にしたいのが、従業員への価値の還元です。経営者が利益を溜め込むわけでも、投資家のためだけに働くわけでもなく、従業員の生活や給与もしっかり考えながら会社を運営する。人間である以上、そういう環境で働くことにこそ大きな意義があると思っています。この本は、そんな経営観の原点になっています。
『三位一体の経営』中神康議(著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4478112258/
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企業の「発信したい」と読者の「知りたい」を繋ぐ記事を、ビジネス書の編集者が作成しています。
企業出版のノウハウを活かした記事制作を行うことで、社長のブランディング、企業の信頼度向上に貢献してまいります。
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