今回は宅島建設株式会社代表、宅島 寿孝氏にお話を伺ってきました。
「社長の履歴書」だけの特別なインタビューです。
ぜひご覧ください!
| 会社名称 | 宅島建設株式会社 |
| 代表者 | 宅島 寿孝(たくしま としたか) |
| 設立 | 1951年3月26日 |
| 主な事業 | 総合建設業、一級建築士事務所、不動産賃貸業、宅地建物取引業 |
| 社員数 | 103名(取材時) |
| 会社所在地 | 〒854-0513 長崎県雲仙市小浜町南本町7番地22 |
| 会社HP | https://takushima.co.jp/ |
事業紹介をお願いします
宅島建設株式会社は、長崎県内を中心に陸上・海上の土木工事からビル建築まで、幅広い総合建設業を展開しています。宅島建設は、祖父・宅島満壽美が1946年に創業した鉄工所から始まりました。その後、1951年に宅島塩業有限会社を設立。 1956年に宅島建設興業有限会社に社名変更を行い、建設業へ進出しました。現在の宅島建設株式会社となったのは1970年のことです。

当社は建設業を主軸としながらも、観光業など地域に貢献できるさまざまな事業に取り組み、「地域に育ててもらった恩を地域に返していく」という思いを大切にしています。
その一環として、長崎県下中学生のサッカー大会への協賛や、九州プロレスの無料観戦イベントを招致し、地域の子どもから高齢者まで幅広い世代が交流できる場を提供してきました。単なる企業イメージアップではなく、地域とともに歩み、喜びを分かち合うことを目指しています。
そして、設立75周年を前に始動した新制度「Thank You Takushima Family」では社員とそのご家族へ感謝を伝えるため、誕生日ギフトとして食事券1万円分を贈呈しています。家族団らんの時間を大切にしてほしいという社長の想いが込められた制度です。地域への貢献だけでなく、社員が安心して働ける環境づくりにも注力をしています。

当社の社内外への取り組みについては下記URLよりご覧ください。
https://takushima.co.jp/pages/50?detail=1&b_id=424&block424_limit=10&p424=1#block424-398
宅島建設では採用活動、人材育成への取り組みに注力されているとのことですが、具体的にどのようなことをされているのか教えてください
採用では、高校卒業後すぐに社会人となる若者を毎年受け入れています。しかし、地方ではアルバイトを禁止する高校も多く、社会に出る前に働く経験を積む機会が少ないのが現状です。そのため、地域の高校の先生方と協力し、夏休みや冬休みにアルバイト経験を推奨するなど、「働く喜び」や「給与を得る実感」、さらには仕事の大変さを学べる機会をつくっています。こうした取り組みを通じて、若い世代が早い段階で自分に向いている仕事を知り、社会人としての心構えを育めるよう支援しています。
また、2024年10月より、学生向けに建設業の魅力を伝えるラジオ番組を開始しました。宅島建設の「夢をかたちに」というスローガンのもと、学校訪問して学生さんの夢をインタビューし紹介しています。自主制作ラジオ番組「エール」は下記URLよりぜひご覧ください。
https://www.youtube.com/@%E5%AE%85%E5%B3%B6%E5%BB%BA%E8%A8%AD
そして、入社後の人材育成については、現代ならではの問題への配慮が必要なことから、社内での教育や指導が難しくなっていると感じています。その中で、私は「誰でもいいから来てほしい」という採用ではなく、「自分自身を成長させたい」と本気で思える人材に来てもらいたいです。そしてその人の成長のためにも、ただ優しく見守るだけではなく、必要な厳しさ「攻め心のない厳しさ」を持った社員教育を行い、社員の成長と幸せにつなげていきたいと考えています。
「攻め心のない厳しさ」とは具体的にどのようなものなのでしょうか?
「攻め心のない厳しさ」とは、相手を否定するためではなく、お互いが成長するために必要な姿勢として、指導や注意をし合う文化を築いていこうという考え方です。
具体的な取り組みとして、近年は世代別のコミュニケーション研修を実施しています。役員や部門長を対象とした研修からスタートし、その後は中間層、そして新人・若手社員へと順に広げてきました。先日行った若手社員向けフォローアップ研修では、「コミュニケーションとは何か」「どの場面で必要か」「どのように表現するか」といった基礎を学びました。
研修の講義内容は全世代で共通化し、会社全体で同じ価値観や本質を共有することを目的としています。単なる一方通行の教育ではなく、研修の場で社員からの意見も吸い上げ、それを経営に反映させる仕組みを整えています。こうした取り組みを通じて、社員一人ひとりが自律的に考え、互いに支え合いながら成長できる組織づくりを進めています。
外国人人材の採用についても注力されていらっしゃいますが、どのような取り組みをされているのでしょうか?
建設業界に限らず、どの業界でも人材不足が課題となっています。宅島建設でも、これまでベトナムやミャンマーへ赴いて人材を採用する取り組みを行ってきましたが、定着が難しいという課題もありました。
そこで近年は方向性を見直し、日本国内の大学などに留学している外国人材の採用に力を入れ始めています。直近では、ベトナムからの新卒女性社員が入社し、22名の外国人スタッフをまとめるリーダーとして活躍しています。今後は、すでに日本に滞在している優秀な留学生や外国人材を積極的に採用し、社内の多様性を高めていきたいと考えています。
一方で、すでに現場で働いている外国人技術者へのケアや教育体制も課題です。宅島建設では、こうした社員が安心して働けるよう、定期的な交流会やフォローアップを行い、日常のサポートを充実させる取り組みを進めています。
当社の取り組みについては下記コーポレートサイトをご参照ください。
宅島建設HP https://takushima.co.jp/
ここからは宅島社長のことをお聞かせください。学生時代に打ち込んだことはありますか?
小学校1年生のときに剣道を始め、大学を卒業するまで剣道一筋の学生生活を送りました。地元の長崎県雲仙市小浜町は剣道が盛んな地域で、1つ上の兄が小学校入学と同時に剣道を始めたのをきっかけに、私も道場に通い始めました。
社会人になっても剣道を続け、42歳の時に七段を取得しました。長年の稽古を通じて身につけた礼儀や忍耐力は、自分自身の生き方に大きな影響を与えていると思います。その後国士舘大学に進学し、全寮制の環境で学生生活を送りました。とても厳しい環境でしたがと覚悟を決めて進学したので、この経験は精神的に自立する大きなきっかけとなりました。
いつ頃から経営者になりたいと考えたのでしょうか?
子どもの頃から「いずれ家業を継ぐんだ」という思いは持っていました。私が幼い頃の建設業は本当に休みがなく、父も日曜日に休んでいた記憶がほとんどありません。昔は雨の日とお盆・正月くらいしか休みがなく、朝早くから夜遅くまで働いていたといいます。今では考えられない働き方で、そういう時代だったのでしょう。
そんな大変な仕事だという認識はありましたが、父や祖父が懸命に働く姿を見て育ったことで、自分もこの業界に進みたい、家業を継ぎたいという気持ちが自然と芽生えていました。
宅島建設入社後はどのようなお仕事をされたのですか?
入社後は営業を中心に、管理部門の仕事も幅広く経験しました。当時はちょうど建設不況の真っただ中で、業界全体が厳しい時期でした。受注に苦労することも多く、また「会社が潰れるのではないか」「手形が危ない」といった根拠のない噂が出回ることもありました。
そうした中で、取引先や発注者、設計事務所との交渉など、さまざまな調整や課題解決に取り組みました。確かに大変なことは多かったのですが、自分としては苦労というより「やらなければならないこと」「自分がやりたいこと」と思って取り組んでいました。
そして、2011年、39歳の時に3代目社長に就任しました。私は現在に至るまで地域の方やたくさんの先輩社員によって築かれてきた会社を次の世代に繋ぐことが使命だと考え、企業理念の「私たちは社員の幸せと成長を願います」を体現するために駆け抜けてきました。
社員一同駆け抜けられたのは、「感謝・誠実・報恩」に基づいて日々お過ごせたからだと振り返っています。
経営者として仕事をするなかで、どのような苦労がありましたか?
実は、私自身はあまり大変だと感じることはありません。しかし、社員たちは私の経営スタイルに対してもしかしたら苦労があるのではないかと思っています。
例えば、私は先頭に立って指示を出さずに「自分たちで考え、率先して動く」ことを常に社員に求めています。なぜなら、社員一人ひとりが「自分の人生の主人公」であるという意識を持つことが大切だと考えているからです。主体的に物事を考えることで、同じテーマでも人によって視点や意見が変わってくるはずですし、それが社内で発揮されれば、会社全体がもっと活性化し、良い相乗効果が生まれていくのではないかと期待しています。
しかし、多くの人にとっては上から指示を受けて動くほうが楽なのかもしれません。先代である現会長は、グループ企業としての基盤をつくりあげるまで、自ら率先して休みも惜しまず働き、会社を力強く引っ張ってきました。そして、会長の指示を部下がいかに早く、効率よくこなすかが問われていた時代でした。
一方、私の経営スタイルは「全員で考えて動く」という真逆のアプローチです。誤解いただきたくないのは、以前のやり方を否定してるわけではなく、今いる社員がより良い人生を歩むために、主体的に動けるようになってほしいと考えた結果の経営スタイルだということです。
そのため、以前のやり方に慣れている社員の中には、なかなかすぐに対応できない人もいますし、逆に自ら考えて行動し始めている社員もいます。両方が混在しているのが今の現実で、まだ社内全体として十分に意見を集約しきれていないと感じることもあります。今後は選択肢を提示し、社員と一緒に最適解を選んでいける組織づくりをさらに進めていきたいです。
今後の展望について教えてください
私は3代目ですが、あくまでも「会社を預かっている立場」だと考えています。
私自身も50歳を過ぎ、次の世代へどうつないでいくかを強く意識するようになりました。会社を次世代へより良い形で引き継ぐために、これからもさまざまなチャレンジを続けていきたいと考えています。
そして、宅島建設の本質的な価値に共感し、「この建設業の中で働きたい」と思ってくれる仲間をもっと増やしていきたいと考えています。建設業には大変さもありますが、その先には未来があり、夢があります。「苦労の先に意味があり、乗り越えようとする姿勢に価値がある」ということを若い世代にしっかりと伝えていきたいですね。それが我々の使命だと思いますから…。
働く目的は、単に生活のためやご飯を食べるためではなく、自分を磨き、成長させるためだと思っています。その思いを若い皆さんにも知ってもらい、自分の成長の場として建設業を選んでほしいと願っています。
地元・ふるさとを大切にする人たちにはぜひ地域に残ってほしいし、都会から戻ってきたいと考えている人にもぜひ帰ってきてほしい。そして「自分を成長させたい」と強く思う人に集まってほしいと心から思っています。
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