今回は株式会社パラダイムシフトIDNet work’s代表、髙須 英治氏にお話を伺ってきました。
「社長の履歴書」だけの特別なインタビューです。
ぜひご覧ください!
| 会社名称 | 株式会社パラダイムシフトIDNet work’s |
| 代表者 | 髙須 英治 |
| 設立 | 2009年10月23日 |
| 主な事業 | 財務営業コンサルタント事業/リファーラルマーケティング事業/ヘルスケア人財育成事業/コンセプトメイク・ブランディング事業 |
| 社員数 | 8名(取材時) |
| 会社所在地 | 〒569-0072 大阪府高槻市京口町9-3 関西産業ビル 2F |
| 会社HP | https://new.p-shift.co.jp/ |
事業紹介をお願いします
株式会社パラダイムシフトIDNet work’sは、コンサルティング・人材育成・IT技術の力を駆使し、企業組織の新しい可能性のチャレンジをサポートしています。「次代に成長し続ける唯一無二の企業を共に創造すること」をミッションとし、存在意義の高い唯一無二の企業が増えることで、その組織だけではなく社会全体に大きな利益が創造されることを私たちは強く信じています。
ちなみに、パラダイムシフトIDNet work’sという社名は、「パラダイムシフトを起こし、個性豊かな人同士が枠に囚われずお互いを認め合い尊重し合って繋がり、ネットのように絡んで連帯し、機能している循環型の社会を創造する」という想いを示しています。
また、当社のコーポレートカラーはスカイブルーです。この色には、「世界は青い空でくまなく繋がっている」というメッセージが込められています。「すべては巡り巡ってくる」という思想に基づき、個々人の活動や貢献が、青い空のように世界全体に広がり、繋がり、やがて還ってくるという、我々の哲学と循環型社会のビジョンを象徴しています。
御社では「リーダー像」を明確に定義されていますが、とりわけ “愛と成功のリーダー” という言葉が印象的です。具体的にどのようなリーダーを指すのでしょうか
私たちが提唱する「愛と成功のリーダー」とは、掲げた目標に対して成果を上げることが出来る、つまり成功を手にすることが可能であると同時に、自分を愛し、主体性を持って自らの人生を生きながらも周囲を尊重し、他者に影響を与えられる人物を指します。
本来、誰しもがリーダーシップを備えているはずなのですが、環境が変わるとその力を発揮できなくなるケースがあります。例えば、社長同士が集まるコミュニティに身を置くと、普段はリーダーであるはずの人でも急に“様子見”をして、フォロワー的な振る舞いに変わることがあります。
私自身、現在リファーラルマーケティング事業を通じて約450名の社長のコミュニティを運営していますが、そのコミュニティを観察していると、リーダーとして行動できる人と、場の空気に合わせてしまう人とがはっきり分かれることがわかります。
しかし本来は、どんな場に置かれても軸がぶれず、愛と成功の両方を体現できることが理想的なリーダー像だと考えています。
■「愛」と「成功」——二つが両立するリーダーとは
“愛”があっても成果を出せなければ組織は成果を得られませんし、逆に成果だけを追い求めれば人は離れていきます。
ビジネスもプライベートも、人が紡ぐ関係性によって成り立っている以上、愛と成功の両立がこれからのリーダーに不可欠です。
現代は、家庭と仕事がかつてのように明確に分離した時代ではありません。だからこそ、
- 全体最適で物事を見られること
- 他者を尊重しながら成果を出すこと
- 自責で物事を捉えられること
こうした姿勢がリーダーの器を決める時代になってきています。
■すべての社会人にリーダーシップが必要な理由
私は、「フォロワーだからリーダーシップは不要」という考え方は誤りだと思っています。
持ち場や役割は違っても、社会人全員がリーダーシップを持つことで、他責ではなく自責で問題を解決する文化が生まれてくるからです。
日本の未来を自分たちでつくるためには、誰もが「自分の人生を自分でデザインする」という意識を持つことが必要です。成功の定義は人それぞれですが、他人と比較することなく、「自分がどんな状態を幸せと感じるのか」を自認し、他者と語り合える環境も重要です。
しかし、そうした場では「そんな夢みたいなことを」と批判されることもあります。そのような環境では本来の創造性は育ちません。互いの人生を応援し合えるコミュニティこそが、真のリーダーを育てます。
当社では、こうした考えを「教育」として提供するために BMC(ビジネスマインドコンディショニング) を立ち上げました。
これは「ビジネスマフィアクラブ」というコミュニティから発展したもので、
- リーダーとしての在り方
- コミュニティを維持・発展させる方法
- セルフコンディショニングの仕組み
などを体系化し、習得するためのプログラムです。
経営者でも、マインドが整っていないために本来の力を発揮できていない人は多く存在します。だからこそ、自分の情熱や才能を生かしながら課題解決に取り組み、周囲も尊重する“愛と成功のリーダーを育成する教育が必要だと考えています。また、こうした教育が小・中学校や高校の段階から整備されれば、子どもたちはまったく違う未来をつくれると信じており、子ども向けキャリア教育にも関わっています。
“愛があっても成功していないリーダー”とは、どのような人物像なのでしょうか?
一言でいえば、「優しさだけで終わってしまっている人」です。
人としては温かく、思いやりもある。周囲の人にも好かれる。しかしその優しさに付け込まれ、都合よく扱われてしまったり、甘やかしすぎたり、また必要以上に譲ってしまったりする。その結果、ビジネスとしては成果が出ず、自分の想いも形になっていかない——そんなイメージの方です。
優しさ“だけ”が強く、成功に必要な厳しさや戦略性が欠けてしまうと、どうしても組織も人も前に進めません。
一方で、先ほどお話した成功しているが愛のないリーダーは、人間味に欠け、組織を恐怖や圧力で動かしてしまうタイプです。
つまり、「愛」と「成功」のどちらか一方だけでは不完全で、両方のバランスが必要なのです。
私自身も昔は、どちらかと言えば愛のないリーダーの典型だったと思います。
傲慢で、ワンマンで、「ぐいぐい引っ張ればいい」と信じていたタイプです。当時の私を知っている人は、まさに“あの頃の兄ちゃん”というややネガティブなイメージを持っているかもしれません。しかし、経験を重ね、人・組織・社会と向き合う中でようやく、「愛と成功の両輪がそろってこそ、リーダーとしての器が整う」という感覚を持つようになりました。
「愛と成功の両方を備えたリーダー」になるために、最も大事なことは何でしょうか?
一番大切なのは、自分自身を深く理解することです。言い換えれば、自分との対話ができるかどうか。自分に“あるもの”はあるままに、
“ないもの”はないままに——誤魔化したり、装ったりせず、ありのままを認め、活かせることが大事です。
「無いのにあるように振る舞う」「あるのにないものとして隠す」ではなく、自己理解と自己受容がすべての土台になります。
たとえば、外見でも性格でも能力でも、“ないもの”を嘆くのではなく、「それも自分」と受け止めたとき、初めて他者に対しても愛を持って接することができるのです。
■リーダーにとっての「愛」とは何か
愛とは、相手の存在そのものを認め、その人を活かせる関係性を築く力です。
ところが、私自身はかつて、愛ではなく“欲望”に任せて動いていた時期がありました。自分本位の成功を追い、自己中心的に周囲を巻き込んではいたものの、それは長続きしないあり方だったと、今になって強く感じます。
■自己理解がなぜリーダーの本質となるのか
自分の中に「ここは得意だ」「ここはできない」「ここは弱みだ」といった自己像がしっかりあると、他者に対しても同じように理解と許容を持てるようになります。自分ができないことがあるのだから、他人にもできないことがあって当然です。
ではどうするかというと、できる人と協力し、シナジーを生む方向に進めばいい。反対に、自分を正しく見られないと、つい他責になったり、相手に過剰な期待をしたりしてしまいます。
まとめると、自己探求 → 自己理解 → 自己分析 → 自己受容。そして、自己開示 → 他者理解 → 相互貢献のこの循環ができる人こそ、愛と成功を両立させながら、人を導けるリーダーになれるのだと思います。
「自分はできるから相手もできるはずだ」と考えてしまい、そこから“できない=悪い”と捉えてしまうケースもあると思うのですが、その点についてどうお考えですか?
おっしゃる通りで、自分ができるから相手もできるはずだという思い込みは、多くのリーダーが陥りやすいポイントです。
しかし、それは本来のリーダーシップとは異なります。人には、料理が得意な人もいればそうでない人もいるように、できること・できないことの「領域」や「強み」が違うのが当たり前です。
だからこそ「できない=悪い」ではなく、相手が“何をできる人なのか”を見極める視点が重要なのです。
聖書にも書かれる愛の定義をベースにすると、“あるものはあるがまま、ないものはないがまま”受け入れることが大前提になります。
- 「持っているもの」はその人の個性であり価値
- 「持っていないもの」もそのまま尊重し、補完し合う関係をつくる
多くの人は“足りないもの”に意識が向きがちで、心のどこかに「欠乏マインド」を持っています。
しかし、本当は 誰もが何かしらの“あるもの”を持っている。もし自分が持っていないなら、「それを持つ人」と出会えばいい。
そういう意味で、人との出会いは宝探しのようなものだと思っています。
ないものを責めるのではなく、お互いが“あるもの”を持ち寄れば、自然と補い合える関係が生まれる。これこそが、愛のあるリーダーシップの本質ではないでしょうか。
経営者が集まる場でも、愛のない人・愛はあるが成功が伴わない人、さらにはフォロワーに回ってしまう人など、さまざまなタイプがいます。その原因はどこにあるのでしょうか?
リーダーシップそのものは、誰もが必ず持っていると思っています。ただし、その発揮の仕方(スタイル)が違うだけなのです。
グイグイと引っ張る“牽引型”もいれば、問いかけで巻き込み共に進む“協働型”の人もいます。はたまた下から支えて押し上げる“支援型”の人もいます。しかし、どんなスタイルでも発揮できなくなる原因を突き詰めると「自分に対する不信感」や「自信の欠如」だと感じています。
■フォロワーに回ってしまう本当の理由
経営者同士が集まると、普段はリーダーとして活躍している人でも、急に声が小さくなることがあります。
それは多くの場合、「自分よりすごい人がいる」「ここで意見していいのだろうか」という委縮による内的なブレーキが原因です。
つまり、リーダーシップが無いのではなく、“自分を信じきれていない状態”がリーダーシップの発揮を妨げているのです。
さらにもう一つ、場の構造としての問題があります。経営者同士のコミュニティには、必ず「リーダーをまとめるリーダー(リーダー・オブ・リーダーズ)」が存在します。この人が持つファシリテーション能力によって、参加者全員が発言しやすい場になるか、一部の人しか話さない場になるかが決まります。
- 発言の機会を与えられていない
- 才能を引き出す設計がされていない
- 全体を俯瞰する視点(メタ認知)が不足している
こうした場の問題が、リーダーの力を“眠らせてしまう”原因にもなるのです。
まとめると、リーダーシップが発揮できない理由は、① 自己不信・自信のなさ(内的要因)② リーダー・オブ・リーダーズのファシリテーション不足(外的要因)この2つの掛け算で生まれます。
だからこそ、すべてのリーダーが自分を深く理解し、同時に良い場づくりが行われることが、リーダーシップを最大限に発揮するための鍵だと感じています。
例えば経営者が集まる場で、ファシリテーターが“有名企業の社長”“時価総額が大きい企業の経営者”といった肩書きだけを見て、その人たちばかりに発言機会を与えてしまう状況があります。しかし、本来は創業したてでも素晴らしい経営者がいるはずです。そうした偏った進行についてはどのように捉えていらっしゃいますか?
「いけない」というより、場としての本来の目的が果たされなくなるという意味で問題だと思います。
もちろん、番組制作のように“話題性”や“知名度”を優先するケースでは、著名な経営者を中心に据える構成もあります。しかし、人として見れば全員が平等であり、背景も経験も本当に多様です。そして、どんな規模の会社でも、誰も“適当に生きている”わけではない。皆それぞれの現場で徹底的に挑戦し、価値を生み出しているわけです。
肩書きや企業規模で判断してしまうと、本来その場に必要な視点や知恵が埋もれてしまいます。
- 創業したてだからこそ見える市場感
- 小規模ゆえに培われた独自の意思決定
- 大企業にはないスピード感
- 逆境から生まれた学び
これらは、本来ならコミュニティ全体の成長にとって極めて重要な資源です。
だからこそ、ファシリテーターは意識して「多様な人にマイクを渡す」「参加者全員に発言の機会をつくる」ことが求められます。
経営者の肩書きや企業規模は、あくまで“情報の一部”に過ぎません。人としては平等であり、学びはあらゆる立場の人から得られます。だからこそ、場を運営する側は、その人の背景・経験・視点にこそ価値があるという前提で進行することが大切だと考えています。
当社の事業については、こちらをご覧ください
ここからは髙須社長のことをお聞かせください。これまで、どのような人生を歩んでこられたのでしょうか?
私の人生の原点には、父の存在があります。父は三井物産で海外駐在し、最終的にはアルゼンチン支社の社長を務めました。いわゆる「企業戦士」で、日本の高度経済成長期を24時間体制で支えたビジネスパーソンでした。
その影響で、私は3〜8歳までブラジル、10〜15歳までアルゼンチンで過ごし、常に父の働く姿を身近に感じてきました。大勢の銀行マンやメーカー、商社の駐在員が家に集まり日本人社会が形成されていたあの空間で、私は大人と交わるワクワクを感じていました。
ところが私には双子の弟がいるのですが、同じ環境で育ったその弟はまったく逆で、夜遅くに大人たちの集まりで起こされることが多かったため、あまり良い記憶ではなかったようです。
同じ環境でも「どう捉えるか」で人生は変わる。のちに「パラダイムシフト」という社名に繋がる、私自身の価値観の核心はここにあります。
幼少期や学生時代のご自身を振り返ると、どんな子どもだったと思いますか?
ひと言でいえば、とにかく落ち着きがない子どもでした。正確には「やりたい」と思ったことはすぐ行動に移してしまうタイプで、良くも悪くも一直線。振り返ると、 かなり“欲張り”でもあったと思います。
たとえば、家族で食事に行ったときのこと。双子の弟は「これ食べたいけれど全部は食べられないから、これだけにしておこう」と慎重に考えて注文するタイプでした。一方の私はというと、「これも食べたい、あれも食べたい」と衝動に任せて食べたいものは全て頼んでしまうタイプです。
食べきれないとわかっていても、まずは“全て試してみたい”“全部食べたい”と突っ走っていました。弟は控えめというか、周りをよく見て配慮するタイプ。対して私は、欲望の赴くまま遠慮なく進んでしまう。
その結果、周りを巻き込んでしまって「エイジ、お前いい加減にしろよ」と言われることも多かったのですが、不思議と最終的には「まぁしょうがないな」とついてきてくれる仲間も多かったのです。
周りの方々の器の広さに救われてきたことに感謝しつつ、今振り返ると、幼い頃から“突き進むエネルギー”が強かったのだと思います。
大学時代は体育会系と伺いましたが、どんなスポーツをされていたのですか?
サッカーです。ブラジルとアルゼンチンに長く住んでいたので、自然とサッカーに親しんで育ちました。
3歳から8歳までブラジル、10歳から15歳までアルゼンチンで過ごし、日本へ戻ってからも、高校・大学とサッカーを続けていました。通っていたのは同志社国際高校、そして同志社大学です。
大学では体育会に所属していましたが、選手として活躍していくのは難しいと悟り、競技一筋というよりは、体育会全体を束ねる役割を担いました。
当時、体育会には46クラブ・約1,600名が所属しており、3年生の時には、その全体をまとめる「体育会委員長」を務めました。
この経験が、まさに私のリーダーシップの原点だったと感じています。多様なクラブ、異なる背景を持つ多くの学生をまとめる立場は、組織運営や人の動かし方を学ぶ貴重な機会でした。
銀行に就職されて実際に働き始めた頃、特に「やっておいてよかった」と感じる仕事や経験はありますか?
正直に言うと、すべての経験が財産になっています。
銀行に入った当初は、いわゆる“裏方業務”からスタートしました。窓口の後ろで札勘や小切手の処理をしたり、加算機で数字を弾いたり、伝票をひたすら書いたり、稟議を書いたり。銀行は仕組みが非常に精緻に作られているため、その流れを体で覚えることができました。
もちろんミスが起こることもあります。貸金庫の事故や、為替・振替の数字が合わないといった現場ならではの緊張感もありました。しかし、「お金の流れの裏側には必ず“人と会社の動き”がある」という視点は、この時に感覚的に理解できるようになりました。
銀行は物の流れではなく“お金の流れ”で世界を見る場所です。
会社が成長するのも、お金が止まってしまうのも、すべてキャッシュフローと意思決定の結果。
この“捉え方(パラダイム)”を身につけたことは、後のキャリアに非常に大きい影響を与えています。
また、銀行員向けの分厚い業務マニュアルも印象的でした。読むと眠くなるほど分量があるのですが(笑)、複雑なフローがすべて体系化されていること自体が資産であり、“仕組みをつくる”という発想の大切さを痛感しました。これは現在の仕事にも直結しています。
最初の配属は大阪・梅田支店。その後、スペイン語ができたことから「日本スペイン協会」への研修にも派遣されました。
子どもの頃アルゼンチンで暮らしていたのでスペイン語検定1級も持っており、このままヨーロッパ駐在という道もあったと思います。
しかし、私が銀行にいた1991〜1996年は、まさにバブルが崩壊した時期です。
地価が急激に下落し、融資の回収、資産査定、企業再建など、金融の厳しい現実に向き合う毎日でした。
証券営業や資本市場の業務にも携わりましたが、私の心が最も動いたのは、地域の中小企業と向き合うリテールの現場でした。
「この会社にとって何が必要か」「どうすれば持続できるのか」を考える仕事に、自然と情熱を感じていたのです。
お父様の姿を見て「将来は社長になりたい」と思われたとのことですが、当時はどんなビジネスで起業するのか、具体的なイメージはあったのでしょうか?
いえ、実はまったく具体的なイメージはありませんでした。
どんな事業をやるかよりも、「いつか自分も社長になる」という方向性だけが強くあった、という感覚です。
まずは銀行でお金の流れや企業経営の基礎を徹底的に学び、その延長線上でできることで起業しよう、という程度のイメージでしたね。
結果として、行き着いたのは財務というお金の領域でした。
そこから派生する形で、人・モノ・金・情報、そして経営者の感情や在り方といった要素を総合的に扱うようになり、気がつけば人材教育やリーダー育成の領域に自然と向かっていった、という流れです。
経営者として事業を進める中で、「予想外だった」「大変だった」「苦労した」と感じた出来事はありますか?
実は私は、あまり物事を苦労とは捉えないタイプです。毎月、毎年、本当にさまざまな出来事が起こりますが、それを「大変だ」と受け止めるよりも、ひとつひとつにしっかり向き合い、整えていくという感覚で経営しています。
昔は向き合うべきことから逃げてしまうこともありましたが、今は「起こった事実」と「自分の解釈」を切り分けることを意識し、丁寧に対処するようになりました。そうすると不思議と “助けられている” というような感覚を覚えます。
とはいえ、経営上の課題が全くないわけではありません。
たとえば、以前は「支払いが先・回収が後」というビジネスモデルで動くことが多く、資金繰りがタイトになりがちでした。
しかし今の事業は、会費制のメンバーシップなど、先に売上が立ち、支払いが後になるモデルが中心となったため、基本的に資金サイトがなく、銀行からの借入もほぼ必要ありません。
一方で、大きな投資を伴う新規事業にチャレンジしたいタイミングで、手元資金が足りないという課題には直面します。キャッシュが先に動かせないことで、本来なら掴めるビジネスチャンスを見送らざるを得ない場面がある。これは、最近特に感じているところです。
今後は、こうした“大きな挑戦に備える資金力”をどう作っていくか、が自分にとってのテーマになると思っています。
ご子息の事故を経て、ご自身を立て直すために起業されたと伺いました。以前の髙須社長と、起業後の髙須社長の間で、最も大きく変わった部分は何でしょうか?
起業する以前の私は、とにかくイケイケで周囲を顧みず、勢いに任せて突き進んでしまうところがありました。
財務営業パートナーズという会社で営業部長として働き、東京で資金繰りのコンサルや貸金業の回収など、かなりハードな現場で動く日々でした。
そんな中、離婚により前の家庭に残してきた長男が、中学1年の最初の土曜日に交通事故に遭い、ほどなくして亡くなりました。
2009年4月11日に事故、4月15日に脳死判定——そこからマスクを外すまでの日々は、本当に言葉で表せないような時間でした。
あの出来事は、「自分は父として何もしてあげられなかったのではないか」という深い自責の念と、どうしようもない無力感に直面し、その後の4〜6月は、人生そのものを見つめ直す時間だったと思います。そしてたどり着いたのが、“もう一度、自分の足で立とう”という決断でした。
ありがたいことに、財務コンサル時代のクライアントが「髙須さんが独立するならついていきます」と声をかけてくださり、独立の背中を押してくれました。ただ、その決断を再婚した妻に言い出すことはとてもできず、しばらくは前の会社名義で給料が振り込まれているように見せかけるなど、今思えば無理をしていました。もちろんすぐに気づかれ、正直に話したのですが、「騙せるタイプじゃないよね」と言われて、本当にその通りだと思いました。
あの出来事を境に、私は起こった現実から逃げない、事実と自分の解釈を切り分ける、どんな状況にもまっすぐ向き合うという姿勢へと明確に変わりました。以前は、辛いことや不都合なことに対して“見ないふり”をしてしまうことも多かったと思います。
しかし長男を失った経験で、「向き合わなければ何も変わらない」という事実を、深く心に刻みました。
今は、「冬来りなば春遠からじ」のように「どんな冬にも必ず春が来る(辛い時期を耐え抜けば、必ず幸せな時期が来る)」と信じて動けるようになりましたし、“今生きられている自分は、息子の分まで頑張るべきだ”という気持ちが、毎日の原動力になっています。
今の髙須社長のお仕事での“やりがい”は、どんなところにありますか?
いま私が一番やりがいを感じているのは、若い経営者たちと日々交わり、背中を押す役割を担えることです。
「頑張れ、いきなり全部できなくていい。ひとりで抱え込むな、周りを頼れ」そういう言葉をかけながら、経営者自身が持つエネルギーや強みを引き出していく。私はこれを“モチベーションを引き上げる”というより、インスパイアするという感覚で捉えています。
人は、他人からモチベーションを完全にコントロールされるものではありません。
ただ、「この人がこう言うなら少しやってみようかな」と思える瞬間は誰にでもある。そこに火をつける役割ができることに、大きな喜びがあります。
私がよく言うのが、「無責任に発想しろ。責任は一緒に取って、実行まで伴走するから」という言葉です。
新しい挑戦は、あれこれ考えてしまうとすぐにブレーキがかかります。だからこそ、最初は“無責任”なくらいに自由に発想すればいい。
そのうえで、「じゃあどうすれば実現できるか」を、一緒にオペレーションレベルで考えていくのが私の役目です。
誰とつながればいいか。何を学べばいいか。どんな事例が参考になるか。そうした具体的な伴走支援を提供できることが、いまの仕事の大きな醍醐味です。
私自身、人生のどん底にある時に、多くの人から手を差し伸べてもらいました。
その経験があるからこそ、「受け取った恩は、別の誰かに送っていくものだ」という精神で、いまの仕事に向き合っています。
若い経営者が一歩踏み出す瞬間に立ち会い、その成長を間近で見られること。それが、いまの私にとって、何よりのやりがいです。
今後、会社をどのような形で発展させていきたいとお考えでしょうか
いま私は「BMC(Business Mind Conditioning)」という新会社を立ち上げ、“愛と成功のリーダー”を1000人育成するという大きな構想を掲げています。BMCはもともと「ビジネスマフィアンクラブ」というコミュニティ活動として始まりましたが、本質的に目指しているのは、単なる交流ではなく、“軸のぶれないリーダーの育成”という教育事業です。
企業の人事部が教えるのは「How(どうやるか)」「What(何をやるか)」といった実務中心の教育です。
しかし本当に組織を変え、人を導くために欠かせないのは、「あり方(Being)」の教育=リーダーシップの根幹です。これは社長やリーダーが本来担うべき役割であり、私はその“あり方教育”を体系化して BMC を通じて提供しています。
- 人を尊重できる「愛」
- 結果を創るための「成功力」
- この両輪を持つリーダーこそ、未来をつくる
こうした“愛と成功のリーダー”を1000人育て、日本各地・各業界に送り出すことが、私の大きなビジョンです。
また、世の中には起業セミナーが溢れていますが、多くは高額で、知識やノウハウを学んでも 「人とつながっていないと実践できない」 という壁があります。だからこそ BMC では、学び × コミュニティ × 実践支援の三位一体でリーダーを育成する仕組みをつくっています。
- 会社に所属しながら副業で起業できる環境
- 既存企業がビジネスパートナー型で協業できるティール的組織づくり
- 信頼ベースの支援ネットワーク
これらを整え、“挑戦しやすい社会”をつくるのがBMCの使命です。
日本では高齢化により、「後継者がいないまま会社を畳む」というケースが急速に増えています。
私はここにも貢献できると考えています。BMCで育った優秀なリーダーが、衰退しつつある会社・事業に入って再成長させる。
事業の引継ぎやM&Aを、“人でつなぐ新しい仕組み” をつくっていきたいのです。
買収ではなく“育てて引き継ぐ”という文化を広げる。これも私が次のステージとして見据えるプロジェクトです。
そして「マフィア」と聞くと少し強面なイメージを持たれがちですが、そのルーツには「支配に屈せず、仲間と共に己の信念を貫く」という誇り高い精神が宿っているという説があります。私はそこに共感しており、旧来のやり方を手放し、手を取り合って前へ進むという新しいビジネス文化を象徴させています。
もちろんジョークや遊び心もありますが、根底には「競争ではなく協業、そして共同創造へ」という強い思いが込められています。
まとめると、
- 愛と成功を兼ね備えたリーダーを1000人育成する
- 決して知識だけで終わらない、実践型コミュニティをつくる
- 副業起業やティール組織、M&Aにも貢献するプラットフォームへ拡大
- 競争ではなく協力で価値を生む、新しいビジネス文化を広める
これが私の掲げる未来図です。
最後に、他の経営者の方へおすすめしたい本のご紹介をお願いします
1冊選ぶとすればやはり 『聖書』 ですね。宗教的な意味ではなく、「人間の本質」や「リーダーとしての在り方」について、あらゆる視点が詰まっている書物だと感じています。
読む時の自分の状態や“あり方”によって、まったく違うメッセージを受け取れるところが面白いと思います。
私は折に触れて開くようにしており、経営者にとっての“軸”づくりに非常に役立つ一冊だと思います。
そして自著である『令和時代を勝ち抜く! リーダーが実践する「GIVEの成功方程式」』もおすすめしたい一冊です。
特に読んでいただきたいのは第7章です。ここは「結論」であり、リーダーがどう“あり方”を整えるかを分かりやすく示しています。
多くの方は1章から読み始めますが、私はむしろ 7章 → 1〜6章の順で読み進めることをおすすめしています。
6章では先ほどお話しした 聖書についても触れています。ビジネス書でありながら、“哲学”や“リーダーの倫理観”を深められる構成にしていますので、経営者の方にこそ読んでいただきたいです。
ぜひご一読ください。
『令和時代を勝ち抜く! リーダーが実践する「GIVEの成功方程式」』髙須 英治 (著) |
投稿者プロフィール

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企業の「発信したい」と読者の「知りたい」を繋ぐ記事を、ビジネス書の編集者が作成しています。
企業出版のノウハウを活かした記事制作を行うことで、社長のブランディング、企業の信頼度向上に貢献してまいります。
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