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ニューロ・オン株式会社代表 遠藤 俊介氏

  • 10/23/2025
  • 10/23/2025
  • 仕事
  • 4回

今回はニューロ・オン株式会社代表、遠藤 俊介氏にお話を伺ってきました。

「社長の履歴書」だけの特別なインタビューです。

ぜひご覧ください!

 

会社名称 ニューロ・オン株式会社
代表者 遠藤 俊介
設立 2015年4月2日
主な事業 ウェルネスブランドプロデュース
通販・D2Cビジネス支援
健康分野の専門家キャスティング・コンテンツ開発
健康賃貸住宅
社員数 12名(取材時)
会社所在地 東京都中央区銀座1-16-7 銀座大栄ビル5階
会社HP ●会社HP https://neuro-on.co.jp/
●自社ブランドオンラインショップ https://hugandtreat.jp/

 

事業紹介をお願いします

ニューロ・オン株式会社は企業やブランドの価値を多面的に支援する、ブランドプロデュース業を行っている会社です。

クライアント企業のブランドや事業のマーケティング課題、コミュニケーション設計などをお預かりし、それを最適な形で具現化しています。

特に、ヘルスケアやウェルネス領域のマーケティング支援に多く携わってきた経験を活かし、2023年初頭からは「Hug&Treat(ハグアンドトリート)」という自社ウェルネスブランドを立ち上げました。

現在は、クライアント事業のマーケティング支援と、自社ブランドを自ら展開する両輪で事業を進めています。クライアント企業とのパートナーシップによってブランドを育てていくケースも多く、「共に創る」と「自分たちで創る」という両面を持っている点が、当社の大きな特徴です。

 

ブランドプロデュースとは、具体的にどのようなことをされているのですか?

当社では単に広告やプロモーションを行うのではなく、クライアント企業の経営や事業の全体像をしっかりと踏まえた上でマーケティングやコミュニケーション設計を行っていますが、その中心にあるのは、「ブランドとしてどのような価値を社会や顧客に提供していくのか」という明確な軸をつくることです。これが明確でなければ、顧客との関係性を強く継続的なものに育てていくことはできません。

私たちは、そうしたブランド価値を起点に、事業成長につながるブランド設計・マーケティング設計を一貫して行っています。

単なる施策の実行支援ではなく、クライアントと共にブランドを育て、事業を成長させていく。その伴走型の姿勢が、ニューロ・オンの目指すブランドプロデュースのあり方です。

これまで、健康関連商品のブランディングやマーケティング支援をはじめ、地方大学の広報・学生募集支援、BtoB企業の新規事業におけるブランド設計など、さまざまな分野でプロジェクトを手がけてきました。

特にヘルスケア領域は、自社ブランド事業での経験も活かせる強みの一つですが、特定の分野に限らず、どのような業種・業態でも成果を創出できる体制を整えています。

お客様の目的や状況に応じて最適なご提案をさせていただきますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

https://neuro-on.co.jp/#inquiry

 

ここからは遠藤社長のことをお聞かせください。学生時代に打ち込んでいたことはありますか?

小学校に入学してから高校を卒業するまで、ずっと野球一筋の学生生活でした。毎日のように練習に打ち込み、高校時代には東京都大会でベスト4に入るところまで進むことができました。残念ながら甲子園出場まではあと一歩届きませんでしたが、それでも本気で野球に打ち込んだ時間は自分にとって大切な経験です。

野球を始めたきっかけをはっきりとは覚えていないのですが、父とキャッチボールをしていたことが原点だったと思います。サッカーもトライしてみましたが、私はボールを投げたり打ったりする感覚のほうが楽しく、気づいたら少年野球チームに入り、そこからずっと野球漬けの日々を送っていました。

また、子どもの頃は、経営やビジネスに関心を持つような環境ではまったくありませんでした。父も母もサラリーマンだったことから、経営者という存在は当時の自分にとって本当に遠い世界の話だったと思います。

そんな中で、たまたま進学した高校が商業高校だったことが、今振り返ると大きな転機になりました。最初は簿記の授業など、商業の基礎に触れるところから始まりましたが、そこから自然と経済や経営の仕組みに興味を持つようになっていきました。そのときはまだ意識的ではなかったものの、商業科で学んだ経験が、後の自分に少なからず影響を与えていたと思います。

 

広告業界を志したきっかけを教えてください

就職活動では印刷会社や人材系の企業なども見ていましたが、第一志望は最初から広告業界でした。
きっかけは、大学1〜2年生の頃に出会った「ほぼ日刊イトイ新聞」です。コピーライターの糸井重里さんが主宰しているサイトで、毎日更新されるコラムを読むのがすごく面白く、「コピーライターって、どうしてこんなに不思議でユニークな発想ができるんだろう」「世の中の見方が全然違うな」と感じて、そこから広告の世界に強く興味を持つようになりました。

その後、大学2〜3年生の頃に「宣伝会議」が主催しているコピーライター養成講座に通い始めました。そこで出会った広告業界の方々がとてもエネルギッシュで、「広告会社ってなんて面白い業界なんだろう」と実感したのを覚えています。

そして、“ゼロから新しいものを生み出す”というクリエイティブの魅力に惹かれて、広告会社を志望し、株式会社大広へ入社することができました。入社当初はクリエイティブ志望でしたが、次第に「広告会社を本当に動かしているのは誰なんだろう」「現場をまとめて、企画を実行に移していくのはどんな役割なんだろう」と考えるようになり、最終的にプロデューサーという職種に惹かれました。

なぜなら、広告という枠の中で、コミュニケーション全体をどう構築していくかという部分の設計から関わるのがプロデューサーだと知り、「こっちのほうが自分に向いているし、面白い」と感じたからです。そのため、入社して数ヶ月後には、「営業に行きたいです」と希望を出していました。

 

株式会社大広に入社した当時はどのようなキャリアプランを描かれていましたか?

正直なところ、当初は将来のキャリアについてほとんど考えていませんでした。
子どもの頃はもちろん、大学時代も「将来こうなりたい」という明確なビジョンはなく、就職活動の時期になってようやく少し意識し始めたくらいです。

ちょうどその頃、世の中はITベンチャーがブームでした。サイバーエージェントの藤田晋さんやホリエモンこと堀江貴文さんがメディアに登場し始め、「勝ち組・負け組」という言葉がよく使われていた時代です。そうしたニュースを見ながら、「こういう世界もなんだか面白そうだな」とは思っていました。ただ、当時の自分がその世界に飛び込むという実感まではありませんでした。

広告会社には10年ほど勤めましたが、8年目くらいに差しかかった頃に、「次のキャリアをどうしようか」と改めて考え始めました。しかし、代理店への転職やメーカーへの転職などいくつかの選択肢を思い浮かべても、どれもいまひとつしっくりときませんでした。

そこで、「だったらいっそ、自分で何かやってみようか」と思い立ったのが独立に踏み出す最初のきっかけです。最初から明確なビジョンがあったわけではなく、どちらかというと“やってみよう”という気持ちの延長線上でのスタートだった、というのが正直なところです。

 

大広で働かれているときの、思い出に残っているエピソードを教えてください

今の自分の考え方や会社の特色にもつながっている部分ですが、やはり広告会社にいた頃の経験は大きかったですね。最初の5年間はとにかく仕事を覚えるのに精一杯で、電力会社、住宅設備メーカー、半導体メーカー、金融業界など、BtoB・BtoCを問わずさまざまな業種の案件に携わっていました。

ただ、5年目の終わり頃に一度、転職を考えた時期がありました。広告会社という仕事が果たして本当にクライアントの役に立っているのか、自分の中で疑問が湧いたのです。広告ビジネスはメディアから枠を仕入れてクライアントに販売し、その手数料が利益になるという構造です。その仕組みの中で、「自分たちの仕事は本当にクライアントの事業成長に貢献できているのだろうか?」という違和感を抱いてしまいました。

ちょうどその頃、別業界から声をかけていただいたこともあり、一度は辞表を出したのですが、タイミングよく社内で異動の話があり、ダイレクトマーケティングの部署へ移ることになりました。そこで健康食品の通販を中心とした案件を担当したのが大きな転機でした。

ダイレクトマーケティングの世界では、広告の反応がそのまま売上や事業成長に直結します。自分たちが書いたコピーひとつ、作ったクリエイティブひとつでクライアントの成果が変わる。そのリアルな手応えを初めて実感しました。以前携わっていたマス広告に比べて派手さはありませんが、「広告を通じて事業を動かす」ということの面白さと責任を感じた瞬間でした。

その後、約5年間にわたって大手飲料メーカーの案件などを担当し、どうすればマーケティング設計を通して事業成長に貢献できるかを徹底的に考え抜きました。その経験が、今の自分の仕事観のベースになっていると思います。

 

最初のビジネスアイデアについて教えてください

最初に構想したのは「健康領域で、しっかりとしたビジネスをやりたい」というものでした。大学時代は街の小さなスポーツジムでアルバイトをしていたのですが、その頃から健康であることの大切さを強く感じていました。なぜなら、お年寄りと接する中で、健康でいることがどれほど幸せの土台になるかを実感したからです。

一方で、自分の家族が病気になる姿も間近で見てきました。健康そのものだった父が、ある日突然がんを宣告され、わずか半年で亡くなったこと。祖父が認知症を患い、家族のことを認識できなくなっていったこと。そうした経験を通じて、「健康な状態を長く維持できる幸せな社会をつくりたい」という思いが強くなりました。

マーケティングの仕事をしていたこともあり、「ヘルスケア×マーケティング」という領域で何かできないか、と考え始めたのが起業の原点です。

そして、最初に取り組んだのは、大学の先生と共同で開発した“頭と体を連動させるエクササイズプログラム”でした。これは、身体機能と脳の働きを同時に鍛えることで、いつまでも自分の体を思い通りに動かせる状態を保つことを目的にしたものです。

また同時期に、自宅でプロのインストラクターによるエクササイズを受けられる、月額制のオンラインフィットネス動画サービスを立ち上げました。コロナ禍を経てオンラインフィットネスが一般化しましたが、当時としてはかなり先駆的な取り組みでした。

これらが、私にとっての最初のビジネスアイデアであり、今のニューロ・オンにも通じる“ヘルスケアとマーケティングの融合”というテーマの出発点になっています。

 

創業当時に描いていた会社の未来について教えてください

創業当初は明確なビジョンを立ててスタートしたわけではありません。どちらかといえば、「本質的に価値のあるものをつくりたい」という思いだけを強く持っていました。起業というよりも、“実業をつくる”という意識のほうが近いです。

そのため、上場や急成長といった華やかな目標に対しては、当初からあまり関心がありませんでした。もちろん、上場すれば経済的に豊かになる面はあるかもしれませんが、一方で株主や投資家の意向を意識した経営を強いられたり、社員よりも資本の論理が優先される環境になったりするイメージもあったため、それよりも、「自分たちらしく、誇りを持って仕事ができる状態」を大切にしたいと考えました。

また、経営について体系的に学んでいたわけでもなかったため、資金繰りなども手探りでした。会計事務所に勤めていた友人に相談しながら、なんとか倒産せずに続けられたというのが実際のところです。いわゆるスモールスタートならではの苦労は、ひと通り経験してきたと思います。

当時立ち上げたエクササイズプログラムやオンラインフィットネスの事業についても、当初は「良いものをつくれば自然に売れる」とどこかで思っていました。しかし、実際には大ヒットもせず、大失敗もしない中途半端な結果に終わり、「お客様との関係の中で価値をつくれていなかった」と痛感しました。

この経験から、どんなに優れた商品やサービスでも、「お客様との間にどんな体験価値を築けるか」が最も重要なのだと気づかされました。ブランドと顧客の間に長く続く関係性をつくるには、時間も労力もかかります。投資フェーズとキャッシュフローのバランスを取りながら、長期的な視点で事業を進めていく必要がある。その難しさは、今でも感じているところです。

ただ、その長期思考を貫いてきたからこそ、現在はブランドのファンとして強く応援してくださるお客様が増えてきています。
創業初期に味わった試行錯誤や失敗の経験は、間違いなく今のニューロ・オンを支える糧になっていると感じています。

 

2021年11月に賃貸不動産事業をスタートされていますが、どのような経緯があったのでしょうか?

不動産事業を始めた背景には、大きく2つの理由があります。

1つ目は、事業ポートフォリオの安定化です。
広告やマーケティングの仕事は、どうしてもクライアント企業の予算や経済状況に左右されやすい面があります。景気の変動や、企業側の不祥事などによって広告費が急にストップすることもあり、売上が安定しないリスクを常に抱えています。
そのため、広告・マーケティング事業で得た収益を活用しながら、レバレッジをかけてストック型の収入源を構築するという目的で、不動産事業をスタートしました。

2つ目の理由は、将来的に「健康住宅」事業へ発展させていく構想があることです。
今の賃貸住宅の家賃は、「駅からの距離」「間取り」「広さ」など、立地や設備的な条件によってほとんどが決まっています。
しかし、実際には住環境が心身に与える影響は非常に大きく、たとえば水や照明、電磁波、壁材といった要素も、人の健康に少なからず関わっています。

こうした観点から、“体に優しい住環境”を追求した賃貸住宅をつくりたいと考えています。
住む人の健康を支える家づくりを実現できれば、これまでとは異なる価値基準で住宅が選ばれるようになり、結果的に新しい市場価値を生み出すことにもつながるはずです。

現時点では、少しずつ業歴と実績を積み重ねていくフェーズですが、将来的にはこの不動産事業を「健康賃貸住宅事業」へ発展させていくことを目指しています。

 

今後の展望について教えてください

ここ2年ほどで会社の体制も徐々に拡大し、メンバーも増えてきました。
現在は、クライアント企業の事業をパートナーとして支援する「クライアントワーク」と、自社で立ち上げたブランドを展開する「自社事業」という2つの事業の両輪をしっかりと回していくフェーズにあります。

この2つは互いに密接に関係しており、クライアント支援の中で得た知見や実践経験は自社ブランドの成長に活かされ、逆に自社での事業運営の中で得たリアルな学びをクライアントへの提案や戦略立案に反映させています。この循環を生み出すことで、より実践的で価値あるブランド支援が可能になりました。

また、社内のメンバーにとっても、この両輪を通じて育っていける環境を整えていきたいと思っています。
私たちは、単に「認知を取る」ことや「インフルエンサーを使って話題化する」ことを目的としていません。重要なのは、その施策がクライアント企業の事業成果にどうつながっているのか。その本質を見据えて動くことです。

事業、マーケティング、プロモーションとこの3つをつなぐ中心にあるのが「ブランド」であることから、私たちはブランドを軸に据え、そこから生まれるコミュニケーションを効果的なアウトプットへとつなげていくことを重視しています。

そして、クライアント事業と自社ブランドの両方をリンクさせながら育てていくことで、クライアントへの貢献度をより高め、同時に自社ブランドの価値を多くの人に届けていきたいと考えています。

さらに、その先にある理想は「ブランドと顧客のより良い関係性」をデザインしていくことです。
買い手側も単なる消費ではなく、「このブランドを応援したい」「この企業と関わりたい」と思えるような喜びを感じられる状態をつくる。私たちはそれを「ブランド・エンゲージメント」と呼び、企業と顧客が互いに信頼と共感でつながる関係を生み出すことを目指しています。

今後も、ブランドと顧客の間に“応援したくなる関係”を築き、企業にも消費者にも喜ばれるブランドのあり方をデザインしていきます。

 

他の経営者におすすめの本のご紹介をお願いいたします

「事業とブランドをどうリンクさせていくか」という点において、とても学びが多い企業があります。
それが、アメリカの「ザッポス(Zappos)」という会社です。靴の通販事業からスタートし、現在はAmazonグループに入っていますが、もともとはゼロから立ち上げた企業で、一度は経営危機に陥りながらも見事にV字回復を遂げました。

ザッポスのすごさは、単に靴を売る会社ではなく、顧客体験そのものをブランドの中核に据えていることにあります。

そこまでやるのかと驚くほど徹底したカスタマーサービスを行い、顧客との強いエンゲージメントを築き上げ、その姿勢が話題を呼び、やがて企業文化そのものがブランド価値へとつながっていったのです。実際、Amazonが一時期ザッポスの勢いを脅威に感じたとも言っていたほど、顧客との関係性を軸にした経営モデルは強い影響力を持っていました。

ザッポスは社員一人ひとりのモチベーション、顧客の喜び、企業の成長が見事に好循環を生み出している企業だと思います。そうしたザッポスの哲学を学べるのが、私が経営のバイブルの一つとしている『ザッポス伝説』と『ザッポスの奇跡』の2冊です。

どちらもやや専門的な内容ではありますが、単なる成功物語ではなく、「ブランドが顧客との関係をどう築くか」「企業文化がどのように価値へ変わるか」という本質を深く学べる本です。
これからの時代、1回限りの取引ではなく、顧客と長く良い関係を築いていくためのヒントが詰まっていると思いますので、ぜひご一読ください。

 

『顧客が熱狂するネット靴店 ザッポス伝説―アマゾンを震撼させたサービスはいかに生まれたか』

トニー・シェイ (著), 本荘 修二 (監訳, 翻訳), 豊田早苗 (翻訳)

https://www.amazon.co.jp/dp/447801373X

ザッポスの奇跡(改訂版)~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~

石塚 しのぶ (著)

https://www.amazon.co.jp/dp/4331515052

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『社長の履歴書』編集部
『社長の履歴書』編集部
企業の「発信したい」と読者の「知りたい」を繋ぐ記事を、ビジネス書の編集者が作成しています。

企業出版のノウハウを活かした記事制作を行うことで、社長のブランディング、企業の信頼度向上に貢献してまいります。