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フラップスプラン株式会社代表 福永 寿徳氏

  • 11/18/2025
  • 11/18/2025
  • 仕事
  • 111回

今回はフラップスプラン株式会社代表、福永 寿徳氏にお話を伺ってきました。

「社長の履歴書」だけの特別なインタビューです。

ぜひご覧ください!

 

会社名称 フラップスプラン株式会社
代表者 福永 寿徳
設立 2012年4月3日(平成24年)
主な事業 ワンネス経営®プログラム
社員数 5名(取材時)
会社所在地 〒151-0064 東京都渋谷区上原2-47-18 ビームビル2階
会社HP https://flapsplan.co.jp/

 

事業紹介をお願いします

フラップスプラン株式会社は、「働くをもっとたのしくおもしろく!」を理念に掲げ、企業研修と個人面談(メンタリング)を通じて企業の成長支援と、メンター人材(人を育てることができる人)の育成を行っています。

当社が独自に開発した 「ワンネス経営®プログラム」 は、マネージャーやリーダーが「依存・他責・被害者意識」から脱し、自らの意思で行動を選択できる“セルフマネジメント人材”へと成長することを目的とした、人間理解に基づく実践的なプログラムです。

単なるスキル研修ではなく、行動変容を伴う“意識の再構築”を重視しており、研修と面談を往復させながら、個人の内面変化を現場での成果へとつなげていきます。

このアプローチによって、組織内の階層や立場の断絶を越え、「伝わらない」「動かない」といった構造的課題を根本から解消し、“自律と共創”による一体感ある組織づくりを実現します。

 

多くのマネージャーやリーダーはどのような課題を抱えているのでしょうか?

彼らの多くはリーダーシップやマネジメントの体系的なトレーニングを受けることなく、ある日突然その役職に任命され就いています。言ってみれば、免許を持たずに路上に出て車を運転しているような状態です。アクセルとブレーキの感覚もつかめないまま道路に出るので、対向車とぶつかりそうになったり、ガードレールにこすって自分が傷ついたり、相手を傷つけてしまったり。そうした“無免許運転状態”のまま、多くの人が怖い思いをしながらマネジメントの力を身につけています。

その背景にあるのは、会社の構造的な問題です。組織では、肩書きという“階段”を与えることで、リーダーになったと錯覚してしまう仕組みが根付いています。しかし、現実にはその階段の段差は大きく、実力と役職のあいだにギャップが生まれます。そして、このギャップの正体こそが実力の壁であり、知識・経験・人間的価値・論理的思考力・覚悟など、あらゆる要素が不足していることが多いのです。

一方で、この壁を日常業務をこなしながら乗り越えることは容易ではありません。そのため多くの企業は、リーダー候補者に対して3日間程度のリーダーシップ研修を受けさせるといった対応を取ります。しかし、テンションは一時的に高まるものの、2週間も経つと多くの人が元の状態に戻ってしまうのが現実です。人間の行動や意識は、短期的な研修だけでは変わらないのです。

 

肩書と実力で差がついてしまう状況について、何が問題だと感じていらっしゃいますか?

私たちは、この「階段の高さ」そのものに問題があると考えています。根本的には、人間はもともと「依存・他責・被害者意識」の状態で生きています。子どもの頃は誰もが誰かに養われている存在ですが、社会人として自立を求められるタイミングでいきなり「自責で考えろ」「自分で決断しろ」と言われます。ところが、依存状態から自立状態へと移行する“階段”を誰も教えてくれません。依存とは何か、自立とは何か、その構造を言語化して伝える人がいないまま、社会人生活が始まってしまうため、この「1段目」でつまずき、苦しんでいる人が非常に多いのです。

だからこそ、自分の人生の主人公は自分自身であるという認識を持ち、その土台の上にリーダーシップを築いていくことが重要なのです。

 

仰る通り、社会に出て経験を積んだら「あり方」を知らずにとりあえず「リーダー」になりますね

多くの企業では、社会に出て一定の経験を積んだ段階で、明確なステップを踏まずに「リーダー」という役職に就くケースが少なくありません。営業成績が良い、あるいは学生時代に部活のキャプテンを務めていた――そんな曖昧な理由で管理職やチームリーダーに任命されることも少なくないのが実情です。

しかし、依存的なマインドのまま管理職に就くと、チーム全体を苦しめてしまう状況が生まれます。たとえば「メンバーにはちゃんと伝えているのに、彼らがやらない」といった不満が生じたり、「自分の言う通りにやればいいのに、なぜできないのか」と他責的な姿勢に陥ったりする。これでは成果を上げられるはずがありません。

だからこそ私たちは、まず「セルフマネジメント人材」になることを最初のステップと位置づけています。

 

つまり、自らの目標達成を自律的に実現できる人材になることが必要不可欠なのです。そして、この段階を経ずに他者の目標達成に責任を持つことは本来不可能です。

こうした段階的な成長支援によって、「無免許運転」のままリーダーになる状態を防ぎ、真に自立したリーダーシップの育成を目指しています。

 

なぜ今、メンタリングが求められているのでしょうか?

まず、私たちはメンタリングを「コーチング+経験値による助言」と定義しています。

一般的には上司スキルの一つとしてコーチングが効果的と言われています。しかし、「答えは相手の中にある」というコーチングの原則にあまりにも従いすぎると、効率的でないことがしばしばありました。

そこで、メンター(面談者)の経験に基づく助言も可能となる、メンタリングが注目されているのだと思います。

私たちのプログラムでは、このメンタリングを研修の合間に実施しています。

というのも、多くの企業研修は、一度に集中的に学んで終わってしまうケースが少なくありません。ですが、学びというのは時間とともに確実に薄れていくものです。1ヶ月も経てば、研修当日に得た気づきや意識はかなりの割合で忘れられてしまいます。ですから「研修」と「メンタリング」をセットで実施することがとても大切なんです。

研修とメンタリングを交互に行うことで、

  • 学んだ内容を定着させる
  • その人のレベルや課題に合わせたサポートを行う
  • 現場で実践するための具体的な行動変容につなげる

といった効果が得られます。

この「研修 × メンタリング」の組み合わせこそが、ワンネス経営®プログラムにおいても、核となる仕組みです。

 

これまで5,000人以上にサービスを提供する中で、経営者に共通する課題はなんでしょうか?

多くの経営者や役員の方々は、「組織のあり方」や「マインドの状態」に問題があると感じながらも、それをうまく言語化できないケースが少なくありません。実際、依存的な状態なのか、自立的な状態なのかといった整理がされていないため、自身の悩みを正確に言葉にできず、漠然とした課題感を抱えてご相談に来られる方がほとんどです。

よくある経営者の悩みとして、「自分は学んでいるのに幹部が勉強しない」「自分の意図や考えが組織に正しく伝わらない」「幹部や社員が理解しようとしない」といった声が挙げられます。経営者自身も知らず知らずのうちに他責的なマインドになってしまうこともあります。

この問題を説明するために、私は「仕事偏差値」という考え方を使っています。

 

 

仕事にも偏差値のような分布があり、社長はA(偏差値70付近)、幹部はB(60前後)、現場社員はC(50前後)といった構造になっていることが多いです。

理想を言えば、社長の意図が幹部にそのまま伝わり、それが現場にそのまま落ちていく形が望ましいですが、実際の組織ではこの“伝言ゲーム”の過程で、意図が歪んでしまいます。例えば、社長が◯と伝えても幹部の段階でやや歪み、現場リーダーでは□に、最終的に現場では△になってしまう。つまり、社長がいくら明確なビジョンを描いても、そのメッセージが現場に正しく届かない構造的な問題があるのです。

私自身、RIZAPの組織づくりに深く関わった経験の中で、この現象を強く実感しました。そして現場での“歪み”がなぜ起きるのかを突き詰めていった結果、その要因が「偏差値55前後」にある“壁”にあることが見えてきたのです。

多くの管理職は「メリット」や「合理性」で動く傾向があります。一方で、一般社員の多くは「感情」を重視して行動します。この「感情」と「合理性」の間に大きな断層があり、この溝を埋めない限り、組織の意図は正しく伝わりません。

つまり、経営者の課題は「伝え方の問題」ではなく、「受け取り手との前提の違い」にあるのです。この構造を理解するだけでも、組織づくりの精度は大きく変わります。

 

手を動かすのが現場だからこそ、やらされている感から歪みが起きてしまうのでしょうか?

組織の中では、現場メンバー同士が「自分たちだけが辛い」「上はわかってくれない」という共通の感情を共有し、被害者意識によって結束してしまうケースが少なくありません。これはとてもよくある構造です。

特に偏差値55付近にいるいわゆる“中間層”の受け取り方が組織の空気を大きく左右します。もしこの層が被害者的な受け止め方をすると、その感覚がそのまま現場に広がってしまいます。一方で、「なるほど、上の意図はこういうことか」と理解し、現場(C層)へ翻訳して落とし込む力を持つ人材であれば、組織は一気に強くなるのです。

この分断を解消し、組織の一体感をつくるために開発されたのが「ワンネス経営®プログラム」です。“ワンネス(Oneness)”とはその名の通り「一体感」を意味します。役職や立場による感情のズレを可視化し、対話と理解を通して溝を埋め、組織として力を発揮できる状態へと導いていく──これがプログラムの根幹にある思想です。

 

ワンネス経営®プログラムについての詳細は下記サイトをご参照ください。

https://flapsplan.co.jp/


ここからは福永社長についてお聞かせください。学生時代に打ち込んだことはありますか?

子どもの頃に夢中になっていたのは、バスケットボールです。
小学生のときにひとつ上にとても尊敬していた先輩がいたのですが、その人がバスケをやっていたことがきっかけで興味を持ち、中学生になってから部活動で本格的に取り組むようになりました。

さらに、ちょうどその時代は『スラムダンク』の連載真っ只中でバスケ人気が一気に高まった頃でした。NBAでもマイケル・ジョーダンとマジック・ジョンソンという2人のスーパースターが活躍していて、国内外ともに盛り上がっていましたね。私も例に漏れず、どっぷりバスケにのめり込んでいました。

 

学生時代に起業したいと考えていらっしゃいましたか?

当時から「会社員にはならないだろう」という漠然とした感覚がありました。いわば、何かに縛られる生き方ではなく、自分の意思で道を選びたいという思いが強かったのだと思います。

父が消防士、母が看護師という家庭で育ったこともあり、人命を救う仕事には自然と関心を持っていました。そのため、当時はレスキュー隊員もしくは医師といった職業を志す可能性を考えていました。

 

高校卒業後は様々なお仕事を経験されたとのことですが、どのようなご状況だったのか教えてください

高校時代は、地域で最も進学校とされる高校に進学しました。中学時代は勉強が得意だと思っていましたが、まさに井の中の蛙で、全くついていけませんでした。そのような中で私は勉強に対する意欲を失い、部活に没頭するようになりました。

その後、大学には進学したものの、3か月で中退しました。学ぶ意義を見出せなかったことが理由です。そして中退後は実家で生活していましたが、両親と激しい衝突があり、家を出る決断をしました。結果として住所不定・無職の状態となったことから、生活のため、日雇い・日払いの仕事を中心に働いていました。その後、さまざまな現場で勤務しているうちに声をかけられたことで、人材派遣会社で営業職として働くことになりました。

数十種類に及ぶ職種を経験するなかで気づいたのは、仕事自体はどれも興味深く、自己成長を意識して取り組めば楽しさを感じられるということです。一方で、辞めたくなる理由の多くは仕事内容そのものではなく、職場の人との価値観の不一致にあると実感しました。この経験が、後のキャリア形成においても大きな糧となりました。

 

思い出に残っているお仕事はありますか?

思い出に残っている仕事のひとつが、家庭教師や塾講師の経験です。現在の事業にも大きく影響していると感じています。

やはり、人育てという分野に興味があったのだと思います。その延長線上で、スポーツトレーナーの道を志すようになりました。

スポーツクラブのオープニングスタッフを経て、リハビリスタッフとしてクリニックで働き始めます。

 

お仕事はトレーナーのままですか? それとも別のお仕事をされたのでしょうか?

スポーツトレーナーとして入社したものの、実際には介護職として約1年半勤務することになりました。介護の現場で働くなかで、このままでは将来のキャリア形成に課題があると感じ、理学療法士(リハビリテーションの専門職)の資格取得を目指す決断をしました。

その過程で株式会社LPNというストレッチポールを扱う企業と出会いました。当時の社長が実施していた研修に参加し、熱心に受講していたことをきっかけに声をかけられ、アルバイトとして働くことになりました。昼間はその企業でアルバイトをし、夜は理学療法士の養成校に通うという二重生活を4年間続けました。非常にタフなスケジュールでしたが、振り返ると人生の中で最も努力を重ねた時期の一つだったと感じています。

資格取得後、本来であれば病院への就職が一般的な進路でしたが、LPNへの入社を選びました。その後、入社からわずか半年で副社長に就任することとなり、大きな転機を迎えました。

 

半年で副社長は物凄いスピードでの昇進ですね

ありがとうございます。しかし、入社半年で副社長に就任した当時、業務そのものは評価されていた一方で、社内での人間関係やマネジメント面には大きな課題がありました。当時の私は常に眉間に皺を寄せ、周囲からは「不機嫌な人」と見られていました。コミュニケーション力やマネジメント力の不足を痛感した時期でもあります。

 

しかし、ご経歴を拝見すると社長に就任されていらっしゃいますが、何があったのでしょう?

自分の力不足を痛感して、退職を考えました。自分がカッコ悪い状態は嫌だからという逃げの発想ですね。

その時に、現在でも私の経営の師匠である榎本計介さんに相談をしました。「逃げの発想では同じことを繰り返す」と教えてもらい、どれだけカッコ悪くてもその場に残るという意思決定をしました。

この意思決定は、私の人生において初めて「他人の顔色ではなく、自分の意志」で選んだものでした。それまでは、親、上司、友人、周囲の目ばかりを気にし、自分がどうしたいのかを真剣に考えることがありませんでした。しかしこのとき初めて、自分の意志で未来を選んだのです。

私はこの経験から、「どちらの選択も正解ではなく、選んだ道を正解にしていく力こそが重要である」ということを学びました。自分の内側の動機が、すべての結果を左右します。そして、この考え方は、現在私が研修の中で伝えていることの核にもなっています。

多くの人が、自分で選んで就職したにもかかわらず、半年も経たずに「辞めたい」と口にします。結婚も同じです。自分で選び、好きと言って、結婚を望んだにもかかわらず、数年後には別れを望む人もいます。

私が伝えたいのは、「自分が選んだ道であることを自覚したうえで、その時間をどう過ごすのか」という点です。逃げの意思決定を繰り返していては、どこへ行っても同じ壁にぶつかるでしょう。本気でやりたいと決めた上で、それでもダメだったときに初めて「次へ進む」という選択が生まれます。

この体験は、私が経営者として、また人として最も重要だと考える「意思決定の本質」を学んだ原点です。

 

独立された経緯を教えてください

もともと私はこの会社に入社した際、「日本一のトレーナーになる」という目標を掲げており、トレーニングと身体の専門知識を武器にキャリアを積んできました。しかし気づけば、「身体に詳しいトレーナー」ではなく「身体に詳しいビジネスマン」としての道を歩むようになっていたのです。この変化が、将来の方向性を考えるきっかけにもなりました。

ただ、非常に恵まれた環境でやりたいことはすべて社内で実現できていたため、独立する理由が見つからない状態でした。しかし、32歳の頃、「このまま40代を迎えたとき、自分は本当に納得しているのだろうか」という疑問が湧きました。将来の自分が会長と酒を酌み交わしながら「本当は独立したかった」と少しでも愚痴をこぼしているとしたら、その状況を変える必要性を強く感じたのです。

独立した翌年の年収は1/10に。いわゆるプロ野球選手が引退後に直面するような急激な収入減少と同じで、蓄えも一気になくなりました。

それでも、自らの意思で決断し、自分の足で立つという覚悟が固まっていたため、この決断に後悔はありませんでした。むしろ、この独立こそが経営者としての新たな道の第一歩となりました。


経営者として仕事をするなかで、どのような苦労がありましたか?

創業当初、固定費といえば自分自身の生活費程度で、仕入れもほとんどありませんでした。もともと私には小山薫堂さんへの憧れがあり、その企業のように「ブランディングの仕事をしたい」という思いから、ホームページ制作や動画制作などの案件を受ける形で事業をスタートしました。

外部のパートナーや仲間を含め、メンバーは最大で8〜10名ほどにまで増え、当時の私は「経営者らしくなってきた」と錯覚していた部分もありました。しかし実態としては、すべてクライアントから依頼された仕事を引き受けるだけであり、自社の商品やサービスを持たない状態でした。その結果、営業活動を行うことができず、経営計画もないまま、実態としては「個人事業主に毛が生えた程度」の組織が8年ほど続いてしまいました。これは、私にとって非常に大きな学びとなった経験であり、経営者としての自覚と戦略性の欠如を痛感した時期でもあります。

 

それでも8年事業を保つのは並大抵のことではないので、才覚はあったのだと感じます

器用貧乏そのものです。目立った失敗もなければ、大きな成長もないまま、同じ規模感で事業を続けてしまう——そんな状態が8年間続いていたのです。

特に大きな気づきとなったのが、ホームページ制作事業でした。営業を担当し、クライアントと打ち合わせを行い、要望をまとめ、外部の制作会社にディレクションを依頼するという流れを取っていましたが、自分自身が専門家ではない領域を外部に任せることで、クライアントとの信頼関係が崩れ、制作会社にも迷惑をかけてしまうという問題が頻発しました。

この経験を通じ、「自分で責任を取れない仕事は受けない」という大きな方針転換を決意しました。結果的に、事業領域は「研修」と「動画制作」の2つに絞られました。当時は動画事業に自信を持っていましたが、転機となったのは株式会社カルテットコミュニケーションズの堤大輔社長からの一言でした。

その方は、私がRIZAPで行っていたマネージャー研修を聞き、「うちでもぜひやってほしい」と依頼してくださいました。試験的にその企業で研修を実施したところ、研修終了後にこう言われたのです。

「福永さん、今すぐ研修以外のすべての事業をやめた方がいい。研修は買うけれど、動画は買わない」

非常に率直で、厳しい言葉でした。しかし、この言葉が私の経営の方向性を大きく変えるきっかけとなりました。同じタイミングで、榎本さんにも「中小企業が複数の事業を並行して成功させることは不可能。たった1つの事業に集中して突き抜けろ」と強く言われました。

この2つの出来事が決定打となり、私は2019年に事業を「研修一本」に絞りました。

実質的に、経営者として本格的に歩み始めたのはこの時からです。そこから初めて、「経営」というものに真正面から向き合うようになりました。

 

現在、経営者の仕事とはどのようなものだとお考えでしょうか?

経営者の仕事は「決断すること」だと師匠から教えてもらいました。たとえば、「いつまでにこの売上を達成する」といったように、期限と目標を明確に定め、それを実現するための道筋を自ら決めることが、経営者の役割だと考えています。

これまでの私は、周囲から依頼されたことに全力で応える「頼まれ仕事型」のスタンスでした。しかし、経営者に求められるのはそれではありません。経営とは、目の前の業務をこなすことではなく、未来をつくるための意思決定をし続けること。その意識への転換が、経営者としての大きな成長につながったと感じています。

 

今後の展望について教えてください

今後のビジョンとして掲げているのは、「メンター人材の育成」です。

メンター人材とは、単に指導する立場にとどまらず、「人を育てることができる人材」を指しています。

これまでの日本社会やビジネスの現場は、男性的な価値観である決断し、切り開き、自らの力で解決するという力が優位な構造でした。しかし、これだけでは組織も人も限界を迎えていると感じています。

本来、教育という言葉には「教える(男性性)」と「育む(女性性)」という両面が必要です。教える力と、信じて見守る力。この両方をバランスよく備えた人材こそが、今の社会に求められていると考えています。

そこで当社では、2030年までにこの「メンター人材」を1万人育成することをビジョンに掲げています。これは、当社の研修プログラムやメンタリングを通じて、全国に人を育てられるリーダーを増やしていくという取り組みです。

また、組織として大規模な内勤部門を抱えるつもりはありません。オンラインを活用し、全国の仲間とともに、企業の社員一人ひとりの成長を支えるメンタリング体制を拡充していきたいと考えています。あくまでも1万人という数字は、社内スタッフの数ではなく、顧客企業を含め、研修を受けた人材の総数を指しています。

さらに、社会的ミッションとして掲げているのは「日本の管理職の視座を上げる」ことです。現在、日本には「やらされ管理職」と呼ばれる、不本意ながら役職についている人が非常に多く存在します。私たちはそうした状態を変え、管理職を「本物のリーダー」へと育てたいと考えています

リーダーとは、部下の人生の応援者であり、ロールモデルとなる存在です。そうしたリーダーを一人でも多く輩出し、組織と社会の成長に貢献していくことが、フラップスプランの目指す未来です。


他の経営者におすすめの本のご紹介をお願いいたします

私がおすすめしたい書籍(作品)は2つあります。どちらもビジネス書ではなく漫画ですが、「人材育成」や「チームビルディング」という観点から非常に示唆に富んだ内容です。

1つ目は、サッカー漫画の『アオアシ』です。
サッカーのプロを目指すユースチームを舞台に、伝説的な元プレイヤーである監督と、主人公である中学生の成長物語が描かれています。物語の中で主人公は大きな壁に直面し、苦悩しながらも自らの力でそれを乗り越えていきます。

印象的なのは、監督がその突破方法をすでに理解していながらも、あえて教えない場面です。

同僚のコーチが「もっと直接的なアドバイスをすべき」と提言すると、監督はこう答えます。
「それはお前が楽ってだけだ。正解をさっさと伝えるなんて指導者の怠慢さ。」

「考えさせることに意義がある。」

これは、まさに人材育成の本質を表している言葉だと感じています。人を育てる立場にある者が「教える」のではなく、「気づかせる」ことの重要性を、この作品は非常に丁寧に描いています。全40巻と長編ですが、人を育てる立場にある方には一読の価値がある作品です。

 

2つ目は、ジャズを題材にした『BLUE GIANT(ブルージャイアント)』です。
高校生の主人公がサックスプレイヤーとして世界一を目指し、努力と成長を重ねていく物語です。物語が進む中で、主人公はピアニストと出会い、こう語ります。
「俺は、お前がいなくても勝てる。でも、お前がいてくれたら、もっと勝てる」

この一言は、理想のチームのあり方を象徴しています。自立した個が互いを高め合う「相互依存的な関係性」。組織においても、1+1が2以上の成果を生むチームこそが強い。リーダーとしての視座や組織づくりを考える上で、多くのヒントを与えてくれる作品です。

ビジネス書ではなく物語として楽しみながら、人材育成やチームづくりの本質を学べる2作品として、経営者の方々にも強くおすすめしたいと考えています。

ぜひご一読ください。

『アオアシ』小林 有吾 (著), 上野 直彦 (その他)

https://www.amazon.co.jp/dp/4091868924

『BLUE GIANT』石塚真一 (著) 

https://www.amazon.co.jp/dp/4091856780

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『社長の履歴書』編集部
『社長の履歴書』編集部
企業の「発信したい」と読者の「知りたい」を繋ぐ記事を、ビジネス書の編集者が作成しています。

企業出版のノウハウを活かした記事制作を行うことで、社長のブランディング、企業の信頼度向上に貢献してまいります。