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株式会社フィールトラスト代表 野田 真一氏

  • 04/16/2025
  • 04/08/2025
  • 仕事
  • 14回

今回は株式会社フィールトラスト代表、野田 真一氏にお話を伺ってきました。

「社長の履歴書」だけの特別なインタビューです。

ぜひご覧ください!

 

 

会社名称 株式会社フィールトラスト
代表者 野田 真一
設立 2009年1月
主な事業 システム開発事業・クラウドサービス提供事業・中古パソコン販売事業

ITコンサルティング事業・歯科技工所運営事業

会社所在地 大阪府堺市大町西3-3-15
会社HP https://fieltrust.jp/

 

 

事業内容を教えてください

株式会社フィールトラストは現在17期目(2025年1月現在)の会社です。

システム開発の他、中小企業の業務効率の向上や通信コスト削減、DXの支援を行っています。

主力商品の一つである「IZUMO-PBX」は、すでに約300社に導入されており、4大キャリアのうち2キャリアが代理店として採用する実績を誇っています。大企業にはできないきめ細やかなカスタマイズや柔軟な対応が評価され、多くの企業に支持されています。

また、2023年には、「歯科技工デジタル研究所デンスマイル」を開設しました。私の父が40年以上歯科技工士として活躍し、私も過去に歯科技工士を目指していたことがきっかけでスタートした事業です。

歯科技工の世界はアナログな業界なので、少しでもデジタルやシステムで業界に貢献できればと考え、日々真剣に取り組んでおります。

 

歯科技工デジタル研究所デンスマイル(以下デンスマイルラボ)について詳しく教えてください

デンスマイルラボはフィールトラストの思想、テクノロジーを継承し歯科技工業界の課題解決から、口腔環境改善というアプローチで身体全体の健康を科学し、1人でも多くの高齢者のQOL向上を実現することを事業目的としています。

そして、デジタルデンチャーを活用した最先端の義歯製作技術、および新サービス「Cloud Fitピース」の普及に尽力しております。

入れ歯=ダサい・生々しいイメージが世間にはあり、40代50代60代でも「入れ歯だけは絶対に嫌だ」と言われる方が多くいらっしゃいます。ですが、「Cloud Fitピース」はオールスケルトンで、既存品とは大きく異なります。入れ歯を単なる医療器具ではなく、おしゃれで自分らしさを表現できるアイテムに変えることを目指しており、入れ歯がスポーティーで価値あるものだと理解いただけるような商品です。

また、義歯をプレゼントするという新しい文化「ギフトデンチャー®」にも力を入れています。これは、私自身が父にデジタルデンチャーをプレゼントした経験から生まれた取り組みで、義歯を贈ることで家族の絆を深め、人生をより豊かにすることを目指しています。

「入れ歯はダサい、仕方なく使うもの」という固定観念を覆し、「入れ歯がおしゃれで欲しくなるもの」に変えていくことが私たちの挑戦です。これを通じて、義歯に対するイメージを一新し、多くの方が前向きに使いたくなる製品を提供したいと考えています。

詳細はぜひこちらからご確認ください

 

入れ歯は見た目のインパクトがあるので、自分が使うと思うと抵抗感があるのは理解できます

そうですね。しかし何も対策せずに歯が抜けたまま放置すると、隣の歯が倒れてきたり、上の歯が沈んできたりしてかみ合わせがとても悪くなりますし、顔が変形していくこともあります。だからこそ、自分にフィットする入れ歯を使うことが大切なのです。

入れ歯が嫌な方のほとんどがインプラントを選択しますが、実はインプラントはとても怖い施術です。健康でまだまだ使える歯を削るので、将来的に歯が欠損する確率が上がってしまいます。

ぜひ第4の選択肢として当社の入れ歯を試していただきたいです。

 

なぜオールスケルトンの入れ歯を作ろうと考えたのでしょうか?

私の周りでアンケートをとったとき、「入れ歯は嫌だけど、マウスピースだったら着けたい」という意見を聞いたことがきっかけです。

透明な入れ歯なら、見た目のインパクトも軽減できますし、自然劣化が目立ちません。

また、作り方も患者さんに負担が少なくなるよう、スキャナーで型を取り、デジタルデータで作成できるようにしました。自宅に届いた後は歯科医院で調整すれば、完璧に使えるようになります。

もちろん、安心して長く使っていただけるように耐久性にこだわりました。

将来的には当社の入れ歯を個人ユーザーに提供しながら、福利厚生として企業提案していきたいと思っています。体の健診は企業が義務化していますが、口の健診も義務化されて、歯のトラブルがなくなるような世界にしていきたいです。

 

素晴らしい目標ですね。他の取り組みも教えてください

被災地や過疎地での口腔ケア支援として、ハイエースを改造した「移動型歯科クリニック」を提供しています。

 

自然災害が起きた際に口腔が不衛生な環境になると誤嚥性肺炎にかかり、死亡率があがってしまいます。また、医療機関の廃業や公共交通機関の減少により医療難民となる高齢者が今後より増えることが懸念されるため、この取り組みを行うことにしました。

車の中では、歯科検診だけでなく、デジタルデンチャーの製作も行うことができます。患者さんの口腔データを素早くスキャナーで取得し、翌週にはカスタムメイドの抗菌マウスピースを届けられるため、住んでいる場所や環境に左右されずに多くの患者さんに迅速な高品質の医療を提供することができます。

当社では日本全体が抱える医療課題の解決を目指し、医師、歯科医師、歯科技工士のチームで取り組んでいます。

 

ここからは野田社長のことをお聞かせください。どのような学生時代を過ごしていましたか?

ガンダムのプラモデルを制作することにはまっており、物作りが好きな学生でした。細部にまでこだわって仕上げていたので、集中力や想像力が養われたと思います。

学生時代は経営者になろうとは考えておらず、歯科技工士になるために専門学校へ通っていました。

 

何故歯科技工士の専門学校へ行かれたのですか?

父親が歯科技工士だったからです。

父は家で入れ歯を作ることがあって、私にとって身近な職業でした。また精密な作業に集中することが好きだったので、自分の性格にもマッチしていました。

 

歯科技工士にならなかったのはどうしてですか?

専門学生の時に歯科技工士を目指して昼も夜も働き詰めの毎日を送っていました。平日は歯科技工所で研修のアルバイト、土日はガソリンスタンドで働き、学費から定期代まで全て自分で稼いでいました。本気で目指していたからこそ、同級生と比べても、明らかに僕の技術は抜きん出ていました。

しかし、研修先の社長から「歯科技工士業界はやめておけ。そんなに努力できるなら他の仕事に就いてみたら?」と言われました。歯科技工の業界は歯医者の下請け構造で、本当に報われない世界です。

きっと私には別の道があるんだと思い始めて、専門学校を辞める決断をしました。

 

専門学校を辞めてからはどのようにお過ごしでしたか?

辞めた直後は何をすべきか分からない状態だったので職を転々としながら生きていました。

そんな時に家電量販店で販売の仕事を始めたことがきっかけで、仕事への姿勢が変わりました。

精神的にダメージを負うレベルの厳しい面接でふるいにかけられ、それでも残った人間だけが働けるという、まるで鬼のような職場でした。現場の忙しさも尋常ではなく、携帯販売を担当していましたが、1日200~300人もの来店客を4~5人で回します。1人で5人を同時に捌く感じでした。

売上を上げるプレッシャーを感じながらも、仕事の厳しさと楽しさを学びました。

 

なぜ独立したのでしょうか?

私の兄が先に独立しており、会社を手伝っていたことで、私も独立できるのでは? と思ったことがきっかけです。

ちょうどタイミングよく、専門学校時代の同級生から誘われ、資本金100万円をもとに私が代表になり事業を始めました。

 

起業してから大変だったことはありますか?

志もなく、経営を学んだわけでなく起業したので、失敗の連続でしたね。ラッキーパンチで一時的に売り上げが伸びたこともありましたが、当然続きませんし、マネジメントの問題や人に騙されたりと何回か会社が潰れかけました。特に資金繰りは非常に苦労しましたね。資金繰りに苦労すると、取引先が増えません。そして売り上げを作ろうとメンバーを増やすと、支出が上がり稼がないといけなくなります。2019年にプロジェクトが国の事業として認められたこともありましたが、資金がなく、断念せざるを得なかったことがあります。何をやってもダメで、負のスパイラルに入っていました。

 

どのように負のスパイラルから脱却したのでしょうか?

それまでは補助金に頼っていましたが、一度事業計画を白紙にして目の前のお客さん幸せにしようと意識を改めました。すると、だんだんと会社の売上が増えていき、最終的には売り上げが1.7億円に到達しました。この経験を通じて、「本当に大切なのは、困難に直面した時にいかに踏みとどまるか」ということを学びました。

 

IT事業でうまくいっていったにも関わらず、なぜ新しくデンスマイルラボを始めたのでしょうか?

父が入れ歯を嫌がっており、自分で作った入れ歯にも納得がいかずにいる姿を見たときに、「父親に入れ歯をプレゼントしたい」と思ったからです。また、本格的に事業として取り組み成功すれば、社会的な課題が浮き彫りになった歯科技工士業界に何かできるのではないかとも思いました。

そして、どのように実現できるか模索していた時、富山県の著名な先生から3Dプリンターの可能性について教わりました。建築業界で使われているCAD技術を応用し、3Dプリンターで入れ歯を作るというもので、私は衝撃を受けました。そして、すぐに3Dプリンター技術を活かした入れ歯製作の事業計画を立てました。

この計画は経済産業省のプロジェクトに採用され、補助金を受けられることになり、デンスマイルラボができました。

ストレスのない本当にその人に合う入れ歯をつくることはとても難しいと言われています。

父は2023年5月に肺がんで亡くなってしまいましたが、生前、第1号の入れ歯をプレゼントしたところ、1年間何でも食べられたと喜んでくれました。

この成功体験を色々な人に届けていきたいと思い、「ギフトデンチャー®」が誕生しました。

 

AI搭載の口腔衛生管理システム「オクチミル」もあるとのことですが、どのようなものなのでしょうか?

「オクチミル」は介護施設や訪問歯科でデジタルデータで保管できるシステムです。家族が閲覧できたり、口腔状態から体全体を知れるプラットフォームで、堺市が推進する「令和6年度堺市スタートアップ実証推進事業」に採択されました。

高齢者の口腔状態を見える化して、治療率をどんどん伸ばして、健康寿命を延ばしていきたいです。

日本人は歯科治療に対するリテラシーが低いと感じております。歯科治療受診率がとても低く、口腔ケアの知識がありません。介護施設で歯科治療が必要にも関わらず、治療しているのは1割に達しません。これから日本全体が変わっていくように口腔のIT化を目指します。

 

事業をつくる上でどのような大変なことがありましたか?

私たちはITの会社なので、口腔事業を始めた当初は、歯科業界の方からかなり警戒されてしまいました。

怪しい雰囲気だと言われていましたが、設備投資をしっかりして歯科技工士を雇用して、技工所として仕事をすることで信頼を築いてきました。また業界を変えたい熱意や真摯な態度を評価され、次第に紹介いただけるようになっていただきました。

 

今後の展望を教えてください

純粋に歯科技工士を助けたいという気持ちを強く持っております。

設備をただ増やすだけではなく、デジタル化や技工士として働く方々の育成していきたいです。システム化やDX導入では「人がいなくなってもビジネスを回せる」仕組みを作ることが多いですが、私の目指すものは全く逆です。歯科技工士を目指す若い人たちを増やし、この業界に希望を持つ人材にしていきたいです。

歯科技工士が豊かになれば、仕事の精度が上がり、高齢者を幸せにしていくと思っています。そして、何よりも好きなものを食べることにより、人生のQOLを上げることができます。高齢者の健康を守りたいという思いを軸にしつつ、その健康を支える歯科技工士たちが安心して働ける環境作りにも力を入れています。

 

他の経営者におすすめの本はありますか?

上田 比呂志さん著書の『ディズニーと三越で学んできた日本人にしかできない「気づかい」の習慣』です。単なる表面的な礼儀やマナーではなく、相手の気持ちを察し、一歩先を読んで行動する「本当の気遣い」の大切さが語られています。これは、経営においても顧客や社員との信頼を築く上で非常に重要な要素です。私自身、師匠であるうえだ先生から学んだ「相手を思いやる心」を、日々の経営に活かしています。

また、長谷川 和廣さん著書『2000社の赤字会社を黒字にした社長のノート』もおすすめの1冊です。経営者としての考え方、意思決定のポイント、人を動かすリーダーシップなど、実際の現場で役立つ内容が詰まっています。特に、経営者として迷った時や新しい挑戦をするときに、背中を押してくれる本だと思います。

どちらの本も、単なるビジネススキルを学ぶのではなく、人としての在り方や経営者としての信念を磨く上で大いに役立つ一冊です。これらの本が、読んだ方にとって新たな気づきや成長のきっかけとなれば幸いです。ぜひ読んでみてください。

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投稿者プロフィール

『社長の履歴書』編集部
『社長の履歴書』編集部
新入社員を含めたフレッシュなメンバーを中心に、出版サポートの傍らインタビューを行っております!

就活生に近い目線を持ちつつ様々な業種の方との交流を活かし、「社長に聞きたい」ポイントを深掘りしていきます。

代表者様のキャリアを通して、組織の魅力が伝わる記事を発信していけるよう、これからも一生懸命運営してまいります!