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越後天然ガス株式会社代表 小出 薫氏

  • 01/27/2025
  • 01/22/2025
  • 人材
  • 16回

今回は越後天然ガス株式会社代表、小出 薫氏にお話を伺ってきました。

「社長の履歴書」だけの特別なインタビューです。

ぜひご覧ください!

 

 

会社名称 越後天然ガス株式会社
代表者 小出 薫
設立 昭和7年8月
主な事業 (1)都市ガスの供給・販売

(2)ガス機器の販売

(3)ガス工事の施工

(4)電気の供給・販売

(5)前各項に関連する一切の事業

社員数 81名(取材時)
会社所在地 新潟県新潟市秋葉区新津4516番地
会社HP https://www.echiten-gas.co.jp/

 

 

事業内容を教えてください

越後天然ガス株式会社は新潟県秋葉区に本社を構え、都市ガスと電力の小売り事業を展開しています。祖父が創業し私で4代目になりますが、創業以来「安全・安定・安価」を経営理念として掲げて誠実に仕事をし続けてきました。

2016年からは都市ガスおよび電力自由化を契機に、電力事業へ参入しました。電力事業を通じて環境貢献やカーボンニュートラルの実現を目指しています。

当社は単に電気を販売するだけでなく、電力の調達から販売までを一貫して行っています。また、取次店としての窓口業務だけでなく、電力やガスといったエネルギーを最適な形で組み合わせ、お客様により快適で安全なエネルギーを供給することを目指しています。

最終的には、総合的に暮らしを支える企業としての展開を目標としています。

 

ガスよりも電気の方が環境に良いのですか?

そうとも限りません。石炭や火力でガンガンに電力を作っていたら意味がありませんし、電気は送電ロスもあり、大規模発電所から遠くの場所に届ける際の送電ロスが大きいのが現状です。

そのため、電気が逃げていかないような道具を使ったり、大規模発電所だけでなく地方の小規模発電所のバックアップが必要になります。特に災害大国の日本では、緊急時の停電の可能性も高いため、エネルギーの多様化を考えなければなりません。

最終的にはCO2を吸収していく電力の仕組みを考えることで、災害対策や地域の発展、またカーボンニュートラルによる地方創生と環境貢献ができる世の中を実現していきたいです。

 

ここからは小出社長ご自身のことをお聞かせください。学生時代はどのようにお過ごしでしたか?

振り返ると、楽しい思い出よりも辛い思い出のほうが多かったです。

いまでこそ学校内の諸問題が表面化してきましたが、時代柄、そして土地柄、生徒間の暴言・暴力が黙認されており、そのことが原因でとても辛い日々を送ったときもありました。

過酷な環境で生活を送るなかで、私は「なぜ相手はこのような言動をするのか」という部分に疑問を持ち、心理学を学びはじめます。

学術的にどうすれば人に話を聞いてもらえるのかを考えたり、自己中心的な言動をとる人を観察することで、人の気持ちを理解したいと考えていました。

 

大学ではどのようなことを学ばれましたか?

大学は新潟を出て、専修大学経営学部情報管理学科に進学しました。経営のことを学べるだけでなく、当時としては珍しく学生1人に1つパソコンが与えられる画期的な学部でした。そのため、ここで学べば経営とプログラミング両方の知識、技術を身につけることができ、社会に出る前に即戦力になれると感じました。

元々、新潟の県民性が自身と合わないと感じていましたし、家業を継ぐ気も毛頭なかったため、地元を離れて独立するための道筋を描いていました。

 

新卒では京葉ガス株式会社に就職されていらっしゃいますが、なぜその選択をされたのでしょうか?

先述した通り私には家業を継ぐつもりは一切なかったのですが、親戚一同は「当然継ぐもの」と考えていました。そのため、ガス会社以外に就職したら荒れると思い、東京で暮らし続けるためにこの選択をしました。

数あるガス会社から京葉ガスを選んだのは、中堅の会社で働きたいと考えたからです。

大企業では上層部との距離が遠く、小規模企業ではアイデアを実現する予算が少ないと考え、二部上場の企業を選びました。

初めての配属先は経理部で全体を見るバランス感を培いました。経理は全ての伝票に目を通すので、何に会社がお金を支払っているのかを学ぶことができます。工場に行って実際に調べ、自分の目でどんな機械が使われているのかを確かめる作業をすることができました。

その後は企画、営業の経験を積み着実にキャリアを積み重ねていました。

 

なぜ家業を継ぐことになったのでしょうか?

京葉ガスでは計10年働きましたが、その間にも前社長から何度か打診を受けていました。

その度にもっともらしい言い訳をして回避していましたが、10年目にして万策尽きたため、覚悟を決めました。

また、先代の社長が亡くなったことも大きく影響しています。親にすら「屁理屈」と言われていた私を可愛がってくれていた人なので、その意志を継ごうと思いました。

会社に関わる人たちのために働く覚悟を決め、「自分を跡継ぎにして良かった」と思ってもらえる経営者になろうと決意しました。

 

経営者として大変だったことはありますか?

私は2008年に京葉ガスから越後天然ガスに転職し、2012年に代表取締役社長に就任しました。

最初は下積みとして越後天然ガスに入りましたが、初日から驚きの連続でした。なぜなら、業務時間中に規定以上の時間勝手に休む社員や、業務時間内に働かずに残業代を稼ぐ社員などがいたからです。また、組合も「経営陣は悪だ、俺たちはこんな働かされてるんだ、給与をアップしろ」と一方的な意見ばかりで頭を抱えました。

そして私は経営陣と社員がお互いに尊重し合い、意見を言い合う環境がこの会社には必要だと思い、地道に改革を進めました。

 

どのように従業員の士気を高めたのでしょうか?

最初の3年間はとにかく周りに惑わされることなく、実直に働きました。私の働く姿を見て、他の人達に良い影響があってほしいと考えていましたね。

また社員に対して「何のために働いているのか?」と直接聞いたところ「家族を養うため」と答えた人がいました。その時私は「お金のために働いているなら、転職してください。地域の人たちが安心して暮らせるような幸せを提供したいという気持ちがあるならうちで働いてください。」と伝えました。

すると、その社員は働く目的を見つけたのか、見違えるほど変わっていきました。

お金を稼ぐだけが社会人としての使命ではありません。だからこそ、経営者は社員に働く存在意義を提示しなければなりません。働くということは自分と人を幸せにすることです。人に幸せを運ぶことで自分が幸せになり、Win-Winの関係になります。

仕事に誇りがあれば、どのような環境であっても人間は働きます。逆に誇りや社会貢献につながらない仕事は、社員を繋ぎ止めるために福利厚生や教育にお金がかかります。

私は新潟の人々に働く意味をしっかりと伝えていくことで、地域活性に繋がり、採用もうまくいくと考えています。

 

小出社長はどのように経営を学んだのでしょうか?

経営に関する書籍は沢山ありますが、結局読んでも全てが当てはまるマニュアルなんて存在しません。そのため、自分でアレンジをしていきました。

アイデアがあればまずは実験としてやってみて、結果を分析し改善することに何百回も挑戦しました。

代表取締役に就任後、私は業務の無駄を省いたり、上司・部下・部署間の垣根を取り除くことでコミュニケーションの活性化に取り組んだりと、社員にとって働きやすい持続可能な会社作りに注力してきました。

また、行政や地域との協力体制を強化し、イベントや地域活動にも積極的に携わるようにしました、しかし、最初はネガティブな意見があったり、命令だからとやらされ感が雰囲気に出てしまい、上手くいきませんでした。そのとき「社長の私自身が楽しんでいる姿を見せよう」と考え、企画から運営まで全て1人で行い、楽しさを伝える努力をしました。

その結果、社員の意識が変わり、今ではチーム一丸となって多種多様なイベントを運営しています。

 

今の状態になるまで上手くいかないことも多く、私自身の体調にも影響があったりと辛い時期がありましたが、それでも諦めずにできたのは先代に「継がせて良かった」と思ってもらいたかったからです。

創業90年の老舗企業の風土を変え、時代に適応し成長を続けるのは一筋縄ではいかないことですが、今後もこの会社が持続可能な経営ができるよう、邁進いたします。

 

今後の展望を教えてください

エネルギー事業は完全自由化になるまでは独占されており、状況的に守られてきました。しかし、変わりゆくエネルギー業界では、会社と社員共に成長が求められます。

そのため、社員には効率化やDXについて話すようになりました。当社でも率先して新しい技術にチャレンジしていきたいです。ガス会社は安泰かと思われていますが、何事も変わろうとしなければ変えることはできません。

最近はオール電化など選べる選択肢も増えて、よりお客様が自由にエネルギーを選択できるようになりました。だからこそ、お客様が快適に暮らせる環境を提供していきます。

また新潟県人の意識を変えていきたいですね。新潟の方はセミナーで勉強することもないですし、何かあっても積極的に質問をしません。そのため家を建てるときはハウスメーカーや業者の言いなりです。しかし、これはお客様からしたら無駄遣いになることもあります。お客様が幸せになるために、どんなエネルギーの活用をすべきかを積極的に伝えていきたいです。

 

他の経営者におすすめの本はありますか?

木村 元彦 さん著書の『オシムの言葉』です。元サッカー日本代表監督のイビチャ・オシムさんのスポーツ指導を超えた深い哲学が書かれています。

オシムさんは、ヨーロッパの弱小クラブを次々と強豪チームへと育て上げ、その手腕で注目される中、日本のジェフユナイテッド千葉で監督を務めた方です。指導方法は、チームメンバー1人ひとりの個性を見極め、それぞれに合わせたアプローチを取ることです。その結果、チームを強豪へと導きました。

私はこの本から社員と日々接する中で、全員の個性を把握し、それぞれの長所と短所を理解しようと努めています。「相手の良いところを引き出す」ことを重視することで、自然と社員とのコミュニケーションも円滑になります。

ぜひ読んでみてください。

【Amazon URL】

https://www.amazon.co.jp/dp/4167900203

投稿者プロフィール

『社長の履歴書』編集部
『社長の履歴書』編集部
新入社員を含めたフレッシュなメンバーを中心に、出版サポートの傍らインタビューを行っております!

就活生に近い目線を持ちつつ様々な業種の方との交流を活かし、「社長に聞きたい」ポイントを深掘りしていきます。

代表者様のキャリアを通して、組織の魅力が伝わる記事を発信していけるよう、これからも一生懸命運営してまいります!