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株式会社ブルームキャピタル代表 宮﨑 淳平氏

  • 12/22/2025
  • 12/22/2025
  • 仕事
  • 1回

今回は株式会社ブルームキャピタル代表、宮﨑 淳平氏にお話を伺ってきました。

「社長の履歴書」だけの特別なインタビューです。

ぜひご覧ください!

 

会社名称 株式会社ブルームキャピタル
代表者 宮﨑 淳平
設立 平成 24 年 7 月 4 日
主な事業 投資銀行業務・投資業務
会社所在地 〒105-0014 東京都港区芝二丁目 29 番 12 号 VORT 芝公園Ⅲ 10 階
会社HP https://bloomcapital.jp/

 

事業内容のご説明をお願いいたします

株式会社ブルームキャピタルは「売却専門M&Aアドバイザリー会社」です。

「売主の最高のM&A」の成立は、同時に「社会にとって価値あるM&A」の成立をもたらすというM&A哲学を有しており、中長期的かつ総合的な視点から、オーナー経営者または売主様の最適な会社売却/事業売却(M&Aイグジット)の支援をしています。弊社の売却専門M&Aアドバイザリー業務は、その言葉が示すとおり売主側のみの立場をとり、各売主に対してカスタマイズされた最高峰のM&Aアドバイスを行います。このため、独自の特殊なノウハウ及びデータが蓄積されています。この売主側のM&A支援に対して高度に専門特化している有力なアドバイザリーファームは、本取材時点で日本においては他にないものと自負しています。

 

M&Aを行うにあたり、何を大切にされていますか?

私たちが大切にしているのは、営業上の建前ではなく、本当に心から思っていることを言葉にすることです。弊社は売主にとっては専門家の立場です。このため、我々の言葉により否応なく売主は影響を受けます。このため、「どんなメッセージで伝えるか」によって、受け手の意思決定は大きく変わりますし、それにより売主の人生も大きく変わります。この倫理観は医療の世界にとても似ています。治験で有効性が証明されていない治療法を(場合によっては医師も半信半疑な状態のまま)高額で売りつけるクリニックがあるのと同じで、M&A専門家の業界でも似たようなことが起こっています。その意味で、まず先にくるのは倫理観ではないかと思います。

まず、M&Aの本質を一度フラットに捉えると、「会社とお金の交換」に過ぎません。極端にいえば、それ自体には仕事としての価値や面白みはありませんし、何の価値も生まれないと考えています。お金が買主側から売主側へ移り、株式の所有権(会社の支配権)が逆に売主側から買主側へ移る。それがM&Aの表面的な姿です。

しかし、私たちは人生を賭けて仕事をしています。これは、M&Aを適切に遂行することで、ただの物々交換(上記のM&Aの表面的な姿)を超える形にすることができるものだからです。

「ただの物々交換で終わらせず『良いM&A』を創造する」というのが、私たちの揺るぎないスタンスです。結論からいうと、『良いM&A』とは、「(市場で唯一1社しかいない)最適な買い手が」「他に比べて合理的に最大の価値で」実施されるM&Aといえます。これが実現すると、交換に見える行為の裏側に、会社の将来や経営者の人生、社員やその家族の未来、そして社会的な価値が新たに創られます。

言い換えれば、私たちが実現したいのは、「最適な買い手に会社が引き継がれることで、幸せになる人を増やす」ということに尽きます。

 

最適な買い手がいることで、世の中はどう良くなるのでしょうか?

例えば、ある会社の買い手候補が200社いたとします。現実には、A社が買収した場合の未来と、B社が買収した場合の未来を同時に見ることはできませんが、それぞれにまったく違うストーリーが生まれます。よくあるケースとして、仲介会社が支援するようなM&Aの場合、、買主候補企業に対し1社、2社、3社……と打診していき、例えば、20社目くらいで「ぜひ買いたい」という会社が現れれば、フィーを得るために短期的に案件をまとめようとする傾向があります。つまり、「最適な買い手」へのリーチ作業を、そこで手仕舞いしてしまうのです。しかし、仮に200社へしっかりあたっていった結果、185社目にその会社の価値を一番伸ばせる“本当の買い手”がいたとしたらどうなりますでしょうか?

たとえば、いま利益が20億円の会社があるとします。5社目のA社が買収した場合は、3年後に利益が30億、企業価値が150億円まで成長するだろうという期待があったとします。A社はこれをもとに対象会社の評価額を100億円と評価したとします。現在の利益により倍率を逆算すると5倍の評価額です。

一方で、185社目のB社が買収した場合は、B社が享受するシナジーを含めて同じ3年後に利益が150億、企業価値が1,000億円規模まで成長することが期待できるとします(厳密にはそれぞれの買主自身がそう期待している状況)。また、B社が享受するシナジーとは、対象会社を買収することで買主自身の利益も増加することをいいます。B社はこれらの期待値等をもとに対象会社の評価額を500億と評価したとします。現在の利益により倍率を逆算すると25倍の評価額です。

もうこの時点でA社が買収するか、B社が買収するかでどちらが『良いM&A』となるかはなんとなくわかるでしょう。B社が買い手となれば、売主としても高い評価額で売却でき、将来の成長も期待できます。A社以外にB社に上記の条件で勝る買い手が市場に存在しない場合、B社が「最適な買い手」ということになります。

 

ここで、もう少し深く社会に対するインパクトを考えてみます。仕事とは社会への価値貢献ですからここを考えるのはM&A業務を行うものとして重要なことです。もし、利益率が10%で統一的であると仮定すると、売上は利益の10倍となりますから、B社が買った場合の3年後の対象会社売上は1,500億円、A社が買った場合は300億円が期待されていることとなります。ここで人件費率も10%で統一して考えると、A社のケースでは人件費は150億円、B社のケースでは30億円になります。年収500万円の人を雇うとすれば、前者では約600人、後者では3,000人規模の雇用を生み出せる計算です。また、これは単純に雇用人数の差だけではありません。それぞれの従業員には家族がいて、子どもがいて、教育や生活があります。安定した収入があることで、家族を養い、子どもを学校に通わせ、将来への選択肢を増やすことができるので、こうした一つひとつの家庭の積み重ねが、社会全体の幸せの土台をつくっていきます。

これだけではありません。企業活動をするということは、仮に1,500億円の売上がある場合、そこからさまざまな費用を支払います。この費用は誰に支払うのでしょうか?当然、仕入先や広告事業者や業務委託先など、社会を構成する第三者に支払うことになり、これは彼らの「売上」になります。さらに、この流れは次の第三者にも波及します。このように、M&Aにより対象会社の規模が拡大するということは、社会に対する価値の波及をもたらします。そして、売上から費用を減じたものが利益として残りますが、ここに対して一定率で支払いが求められるのが、「税金」です。大きな税収があれば、国家としてはそれを医療・福祉などの社会保障に充てたり、困っている方を支えたり、都市の発展にも寄与することとなります。つまり、『社会にとっての価値』が創造されます。

 

このように、「どの買い手がその会社を引き継ぐか」によって、雇用、家計、教育、医療、社会保障に至るまで、世の中へのインパクトは桁違いに変わってくるのです。

そして、それほど大きな差が生まれるのは、M&Aという取引の一つひとつが非常に“巨大な意思決定”であることによります。
だからこそ私たちは、「最適な買い手」への引継ぎが果たせるよう、ここに全ての知恵と行動を集結します。また、追加で重要なこととして、上記のような波及効果以外にも、単純に『ある程度大きな投資をした買主は本気で対象会社の価値を上げにいこうとする』ということもあります。皆さんも「安価に購入できたもの」より「高価だったもの」に対してより手厚くケアしますよね。それと同じことが起こります。

 

売り手(オーナー経営者)にとってのM&A成否の重みとはどのようなものでしょうか?

個人の会社売却者にとって、私は「M&A成否は命へも影響する」と考えることがあります。このことを説明するために、以下の事例を考えましょう。

 

  • 経営者はその会社を20年間経営してきており、日中の時間は全て社業に費やしてきた
  • A社から100億円の価値を提示してもらったのでA社に売却した
  • しかし、B社に売れば本来500億円の価値がついたが、既に会社を売却してしまっていた

 

結論からいえば、上例は経済的な視点からみると「経営者人生の16年間を亡きものとした」ともいえる事例だと考えています。多くの経営者は日中の時間をほぼ「経営」に割いています。B社に売却できていた未来の場合、今までの経営者人生において1年間に25億円の価値を生み出してきたといえます。一方、A社に売却してしまったということは、経営者人生20年のうち4年間(100億÷25億)しか経済的に評価されなかった・・・と考えることができます。つまり、最適でないA社へ会社売却してしまったことで、本来は20年分評価されたはずの経営者人生のうち、16年間という大きな過去の時間を亡きものとしまったと考えることもできます。もちろん、経営者人生20年の中で、楽しい経験、苦労により得た知恵・・・等は消えません。しかし、経済的観点でみると、「時間が失われた」ということでもある・・・これは経営者であれば何となく理解できると思います。ある種「命の一部を失う」ことに近いともいえるかもしれません。このため、「(市場で唯一1社しかいない)最適な買い手が」「他に比べて合理的に最大の価値で」売却することは、経営者にとってみ非常に重要な意味を持ちます。繰り返しになりますが、これの実現により

  • 企業自体の未来が明るくなる
  • 売り手(オーナー経営者)の人生最適化
  • 社会にとっての価値の最大化

が同時に起こることになります。 『良いM&A』の実現は、買い手・売り手・企業・社会の四方良し(Win-Win-Win-Win)の実現につながります。そして、最適な買い手に辿り着くために必要なのが、“売却戦略”です。

 

売却戦略について詳しく教えてください

通常、買い手候補と一社ずつ話を進めていくと、「うちは80億ですね」「うちは50億です」「という形で、言った者勝ちの価格交渉になってしまいます。しかしながら、このやり方では、売り手の本当の価値は絶対に評価されません。

では何が必要かというと、「本当の買い手(価値を最大化できる相手)をあぶり出すこと」 です。

買い手は、その意思決定者の周囲にステークホルダー(株主や投資家)がいますので、“なるべく安く買収しなければならない”という合理的動機があります。放っておけば、誰も「高く買います」とは言いません。だからこそ、本当に強い関心を有し、対象会社を最大限生かせる買主をシステマティックに残せるような仕組みが必要 なのです。

先ほどの200社の例でいえば、最初の50社にだけ当たったのでは、185社目にいる“最適な買い手”には到達できません。つまり、「どこに打診するか」「優先順位をどうするか」「売却活動に市場の論理をいかに導入するか」等といった高度なノウハウが必要です。最後の「市場の論理」というのは、あたかも対象会社を市場で売買するのと同じような環境に置くことを意味します。通常の「財」とくに複製可能な「財」は市場に沢山供給し需要が少ない場合は価格が下がります。それにより需要が大きくなるからです。一方で希少性が高く供給量が少ない財は、競争的に購買したい方が殺到することで価格が上がります。このように、市場では財の需給による調整を経て均衡価格(値段)が決まります。

それでは、「会社」はどうでしょうか。通常、会社は「複製可能」な資産ではなく、「供給が少ない」どころか、供給量が1となる資産です。このため、「市場に出す」ことができれば、放っておいても競争が生まれ、その結果、価格が定まります。市場原理を考えると、最も高く条件提示した買主候補に売却するという行動はいたって自然な行動です。このため、如何に機密性等を維持しつつ「市場に出す」かという点も非常に重要になります。

ところが、いわゆる「M&Aの仲介会社」の場合、ここに構造的な問題があります。仲介型のM&Aでは買い手からもフィーを受け取ります。また、上場している会社が多かったり、会社によっては社内で追いかけるべき重要KPIが「案件開始からクロージングまでのリードタイム短縮化」である場合もあり、短期クロージングを優先します。これらの事情から、売り手のために価格が上がるよう競争を促すと、買い手から「フィーを払っているのに、なんでわざわざ他社を引き込んで値段を吊り上げるんだ?」と言われてしまう場合もあり、「市場に出す」ため必要十分な買主に打診することなく、目の前にいる対象会社に興味を持った買主候補と深い交渉をスタートさせるといったことも起こります。さらに、スピーディかつ確実に「クロージング」するため、最終契約交渉等において十分な売主側のフォローがないままに契約締結を進めるよう誘導してしまう場合もあります。いずれにせよ、上記のように「市場に出す」という動きがし辛い立場になるため、売り手の価値最大化を目指すには難しい立場となります。

だからこそ私たちは“売却専門アドバイザリー”として、売り手側からのみフィーを受け取り、売り手の価値最大化だけにコミットするという体制を徹底しています。15年間、売却サイドだけに特化してきたことで、

  • どの買い手がどんな基準で動くか
  • どのようにして市場原理を働かせるか
  • どのような売却戦略が適切か
    といった膨大なノウハウが蓄積されました。

医療で例えるなら、一般内科を広く診る医師と内視鏡専門でがんを見抜く医師では、同じ医師でも技量が大きく変わるものです。M&Aにおいても仲介なのか、売主専門なのかにより、同じかそれ以上の違いがあります。売却側に徹底して特化することで、高度な専門性と経験値が圧倒的に蓄積される。これが結果として、売り手に最大の利益をもたらします。

 

ブルームキャピタルの強みを教えてください

まず、これまで支援した売却済みクライアントの満足度が100%(2025年時点弊社認識ベース)であることが大きな強みです。多くのM&Aを支援してきたM&A事業者を例にとると、この数字はほとんど存在しないと思います。売却は一度きりで、しかも極めて複雑なプロセスであるため、全件が満足というのは簡単に達成できるものではありませんが、当社ではそれを達成しています。

次に、他社の仲介会社が提示した想定売却額以上、かつ多くの場合はその2〜3倍以上の条件で成約した実績が多数あることです(そして買主側の売却後満足度も相応に高いというのは弊社案件の特徴だと自負しています)。仲介会社に依頼してなかなかうまく進まなかったケースや、仲介会社のサポートに不満を持った上で弊社に相談されるケースが多く存在します。売却専門アドバイザリーとして、「最適な買い手を見つけ、フェアバリューを引き出す」ことに徹底的にこだわっているため、こうした結果につながっています。弊社の報酬は決して安くありませんが、“売却額を最大化することで、結果としてクライアントの得る価値が圧倒的に大きくなる”という点は、胸を張ってお伝えできる部分です。

 

当社についてご興味のある方は下記サイトをご覧ください。

https://bloomcapital.jp/

 

また、YouTubeチャンネル「ブルームキャピタルの会社売却道場【セルサイドM&A成功の極意】はセルサイド(売却側)M&Aを動画解説する日本で唯一の専門チャンネルですので、ぜひご覧ください。

https://www.youtube.com/@bloomcapital

 

ここからは宮﨑社長のことをお聞かせください。幼少期はどのようなお子さんでしたか?

幼少期を振り返ると、私はとにかく人が好きだったのだと思います。
小学校3年生くらいまでの記憶ですが、道を歩いている知らない方に声をかけたり、よく分からない大人を家に連れて帰ってきたりと、今の感覚で言えば「少し危ないのでは」と思うようなことも、当時は悪気なく自然にやっていました。それから、当時は周囲の人から好かれていたように思います。自分でいうのもよくありませんが、クラスのムードをつくるような存在だったと感じています。

また、昔から負けず嫌いな気質があり、喧嘩でも簡単に引き下がりたくないという思いが強くありました。
総じて、活発で好奇心旺盛で、人との関わりを心から楽しんでいた子ども時代だったと思います。

 

現在、国際空手道連盟極真会館 本部直轄四谷道場にてフルコンタクト空手道場の指導員も務めていらっしゃいますが、空手を始めたきっかけについて教えてください

空手を始めたのは、小学校6年生の頃です。当時の私は非常に負けず嫌いで、「喧嘩に強くなりたい」という思いがきっかけで始めました。昭和時代に極真空手を学び始める際の標準的な理由です。もともと活発で人と関わることが多かった分、時には衝突もあります。そうした中で、「いざという時に自分を律し、強い心と体を育てたい」と考え、空手に真剣に向き合うようになりました。

また、私が学んでいる極真空手には、「頭は低く目は高く 口慎んで 心広く 孝を原点とし 他を益する」という思想があります。私は自分が清廉潔白な人間だとは全く思っていませんが、この後半部分、「孝を原点とし他を益する」という点については特に自身の中でも大切にしてきました。これは「親孝行(孝)を人生や行動の根本(原点)とし、そこから派生する感謝や謙虚な心をもって、他人や社会(他)に対しても良い影響を与え、利益(益)をもたらすように生きる」という意味です。また、「力なき正義は無力」という言葉は極真の創始者である大山倍達総裁もよく使われていた言葉ですが、やはり自身に「力」がなければ社会に対しても価値を生めないと考えています。私としては、まずは「売却側M&A」について圧倒的なノウハウ・スキルの獲得を追い求めてきましたが、結果として、お客様や社会に対して微力ながらご支援ができる状態になったと考えています。また、このような考え方を素直に持てていることは親への感謝でもあります。空手は精神面・身体面の双方で大きな支えとなり、現在の仕事への向き合い方にも深く影響しています。

 

宮﨑社長は学生時代にとにかく勉学に励んだとのことですが、どのような目標があったのでしょうか?

学生時代に勉強へ本気で向き合うようになった理由を振り返ると、その原点には「お金持ちになりたい」というシンプルで強い思いがありました。

本格的に勉強に打ち込んだのは、高校3年生・浪人時代・大学時代です。ただ私の高校生の頃は、決して真面目一筋だったわけではなくお金を稼ぐことに集中していました。常に渋谷や六本木あたりをうろうろしている生活を送っていました。しかし、両親が『ウイニング受験英語』という髙田馬場にある面白い塾を紹介してくれたことで、大きな転機が訪れました。英語専門の塾なのですが、勉強だけでなく人生そのものの考え方を教えてくれる場所で、私にとって本当に大きな出会いでした。自分の置かれた環境が激変し、安全で未来につながる世界に触れられたことで、「勉強しよう」「ちゃんと生きよう」と思えるようになり、そこから猛烈に努力するようになりました。

 

英語塾で学ばれたことで印象に残っていることを教えてください

その塾は加藤先生という方が一人で数百人を受け持つという特殊な塾なのですが、当時ものすごく尖っていた私に対して、先生は頭ごなしに否定するのではなく、自然と受け入れてくれました。
今でこそ起業家の世界でもよく言われますが、先生はいつも「まずはやってみろ。やってみて無理なら、そのとき考えればいい。諦めたらそこで終わりだけれど、追い続ければ夢は必ず叶う。」と仰っていて、当時の私には驚くほど強く響きました。高校生にしては色々な経験をしてきた分、先生の言葉の重みや温度が、自分でも驚くほど深く入ってきたのだと思います。高校に戻った安心感と、先生から受け取った社会で生きるための考え方。その2つが自分の中でうまく結びつき、「ここから変われる」という実感が生まれました。

そこからは、まさに勉強しまくる日々を送り、その結果、早稲田大学に合格することができました。私は高校時代、無期停学2回、停学1回というまさに退学寸前の生徒だったのですが、高校の時の担任の先生が非常に尊敬できる先生で「君なら受かるよ」と偏差値30台の私に常に言い続けてくれました(一方で、横のクラスの先生は「絶対に受からない」と言われていましたが)。ここでも恩返しができたことが本当に嬉しかったことを覚えています。

大学に入ってからは、その勢いのまま起業に挑戦し、大学発ベンチャーのような活動も経験しました。うまくいったとは言えませんが、その過程で学び続ける習慣が身につき、その後ライブドアに入社することにもつながりました。

あの塾に通ったことは、人生が180度変わった転機だったと、今振り返っても強く感じています。

 

社会人時代にご経験されたことで、印象に残っていることを教えてください

社会人として歩み始めてから起業までの間に、私は下記3つの経験を特に重要だと感じています。
ライブドアで学んだ“伸びている企業の感覚”

セプテーニ・ホールディングスの七村会長(現ファウンダー)から学んだ“王道の経営理論”

社楽で得た“金融技術・投資銀行の知識”

まさに人生が“上向き”になっていく渦中の出来事でした。

 

ライブドアで学んだ“伸びている企業の感覚”

ライブドアは、当時日本で最も成長している会社と言っても過言ではありませんでした。投資銀行部の平均年収は数千万円ほどで、25歳で1億円近くを受け取る先輩もいたほどです。私は22歳でしたが「来年は自分も並べるように頑張ろう」と実感するほどの環境にいました。

しかし、その最中にあの事件が起こります。2006年1月16日の正午頃にNHKが「東京地検特捜部の強制捜査」とフライング報道しましたが、最初は誰も状況を理解できませんでした。当時の堀江社長もその秘書の方も投資銀行部のオフィスに来られ「これなにしたの?」と何も分からずという状況でした。誰もが自分たちが「悪い事をした」という記憶は一切なかったのだと思います。夕方になるにつれて報道陣が六本木ヒルズに集まり、18時頃には実際に地検が入るという事態に発展しました。ライブドアは直前の投資委員会である大企業に対する買収作戦をスタートさせようという議論がなされるほど勢いのある状態でした。
結果として、ライブドアは皆様の知るような結果となってしまいましたが、私は当時、投資銀行部の末席で、経営陣やグループ会社社長陣と同じ場でM&Aの協議に加わるという貴重な経験 をさせてもらっていました。

その中で感じたのは、「急成長する会社は、とにかく楽しく、ワクワクする」ということ。
この感覚は、後に自分でも会社をつくりたいと思う原動力になりました。同時に、社会で力を持つためには、単に正しいことを言うだけではものごとは進まないという現実も痛感しました。
政治・メディア・ステークホルダーの巻き込み方を誤れば、力を持つ企業でも一瞬で崩れるという事実や、やはり社会を動かしているのはまだまだ若い層ではないのだなということ等、ここでは言えないような強烈な学びがたくさんありました。

 

セプテーニ・ホールディングス(以下「セプテーニ」)の七村会長から学んだ“王道の経営理論”

次に大きかったのが、セプテーニでの経験です。
当時のセプテーニは上場してからそこまで日が経っておらず、圧倒的な成長フェーズにあり、その中でM&Aと投資部門を新設するという役割を担わせていただきました。若くして上場企業の成長を支えるM&Aのトップに抜擢されるというのはとても刺激的な環境です。転職時には外資系投資銀行などの選択肢もありましたが、ライブドアで得た経験の深さを踏まえると、同じような大手投資銀行で働くより、“成長企業の最前線で新しい組織をつくる” というセプテーニの環境の方が魅力的に映りました。

そして、私は創業者である七村会長の直下に入りましたが、会長の言葉や経営手法は、私にとって“王道の教科書”のような存在でした。

例えば、時間を細かく管理し時間に対して責任を持つこと、小さなミスも許さない姿勢で仕事に臨むこと、判断に迷った時は何が“王道”かを基準に意思決定することといった仕事の基本となる考え方を徹底的に叩き込まれました。時間管理等については毎週時間を作っていただき指導をいただいたのは本当に貴重な経験です。

私は今、仲介ではなくFA(フィナンシャル・アドバイザリー)の立場で仕事をしています。
仲介の方が“両手でフィーを取れる”という意味では儲かるにもかかわらず、売り手側に特化している理由も、実はこのセプテーニで学んだ“王道を貫く姿勢”があります。

 

社楽で得た“金融技術・投資銀行の知識”

起業前に在籍した社楽は、UBSの金融機関担当責任者の方が立ち上げた投資銀行で、ここではM&Aの技術を徹底的に学びました。

・企業価値評価
・投資スキーム
・財務モデル
・交渉の技術
・金融の構造
こうした、売却専門M&Aを行う上で必要な要素は、社楽での経験が大きな基礎になっています。

この3つが揃わなければ、今のブルームキャピタルも、自分のM&A哲学も存在しなかったと断言できます。

 

起業された経緯を教えてください

29歳で独立しましたが、「このタイミングで」といった綺麗な計画があったというよりも、できるだけ早く独立したかったという強い思いが根底にありました。単純に、人の下で働くことに向いていない自覚があったからです。

私は昔から負けず嫌いで、いわゆる“強さ”にこだわってしまうところがあります。
42歳になった今でも、誰が強いだのを議論している自分がいて、正直「そんなことを言っている大人はどうなんだ」と自分でツッコミたくなる一面もありますが、それも含めて自分の性格なので、組織の中で生きるより自分で道を切り開く方が自然だと感じていました。

 

また、実は20歳頃に、手書きで人生計画を作っていました。

  • 30歳までに●億円の資産を得る
  • 35歳までに●億円の資産を得る
  • 30歳までに極真の全日本へ出場する
  • 29歳までに独立する…etc

そして、そのために何をするべきかを書き出していました。
当時描いた未来のいくつかは現実になり、今の事業につながっています。つまり、独立は突然の思いつきではなく、若い頃から明確に意識していた“人生の節目”だったのだと感じています。

 

起業当初の理念について教えてください。今の形から変わっているのでしょうか?

起業した当時、私は「どう考えても成功する」と信じて独立しました。あまりこういう自信をもって独立する方は珍しいのではないかと思います。手元の資金は300万円しかありませんでしたが、それでも迷いはありませんでした。創業時の理念について振り返ると、半分は今も変わらず続いており、半分は事業を続ける中で理解が深まり、進化してきたという感覚です。変わらず持ち続けている理念は、「世の中の苦しみを一つでも多く取り除く」というものです。
これは創業当時から一度も揺らいでいません。

 

ただし、「どうやって苦しみを減らすのか」という“方法論”は、創業から2〜3年ほどの間に大きく変わりました。

当初、私は仲介型のM&Aも行っていました。仲介は両手でフィーを受け取れるため収益性が高いからです。さらに、仲介はマッチングに特化しますので1案件当たりの業務負荷が圧倒的に軽いですし、案件を並行で多数回すこともできるため、お金を稼ぐという点だけでいえば極めて効率的です。

しかし、事業を続ける中で気づいたのは、「お金は稼げても、世の中の苦しみは減らない」という厳然たる事実でした。

M&Aは一度きりで、もしこのM&Aが実は失敗であったとしても、比較対象となる別の未来を見ることはできません。
そのため、一見成功に見えるM&Aでも、売り手が不当に安い価値で手放してしまっている、会社が伸びるはずの未来を摘み取ってしまっている、社会全体にとってプラスになっていない、というケースが私の目から見て非常に多かったのです。

実際に、「5億円で売れました」という案件が当社に持ち込まれ、最終的に私たちが20億円以上で売却し、その後買い手も大きな成長を遂げたというような事例もあり、またこれに類似した事例が非常に多くあります。

これは、適正な買い手と適正な価格に辿り着くアドバイザリーが存在しないことによって、本来得られるはずの価値が失われているという非常に大きな問題です。

 

創業から2〜3年が経った時、仲介では苦しみは減らせず、売却専門のアドバイザリーでこそ理念を実現できると確信し、完全に売り手側へ特化しました。その転換がなければ、今のブルームキャピタルの形も、今のM&A哲学も存在しなかったと思います。いわば、自分の中で「王道」を選択した瞬間だったと思います。七村さんの顔を思い浮かべながら意思決定した記憶があります。

 

経営者としてどのような苦労がありますか?

経営者として大変だと感じることを一つ挙げるとすれば、やはり自分自身の甘さとの戦いだと思います。

もちろん一般的な感覚でいえば、私は十分にストイックに仕事をしている側だとは思いますが、私自身が基準にしているのは、最強クラスの経営者です。彼らと比べると、まだまだ自分は甘いと感じる瞬間が多々あります。

例えば、決めたことを、決めた通りにやり切れないという点です。

ある新興の大手金融グループの創業者の方は、毎朝4時に起床し、8時まで読書と学習に費やすことで有名です。七村会長も同じで、若い頃から必ず早朝に起き、毎日3時間は学びの時間を確保していました。また、自分で決めたことを必ずやり通されている姿を横でみていました。彼らはそれを当たり前のルーティンとして続け、苦痛ではなく自然に取り組んでおり、この徹底力と継続性こそが、成功している経営者(その成功の度合いにもよりますが)に共通する姿だと思います。

一方、私は仕事の合間に別のことに気が向いてしまうこともありますが、その瞬間に集中力は途切れ、再び仕事に戻るまで時間がかかってしまいます。そして、その積み重ねが、理想の自分との間に差を生んでいくわけです。

これは仕事の細部にも同じことが言えます。

  • 一つひとつの判断を「王道」から外さないこと
  • 決めたことを守り、やり切ること
  • 目標に向けた行動を積み重ねること

これらを継続できるかどうかで、経営者としての成果も速度も大きく変わります。

私は自分が理想とする姿に最短距離で向かえていないという感覚を持っています。これはフラストレーションであり、苦しさでもあります。ただ、同時に、「改善すべき課題が明確になっている」という意味では、まだ救いがあるとも感じています。

甘さを乗り越えていくことこそが、次のステージへ行く鍵になる。経営は、まさにその繰り返しだと思っています。

 

甘えかどうかを判断する軸はどこにあるのでしょうか?

自分の行動が甘えかどうかは、最終的には「何を目指すのか」によって決まると思っています。

私自身の幸せの基準は、大きなパワーを手に入れ、社会に大きな影響を与えられる存在になることにあります。
その道を本気で目指すのであれば、今抱えている甘さは明確に“直すべき課題”です。

一方で、すべての人が同じ基準を持っているわけではありません。たとえば、権力や影響力よりも、日々の暮らし、家族との時間、子育ての喜びを大切にしていて、それが本人にとっての幸せであるならば、甘えと呼ぶ必要すらありません。

つまり、その行動が甘えになるかどうかは、「自分が求めている幸せ」に照らして判断されるべきものだと思っています。

目的が違えば、やるべきことも変わる。私の場合は目指す場所が明確なので、そこへ向かう上で必要な行動を取れていない場合は、やはり甘えだと受け止めています。

 

今後の展望について教えてください

私が掲げている2つのテーマ、「世界的に見て際立った価値をつくる」「生きた痕跡を残す」は、実は切り離されたものではなく、前者を実現できれば自然と後者も満たされるものだと考えています。

非常にシンプルに言えば、力を持てば、お金も、人も、知名度も集まります。すると、自分の声に反応して動いてくれる人が増え、より大きな仕事に挑戦できるようになります。そしてその規模の仕事こそが、社会にとっても意味を持ち、結果として“痕跡”として残っていく。この順番は揺らぎません。

 

何か具体的な数値目標はあるのでしょうか?

会社の規模や売上など、具体的な数値目標について問われることは多いのですが、結論から言うと、現時点で“これを目指す”という明確な数字は外には公表しておらず、自分の中で持っています。

もし私たちが上場していたら、四半期ごとに業績を開示する必要があります。それは株式価値を維持し、投資家に対して利益を示すためには当然のことです。しかしその仕組みの中に入ると、どうしても「今期は数字が厳しいから、とにかく案件を決める」「多少質が落ちても売上を作る」という判断が発生しやすくなります。

ですが、私たちの仕事は“一つのM&Aが社会に与える影響が非常に大きい”という特徴があります。売り手にとっても、買い手にとっても、社会にとっても、どの一件にも大きな意味があるからこそ、数字を追うために案件を無理にまとめるような判断をしてしまっては、本質的な価値提供が損なわれてしまいます。そのため、「四半期売上を自社が達成するために顧客のM&Aをスピーディに決める」というようなスタイルをブルームキャピタルでは一切行いません。 “数字のための判断”を回避しているのは、この仕事の社会に対する影響が非常に大きいからです。

では、将来的にどんな規模を目指すのか。これについては、次のビジネスモデル如何により適切な数値目標が設定されると考えています。

たとえば、新しいファンドを運営するのであれば、ファンドサイズとしての目標が生まれる、M&Aアドバイザリーをより拡張するのであれば、チーム体制の規模や提供価値の幅が目標に影響する、別の事業領域に踏み出すなら、その収益構造に応じた数値指標が立ち上がるといったように、具体的な戦略が描けるほど、数字も具体化していくものです。

 

ブルームキャピタルが重要視しているのは、

  • 1件1件のM&Aが社会にとって正しい形で実行されること
  • 売り手・買い手双方が最大の価値を得られること
  • 適切な未来を導くためのアドバイザリーであり続けること

この本質を守り抜いた上で、事業が拡張され、次のステージが明確になった瞬間に、初めて“数字”は語れるようになります。時期が来たらリリース等もしますので、ご期待いただければと思います。

 

他の経営者におすすめの書籍を教えてください

本を著している私としては、やはり私の著書のご紹介をさせていただきたいと思います。私自身の著書である『会社売却とバイアウト実務のすべて』は、ぜひ多くの経営者の方に読んでいただきたいと思っています。

売却のプロセス、一般的な企業価値評価に加えて買収者側がどのように価値を判定するのかという視点、通常評価が難しいと考えられている企業の評価の方法。そして、売却手続きを実行するうえで重要となるポイント、当事者間の評価額ギャップを埋める技術、その他法律や税務のポイント等にわたり、広範かつ具体的に解説しています。会社売却を初めて経験する人でも、数十ページにわたるストーリー形式で相当細かな実務にまで踏み込んでまとめた第二部を読めば、売却プロセスの全容をあたかも読者が売却する本人になったかのような読書体験が得られ、売却手続きの流れをご理解いただけると思います。実務の本質や、売却側アドバイザリーの重要性を丁寧にまとめているので、事業承継やM&Aに向き合う経営者には特に役立つ1冊です。また、なにより経営者であれば企業の評価方法は知っておいて損はありません。どのように経営すれば自社の価値があがるのかということの理解と直結するからです。ぜひご一読ください。

『会社売却とバイアウト実務のすべて』宮崎 淳平 (著)

https://www.amazon.co.jp/dp/4534056222

 

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『社長の履歴書』編集部
『社長の履歴書』編集部
企業の「発信したい」と読者の「知りたい」を繋ぐ記事を、ビジネス書の編集者が作成しています。

企業出版のノウハウを活かした記事制作を行うことで、社長のブランディング、企業の信頼度向上に貢献してまいります。