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株式会社ALTA代表 上田 厚作氏

  • 03/14/2025
  • 03/17/2025
  • 仕事
  • 661回

今回は株式会社ALTA代表、上田厚作氏にお話を伺ってきました。

「社長の履歴書」だけの特別なインタビューです。

ぜひご覧ください!

 

会社名称 株式会社ALTA
代表者 上田厚作
設立 2016年
主な事業 保育園の運営
社員数 360名(取材時)
会社所在地 埼玉県さいたま市緑区道祖土1-19-13 サイドガーデン西館102
会社HP https://altababy.jp/

 

 

事業内容を教えてください

株式会社ALTAは子どもの生活習慣を改善する目的で立ち上げられた保育園運営会社で「健康・つながり・集中」の三つの幸せに特化し「すべての子どもに満ち足りた時間」を提供すべく、現在は1都2県で計30ヶ所の認可保育所等を運営しています。

なかでも、睡眠習慣の改善には特に力をいれています。

日本人は世界一の短睡眠傾向にあると言われていますが、その中でも働くお母さんが顕著に短睡眠であることも明らかになっています。そして、この弊害は健康だけではなく子育てにも暗い影を落としています。6時間睡眠が1週間ほど続くと、なんと集中力がビール500mlを飲んだ時と同じレベルまで低下してしまうと言われています。加えて、夜間の消灯後の携帯利用といった私たちの誰もが経験している習慣が、大人のうつ状態を引き起こしている可能性も自らの研究で明らかにしました。

そのため、ALTAでは子どもの発育にとって重要な保護者の心身の健康のために、家族の睡眠習慣を含めた啓蒙を行うことが極めて重要であると考えています。

これらの課題を解決するための取り組みとして、乳幼児を子育て中で早寝を継続している家庭のナイトルーティーンの発見と共有を行い、育児の不安に答えるために研究で国際的に標準化された望ましい子どもとの接し方をHP上で公開しています。さらに、子ども達が劇的に成長した保育の手法をその成果とともに社内で記録し、保育士同士で共有しています。これらの中から一部を保護者の皆様に共有し、お子様方と過ごす家庭での時間をより楽しく、思い出深いものになるよう努めています。

弊社の取り組みの詳細は下記URLよりご覧ください。

URL:https://altababy.jp/

 

とても素敵な取り組みですね。他社との違いはありますか?

私たちの信念は、社員も同様に生活習慣改善を徹底することで長所や才能を活かしあい、保育園の理念である児童の健全育成と子育て支援の質を同時に向上させ続けることです。

社員にはこの理念を実現するために個人レベルで責任感と使命感を持ち、自発的に活動して欲しいと考えています。この考え方を社員一人ひとりが踏まえることで、全員が同一の目標に向かうことになり、それ故に協力し合う必要性を感じ、結果的に社内文化がとても明るくなっています。

社員研修では心理学をベースにして、どのようにすれば自分の心を整理し、納得できる人生を歩めるかを考えています。エビデンスがある心理作用や運動・睡眠習慣を生活に意識して取り入れることで、人間関係がより温かくなることを企図しています。

保育士が心身ともに健康であれば、全社で提供する保育サービスの質は否応なく向上します。だからこそ、保育士と丁寧に関わり、人間教育に力を入れる意義があると考えています。

これらの環境設定が目指す先は人を育て、自分も成長すること自体をライフワークにすることです。保育園は、そのために必要な予防医学的な健康教育と実践をもとに、地域により良い思考習慣や生活習慣を提供する場所です。健康と幸せを求める人に対して全力で応えることができる存在でありたいと考えています。

 

ここからは、上田社長のことをお聞かせください。学生時代の思い出はありますか?

私は学生時代を2度経験しました。

2度目の学生時代を経験するきっかけは、社会人時代に自閉症の子どもを持つ女性とお付き合いしたことです。休日に一緒に外出すると、周囲の人たちからはまるで自分がその子の父親であるかのように見られます。この思い出が私にとってはかけがえのないものとなり、その後転勤の都合でお別れしてしまった後も先天的な発達障害のある支援を必要とする子どもに自分に出来ることは何かと考えるようになりました。

そして、睡眠習慣の悪化が後天的に発達障害様症状を呈することを知り、福祉と英語を学びながら教員免許と保育士資格を取得することを決意しました。学生時代に学んだ心理学を元に日常生活や社会での活動に役立つ知識を付け加え、現在は社員に教えたりYouTubeでの発信を行ったりしています。

 

2度目の学生生活で印象に残っていることはありますか?

児童養護施設などで子どもと接するボランティアをしたことです。

児童養護施設の子ども達は両親が薬物中毒だったり、家庭環境が複雑だったりと、さまざまな事情を抱えていました。そのような子どもは考え方や価値観が一般的な環境で育った子どもとは大きく違います。

たとえば、鶏小屋の卵を温めて大切に育てるのではなく、あえて踏み潰して中を見てみたいと言う子もいました。

このような経験から、考え方は遺伝でなく環境が要因だと実感し、環境によって人がどのように変わるのかを知るために、様々な子どもたちと触れ合うボランティアを行い、同じ活動に携わった学生や臨床心理士の卵たちと多くの意見を交換いたしました。

 

なぜ起業を考えるようになったのでしょうか?

研究の道に進むよりも、現場で子どもたちと関わる保育士たちに重要なことを教えたいと思ったからです。保育所を開設し、誠実に保育に取り組む保育士たちに必要な資源を獲得して提供し、より良い研修内容を検討していくほうが自分らしいと感じました。保育所経営はまず始めに自治体の認可を受ける必要がありますが、福祉や教育のバックグラウンドを持って自発的により良い環境を設定する人物像が求められていたため、それまでの経験から子どもたちの未来を現実的に考える経営ができると考えました。

 

昔から社長になりたかったのでしょうか?

幼少期から最も近しい存在だった祖父母も父も経営者でしたので、社長という立場で仕事をすることに特段違和感はありませんでした。保育業界でのキャリアのスタートは大学院修了後の保育士養成機関での教員経験でしたが、当初のライスワークから起業してライクワークになり、現在はビジョンを掲げて社員を育てるライフワークになりつつあると感じています。

 

社長になって大変だったことはありますか?

保育の内容に集中して取り組む以前に経営をすることに大きな労力を取られること、とりわけ国の制度設計に不備が多いことです。認可保育事業は完全に政策に基づいているので、認可基準を満たした上で運営しなければなりません。そのため自由度がとても低く、独自のカラーを出しづらい側面があり、また実際的に機能しないものの手数がかかる業務がたくさんあります。より良い保育園を作りたいのにルール上実現が難しく時間も資金も浪費されることが多く、もどかしい経験を多々しています。

さらに、待機児童を急速に解消するという政府や自治体の意向を受け、保育園数を増やすたびに社員のマネジメントの重要事が刻々と変化しました。

始めは小さい会社で家庭的な雰囲気が何よりもアピールポイントだったものの、現在では理念への共感とそれに向かうチームワークを重視しています。人が多くなると好き嫌いも様々ですし、人間関係も複雑になります。保育士は感受性が豊かで理想の人間関係を求める傾向があるため、心の整理の仕方や健康習慣への意識を高め、自己管理能力が高まる環境設定をどのようにするかで長い間悩みました。

 

マネジメントについては、どのように対策をしたのでしょうか?

保育士一人ひとりの使命感と責任感の向上がチーム全体の幸せにつながると伝え、これを全員が毎朝確認することをルーティンとしています。

人との関係性は信頼関係が重要です。家族でも友達でもない職場という環境で信頼関係をつくるには、しっかりと自分の与えられた仕事を責任感を持ってこなし、周囲に迷惑をかけないことが大切です。そのため、チームではなく個人レベルでの責任感を高めあい、それぞれが同一の目標に向かって協力し合う文化を作ることを重視しています。よく言われるようにマネジメントで肝要なことはやらされ感をなくしつつ、全員の自発性を引き出すことです。

 

保育園経営で工夫していることはありますか?

保育士不足が謳われていますが、潜在保育士を含め、保育の経験が浅い社員も即戦力で活躍できる環境を整えることです。子どもの成長と向き合うために、保育時間中にも効果的に時間を生み出し、正しい接し方を復習し、より良い保育内容を常に理解して保育することが大切だと考え、これを実現するために独自のしくみをつくりました。

例えば、入社後にすぐに理想の先生になれるよう、CoDMoN(コドモン)という最短で最適な保育計画をAIが策定してくれるシステムを導入しています。カリキュラムはあまり作り込みすぎず、子どもの発達に合わせて調整することで、子どもが手を伸ばせば届きそうな運動や学習の機会を提供しています。

また、英国で開発された、子どもとの正しい接し方の明確な基準が示されている点数表「Luce」(ルーチェ:イタリア語で光の意と命名)を社内で共有したり、全300人分の成功体験が詰まった、成功した保育環境設定集を「Libro」(リブロ:イタリア語で本の意と命名)を社内で共有しています。

保育事業は限られた予算で行わざるを得ない側面があるため、ペーパーレス化やシステムの導入が遅れがちですが、積極的に新しい技術を活用しつつ、一人ひとりが使命感を持って活躍できるようデジタル技術を活用しています。

 

今後の展望を教えてください

認可保育事業は国の政策に左右される側面が多くあります。

しかし、子どもが大切にされなければこれからの日本の再生は不可能になると感じています。

未来を生きる子ども達のためにも、シビックプライドを持った市民が増えるよう「より良く学び、より良く生きたい」人たちに向けた有益な情報をSNS上で発信し、より良い政治の在り方について民意を形成していきたいです。

弊社のキャッチフレーズにも掲げている「すべての子どもの満ち足りた時間」を実現するために、様々な取り組みを持って今後も弊社なりの向上を続けて参ります。

 

経営者におすすめの本を教えてください

精神科医の樺沢紫苑先生が書いた『The Three Happiness』がおすすめです。

人間の幸せを脳内ホルモンから「健康」「つながり」「達成」の3つと定義し、これらをどのように満たすべきかが解説されています。経営者は資本主義の構造の中で、自らの幸せを含めて遅かれ早かれ必ず大きな矛盾に直面すると思います。経費の中で1番大きな割合を占めるのは人件費ですが、これを削減して利益を出しても社員は幸せにはなりません。つまり、社員の幸せを犠牲にして社員を幸せにしようともがくことになります。社員が事業を通じて「どのように自分を肯定し、名誉を感じられるのか」お金以外の幸せをどのように提供し続けられるのかを、お客様の満足の次に事業計画の骨子として考えなければなりません。

経営者は仕事に没頭するあまり、自身の健康を後回しにしがちですが、代表者が心身ともに健康でなければ社員が幸せを感じる構想することができません。誠実に幸せ追及する皆さんの一助足りえる内容ですので、ぜひ読んでみてください。

【Amazon URL】

https://www.amazon.co.jp/dp/4864108234

投稿者プロフィール

『社長の履歴書』編集部
『社長の履歴書』編集部
新入社員を含めたフレッシュなメンバーを中心に、出版サポートの傍らインタビューを行っております!

就活生に近い目線を持ちつつ様々な業種の方との交流を活かし、「社長に聞きたい」ポイントを深掘りしていきます。

代表者様のキャリアを通して、組織の魅力が伝わる記事を発信していけるよう、これからも一生懸命運営してまいります!