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アキュイティー株式会社代表 佐藤 眞平氏

  • 01/15/2026
  • 01/14/2026
  • 人材
  • 9回

今回はアキュイティー株式会社代表、佐藤 眞平氏にお話を伺ってきました。

「社長の履歴書」だけの特別なインタビューです。

ぜひご覧ください!

 

会社名称 アキュイティー株式会社
代表者 佐藤 眞平
設立 2015年3月23日
主な事業 当社は、センシングテック企業として、画像処理・AI・センサー等の最適実装(サービス総称:「Bright Capture Solution™️」)を通じて様々な産業課題を解決することを目指し、以下の事業を展開しています。

AI画像処理システム製品および光学式モーションキャプチャシステムに関する計測機器、検査機器、情報機器、アクセサリ等の研究、設計、開発、製造、販売

AI画像処理システムおよびモーションキャプチャシステムに関するソフトウェアおよび関連システムの企画、設計、開発、製造、販売および保守

クラウドコンピューティングを利用したシステムインテグレーション事業およびDX化支援事業

各種情報処理サービス業及び情報提供サービス業

上記に関連するコンピューターシステム、ソフトウェア・ハードウェア、計測機器などのレンタル事業

上記に関連するコンサルティング事業

社員数 30名(取材時)
会社所在地 〒108-0075 東京都港区港南1丁目2番70号
会社HP https://www.acuity-inc.co.jp/

 

事業紹介をお願いします

アキュイティー株式会社は、2015年の創業以来、「視えることは、変えられる。」をコーポレートスローガンに掲げ、画像処理・AI・センサーを最適に組み合わせたセンシングテクノロジーによって、 さまざまな産業課題の解決に取り組んできました。現在、多くの企業が直面しているのは、技術者の高齢化による技術伝承の難しさや人手不足、生産性の低下といった深刻な課題です。こうした問題に向き合う中でアキュイティーが開発したのが、高精度の動作分析ソリューション。0.1mm単位の微細な動きまでも捉え、「なんとなく」や「職人の勘」といった感覚的な技術をデジタルに記録・可視化することで、熟練の技や現場知見の再現・継承を可能にします。また、従来は多くの時間や経験を必要としていた工程もAIによるデータ解析とセンシング技術の融合によって短時間かつ高精度で実現できるようになり、現場の効率化や品質向上を力強く後押ししています。現在では9割以上のお客様が大手企業となっており、多くの現場から信頼を寄せていただいています。

 

センシングテクノロジーはどのような魅力があるのでしょうか?

当社が最も重視しているのは、「正しい情報をいかに取得できるか」という点です。これは社内でも徹底して伝えていることであり、私自身が創業以来、大切にしてきた考え方でもあります。

近年は「ビッグデータ」という言葉が一般化しましたが、どれだけデータ量が多くても、誤った情報が集まれば判断を誤り、大きなリスクにつながります。だからこそ、まず“正確な情報を取得する仕組み”にこだわっています。

AIについても同様です。AIの判断精度が低いと言われることがありますが、それはAIそのものの問題ではなく、「誤った情報で学習させていること」に起因します。正しい情報を正しい方法で学習させれば、AIは正しく判断できます。結局は、「正しい情報」と「正しい学習プロセス」がセットでなければ成果につながらないのです。

正確な情報が蓄積されれば、それは企業にとって大きな資産になります。しかし、不正確な情報はいくら集めてもノイズになり、判断を誤らせるだけです。

また、当社の高精度なセンシング技術には明確な理由があり、AIの判断においても、なぜ高い精度を実現できるのかをすべて説明できる状態にしています。私たちはこれを「情報のトレーサビリティ」と呼んでおり、情報がインプットされてからアウトプットされるまでの各ステップにおける“判断の理由”を曖昧にしないことを徹底しています。

こうした「情報の正確性」と「判断の透明性」への強いこだわりこそが、当社の事業の最大の魅力であり、競合との差別化につながるポイントです。

 

「正しい情報」という点について、もう少し詳しく教えてください。一般的には、誰かが発した一次情報なども“正しい情報”と捉えられることがありますが、御社の事業では “発言内容”ではなく、画像処理によって取得される情報そのものの精度が重要になると理解しています。この認識は正しいでしょうか?

はい、ご認識のとおりです。当社が扱う「正しい情報」とは、主観的な発言や経験則ではなく、動作や現象を正確に捉えた客観的データを指します。

例えば、人の動きを分解すると、頭がどちらを向いているのか、肘の角度が何度かといった、空間上の位置情報に変換されます。これらはすべて「動き」を構成するデータですが、目的によって必要とされる精度が大きく異なります。

ある目的に対しては1メートル単位の精度で十分かもしれません。しかし別の目的では、0.01ミリ単位の精度がなければ正しい判断ができないケースもあります。つまり、「正しさ」は目的によって定義が変わります。

そのため、必要以上の高精度を追求することが必ずしも最適ではありません。たとえば、1センチの精度で十分な工程に0.1ミリの精度を求めれば、システムは過剰性能となり、コストも上がり、情報資産として蓄積しづらくなります。一方で、0.1ミリでも足りない領域では、さらに高精度な情報が必須になります。

重要なのは、「目的に応じて最適な精度を適切に組み合わせる」ことです。精度を闇雲に追求するのではなく、必要な場面には細部まで取得できる高精度なセンシングを提供し、ラフな情報で十分な場面ではコストを抑えた計測方法を採る。こうした最適配置こそが、当社の事業の核となっています。

少し複雑な話になりましたが、当社の「正しい情報」へのこだわりは、この“目的に応じた最適精度の提供”にあるという点をご理解いただければ幸いです。

 

現在注力している業界はありますか?

現在は、製造業にフォーカスすることを明確な方針としています。製造業では、少子高齢化による技術伝承の難しさ、生産性向上の必要性、さらには持続可能な製造体制の構築など、喫緊の課題が山積しています。当社のセンシング技術は、こうした領域でこそ最大の価値を発揮できると考えています。

医療業界など、ほかの分野からのご相談もいただいてはいますが、まずは製造業における技術伝承・生産性向上・サステナブルなものづくりの実現を中心テーマとして支援していくことが、現時点での注力ポイントです。

 

多様な業界から問い合わせがある中で、なぜ製造業にフォーカスする方針を選ばれたのでしょうか。大枠の背景から教えてください

その理由は、大きく二つあります。ひとつは経済合理性、もうひとつは導入環境の成熟度です。

まず経済合理性の観点では、製造業は製品単価や設備投資額が大きく、停止による損失も極めて高額です。たとえば自動車メーカーの場合、製造ラインが1分止まるだけで数百万円規模の損失が発生します。
そのため、わずかな効率改善でも ROI(投資対効果)が非常に高い産業であり、センシング技術の価値が最も発揮されやすい領域といえます。

もうひとつの理由は、顧客側のDXリテラシーや受け入れ体制が整っている点です。特に大手の自動車メーカーや自動車部品メーカー、産業機器メーカーなどは、デジタル化への理解が深く、導入プロジェクトを推進する体制も確立されています。そのため、取得したデータを運用に落とし込みやすく、成果につながりやすいという特徴があります。

一方で、医療業界のように非常に優秀な専門家が多い領域もありますが、現場は経営難や人手不足など構造的課題を抱えており、動作データの利活用や効率化にまで十分なリソースを割けないケースも少なくありません。結果として、現時点ではデジタル化・データ活用を推進する受け皿が整いづらいという側面があります。

こうした理由から、技術の価値を最も効果的に発揮でき、かつ導入・運用がスムーズに進む製造業を、当社の主要フォーカス領域として位置づけています。

 

ここからは佐藤社長のことをお聞かせください。学生時代に打ち込んだことはありますか?

学生時代に熱中していたのはスポーツです。特にアメリカンフットボールには深く打ち込み、高校で始めてから42歳まで、長く続けてきました。

アメフトを始めた背景には、いくつか理由があります。私は中学までは野球部に所属していましたが、坊主頭にする慣習がどうしても合わず、中学3年の時に野球を辞めることにしました。私は中高一貫校だったのですが、高校進学時には多くの運動部が勧誘に来てくれた一方で、アメフト部だけは全く勧誘に来ませんでした。そのとき「なぜ自分だけ誘われないんだ」と少し悔しくなり、逆にアメフト部に入部しようと思いました。

もう一つの理由は、それ以前にラグビーをしていたことです。中学までラグビーを続けており、高校でもラグビー推薦で他校への進学を考えていました。しかし、意思決定が遅れて推薦の締切に間に合わず、結果として付属高校へ進むことになりました。
ラグビーとアメフトは近い競技で、タックルをはじめコンタクトスポーツとしての共通点も多いことから、「それならアメフトをやってみよう」と自然に思えたという経緯もあります。

勧誘が来なかった悔しさと、ラグビー経験の延長線という二つの理由が重なり、アメフトを選んだ形です。

 

実際にアメフトを始めてみて、ラグビーとの違いを感じた点や、「これは大変だ」と思ったこと、逆に「意外といける」と感じたことがあれば教えてください

まず強く感じたのは、アメフトのほうがラグビーよりも痛いスポーツだったということです。

ラグビーでは、生身同士がぶつかり合いますが、アメフトではヘルメットを着用し、さらに顔の部分にはフェイスマスクと呼ばれる金属製のガードが付いています。タックルの際にはその金属部分が顔の周辺に当たることもあり、「これは想像以上に痛い」と最初に驚かされました。

また、ラグビーは基本的にボールの流れに沿ってプレーが展開されるため、不意に全く関係ない方向からタックルされることはあまりありません。しかしアメフトは、ボールのない場所でも激しいコンタクトが常に発生します。
ラグビーの感覚でプレーしていた初期の頃は、気づかないうちに横や後ろからぶつかられて吹き飛ばされ、「何が起きたんだ?」と驚くことが何度もありました。

こうした違いに戸惑う一方で、ラグビーで培った体の使い方やタックルの経験はアメフトでも活きる部分が多くありましたね。

 

スポーツの道ではなく、ビジネスの道に進むと決めた理由を教えてください

私は大学に一度アメフト推薦で入学しましたが、その後退学し、1年後に別の大学に入り直しています。社会人になった際も、実業団チームから複数お声がけをいただきましたが、「同じ道を繰り返すより、新しい環境で挑戦したい」という思いが強く、実業団には進みませんでした。

アメフト自体は社会人になっても続けており、企業スポンサーの付いたクラブチームに所属しながら競技を続けました。ただ、社会人としてキャリアを歩み出す中で、次第に「アメフト中心の人生」から「自己実現としての仕事」へと軸が移っていった感覚があります。

学生時代はアメフト一本で、勉強にはほとんど力を入れていませんでしたが、社会人になってからは、仕事にもアメフトにも全力で取り組むようになり、とりわけ携わった画像処理の業界が非常に面白く、「もっと深く学びたい」「自分で事業をつくりたい」という気持ちが強まっていきました。ちなみに起業を意識し始めたのは20代半ばからです。

 

もう一つ、進路に影響した要因があります。実は私は元々、体育教師になりたいと思っており、教員免許の取得も考えていました。高校時代にサッカーのコーチのアルバイトをして、子どもたちが成長していく姿を見るのがとても楽しく、「人を育てる仕事もいいな」と感じていたためです。

しかし社会に出る前に、「人を育てる前に、まずは自分が成長する必要がある」と考えるようになりました。自分自身がより大きく成長できる挑戦の場として、ビジネスの世界に飛び込もうと決めたのです。

こうした複数の要素が重なり、スポーツの道ではなくビジネスに軸足を移し、現在のキャリアにつながっています。

 

就職時にはどのような業界をご覧になっていたのでしょうか?

新卒時の就職活動は、実はあまり本格的には行っていません。最初は父の紹介で食品会社に入社し、外食事業部に配属されてレストラン店舗で勤務していました。しかし、10か月ほどで退職し、その後は人材派遣会社で営業職として働きましたが、社長と意見が衝突してしまい、2か月で退職することになりました。

その後、転機となったのが画像処理のベンチャー企業への入社です。映像や視覚をデジタル情報として扱えるという世界に触れ、強烈な衝撃を受けました。

例えば、かつての名投手・沢村栄治の映像を解析し、当時の技術では測定できなかった球速を映像データから推定するといった取り組みがあります。「映像からここまでの情報が得られるのか」という驚きと可能性に心を奪われました。

さらに、当時まだ一般的ではなかったドローンに関しても、自分の右目と左目をカメラだと捉え、「ヘリコプターに二つのカメラを載せれば、自分の視界だけが空を飛ぶようなことができるのではないか」といった発想を自然にするほど、視覚を情報化する技術への興味がどんどん膨らんでいきました。

こうした体験を通じて、画像処理の世界が持つ可能性に惹かれて本格的にのめり込んでいったというのが、現在のキャリアにつながる原点です。

 

その後のSIerや専門商社でのご経験も、現在の事業に活きていると感じる一方で、やはり画像処理ベンチャーでの経験が最も大きな影響を与えているのではないかとも思うのですが、この点についてどのようにお考えでしょうか?

ご認識の通りで、画像処理ベンチャーでの経験が私にとって最も大きな原点であり、現在のアキュイティーの事業にも直結しています。まさに“すべての基盤”になっていると言ってよいと思います。

実は、当時すでに起業したいという気持ちは芽生えていました。極端に言えば、その段階で起業してもよかったのかもしれません。ただ、ベンチャーにいたこともあって、「世の中の常識や大企業の仕組みを知らないまま起業するのはリスクが高い」と感じ、大手企業で経験を積むことにしました。そこでSIerに転職したのが最初の理由です。

SIerでは、社会の仕組みや大企業の意思決定プロセスなどを学ぶことができ、目的は十分に達成できました。その後、社内で新規事業を立ち上げられる人材を探していると声をかけていただき、専門商社へ移りました。今振り返れば、そのタイミングでも起業できましたが、当時は「一度業界に戻って、もう少し様子を見てから起業したい」と考えていました。

そのため専門商社に転職し5年間在籍した後、ようやく起業に踏み切ったという流れです。

いずれにしても、根本にあるのは画像処理ベンチャーで得た経験であり、あの時に培った視点と技術への興味が、今の事業の軸になっています。

 

社会人として働きながら大学院に進学された理由と、そこでどのような研究をされていたのかを教えてください

大学院進学のきっかけは、上司から「いま手がけている製品開発は、研究成果としても十分価値があるので、学位取得を目指してはどうか」と声をかけていただいたことでした。研究活動へ軸足を移したというより、実務で生まれていた成果を正式な学術研究として残したいという思いがありました。

また、私は体育教師を目指していた経緯もあり、大学時代は文系でした。そのため、社会人ドクターとして博士課程に進む話もいただいたのですが、「基礎から学び直したい」と考え、まず修士課程からスタートすることにしました。本来の目的は博士号の取得でしたが、起業したこともあり、修士課程でいったん区切りをつけています。

大学院での研究内容は、「医療分野におけるリハビリテーション支援システムの開発」です。

神経麻痺などで指が動かなくなった患者の場合、脳から指への指令が適切に届かなくなってしまうため、リハビリでは療法士が患者の指を動かしながら、脳の別の領域に刺激を与えることで反応を促し、徐々に指が動くようにしていきます。
重要なのは、どの指が動いたときに脳のどの部位へ刺激を与えるべきかを正確に一致させることです。刺激の与え方が間違っていると、脳と指の動きが結びつかず、回復が進みません。

そこで私の研究では、「指がどのように動いたかをリアルタイム・高精度に計測し、そのデータを刺激装置に即時送信するシステム」の開発に取り組みました。

具体的には、指の動きを1ミリ以下の精度でリアルタイムにセンシングし、その情報を治療側の装置に送ることで、適切なタイミング・部位に脳刺激を与える仕組みを構築しました。
この高精度センシング手法の確立が修士論文のテーマとなり、無事に修了しています。

 

実際に起業へ踏み切った経緯、そして創業当初アキュイティーをどのような会社にしていこうと考えていたのか、当時のビジョンをお聞かせください

起業のきっかけとなったのは、アメリカで開発された高性能センサーとの出会いでした。そのセンサーは非常に高精度でありながら価格も手頃で、技術的なポテンシャルは非常に大きいものでした。しかし、日本では主にエンターテインメント分野の企業だけが取り扱っており、産業利用にはほとんど活用されていませんでした。

「この技術はエンターテインメントだけに留めておくのはもったいない。産業界にも新しい価値を生み出せるはずだ」。
そう社長と意気投合し、モーションキャプチャ市場に新たなマーケットを開拓するという目的で会社設立を決断しました。

創業時に掲げたコンセプトは、「体温や体重を測るように、誰もが日常的に“動き”をデータ化できる世の中をつくる」というものでした。

たとえば高齢の方で、歩幅が徐々に小さくなってきたり足が上がりにくくなると、筋力低下や可動域の縮小が進んでいるサインであるにもかかわらず、その変化は目に見えにくいものです。しかし毎日動きがデータ化されていれば、小さな変化を早期に把握でき、適切なトレーニングやリハビリに早く介入でき、結果として、健康寿命を延ばすことにもつながります。

さらに、寿司職人が“シャリ炊き”に数年を費やすような、いわゆる「修行」の世界にも課題を感じていました。背中を見て覚える、感覚で身につける、根性で習得する、そうした属人的なやり方だけでは、人が成長できる機会を狭めてしまうと考えていました。

だからこそ、勘や経験に頼らず、動きそのものをデータ化することで、人の成長可能性を広げたい。これが創業当初からの強い想いです。

「動き」のデータ化を日常レベルにまで落とし込み、人材育成・技能伝承・ヘルスケアなど多様な領域で活かせる世界をつくる。その実現こそが、アキュイティー設立時のビジョンでした。

 

経営者として創業から10年、さまざまなご経験を積まれてきたと思います。予想外だったこと、大変だったこと、苦労したことなど、印象に残っているエピソードがあれば教えてください

最も苦労したのは、創業4〜5年目頃の組織づくりです。

創業当初は会社全体が「みんなで走る」文化があり、夜10時まで仕事をしそのまま全員で飲みに行くような、仲間意識の強い会社でした。それはそれでとても良い雰囲気で、私自身も好きな文化でした。

しかし、事業が大きくなるにつれ、組織としての成熟が求められるようになりました。役割分担を明確にし、レイヤー(階層)を整え、社員一人ひとりの責任範囲を定義する。いわゆる「きちんとした会社」にしていく必要があったのです。

この変革を進める中で、一度組織が大きく揺れました。
文化が変わることに戸惑う社員もいましたし、私自身も「自分らしい経営」と「企業成長に必要な“べき”論」との間で葛藤することがありました。

結果的には必要な判断だったと考えていますが、創業期の仲間文化と成長企業としての組織化のバランスをどう取るかは、当時最も悩み、苦労したポイントでした。

 

組織崩壊はどのような理由から起こってしまったのでしょうか?

原因の一つは、私自身の在り方が大きく変わったことにあります。
創業当初の私は、経営者の佐藤というより、生身の「眞平さん」として社員と深く関わっていました。距離が近く、仲間のような存在で、社員からも兄のように、あるいは父親のように見られていたと思います。

しかし、会社が成長するにつれ、経営者として求められる役割は変わっていきます。本当に組織を前に進めるためには、責任の所在を明確にし、仕事に対して一定の厳しさを持って臨んでもらう必要がありました。

この切り替えを行ったことで、「眞平さんが冷たくなった」「前のように手を差し伸べてくれなくなった」と感じる社員も一定数いました。実際、私自身も完全に割り切れていたわけではなく、中途半端な部分があったことも否めません。

つまり、仲間的な関係性から、経営者と社員という関係性へ移行する過程で、双方に戸惑いや抵抗が生まれました。その結果として一時的に組織が揺れた、というのが実情です。

キャラクターを切り替える、いわゆる“キャラ変”が必要だった時期であり、私にとっても非常に大変なプロセスでした。

 

その当時、佐藤社長が描いていた「経営者像」とはどのようなものだったのでしょうか?

当時私が目指していた経営者像は、職位や役割に応じた責任を自ら引き受ける存在でした。
社員一人ひとりが自分の役割に責任を持つのと同じように、私自身も経営者として組織全体の結果に責任を負う。その姿勢こそが、会社を持続的に成長させるために必要だと考えるようになったのです。

創業期には、現場で社員を助けるお兄さんのような立ち位置が自然でした。しかし、会社が大きくなるにつれ、「それが組織のトップとして本当にあるべき姿なのか」と自問するようになりました。
結果として、仲間として支える立場から、経営者として組織を導く立場へと割り切っていく方向へ舵を切った時期でした。

 

組織崩壊の前と後で、佐藤社長自身の仕事のやりがいはどのように変わりましたか?

まだ完全にできているわけではありませんが、ようやく最近になって実感として強く持てるようになったのが、「自分が主役ではなくなること」にやりがいを感じられるようになったという点です。

私は元々、お客様の課題を自ら解決することが大好きでしたし、現場に入り込んで一緒に成果を出すことに大きな喜びを感じていました。しかし私が前面に立つと、どうしても周囲の視線は社長である私に集まります。結果的に、せっかく現場に出ているメンバーの存在感が薄れてしまい、彼らが主役になれない状況が生まれてしまいます。もちろん、メンバーは「助かった」と思ってくれるかもしれませんが、組織として見ると長期的には望ましい姿ではありません。

だからこそ今は、社員一人ひとりが主役として活躍している姿を見ることが、私自身の大きなやりがいに変わりました。
自分が矢面に立つのではなく、メンバーが主役となって事業を推進し、お客様から評価される。その瞬間を見るたび、組織としての成長を実感しますし、経営者としての喜びも強く感じます。

創業期の「自分が動く楽しさ」から、成長期の「メンバーが輝くことを支える楽しさ」へ。やりがいの軸が大きくシフトしたと感じています。

 

実際に社員の方々が主役として活躍し、「これは本当に良かった」と感じた具体的なエピソードはありますか?

あります。最も印象的なのは、技術面で私を超える知識や経験を持つメンバーが育ってきたことを実感した瞬間です。

私は創業者として技術領域を誰よりも深く理解してきたつもりでしたが、現場に出る機会が減るにつれ、次第に若いメンバーのほうが最新技術や実装に詳しくなっていきました。本来であればそれは喜ばしいことなのですが、当初、社員たちは「社長より詳しい態度を取るのはよくないのでは」と遠慮しているように見えました。

例えばメンバーが技術的な判断を示す際も、「これはこうなっています。…一応、眞平さんにも確認したほうがいいかもしれませんが」というように、どこか控えめな姿勢がありました。

しかし私が繰り返し、「いや、僕より君のほうが詳しいよ」「遠慮しなくていい。胸を張って判断していい」と伝え続けたことで、次第に彼らの意識が変わっていきました。最近では、技術メンバーが自信を持って自らの判断を示し、お客様の前でも堂々と説明している姿が見られるようになりました。
まさに主役が入れ替わった瞬間であり、組織の成長を最も実感できる出来事です。この変化は、私にとって本当に嬉しいエピソードのひとつです。

 

今後の展望について教えてください

今後の展望は複数ありますが、まず何より優先したいのは、社員一人ひとりが心からやりがいを感じながら働ける環境づくりです。

私たちが取り組んでいるのは、画像技術を活用して社会に貢献し、人の成長可能性を最大化することです。もちろん、このミッションの実現は非常に重要です。しかし、それ以上に大切だと感じているのが、「この会社で働くメンバーが仕事を楽しみ、自分の成長を実感できる状態」であることです。

仕事は決してお金のための義務ではなく、自己成長のための手段だと私は考えています。社員がやりがいを持ち、主体的に仕事に向き合える環境が整えば、そのポジティブな連鎖は必ず事業にも、そして社会にも広がっていくはずです。

まずは、社員が誇りと喜びを持って働ける会社であり続けること。その基盤の上で、技術の力を通じて社会により大きな価値を届けていきたいと思っています。

 

現在は製造業に注力されているとのことですが、製造業の課題をある程度解決した先には、どのような業界やテーマで日本の課題解決に貢献していきたいと考えていますか?将来的な展望があれば教えてください

将来挑戦したい領域はいくつもあります。大きく分けると「健康・介護」「医療」「教育」「スポーツ」、そして「海外展開」です。

■ 1. 健康寿命と介護領域

少子高齢化が進む中で、高齢者の動きをデータ化することは、健康寿命の延伸に直結します。

歩幅や可動域の変化を日々計測できれば、筋力低下の兆候を早期に捉え、適切なトレーニングやケアにつなげることができます。

これは本人の生活の質を守るだけでなく、介護施設の運営効率向上やコスト削減にも大きく貢献できる領域です。

「人がいくつになっても成長できる環境をつくる」という意味で、非常にやりがいのあるテーマだと感じています。

■ 2. 医療現場のオペレーション改善

医療は動作の正確性が極めて重要な領域であり、“動きのデータ化”の価値が大きく発揮されます。

リハビリの質向上や医療手技の標準化など、さまざまな場面で貢献できると考えています。

■ 3. 教育分野

特に幼少期(ゴールデンエイジ)は、人の成長において非常に重要です。

日々の生活動作をデータ化できれば、興味関心の変化、体の使い方の特徴、適性、などがより早い段階で見える化できます。

その結果、子どもたちがそれぞれの特性に合ったスポーツや活動を選び、成長の機会を最大化できるようになります。

■ 4. スポーツ領域

私自身のバックグラウンドでもあり、ぜひ挑戦したい分野です。

現在は、多くの選手が自分のフォームやコンディションを「感覚」や「映像」で捉えていますが、映像だけではわからない部分が多くあります。フォームの違い、調子の良い時・悪い時の差分などは、動作データが最も正確に語ってくれる領域です。

スポーツの世界にも「データによる自己理解」という文化をつくりたいと考えています。

■ 5. 海外展開

日本で成功事例をつくった後は、必ず海外へ展開していきたいと考えています。

特に日本の製造業は世界的に高いレベルにあり、その品質・効率の裏には高度な“動きの技術”があります。

その技術をデータ化し、海外の製造現場に展開できれば、文化を超えて生産性向上に寄与できるはずです。

 

人は誰もが動いて生きています。

だからこそ、動きをデータ化することで貢献できる領域は果てしなく広いと感じています。

やりたいことは本当に多く、今後も挑戦の幅をどんどん広げていくつもりです。

 

最後に、他の経営者におすすめの本のご紹介をお願いいたします

おすすめの書籍を2冊ご紹介します。
『成功の実現』 と 『企業大全』 です。

どちらも起業してしばらくたってから読んだ本ですが、強く影響を受けました。私は技術志向が非常に強く、「技術だけで勝負できてしまう」タイプだったこともあり、そのままでは“すごい技術を持つ会社”で終わってしまうのではないかという危機感がありました。

技術だけでなく、人としての在り方や成功の法則を理解しなければ、経営者としての成長はないと気づかせてくれたのが、この2冊です。

■ 『企業大全』田所 雅之 (著) https://www.amazon.co.jp/dp/4478109508

この本を読んで、「成功にはプロセスがある」という当たり前のようで見落としがちな本質に改めて気づかされました。
また、“技術一本槍では通用しない”という大前提も明確に示してくれて、経営者として必要な視座を広げてくれた一冊です。

■ 『成功の実現』中村 天風 (著), 公益財団法人天風会 (監修) https://www.amazon.co.jp/dp/4930838541

こちらは、自分がどれだけ無意識のうちにエゴを抱え、エゴイストのまま走っていたのかを気づかせてくれた本です。淡々と仕事をしているつもりでも、内面にはさまざまな欲求や偏りがあるものだと理解でき、経営者としての心の在り方を見直すきっかけとなりました。

どちらの本も、私にとって“経営者としての土台を整えてくれた”と言える大切な書籍です。

ぜひご一読ください。

 

 

投稿者プロフィール

『社長の履歴書』編集部
『社長の履歴書』編集部
企業の「発信したい」と読者の「知りたい」を繋ぐ記事を、ビジネス書の編集者が作成しています。

企業出版のノウハウを活かした記事制作を行うことで、社長のブランディング、企業の信頼度向上に貢献してまいります。