今回は株式会社renue代表、山本悠介氏にお話を伺ってきました。

「社長の履歴書」だけの特別なインタビューです。

ぜひご覧ください!

会社名称株式会社renue 
代表者山本悠介
設立2021年3月25日
主な事業・AIコンサルティング
・ビジネスストラテジー
・プロダクトマネジメント
・生成AI活用支援
・DX推進支援
・新規事業開発支援
社員数40名(2026年1月現在)(取材時)
会社所在地〒105-7105 東京都港区東新橋1-5-2 汐留シティセンター5階
会社HPhttps://renue.co.jp/

事業紹介をお願いします

株式会社renue(リノイ)は、AI時代においてコンサルティング業界そのものを変えていくことを目指している、新しいコンサルティングファームです。単にAIを使った提案をするのではなく、「自分たち自身がAIを徹底的に使いこなす」ことを前提に、事業づくりに伴走しています。

AI製品開発では最新のAI技術を活用し、高速で効率的な製品開発を実現しています。ユーザーニーズに合わせた柔軟なカスタマイズも可能で、プロトタイプから本番環境まで、一貫した開発支援を提供しています。

また、包括的事業支援では、インフラ構築、カスタマーサポート、物流、広告戦略など、 事業展開に必要な全ての機能を一括でサポートするだけでなく、各分野の専門家チームが、事業の成長フェーズに合わせて 最適な支援を提供します。

具体的な事例としては、住友商事様の新規事業開発支援があります。使われなくなったIT端末を回収し、新たな価値を生み出す事業において、アイデア創出から運用体制の構築、プロモーション、カスタマーサポート、物流ネットワークの整備まで、事業に必要な機能を包括的に支援しました。その結果、端末LCM(ライフサイクルマネジメント)領域での事業立ち上げや、回収から再販までの一気通貫の運用体制を実現しています。プロモーションでは、生成AIを活用した施策にも取り組みました。

また、AIを活用した業務改革の支援も行っています。
大量の紙データ処理や、レガシーシステムへの入力業務を効率化する新規サービスの開発において、OCRと生成AIを組み合わせた高度なデータ処理システムを構築し、現場への導入まで伴走しました。半年で事業化に至り、現在は年間数億円規模の事業へと成長しています。


多くの企業では、顧客に対してDX支援を行いながらも、自社の業務は意外とアナログなまま、というケースが少なくありません。一方でrenueでは、AIを使って顧客を支援する以前に、まず自分たちの仕事そのものを徹底的にAI化しています。

そうした姿勢や実践の積み重ねが、他社との違いであり、当社ならではの強みだと考えています。

社内業務においてもAIを積極的に活用されているとのことですが、具体的には、どのような取り組みをされているのでしょうか?

実際に見ていただくのが一番早いと思うのですが、当社では社内で使うツールをほぼすべて自前で開発しています。いわゆるコンサルティング業務で必要になるプロジェクト管理や財務分析といった機能も、すべて自社開発のアプリ上で完結できるようにしています。

特徴的なのは、それらの業務をほぼ100%AIで回せるように設計している点です。たとえば、AIが議事録にアクセスし、そこから体制、ステークホルダー、タスク、目的といった情報を自動で抽出することができます。さらに、抽出した内容をもとにタスクリストを作成し、関係者ごとに整理したうえで、最終的には「この人物はこういう特徴があり、ここに関心があるので、こういうアプローチが有効ではないか」といった営業戦略の立案まで行います。

もちろん最終的な確認や意思決定は人間が行いますが、下準備や整理といった作業は、ほぼすべてAIが担っています。そのため、いわゆる“下働き”的な業務は社内にはほとんど存在しません。
社内向けの記事作成はもちろん、日報の作成も同様です。たとえば私が「今日の日報を作って」と指示すれば、AIが私の代わりに日報をまとめてくれますし、財務分析についても会計ソフトと連携した形で自動的に行われます。

このように、社内業務そのものを徹底的にAI化することで、人が本来注力すべき判断や価値創出に集中できる環境をつくっています。

AIは非常に便利な存在ですが、一方で「ここだけはAIに任せず、人が向き合うべき」と考えている領域はありますか? 

まず一番に挙げるとすれば、対人コミュニケーションです。
当社では人材育成の考え方として、AIとの向き合い方を大きく三つに分けています。
一つ目が「AIを使うこと」、二つ目が「AIを使って自分自身の能力を拡張すること」、そして三つ目が「AIに勝つ領域を持つこと」です。

世の中ではよく、「最終的な責任は人間が取るから」「AIが何をしているか理解していないと使えない」といった議論が語られますが、私はそれらの多くは本質を捉えていないと思っています。
かつて将棋の世界でも、「AIは創造性を持てない」と言われていましたが、結果的にそれは誤りでした。今ではAIが見つけた手を人間が研究し、理解し、活用する時代です。研究開発そのものもAIが担っています。

だからこそ、「AIとは何か」「人間のほうが知的か」といった抽象的な議論をするよりも、AIを前提としてどんどん使えばいい、と考えています。
ただし、そのうえで重要なのは、AIのアウトプットに対して責任を持てるかどうかです。

そのため当社では、「まったく知らない領域をAIに任せない」ことを徹底しています。
マーケティング、広報、財務、会計、IT、開発、設計など、私たちが関わる領域については、まず人が広く浅く知識を身につける。たとえば建築業界のお客様であれば、鉄骨設計の専門書を読み、実際に現場研修にも足を運びます。なぜそこまでするかというと、その理解がなければ、AIを正しく使いこなすことはできないからです。

また、AIはあくまでツールであり、何か問題が起きたときに「責任を引き受ける覚悟」を持つことも、人間にしかできない重要な役割だと考えています。
さらに、AIにはモチベーションがありません。問いを立て、学び続け、成長しようとする意志や体力は、人間側が持たなければならない。その意味で、主体的に問いを投げ続ける力や情熱も、AIには代替できない部分です。

もう一つ、私たちが特に大切にしているのが、「ノーと言える力」です。
AIは基本的に人間の指示に従いますが、それではいずれ人間はAIに負けてしまう。
たとえば、100年にわたってネジの技術を磨いてきた企業が、突然まったく関係のない事業を始めたいと言い出したとき、AIであれば肯定的な提案を返すでしょう。しかし私たちは、その企業の歴史や価値観を理解したうえで、「それはやめたほうがいい」と言える存在でありたいと考えています。無責任な助言ではなく、事業に本気で向き合ったうえでの否定です。

そして最後は、人間だからこそ生まれる信頼です。
少し時代に逆行するように聞こえるかもしれませんが、身だしなみを整えること、体を鍛えること、清潔感を保つことといった、ごく基本的なことも、私たちは重視しています。
AI時代だからこそ、「この人と仕事がしたい」と思われる人間であることの価値は、むしろこれからますます高まっていくと考えています。

ここからは山本社長ご自身についても深掘りしながら、事業のお話につなげていければと思います。まずは学生時代を中心に、社会に出る前のご経験で、特に熱中していたことがあれば教えてください

社会に出る前のことでいうと、大学生の頃にバックパッカーとして各地を旅していた経験が、いちばん熱中していたことだと思います。アジアやヨーロッパ、南米など、さまざまな地域を巡りました。

どの国もそれぞれ印象には残っていますが、なかでも強く記憶に残っているのは、中央アジアなどの旧ソ連圏の国々です。
おそらく今後の人生で、情勢や時間的制約の都合で再訪することはないだろうと思うような場所も多く、これまで自分が知っていた価値観や常識とはまったく異なる世界に触れた感覚がありました。

その旅のなかで、特に印象に残っている出来事はありますか?

強く印象に残っている出来事としては、やはり「想像以上に過酷な環境だった」という体験です。地域によっては治安が不安定で、移動中にトラブルに巻き込まれることもありました。一時は命の危険を感じるほどかなり追い込まれた状況になったこともあります。

ただ、その一方で、人の優しさにも何度も救われました。言葉が通じないにもかかわらず、通りがかった人に助けてもらったり、見知らぬ家で食事をごちそうになったりしたこともあります。
そうした経験を通じて、「人間は意外とどうにかなるものだ」「極限状態でも、助け合いは自然に生まれるものなんだ」という感覚を強く持つようになりました。

バスも通っていない地域でタクシーを頼りに移動するしかないような環境でしたが、その過程も含めて、非常に生々しい学びの多い経験だったと思います。

京都大学工学部に進学されていますが、当時はどのような思いで進路を選ばれたのでしょうか?

京都大学は中退していることもあり、「これがやりたい」という明確な目的があったわけではありませんでした。
出身が京都で、高校もいわゆる進学校だったこともあり、「とりあえず京都大学の工学部に行く」という、ある種の空気や期待のようなものに後押しされて進学した、というのが正直なところです。

実際に入学してみると、工学的な分野に思っていた以上に強い興味を持てなかったため、そこで改めて「自分は何をやりたいのか」を考えるようになりました。
その違和感が、その後の進路を見直すきっかけになったのだと思います。

東京大学ではどのような関心や目標を持って学ばれていたのでしょうか?

正直に言うと、東京大学文学部 言語文化学科に入学した当初も、「これをやりたい」というものが明確にあったわけではありませんでした。
たまたま勉強ができたことで、いわゆる良い大学に進学させてもらいましたが、自分自身に強い教養があるとか、話がとても面白いとか、そういうタイプではないという自覚がありました。

一方で、当時出会った先輩方のなかには、知的な引き出しが多く、会話一つ取っても非常に魅力的な人がたくさんいて、そういう人たちに強く憧れを抱いたんです。「文系的な教養をしっかり身につけている人は、こんなにも面白いのか」と感じて、自分もそうなりたいと思うようになりました。

入学当初は、数学が比較的得意だったこともあり、「数学を活かせて、なおかつ文系である」という観点から、経済学部のような選択肢も考えていましたが、最終的には「好きなことに振り切ろう」と思い直しました。純粋に読んでいて面白かったというとてもシンプルな理由ですが、「これなら続けられる」と感じたことから、理屈よりも直感を優先してドイツ文学を専攻する道を選びました。

学生時代から、将来は起業したいと考えていたのでしょうか?

まったくありませんでした。いわゆる「意識高い系」と呼ばれるような考え方には、どちらかというと冷めた目で見ていたタイプです。
実は新卒で入社した外資系コンサルティングファームにも、最初から強い関心があったわけではありません。できれば日系企業に就職したいと思っていました。

ただ、就職活動では思うようにいかず、結果的に50社ほど不採用が続きました。東京大学を卒業していても、日系企業にはなかなか受からないため、「自分は日系企業には向いていないのかもしれない」と感じるようになりました。

そんな中、先輩に勧められて外資系コンサルティングファームを受けてみたところ、意外にもスムーズに内定をいただいたことから、
そこで初めて「自分はこの道で生きていくのかもしれない」と腹をくくった、というのが正直な経緯です。

外資系コンサルティングファームでは、証券会社向けのシステム提案やデータ分析などに携わられていたそうですが、その経験のなかで「この仕事をしてよかった」と感じるエピソードはありますか?

その会社での経験のほとんどが今の自分の血肉になっていますが、中でも2つ印象的なことがあります。

一つは精神面での変化です。
入社当初は、東京大学を出ているというだけでどこかで「自分はそれなりにできる人間だ」と思っていました。しかし、最初に任された仕事はいわゆる単純作業でした。正直、当時は強い違和感もありましたが、今振り返るとそれは非常に重要な経験だったと思います。

そこで学んだのは、「自分がやりたいかどうか」ではなく、「それが顧客の役に立つかどうか」がすべてだ、という価値観です。
役に立たないのであれば、どれだけ肩書きがあっても意味がない。その感覚をかなり早い段階で体に叩き込まれました。

もう一つ大きかったのは、仕事の品質に対する姿勢です。
その会社では、「当たり前のことを、当たり前以上の精度でやる」ことが徹底されていました。たとえば、メール一つとっても誤字脱字は許されません。資料についても、何重ものレビューを経て、細部まで徹底的に磨き上げます。深夜まで全員で音読し、表現や構成を確認することも珍しくありませんでした。

効率だけを見れば、決して良いやり方とは言えないかもしれませんが、その積み重ねによって「隙のない仕事」をする感覚が身につきました。


一度、極限まで品質を追求する経験をしておくと、その後は自然と準備量や視点が変わります。会議一つにしても、どこを見られているのか、どこでつまずくのかが分かるようになります。今は当時と同じやり方をそのまま踏襲しているわけではありませんが、それでも、細部まで品質を求め続けたあの経験は、間違いなく今の仕事の土台になっています。

学生時代には起業志向はなかったとのことですが、外資系コンサルティングファームで働くなかで、起業を意識するようになったのでしょうか。それとも、もう少し後のタイミングでしょうか?

起業を明確に意識するようになったのはもう少し後の話です。
外資系コンサルティングファームで働いていた当時は、そこまで強い思いがあったわけではありませんでした。しかし、仕事自体は非常に自分に合っていて、今も同じ業界で仕事をしているのは、その延長線上にあります。

一方で、当時感じていたのは、「このまま順当に出世していく未来がはっきり見えてしまう」という感覚でした。安定しているし、リスクもほとんどない。ただ、そのルートがあまり面白く感じられなかった、というのが正直なところです。

コンサルティング業界は、人そのものが商材です。極端な話をすれば、仮に社内で評価が低かったとしても、「このスキルを持っています」と言えば、どこかでまた仕事はできる。そういう意味での安心感もありました。
だからこそ、「一度外に出てみよう」と思い、深く考えすぎずにその会社を離れた、というのが実際の経緯です。

その後、友人が立ち上げたベンチャー企業に参画しました。事業自体は当初うまくいっていましたが、成長が思うように続かず、比較的早い段階で離れることになりました。そこからしばらくは、まさに試行錯誤の時期で友人と起業を考えたり、尊敬していた先輩と事業を立ち上げてみたりと、いろいろ挑戦しましたが、結果としてはなかなかうまくいきませんでした。

そうした経験を重ねるなかで、最終的に行き着いたのが、「誰もやらないなら、自分でやるしかない」という感覚です。
大きな理想や強い起業志向が最初からあったというよりも、最後の選択肢として、自分で起業する道を選びました。

renueを起業された当初から、コンサル業界の既存構造を変えていく、新しいコンサルティングファームをつくるという強い思いはお持ちだったのでしょうか?

正直に言うと、そこまで明確で強い思想が最初からあったわけではありません。
いまお話ししているような「新しいコンサルティングファームとして振り切る」という意思決定をしたのも、実はここ2〜3年ほどの話です。会社を立ち上げてから最初の2年ほどは、現在とはかなり違うことをしていました。

当初はコンサルティングの仕事も続けながら、一方で「コンサルティングという事業の構造そのもの」に対して、事業運営者としての違和感を覚えていました。コンサルファームは、人が最大の資産である一方で、社員以外に積み上がるアセットがほとんどありません。働く個人にとってはスキルが身につく良いビジネスですが、事業として見ると、資産が残りにくい構造でもあります。

たとえば製造業であれば、工場や生産ラインといった物理的な資産が積み上がりますし、人材もその企業固有の環境で価値を発揮するケースが多い。結果として、人も組織に定着しやすくなります。


一方、コンサルティング業界では、優秀な人材ほど転職が容易です。実際、大手コンサルファームでは多くの社員が常に市場価値を持ち、流動性が非常に高い。そのため、待遇を良くしなければ人が流出してしまう構造になっています。

そうした背景から、当時は「コンサルティングのスキルを活かしながらも、何かしら事業として積み上がるアセットを持ちたい」と考えていました。
その一環として、SaaSの開発に取り組むなど、試行錯誤を重ねていた時期もあります。

今振り返ると、その模索の期間があったからこそ、現在のrenueの形や、「コンサルティングのあり方そのものを再定義する」という思想に行き着いたのだと思っています。

では、現在の事業モデルに振り切ることになった決定的なきっかけは何だったのでしょうか。やはりAIの登場が大きかったのでしょうか?

はい、きっかけは間違いなくAIです。
当時から、従来型のSaaSは今後、相対的に価値を失っていくだろうと感じていました。ソフトウェアそのものが差別化要因になりにくくなり、「積み上がるアセット」として成立しづらくなると考えたからです。

一方で、AIの進化を見て、「組織のあり方そのものが根本から変わる」と確信しました。
たとえば、大手コンサルティングファームには何万人もの人材がいますが、その業務の多くは、AIによって代替・拡張できるようになりつつあります。そうであれば、少数精鋭の組織であっても、AIを前提に設計すれば、従来は巨大組織でなければ提供できなかった価値を生み出せるはずだ、と考えました。

ChatGPTが登場した当初は、まだ性能面で物足りない部分もありましたが、「これは必ず来る」と直感的に分かりました。
そのタイミングで、これまでの試行錯誤に区切りをつけ、AIを軸に事業を再定義しようと、大きく舵を切りました。

結果として、「AIを前提にしたコンサルティングファーム」という現在のrenueの形に、思い切って振り切ることができたのだと思います。

現在はAIを本格的に活用されていますが、導入初期の段階では、どのような点に苦労されたのでしょうか?

一番大変だったのは、AIがまだ十分に使える段階ではなかった時期に、どう価値を生み出すかを考えることでした。
今とは違い、2〜3年前の生成AI、特にChatGPTが登場したばかりの頃は、性能も限られており、できることは決して多くありませんでした。

そのなかで、「このAIを使って、何が実務に使えるのか」「どこに組み込めば意味があるのか」を探り続ける必要がありましたし、実際に業務で使えるツールやアプリケーションを形にするまでには、かなり試行錯誤がありました。

私自身、エンジニアとして専門的に開発を行ってきたわけではありません。限られた技術的なリソースのなかで、スピード感を保ちながら、どうにか実用レベルまで引き上げていく。そのプロセス自体が、当時は大きな負荷だったと思います。

ただ、その「使えない時期から使い道を考え続けた経験」があったからこそ、今のAI活用の土台ができたとも感じています。

実際に経営者として会社を運営するなかで、「これは本当に大変だった」と感じた出来事はありますか?

経営者として一番大きなストレスは、やはり「支払う側になること」だと思います。
フリーランスとして一人で働いていた頃は、良くも悪くも気楽でしたし、最悪なんとかなるという感覚がありました。しかし、会社を経営し、毎月の固定費が数千万円規模になってくると話はまったく違ってきます。自分一人の判断では背負いきれない責任が発生し、その重さは常に意識せざるを得ません。

もう一つ、精神的に一番つらいのは「人が辞めること」です。
私は以前から、「売る人が偉い」という価値観に強い違和感を持っていて、未経験の人であっても根気と覚悟があればコンサルティングの仕事はできると信じて学歴や職歴に関係なく採用し、育ててきました。

だからこそ、時間とコストをかけて育成してきた人が、悪意があるわけではないにしても、結果として「裏切られた」と感じてしまうような辞め方をしたときは、正直つらいものがあります。
未経験者に対して、一般的には考えられないような待遇を用意し、教育にも力を入れてきたつもりだからこそ、不満だけを残して去られるとどうしても悲しさが残ります。

もっとも、こうした悩みは特別なものではなく、多くの経営者が共通して抱えるものなのだとも思っています。
責任と期待を背負う立場だからこそ感じる重さ。それが、経営という仕事なのだと、日々実感しています。

フリーランスとして働いていた頃と、経営者として会社を率いるようになってからでは仕事のやりがいに変化はありましたか? それとも、本質的には同じでしょうか?

やりがいは間違いなく変化した部分もありますし、一方で変わらず続いているものもあります。
フリーランス時代に感じていたやりがいは、今もそのまま残っています。私はコンサルティングの仕事が本当に好きなので、今でも現場に出てお客様に喜んでいただけると素直にうれしいですし、自分がつくったものが実際に使われているのを見るのは何度経験しても気持ちのいいものです。

ただ、経営者になってからは、そこに別の喜びが上乗せされました。
それは、「人が育っていく姿を見ること」です。

当社で育った人材を見て、他のプロフェッショナルファームの方から「こんな優秀な人を、どこから採用したんですか」と聞かれることがあります。その際に、「ゼロから育てました」と答えられる瞬間は、経営者として大きなやりがいを感じます。
同じように、クライアントからチームそのものを評価していただけたときも、非常にうれしいですね。

フリーランス時代のやりがいが「自分自身が評価されること」だとすれば、今は「チームが評価されること」に喜びを感じられるようになった。その変化こそが、経営者として仕事をするようになって得られた、最も大きな違いだと思います。

今後の展望についてお聞かせください

まず軸として考えているのは、「自分たち自身のDXを、徹底的に進め続けること」です。
先述の通り、私たちはまず自社の業務をAI・DXで高度に最適化することを何より重視しています。自分たちが実践できていないことを、顧客に提案するのは本質的ではありません。だからこそ、社内の業務効率化やAI活用については妥協せずに突き詰めていきたいと考えています。

その結果として、従業員一人あたりの生産性や売上高を大きく高め、待遇や働きやすさにもきちんと還元していきたいです。
「圧倒的に効率化されたコンサルティングファーム」を実現できれば、自然と良い人材が集まり、さらに組織が強くなる。そうした好循環をつくることが、まずは目指す姿です。

もう一つ、これは戦略というよりも、私自身の問題意識に近い話ですが、日本の経済構造についても強い関心を持っています。
国内でお金を奪い合うだけでは、社会全体としては豊かになりません。日本の産業を見渡すと、いま外貨を稼いでいるのは、製造業などごく一部に限られているのが現実です。だからこそ、私たちのような立場の企業も、将来的には国外に出ていくことが重要だと考えています。AIとDXを武器に、どの国でも通用するレベルで効率化され、かつ働きやすい組織をつくる。そのモデルを日本発で確立して海外でも価値提供をしていきたいです。

最後に、経営者におすすめの一冊があれば教えてください

私がおすすめしたいのは、本多 勝一さんの『日本語の作文技術』です。

経営者にとって最も重要な能力の一つは、正確にコミュニケーションを取る力だと思っています。
もし、相手を大切に思っているのにその気持ちが伝わらないのであれば、問題は気持ちではなく、表現の技術にあることが多いです。つまり、磨くべきは「作文技術」になります。

というのも、日本語を「技術」としてきちんと学んだ経験のある人は、意外と少ないのではないでしょうか。
なんとなく書ける、なんとなく読めるではなく、「どう書けば正確に伝わるのか」「どう読めば相手の意図を正しく汲み取れるのか」を体系的に学ぶことには、大きな価値があります。

この話は、AI時代とも深く関係しています。生成AIへの指示は、すべて言語で行われるにもかかわらず、「AIを学びたい」と言っていきなり高度な数学や専門的な理論に向かおうとする人が多いのですが、私はそれは順番が違うと思っています。

まず必要なのは、正しい日本語を使いこなす力です。
自分の考えを正確に言語化できなければ、AIに対しても、部下に対しても、適切な指示は出せません。そういう意味でも、この『日本語の作文技術』は、経営者やビジネスパーソンにとって、非常に実践的な一冊だと思います。

ちなみにこの本は、私自身も大学時代に先輩から勧められて読んだものですが、今になってその価値をより強く実感しています。

ぜひご一読ください。

投稿者プロフィール

『社長の履歴書』編集部
『社長の履歴書』編集部
企業の「発信したい」と読者の「知りたい」を繋ぐ記事を、ビジネス書の編集者が作成しています。

企業出版のノウハウを活かした記事制作を行うことで、社長のブランディング、企業の信頼度向上に貢献してまいります。