今回は株式会社サンマルクホールディングス 執行役員 サンマルク事業部⾧、野橋 会京氏にお話を伺ってきました。

「社長の履歴書」だけの特別なインタビューです。

ぜひご覧ください!

会社名称株式会社サンマルクホールディングス
代表者藤川 祐樹
設立創業:1989年3月 設立:1991年7月19日
主な事業フランチャイズチェーンシステムを含むレストラン及びカフェ等の事業を行う子会社の経営管理等
社員数307人[1,704 人](2025年3月末現在)(取材時)
会社所在地岡山県岡山市北区平田173番地104
会社HPhttps://www.saint-marc-hd.com/hd/

野橋部長が携わっていらっしゃる、ベーカリーレストラン サンマルクについて、事業紹介をお願いします

ベーカリーレストラン サンマルクは、1989年、岡山県岡山市に当社グループの創業店として誕生しました。

私たちの経営理念は「お客様にとって最高のひとときを創造する」ことですが、それを創業当初から実践し続け、お客様に愛されてきたのがこのレストランです。

しかし、時代が大きく変化するなかで、美味しい料理、きれいな空間、丁寧な接客といった要素は、今ではどのレストランでも当たり前になりました。もはや、それだけでは差別化にはなりません。

そのため、私たちは「最高のひとときとは何か」を常に考え、食事以外にどのような価値を提供できるのかを常に模索しています。

その一つの形として、2025年10月31日に創業地である大元店を「美術館レストラン」としてリニューアルしました。産学連携によって実現した取り組みであるだけでなく、新たな価値を創造しながら、お客様がこれまで以上に豊かな時間を過ごしていただける空間を目指しています。

この取り組みには、日常生活そのものを少しでも豊かにしたいという思いを込めていることから、今後は映像やアートに限らず、さまざまなエンターテインメントの要素を取り入れながら、より楽しんでいただける体験を提供していきたいと考えています。

https://www.saint-marc-hd.com/hd/contents/news20251030

美術館レストランの着想には野橋部長のヨーロッパでのご経験があったと伺いました。現地でのどのような体験が、空間づくりの発想につながったのでしょうか?

留学先はイギリスでしたが、ヨーロッパ各国を巡る機会がありました。ヨーロッパは日本と同じように長い歴史を持つ地域で、美術館や博物館の文化が非常に成熟しています。

印象的だったのは、そうした特別な場所だけでなく、一般の人々が暮らす日常の空間にも、当たり前のように絵画が飾られていたり、音楽の演奏が行われていたりすることでした。アートが「鑑賞するもの」にとどまらず、生活の一部として自然に楽しまれている。そのレベル感の違いに、大きな衝撃を受けました。

半年ほどの滞在でしたが、そこで目にした風景や体験は今の空間づくりや価値創造の考え方に非常に大きな影響を与えていると感じています。

美術品を展示するにあたり、どのアーティストの何の作品を展示するかは様々な選択肢もあったと思います。その中で、なぜ「産学連携」という形を選ばれたのでしょうか?

私たちが目指したい明確なゴールがあったからです。
日本では特に若い芸術家やアマチュアの表現者が卒業後、創作活動だけで生計を立てていくための支援がまだ十分とは言えません。実際、倉敷芸術科学大学ともお話しする中で、在学中は多くの才能ある学生がいても、卒業後に芸術家として活動を継続できている人は、ごく一部に限られていると伺いました。

その時、未来をつくっていく若い表現者たちを何らかの形で応援できないか。その役割を私たちのグループが担えたらという思いから産学連携を検討しました。大学側とも対話を重ねる中で、レストランという日常の場を学生の皆さんにとっての「表現の場」として活用してもらうという考え方が非常に自然に重なりましたし、双方にとって意味のある形になったのではないかと感じております。

今回は創業地である大元店からのスタートですが、今後、他の地域の店舗へ「美術館レストラン」を広げていく構想はお持ちなのでしょうか?

はい、構想は持っています。
当社は、路面店もあれば、ショッピングセンター内の店舗もあります。それぞれ立地や街の特性が異なりますので、一律の形を展開するのではなく、その街の魅力を最大限に生かしながら取り組んでいきたいと考えています。

また、油彩画など古典的なジャンルの展示だけでなく、プロジェクションマッピングなどの、現代アート、最新技術も取り入れています。プロジェクションマッピングは春・夏・秋・冬といった季節感を表現できる点が大きな特徴ですし、クリスマスやお花見など、その時々のイベントに合わせた演出も可能です。

こうした映像表現と、絵画などのアート表現を組み合わせることで、食事の時間そのものをより豊かな体験にしていきたいと考えています。今後も、各地域の特性に合わせた形で、サンマルクならではの空間づくりを広げていく予定です。

ホールディングスとしての中期的な戦略の中で、ベーカリーレストラン サンマルクを再成長させていく取り組みが示されていますよね。その一つが美術館レストランだと思いますが、ほかにも今後注力していく予定のものはありますか?

大きな方向性としては、これまであまり取り組めてこなかったBtoB領域での戦略を強化していきたいと考えています。

BtoBといっても、最終的にはその先にお客様がいらっしゃいますので厳密にはBtoBtoCとなります。協業を通じて新しい体験やサービスを生み出し、それが最終的にサンマルクをご利用いただくお客様の満足度向上につながる循環をつくれるような取り組みを、今後は進めていきたいと考えています。

また、私たちが重視しているのは、単に話題性のある企画を打ち出すことではなく、お客様の日常生活をいかに豊かにできるかという視点です。そのために、どのようなコラボレーションがふさわしいのか、どのような体験を提供すべきなのかを丁寧に考えながら展開していきたいと考えています。

あくまで軸にあるのは、「食」と「空間」を通じて、より良い時間を過ごしていただくこと。その価値を高める手段として、コラボレーションをどう生かすかを検討していく、というスタンスです。

また、私たちが目指しているのは特定の層に限定した取り組みではありません。

年齢やライフスタイルを問わず、日常の中でふと立ち寄り、食事とともに新しい刺激や発見を得られる。そうした体験を提供できるレストランとして邁進してまいります。

ここからは野橋部長ご自身の歩みについてお聞かせください。幼少期から学生時代にかけて、特に「熱中していた」「一生懸命取り組んでいた」と感じる経験には、どのようなものがありますか?

私は幼い頃から経営者である父の姿を見て育ちました。その影響もあってか、将来は自分も経営に関わる仕事をしたい、という思いが自然と芽生えたように思います。

学生時代を振り返ると、特に印象に残っているのは大学時代に経験した飲食店でのアルバイトです。大手飲食チェーンのレストランで4年間同じ店舗で働き続けました。お客様と直接向き合い、接客を通じて笑顔を見られること、そして「満足した」と感じていただける瞬間に立ち会えることが、何より嬉しかったのを覚えています。

飲食店はBtoCのビジネスですので、お客様の反応がダイレクトに返ってきます。その喜びを日々実感できたことが学生生活そのものを豊かなものにしてくれましたし、今の仕事観や価値観にも大きな影響を与えている原体験だと感じています。

先ほどお話に出たイギリス留学は、どのタイミングでご経験されたのでしょうか?

イギリス留学は、社会に出てからのタイミングです。大学卒業後、私は飲食業界や小売、食品関連企業を中心に事業再生コンサルティングに携わってきましたが、結婚後、夫と一緒に留学することを決め、イギリスへ渡りました。

現地にはすでに起業している知人も何人かおり、そうしたつながりも後押しとなりました。語学を学びながら、ヨーロッパのマーケットを実際に見てみたいという思いが強かったですね。

また、ヨーロッパの歴史に興味があったので、机上の知識ではなく実際の空気感の中で体感したいと考えていました。そうした複数の理由が重なり、イギリスへの留学を決めました。

ヨーロッパには美術や飲食をはじめ、さまざまな文化や産業の源流がありますが、現地では特にどの分野に関心を持たれていたのでしょうか?

もともとレストランや飲食ビジネスへの関心が強かったこともあり、ヨーロッパ滞在中は現地の飲食文化を自分の目で見てみたいという思いがありました。

実際に訪れたレストランの中でも、特に印象に残っているのがイタリアやフランスの店です。お城のような歴史ある空間に、絵画がごく自然に飾られていたり、食事の最中に演奏が始まったりする。そうした光景が、決して特別な演出ではなく、日常の一部として存在していました。それらのお店には、ただ食事や飲み物を楽しむだけではなく、そこに身を置くことで心が豊かになり、「またここを訪れたい」と思わせる力があり、その空間が持つ価値の大きさに強く心を動かされました。今でもあのときに感じた体験を、日本でもお客様に提供できたら、という思いは常にあります。

日本の飲食業界は競争が非常に激しく、開業から数年で撤退を余儀なくされるケースも少なくありません。一方で、ヨーロッパの飲食店には長く続く店も多い印象があります。現地でご覧になった中で、日本とは異なる考え方や環境の違いを感じた点はありましたか?

私自身の経験は決して長期間ではありませんが、その中でも強く感じたのは、「求められているものを、きちんと提供している」という点です。

例えばイギリスは、天候に恵まれない日が多い国です。それでも、晴れ間がのぞいた瞬間には、人々が自然と外に出て、カフェやレストランで時間を楽しむ文化があります。そうした行動を前提に、店側も環境づくりや空間演出をしっかりと考えている姿勢がとても印象的でした。

つまり、時代や土地の特性に合ったものを、環境とセットで提供しているということです。それが長くお客様に愛され続ける理由なのだと感じました。基本的なことである料理の質やサービスの水準は当然のこととしてきちんと押さえた上で、その先の価値をどう届けるかを考えているのだと思います。

少し話はそれますが、私が好きな考え方の一つに「戦わずして勝つ」という言葉があります。競争に正面から挑むのではなく、最初から勝てる戦略を描く。その発想は、飲食業にも通じるものがあると感じています。

ヨーロッパで長く続いているレストランを見ていると、歴史を大切にしながらも、時代に合わせた演出やコミュニケーションを欠かしていません。お客様が楽しめる演奏やイベントを取り入れるなど、常に工夫がなされています。

私は、食はエンターテインメントだと考えています。ただお腹を満たすだけではなく、心が豊かになり、「また来たい」と思っていただける体験を提供すること。その価値を、これからも大切にしていきたいと思っています。

少し話を戻しますが、飲食や小売分野の事業再生コンサルタントという道を選ばれた背景には、どのような理由があったのでしょうか?

一番大きなきっかけは、大学時代に飲食店で4年間アルバイトをした経験です。
お客様の笑顔を目の前で見ることができ、自分たちが提供した商品やサービスによって喜んでいただけること。その結果として、また来店してくださったり、顔や名前を覚えていただける。そうした関係性が生まれることに大きな喜びを感じていました。

この体験は、いわゆるBtoBのビジネスとはまったく異なるもので、BtoCならではの魅力を強く実感した原体験だったと思います。そこから、飲食や食品、小売といった、人と直接関わる産業に携わりたいと考えるようになりました。

その後、コンサルタントとしてカフェやレストランを立ち上げる経験をし、現場と経営の両方を知る中で事業再生という形で業界に関わっていく道を選びました。そうした一連の経験が、今につながっていると感じています。

雇われる立場で働くのと、自ら事業を立ち上げるのとでは大きな違いがあると思います。初めてご自身でカフェをオープンされた際、「この経験をしておいて良かった」「乗り越えて良かった」と感じたことは、どのような点でしょうか?

一番大きかったのは、「人の成長」と向き合えたことです。
これは今でも自信を持って言えることですが、人に上下はありません。組織には役割の違いはありますが、人そのものに優劣があるわけではないのです。では何が重要かというと、それぞれの役割をどう全うできる環境をつくるかだと思っています。

実際に自分で組織を立ち上げて、一番苦労したのも「人」の部分でした。飲食業界は人の入れ替わりが激しく、今日働いてくれていたアルバイトの方が翌日突然来られなくなることも珍しくありません。そうした中で、いかに人を中心に考えた組織づくりができるかが問われました。

人は十人十色です。それぞれに合わせた関わり方や評価の仕組み、成長の道筋を用意しなければ組織は成長しませんし、ビジネスも続きません。結果として、お客様に喜んでいただくこともできないと痛感しました。

だからこそ、人の成長を軸に据えた経営を徹底することが重要だと学びました。社員一人ひとりが自分の成長を実感できる環境をつくることが組織全体の成長につながり、それが最終的にはお客様への価値提供にも必ず返ってくるという考え方は、当時から変わらないものですし、今の経営においても最も大切にしている軸です。

その後はどのような企業で経験をつまれたのでしょうか?

大手の外資系飲食チェーンで経営に携わっていました。

外資系企業では、200店舗、300店舗といった規模の組織運営に携わる機会がありました。業態や中身は異なりますが、非常に大規模な組織をどうマネジメントするかという経験は、今でも大きく活きています。

特に印象に残っているのは、フランチャイズとの関係構築やコラボレーションの考え方です。多様なパートナーと連携しながら、全体最適をどう実現するかという視点は現在の事業運営においても非常に役立っています。

また、事業を拡大していくための成長戦略についても多くの学びがありました。当社でも現在複数の店舗を展開していますが、今後さらに事業を広げていく上で、スケールさせるための考え方や判断軸は外資系企業での経験が基盤になっていると感じています。

どのような経緯でサンマルクに携わることになったのでしょうか?

2024年の年末頃にお声がけをいただき、2025年3月21日に現職に就任しました。

私自身若い頃からサンマルクを利用してきた世代でもあり、個人的にも思い入れのあるブランドでしたが、お話を伺う中で「事業再生」というテーマが非常に大きなポイントになりました。創業店としての歴史や強みがある一方で、時代の変化に対する成長戦略が十分に追いついていない部分もある。そこに、これまでの自分の経験を生かせる余地があると感じました。

単に競争に打ち勝つのではなく、時代に合った戦略を描くことで、無理に戦わずとも選ばれる組織をつくる。その上で、お客様に新しい価値を提供し続け、長く愛されるレストランであり続けるにはどうすればいいのか。その問いに向き合える環境だと感じたことが、大きな決め手でした。

何より心を動かされたのが、「お客様にとって最高のひとときを創造する」という経営理念です。この考え方は、私自身がこれまで大切にしてきた価値観とも重なります。この理念を自らの手で実現していきたいという思いから、サンマルクに参画することを決めました。

いち消費者として見ていたサンマルクと、実際に入社して内側から見たサンマルクとでは、印象の違いもあったのではないでしょうか?

入社して特に印象的だったのは、組織や社員の皆さんの真面目さです。本当に驚いたのですが、一つひとつの取り組みに対して非常に真剣で、集中力高く向き合っている姿勢が強く印象に残っています。

また、新しい取り組みに対する姿勢も想像以上でした。正直なところ、当初は変化に対して多少の抵抗があるのではないかと感じていた部分もありましたが、実際にはそうした拒否反応はほとんどありませんでした。むしろ「学びたい」「一緒にやっていこう」という前向きな空気があり、とてもありがたく感じています。

そして、その姿勢には、私自身が学ばせてもらうことも多くありました。これまで培ってきた経験を一方的に持ち込むのではなく、組織で学びながら、一緒につくっていく。その大切さを改めて実感したのが、入社後の率直な感想です。

社員の皆さんの姿勢について、特に「学びになった」と感じた点を具体的に教えてください

印象的なのは、新しいタスクをお願いしたときの反応です。
「できません」「経験がないので難しいです」といった言葉が先に立つのではなく、「まずはやってみます」と前向きに受け止めてくれる。その姿勢に、何度も助けられてきました。

経験の有無ではなく、挑戦そのものを楽しもうとする空気が組織の中にあると感じています。私自身も前向きなタイプではありますが、それ以上に、社員の皆さんが新しいことをポジティブに捉えてくれる点には非常に学ぶところが多いですね。

そうした姿勢があるからこそ新しい取り組みにもスピード感を持って挑戦できますし、これは当社の大きな強みの一つだと感じています。

事業を運営するなかで、予想外だったことや「これは大変だった」と感じた経験はありましたか?

正直に言うと、私はあまり「苦労している」と感じることがありません。これは決して楽観的というわけではなく、本質的な物事の捉え方による部分が大きいと思っています。

幼い頃から父に教えられてきた考えがあります。

成功する人には三種類いる。一つ目は天才。二つ目は努力する人。そして、その二つよりも強いのが「楽しむ人」だと。

何事も自ら楽しもうとする人は結果的に成功するし、後悔の少ない人生を送れるのだと教わりました。

私はその考え方をこれまでずっと実践してきた感覚があります。困難な状況に直面しても、それを苦労と捉えるのではなく、「これは自分の成長に必要な経験だ」と受け止めてきました。そう考えると自然と前向きになれますし、楽しむ余地も見えてきます。

だからこそ、これまでのキャリアの中で何かを「大変だった」「辛かった」と振り返ることはあまりありません。むしろ、どう楽しむかを考えながら向き合ってきたという感覚のほうが近いですね。
今後も、自分自身が楽しむだけでなく、一緒に働く仲間も前向きに、楽しみながら挑戦できるような組織をつくっていきたいと考えています。

高い壁に直面したとき、どのような思考で向き合われているのでしょうか。逆算して考えるタイプなのか、それともまず挑戦してみるタイプなのか、野橋部長の取り組み方を教えてください

これも幼い頃から親に教えてもらった考え方の一つなのですが、「人には自分で乗り越えられない壁は与えられない。君だからこそ越えられる壁が目の前に現れるんだ」という言葉を意識しています。

これまでの人生を振り返ってみても、本当にその通りだと感じています。壁に直面したときは確かに大変ですが、向き合い、乗り越えてみると「ああ、やはり越えられる壁だったな」と思えることばかりでした。最初から絶対に不可能なタスクが与えられることはないのだと思っています。

例えば、生きていていきなり国家のトップを任されるようなことはありませんよね。それは明らかに、自分の立場や経験を超えています。

だからこそ、思考のスタートはとてもシンプルです。「これは自分に与えられた乗り越えられる課題なのだから、まずやってみよう」と思いますし、細かく逆算する前に、一度受け止めて挑戦してみることを大切にしています。また、山あり谷ありの過程そのものを楽しみながら、結果的に道を見つけていくようにしています。

長年飲食業界で経営に携わってこられましたが、上に立つ立場として特に心がけているマイルールや大切にしている考え方は何でしょうか?

私が常に意識しているのは、「十人十色」という考え方です。社員一人ひとりも違えば、お客様も、取引先の方々も、それぞれ価値観や状況が異なります。その違いを前提に、どう向き合うかを考えることが何より大切だと思っています。

もちろん、組織としてのルールやマニュアルは欠かせません。ただし、それだけでは対応しきれない場面が飲食の現場には数多くあります。特にお客様にとっての「最高のひととき」は一人ひとり違うので、状況に応じて相手に合わせた、柔軟な対応が求められるのだと思います。

そして、店舗の皆さんはそれを体現してくださっています。

日々イレギュラーな対応を迫られる場面に数多く直面している中で、都度お客様の立場に立って最善を考え、行動してくれている姿勢には、本当に頭が下がる思いです。

こうした柔軟さがなければ、特に当社のような業態はお客様に長く愛される存在にはなれないと思っています。一人ひとりに向き合い、その人に合ったサービスを提供できること。それこそが、私たちの大きな強みだと考えています。

お客様への対応については、働く方々それぞれの判断なのでしょうか? それとも、マニュアルに沿った対応を徹底されているのでしょうか?

基本となるマニュアルはもちろん用意しています。ただし、飲食の現場ではお客様対応の経験が積み重なることで、マニュアルはどうしても増えていく傾向があります。一方で、あまりにも細かく定めすぎると、現場での柔軟な対応が難しくなってしまいます。先ほどお話ししたように、「人に合わせた対応」を大切にするサンマルクにとって、マニュアルが行動を縛ってしまう状態は避けなければなりません。

そのため、細部まですべてを規定するのではなく、一定の方向性や考え方の“ヒント”を示す形を基本としています。イレギュラーな対応については、「こういうケースがあった」「この対応が良かった」といった事例をグループ内で常に共有しています。

いわゆるベストプラクティスを全体で共有しながら、「このやり方は自分たちの店舗でも試せそうだ」とそれぞれが考え、工夫できる環境をつくることを重視しています。


また、グループ内の他ブランドのトップとも意見交換をする機会が多く、空間づくりや清潔感、接客のあり方など、「最高のひととき」をどう実現するかを議論する時間は私自身にとっても非常に刺激的です。

マニュアルで統一する部分と、現場に委ねる部分。そのバランスを取りながら、サンマルクらしいサービスを磨き続けていきたいと考えています。

今後の展望について教えてください

まずは、ベーカリーレストラン サンマルクの成長をしっかりと描いていきたいと考えています。路面店だけでなく、ショッピングセンター内の店舗も含め、それぞれの立地特性を生かしながら、時代に合った差別化を進めていきます。

また、「美術館レストラン」など実験的な取り組みを行う店舗についても、闇雲に挑戦するのではなく、最初から勝てる可能性を高めた戦略を描いた上で展開していきます。市場やお客様にしっかりと価値が根づく形で、マーケットシェアを広げていくことを目指しています。

長く愛され続けるブランドであるために、変えるべきところは大胆に変え、守るべき価値は大切にしながらこれからのサンマルクをつくっていきたいと考えています。

産学連携に関しても、作品展示にとどまらず、大学と連携したオークションの開催や、教員・学生を招いたトークイベント、さらには学生が考案した料理を実際のメニューとして提供するなど、表現の場をさらに広げていく構想を持っています。
こうした取り組みは、学生にとって単に作品を展示する場ではなく、評価され、対価を得る可能性を持つ場にもなります。表現者として自立していくための一つのきっかけを、レストランという日常空間の中で提供していきたいです。

この美術館レストランの取り組みは、サンマルクのブランド価値向上だけでなく、大学や学生にとっての成長機会、そしてお客様にとっての新しい体験価値という、「三方良し」を生み出すものです。
食事を楽しむ場でありながら、若い表現者の未来を支え、地域に新たな文化の循環を生み出す。ベーカリーレストラン サンマルクはそうした共創の場としてのレストランの可能性を追求していきたいと考えています。

今後も経営理念である「お客様にとって最高のひとときを創造する」に基づいた長期的な視点をずらさずに、お客様に愛されるレストランを目指していきます。

最後に、他の経営者におすすめの本のご紹介をお願いいたします

『孫子の兵法』をおすすめします。

経営に迷いが生じたときや、判断に悩んだときに原点に立ち返らせてくれる一冊です。

この本は、組織をどうつくるべきか、成長戦略をどう描くべきか、「どのように戦うのか」ではなく「そもそも戦わずして勝つためには何が必要なのか」といった本質的な問いを何度も考えさせてくれます。

初めて読んだのは高校生の頃です。父に勧められ、純粋に歴史書として読んでいました。

そして、経営にも通じる内容だと実感したのは、カフェレストランを立ち上げた頃です。

事業再生のコンサルタントをしていた頃、相談に来られる経営者の多くはすでに何かしらの課題や行き詰まりを抱えていました。「事業がうまくいかない」「どう立て直せばいいのか」といった悩みを抱えた状態で来られるケースがほとんどでしたが、本来は問題が起きてから対処するのではなく、最初から一緒に成長戦略を描いていくほうが圧倒的に合理的ですし、結果的にコストもかかりません。その考え方と、「戦う前に勝てる状況をつくる」という『孫子の兵法』の教えが強く結びつきました。

戦ってから勝ちにいくのではなく、最初から勝てる前提を整える。その入り口の設計が違うだけで、事業の進み方や結果は大きく変わってきます。そのことを、自分で事業を立ち上げた経験を通して、腹落ちしたのが、まさにその頃でした。

時代や業界を超えて通用する考え方が詰まっているので、ぜひご一読ください。

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『社長の履歴書』編集部
『社長の履歴書』編集部
企業の「発信したい」と読者の「知りたい」を繋ぐ記事を、ビジネス書の編集者が作成しています。

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