
今回は株式会社ジェブ代表、太田猛也氏にお話を伺ってきました。
「社長の履歴書」だけの特別なインタビューです。
ぜひご覧ください!
| 会社名称 | 株式会社ジェブ |
| 代表者 | 太田猛也 |
| 設立 | 2002年4月18日 (創業29[祥前1] [ジ株2] 年) |
| 主な事業 | フロアコーティング『EPCOAT』販売施工 各種コーティング販売施工 メンテナンス商品の販売 不動産会社情報ポータルサイト『マイスマ』運営管理 |
| 社員数 | 90名(うちパート8名)(取材時) |
| 会社所在地 | 〒224-0037 神奈川県横浜市都筑区茅ヶ崎南4-1-10 |
| 会社HP | https://jeb-co.jp |
事業紹介をお願いします
当社は 2002 年設立、横浜市に本社を置く住宅サービス企業です。主力事業であるフロアコーティング『EPCOAT(イーピーコート)』の販売施工に加え、メンテナンス商品や各種コーティングの提供も行っています。不動産会社情報ポータルサイト『マイスマ』の運営や、全国6ヶ所に展開するショールームを通じたサービス提供も特徴です。近年では、ドローンを活用した外壁点検や剥落防止コーティングなどの新規事業にも注力し、インフラ老朽化といった社会課題への対応を進めています。
記事内でPRすることはありますでしょうか?
2025 年 6 月 24 日(火)、高精度ドローン診断と外壁タイルの剥落防止コーティングを組み合わせた新たな外壁保全サービス『剥落防止くん』の提供を開始いたしました。 本サービスは、外壁タイルの“浮き”を検知する赤外線ドローン調査と、タイルの剥落防止コーティングをパッケージ化したもので、調査から施工・保証までを一貫して提供します。コーティングの施工を前提としてドローン調査は無料にてご提供し、導入しやすいパッケージを実現しています。「外壁タイルの落下から命を守る」という社会的使命を掲げ、私たちは本サービスを通じて建物保全の新たなスタンダードを提案してまいります。
「剥落防止くん」をスタートしたきっかけは何だったのでしょうか?
きっかけは、私自身が21歳の頃から約29年間にわたりコーティングの販売に携わり、住宅向けのコーティングでは業界内で圧倒的なナンバーワンになったことにあります。
以前から、「この経験や技術を活かして、何か社会課題の解決につながる新しい事業ができないか」という思いを持っていましたが、そんな折、趣味でよく訪れていた山中湖で、偶然の出会いがありました。
ジェットボードのプロモーション撮影を行っていた日本有数のドローンレースチームと知り合う機会があったのです。操縦技術があまりに見事だったため、マリーナのオーナーさんを通じて紹介していただき、話をするうちに、初めて知った事実がありました。
それは、2022年6月にドローンが国家資格化され、外壁点検においてもドローンによる検査が法律上認められるようになったということです。従来は、建築基準法12条に基づく「打診検査(外壁を叩き、音で異常を確認する方法)」しか認められていませんでしたが、法改正によってドローンという新しい選択肢が生まれたにもかかわらず、その事実を業界内でもほとんど知られていない状況でした。「これは大きな事業機会になる」と直感し、すぐにドローンチームにコンサルティングで入ってもらい、社内から6名を国家資格取得へ送り出すところから事業をスタートしました。調査市場そのものも、年平均成長率(CAGR)20%超という非常に高い伸びが予測されており、AIなどの成長産業を含めても、ドローン分野の成長率は突出しています。参入時期としては間違いなく好機だと判断しました。ただし、外壁調査だけで終わるのでは、本当の意味での課題解決にはなりません。
「落ちそうな場所があります」という報告だけでは不十分で、「では、落ちないようにどう対策するか」まで提案できる会社であるべきだと考えました。そこで、15~16年前から当社主力製品「EPCOAT」の原料を卸していただいているメーカーの社長に相談したところ、外壁剥落を防止する特殊コーティングを開発しているメーカーを紹介していただきました。
こうして、ドローンによる外壁点検と剥落防止コーティングの2つがつながり、新たな外壁事業が立ち上がった、という流れです。
2025年6月24日から新事業をスタートされていますが、約半年が経過した現在、お客様からの反応はいかがでしょうか?
おかげさまで、問い合わせは徐々に増えており、見積依頼も順次いただいている状況です。ただし外壁コーティングは高額な施工になるため、検討期間がどうしても長くなります。また施工時期が明確に決まっているわけではないため、問い合わせから受注・施工に至るまでのプロセスがまだ読みきれない部分もあります。
とはいえ、すでに九州のクリニックで1件施工が完了し、実績ができたことは大きな前進だと感じています。
今後の展望としては、まずは「外壁剥落防止」という概念そのものを知っていただくことが重要だと考えています。まだ認知が低く、そもそも選択肢として知られていないケースが多いため、啓発活動を強化していく予定です。
高額である点以外で、お客様が検討時に悩まれるポイントはどこでしょうか?
価格以外の最大のネックは、「正しい情報が一般にほとんど知られていない」という点だと思います。外壁タイルの剥落に関する知識や、そもそもの発生メカニズムをオーナー様が理解しにくいことが、意思決定の遅れにつながっています。
先日、私たちが加盟している工業会で、外壁剥落を40年間研究してきた大学教授の講演があったのですが、その中で非常に印象的だった話があります。
それは、「外壁タイルは “対症療法では意味がない”。1ヶ所に浮きが出たということは、同じ条件で施工された他の部分も、時間差で必ず浮いてくる」というものです。
実際、10年間で十数ヶ所の剥落が発生し、最終的には部分補修を繰り返しても収まらず、「全タイル撤去→塗装」という大規模工事に至った建物の事例も紹介されていました。
■ なぜ剥落がここまで増えたのか ― 1990年代以降の構造的な問題
教授によれば、剥落事故が増え始めたのは1990年代以降だそうです。その理由は、建築現場で使用される型枠の材質の変化にあります。
従来:ベニヤ板を型枠として使用。表面がざらざらしており、タイルを貼るモルタルがしっかり食いつく(落ちにくい)
1990年代以降:何度も使い回せる剥がれやすいコーティング加工された型枠が登場。表面が非常にツルツルなため、モルタルが密着しにくく、施工直後から剥落リスクを抱えた状態になる
本来は「足付け」と呼ばれる表面処理(研磨)をしてから貼らなくてはいけないのですが、建築単価の高騰、親会社からの厳しいコスト要求、現場のタイムプレッシャーなどの理由で、この工程が省略されるケースが多く、結果として、早いものでは築4年で剥落するという事例も発生しています。
しかし、オーナー様にとっては、建物は「完成品」として引き渡されるため、どのような型枠が使われたか、足付け工程が行われたかは知る術がありません。そのため、剥落リスクを過小評価してしまい、「まだ大丈夫なんじゃないか」と判断してしまうことが多いのです。
実は、剥落事故は過去に重大な事件を引き起こしています。
1989年、北九州でタイルが歩行者3名の頭上に落下し、2名が即死、1名が重傷という痛ましい事故が起こりました。
そこから法整備が進み、建築基準法第12条の定期報告違反は、是正命令や罰則の対象になっています。
つまりオーナーには、「知らなかった」では済まされない法的責任があるにもかかわらず、そのリスクの認知が社会的に不足しているのです。
剥落防止コーティングの最大の価値は、事故が起こる前に建物を守る“予防医療的なソリューション”であることです。
しかし、剥落の構造的な背景、法的リスク、予防の重要性がまだまだ伝わっておらず、ここが検討のハードルになっています。
業界内でも知らない方が多いというのは驚きました
実際、業界内でも深く勉強している人は多くありません。私自身もかなり調べてようやく理解にたどり着いた領域です。
先ほどの大学の教授も話していましたが、この問題は “知る人ぞ知る” タイプの情報で、外壁剥落の最も危険なポイントも正しく理解している人はごく一部なのが現状です。
しかし、このジャンルは非常に繊細で、メディアが積極的に扱いづらい領域でもあります。「タイルが落ちる」「危険がある」といった表現は、恐怖を煽る印象を与えるため、表現基準が厳しく、メディア側も慎重にならざるを得ません。
そのため、伝えるべきリスクなのに、正確に伝わっていないというジレンマがあるのです。
だからこそ、まずは一般のオーナー様が “問題の存在を知る” きっかけづくりが極めて重要だと考えています。
啓蒙をする上で、どのような点を重視しているのでしょうか?
啓蒙において最も重要なポイントは、「なぜ今、外壁剥落防止コーティングが必要なのか」を、正確かつ簡潔に伝えることだと考えています。
特に、外壁タイルの見た目を変えずに剥落を防止できる透明塗膜は、これまで世の中に存在しませんでした。現在当社が扱う製品は、その技術的ブレークスルーによって生まれた、非常に新しいソリューションです。
■1.技術の背景:土木で使われてきた「ポリウレア樹脂」を建築向けに転用
もともと高速道路などのコンクリート剥落を防ぐために使用されてきたポリウレア樹脂という特殊塗料があります。
この技術は土木領域では信頼性が高く、首都高などでも採用されています。
ただし、色がコンクリート色(灰色)のため意匠性が求められる建築外壁(タイル等)には適さない、という課題がありました。
そこでメーカーが「透明化」「一液性化(混ぜずに使える)」を開発し、2022年に建築向けの透明塗膜として商品化されたのが、今回の剥落防止コーティングです。
■2.従来技術より “強く・早く・安く” 施工できる
既存の剥落防止材では、下塗り+4回塗り(計5工程)が必要なものが多く、手間もコストも大きくなりがちでした。
一方で当社が扱う商品は、下塗り1回+上塗り2回(計3工程)で強度を担保できるため、施工性が高く、費用も抑えやすいというメリットがあります。
また、40年相当の劣化状態でも1㎡あたり3.3t の押抜き試験に耐える強靭な塗膜性能を実証しています。
■3.最大のネックは「比較対象が部分補修であること」
啓蒙上のハードルは、技術ではなく比較対象にあります。多くのオーナー様はまず、「アンカーピンニング工法」という“部分補修”の見積もりを受け取っています。部分補修は金額が安く見えるため、全面剥落防止コーティングと比較するとどうしても価格差が大きく見えてしまうのです。
しかし、外壁タイルは一部が浮いているということは、同じ施工条件のタイルが “時間差で次々に剥がれる可能性が高い” という特性があります。専門家はこれを「転移する」と表現します。そのため、部分補修だけでは根本解決にならず、対症療法ではなく根治療法としての全面コーティングを提案する必要があります。
ただし、この根本原因や落下メカニズムを理解してもらうには一定の説明が必要で、ここが啓蒙の難しさにもつながっています。
これらを正しく理解していただくことが、啓蒙の第一歩だと考えています。


タイルは「そう簡単には落ちない」という認識が一般的ですが、実際にはどうなのでしょうか?
おっしゃるとおり、多くの方が “タイルはそう簡単には落ちないもの” と認識されています。
しかし、意識して街を歩いてみると、実はあちこちに補修の痕跡があることに気づくはずです。
タイルが一度剥がれ落ちて貼り直されると、どうしても“元のタイルと色が微妙に違う” ため、色がズレている部分が目立ちます。
実際、そのような補修跡は驚くほど多く、「気づかないだけでタイルは頻繁に落ちている」というのが実情です。
しかも、落下したタイルそのものはオーナーがすぐ回収してしまうため、歩行者の目に触れないことも多い。つまり、危険が表面化していないだけで、決して珍しい事象ではないのです。
タイルの剥落防止についてご興味を持たれた方は、ぜひ下記サイトをご覧ください。
剥落防止くん サービスサイト:https://epmcoat.jp/eptcoat/
剥落防止くん note:https://note.com/eptcoat
ここからは太田社長のことをお聞かせください。当時を振り返って、どのような子ども・学生だったと感じますか?
かなり変わった子どもだったと思います。納得できないことがあると、徹底して理由を問い、主張し続けるタイプでした。
私が育った地域には、戦後の名残のような厳しい校則が残っていて、男子は中学生まで全員丸坊主。女子も三つ編みか、おかっぱ以外は認められない。今の時代では信じられないようなルールが多々ありました。
そんな中で私はことあるごとに校則へ噛みついていました。「なぜ今の時代に坊主が必須なのか」「戦後の名残をなぜ守り続ける必要があるのか」と、ずっと異議を唱えていました。抗議すると「嫌なら切らなくてもいい地域に引っ越せ」「転校すればいいだろ、ルールなんだから」と突き返されるような環境でもめげずに「おかしい」と声を上げ続けていましたね。
16歳で自立を決意し、18歳で建設業界の職人として独立を目指されたとのことですが、なぜ建設業界を選ばれたのでしょうか?
正直に言えば、当時の自分に“選択肢”はほとんどありませんでした。高校を中退して働ける場所となると、スポーツ用品店の荷出しや運送系の現場など、日雇いや短期の仕事ばかり。今でいう派遣社員のような形で、さまざまな現場を転々とする生活でした。
どの現場も最長で1週間ほど。同じ仕事が続かないため、「何でも経験するけれど、何ひとつ“職人”として身につかない」という焦りが常にありました。
ただ、この時期に経験したことは、今となっては大きな財産です。
例えば“型枠”を知らない人は多いですが、私は実際に型枠の設置も解体もやりましたし、コンクリート打設も経験している。建築の構造を理解しているのは、この頃の現場経験があるからです。
とはいえ当時の私は、「一つの仕事に腰を据えたい。技術を身につけたい」と強く思うようになりました。そこで、所属していた会社の社長に相談したところ、「原子力発電所の建設工事なら、3年は同じ現場で働けるぞ」と言われ、新潟・柏崎刈羽原子力発電所(6・7号機)の建設現場に入ることになりました。
当時はまだ稼働前で管理区域もなく、建設工事のため、ありとあらゆる場所に立ち入ることができました。3年間同じ現場にいたおかげで、原発の構造や仕組みを深く理解でき、技術的にも精神的にも大きく鍛えられました。
ただ建設現場は今では考えられないほど荒い環境でした。当時の現場は、パワハラとも言えないようなパワハラが当たり前で、今の時代であれば訴えれば全員捕まるんじゃないかと思うほどの環境でしたが、その厳しさの中で働いた経験は、今思えば貴重な鍛錬の時間でした。
原子力発電所での建設現場を経て、訪問販売業界に転身されたとのことですが、その決断に至ったきっかけを教えてください
きっかけを一言でいえば、「稼がなければならなかった」こと、そして「独立したい」という当時の私の夢を最短で実現できるのが建設業だと考えていたからです。
原発の現場で3年間働き、ようやく親方として独立できるというところまで来ていました。「最後の現場が終われば若い職人を連れてこい、仕事は出す」と言われていましたが、その直前で精神的にも肉体的にも限界を迎えてしまいました。
現場には、今では到底許されないような過酷な環境が残っており、日常的に強い圧力や暴力を伴う指導がありました。最後の仕上げの現場では、それが極端な形で続き、最終的に私は“命を守るために逃げる”という選択をせざるを得ませんでした。
逃げた瞬間、3年間積み重ねてきたものがすべてゼロになります。元の現場には戻れないし、独立の道も閉ざされるという喪失感は大きく、半年ほどはほぼ塞ぎ込むような状態になりました。同級生の多くは大学に進み、会社員として働いている一方で、私は高校を辞めて、「早く技術を身につけ独立する」というただ一つの目標に向かって生きてきた。その目標が突然消えたわけですから、正直、自分の存在がどこにもないように感じました。
ただ、時間とともに「このままではいけない」と思えるようになり、再び仕事を探し始めました。しかし、中卒で建設業以外の経験がほぼない自分を受け入れてくれる職種は非常に限られていました。
そんな中で唯一、「学歴不問・稼げる」と書いてあったのが、訪問販売の世界でした。
今振り返れば、他に選択肢があったわけではありません。建設業界以外で、中卒でも採用してくれる、そして頑張った分だけ評価される可能性があるその数少ない道が訪問販売だった、というのが正直なところです。
当時は何を販売されていたのでしょうか?
最初に扱っていたのは、換気扇用のフィルターでした。
営業は自分に合っていたようで、その会社に入社してわずか4日で車両長に抜擢され、さらに2ヶ月後には関東エリアで売上1位を獲得しました。自分でも驚くほど成果が出ましたが、その要因の一つは“訛り”だったと思っています。地方出身で訛りが強かったこともあり、訪問先ではよく「アンタ、どっから来たんだい?」と声をかけられ、自然と距離が縮まることが多くありました。
特に都営住宅などでは、おばあちゃんたちのお茶飲み相手のような時間になることも多く、雑談しているうちに「じゃあ買ってやるよ」と言ってくださる。商品以上に、人として受け入れてもらえることが売上に結びついたのだと思います。
そこから独立へと進まれ、2002年4月にジェブを創業されていますがどのような経緯で現在の事業の形に至ったのでしょうか?
訪問販売で成果を上げていく中で、「自分の力で事業をつくりたい」という思いが再び強くなり、独立への道を意識し始めました。
当初は訪問販売の延長線上で商品を扱うところから始めましたが、私自身がコーティングという技術の可能性に魅力を感じ、21歳から携わり続けてきた“住宅向けコーティング”に事業領域を絞っていきました。
ジェブを創業した2002年当時、住宅コーティングはまだ一般的なサービスではなく、市場そのものが未成熟でした。しかし、長く続く住宅需要を背景に「必ず伸びる領域だ」という確信があり、地道に販売・施工実績を積み重ねていきました。
その結果、現在では住宅向けコーティングの分野で国内トップクラスのシェアを持つまでに成長しました。
そしてその圧倒的な実績が、今回の外壁向けソリューション「剥落防止くん」へとつながっています。
起業のきっかけを教えてください
1997年に創業し、2002年に法人化しました。
当時の事業の中には、すでに「コーティング」というメニューが存在していました。ただし今のような高耐久ガラスコーティングではなく、いわば“ワックスがけ”をコーティングと呼んでいた時代です。
もともと住宅向けのソリューションとしては、大手D社が提供しているようなサービスと近いラインナップを揃えていました。例えば換気扇フィルターも、D社では4週間ごとのレンタル方式で提供されています。1枚750円、年13回交換(※1ヶ月ではなく「4週=52週÷4=年13回」である点がポイント)となるため、年間のランニングコストは想像以上に高くつきます。
一方、私たちは「自分で交換する」方式を提案し、1枚450円、2枚で900円と低コストで提供していました。月1回交換してもD社の半額程度で済み、長期的に見れば大きく経済的なメリットがあるという訴求です。
また、床掃除に使うモップについても同様です。D社のモップは吸着剤が付いているため、使い続けると汚れがミルフィーユ状に蓄積し、最終的には専門の洗浄が必要になります。そこで当社では「まずコーティングで床を整え、その後はクイックルワイパーで簡単に掃除する」という提案をしていました。
当時は、現在当社が扱うような無機質ガラス系の高耐久コーティングは存在しておらず、表現方法も商品の位置付けも現在とは大きく異なります。
しかし、「住宅のメンテナンスをもっと簡単にし、長持ちさせる」という発想は、この初期事業の延長線上にあり、現在の事業の原型でもありました。
経営者として歩んでこられた中で、「これは想定外だった」「大変だった」「苦労した」と感じた出来事にはどのようなものがありますか?
経営者としてさまざまな出来事に直面してきましたが、その中でも特に厳しかったのは「消費税増税」の局面でした。
3%から5%、5%から8%、8%から10%へと段階的に税率が上がりましたが、特に5%→8%、8%→10%の増税時に起きた市場の冷え込みは想像以上で、経営へのインパクトが非常に大きかったと実感しています。
一方で、新型コロナウイルスの影響は当社にとっては追い風となりました。
リモートワークの普及により、山手線エリアから郊外の戸建て住宅へ移る人が急増し、戸建て販売が一気に増加しました。当社が主力としている戸建て向けコーティング需要もそれに合わせて大きく伸び、事業拡大につながりました。
また、多くの企業が打撃を受けたリーマンショックについては、当時ちょうど第二創業期で私一人の身軽な体制だったため、固定費が極めて少なく、ほとんど影響を受けませんでした。
こうして振り返ると、私にとって最も苦しかった局面は、やはり消費税増税に伴う急激な消費冷え込みへの対応だったと感じています。
消費税増税という厳しい局面を、どのように乗り越えられたのでしょうか?
正直に言えば、当時は自転車操業のような日々でした。
借りては返し、また借りては返す。まるで銀行借入のプロフェッショナルのように、資金繰りに全精力を注いでいたと言っても過言ではありません。
転機になったのは、EPCOATとの出会いです。この新商材の導入を機に、外部の経営コンサルタントを招き、経営そのものを学び直しました。
特にプロセス管理や人材への投資の重要性を徹底的に叩き込まれたことが大きかったです。「売上は人がつくる」という原則に基づき、利益が薄い中でも思い切って採用を続けました。その結果、5年で売上5億円に到達しました。しかし、当時の利益率はわずか1%。社員数は約75名に達し、とにかく人を入れ続けた分、利益がついてこない構造でした。
当時のパーヘッド(社員1人当たりの売上)は約900万円。現在の約2,500万円と比べると、生産性は非常に低い状態で、それでも黒字を維持するための “綱渡りの経営” を続けていた形です。金融機関は赤字企業には貸しません。だからこそ黒字は1%でも確保しなければならず、年に6〜7回もの金融交渉を行い、借入と借換えを繰り返しながら資金繰りを維持してきました。
まさに「借入を極めていた時代」といえるほどの苦しい局面でしたが、人材投資を続けたことが結果的に現在の強固な基盤につながっています。
資金調達が苦手で成長のチャンスを逃してしまう経営者も多い中、逆境でも資金を確保し、組織を大きく伸ばしてこられたのは強みだと思います。その点についてどうお考えですか?
先行投資として人材を採用できるかどうかが、企業成長を大きく左右すると今では確信しています。当時は無茶を承知で採用を続けていましたが、振り返ればそれが正解でした。あのタイミングで入ったメンバーの多くが、現在も会社の中核として活躍してくれています。「よくあの時に思い切ったな」と、自分でも思うくらいです。
ただ、現実として利益率1%の状態では本当に厳しく、特に消費税が経営を圧迫しました。
消費税は給与にかかる税でもあるため、外注費などには控除があるものの給与には控除がありません。つまり、給料を払えば払うほど その分の消費税(当時は8〜10%)が追加で発生するわけです。
利益1%の中でこの負担を吸収するのは到底無理があり、返済も進むため手元資金は常にギリギリでしたが、それでも採用を止めなかったことで、売上の成長、組織力の強化の両方が後からついてきたと感じています。ようやくその苦しいループを抜け出せた今思うのは、「人への投資を止めなかったことが最大の突破口になった」ということです。
苦しい時期から抜け出すまで、具体的にはどれくらいの期間がかかったのでしょうか?
抜け出すまでには、正直かなりの時間がかかりました。
転機になったのはコロナ以降です。売上が10億円を超え、12億円ほどになったタイミングで、ようやく1億円程度の利益が出る体質になりました。とはいえ、この「1億円の利益」がそのまま手元に残るわけではありません。当時は年間7,000~8,000万円の借入金返済がありました。1億円の利益が出ても、返済に回ると手元には2,000万円ほどしか残りません。
さらに法人税が重くのしかかります。1億円の利益に対して約3,500万円の税負担が発生するため、キャッシュフロー上はむしろマイナスです。それでも決算書上は「黒字」なので、外から見ると順調に見えるけれど、内情は全く楽ではありませんでした。
その状況から本当に抜け出したと感じられたのは、利益が2億円を超えるようになったここ3年ほど。
今では、特別なことをしなくても3億円、4億円の利益を見込めるような体質になってきており、ようやくあの負のスパイラルから脱却した実感があります。長い時間がかかりましたが、その間に積み上げたものが、今の安定につながっていると感じています。
コンサルタントの方からの助言で、特に「これは効いた」と感じる学びはありますか?
最も大きな学びは、組織崩壊の危機をどう乗り越えるかという局面で得たものです。
2011年3月の東日本大震災直後、福島の工場が被災した影響で、新築住宅の工期が2ヶ月遅延しました。
当社は施工後の現金回収が基本のビジネスモデルだったため、2ヶ月分、約2,000万円の売上が一気に消失。資金繰りは崖っぷちの状態でした。そのタイミングで、当時の幹部が社内に「この会社は潰れるから転職したほうがいい」と噂を流したのです。最も信頼していたナンバー2の言動でしたから、裏切られたような思いで、本当に怒りがこみ上げました。当時まだ新人だった現・執行役員が不安げに「社長、この会社は本当に潰れるんですか?」と聞いてきたことを今でも覚えています。
内心は相当苦しかったのですが、私は「絶対に潰さない。必ず立て直す」と答えました。
その後、コンサルタントの平良 学さん(フォーバル)に相談したところ、10時間もの長い対話をしてくださいました。
私が「許せない」と感情的に語り続けるのを遮らず、ただひたすら問いかけ続けてくれたのです。
「それを言わせてしまった原因はどこにあるのか」「誰がそうさせたのか」「本当に悪いのは誰なのか」平良さんが導こうとしていた答えはただ1つでした。すべての源は自分にある。社員を不安にさせた責任も経営者である自分にある。それを私自身の口から言わせるための、長い長い対話だったのです。結果として私は幹部も含め社員全員を集め、頭を下げ「不安にさせてしまって申し訳なかった。すべては私の未熟さが原因だ」と伝えました。すると驚くべきことに、その月は過去最高売上を達成し、V字回復を果たしたのです。
もしあのとき怒りのまま幹部を叱責していたら、組織は崩壊していたと思います。
平良さんには今でも感謝してもしきれません。この経験は今の経営姿勢の根幹になっています。
今後の展望をお聞かせください
私たちが目指しているのは、「社会にとって本当に役立つ会社」として成長し続けることです。
そのためにも、企業としてのスケールをさらに大きくし、より多くの課題解決に貢献できる存在になりたいと考えています。
将来的な大きな目標として、2032年の株式上場を構想しています。その実現のためにも、新規事業である外壁剥落防止コーティング「剥落防止くん」で、既存事業とは別軸の大きな売上をつくりたいと考えています。
現在、既存事業は約22億円規模ですが、「剥落防止くん」で30〜40億円の売上を創出できれば、上場に向けたスタートラインに立てると見ています。そこからさらに準備を進め、最終的には売上100億を超え、ゆくゆくは4桁億の企業へと成長させたい。
そのくらいの規模感を本気で目指しています。もちろん簡単ではありませんが、「社会の安全を守る」というこの事業の大義を胸に、必ずやり切りたいと思っています。
主力事業のEPCOATはどのような状況なのでしょうか?
おかげさまで非常に好調です。
直近の数字で申し上げると、先月の受注件数が過去最高の700件を突破し、受注金額も単月で2億3,000万円を超えました。単月実績としては、これまでで最も大きな数字になります。
比較として、2011年当時は月間受注が1,000万円ほどでしたから、現在は約20倍以上の規模に成長したことになります。
本業である住宅向けコーティング事業も引き続き堅調で、加えて新規事業である外壁剥落防止領域にも本格的に取り組んでいる状況です。
両輪の成長を目指す中で大変さもありますが、
「思考は現実化する」という言葉の通り、実現できるという確信を持って取り組んでいます。
他の経営者におすすめの本を教えてください
私がおすすめしたい書籍は、ナポレオン・ヒルの名著『巨富を築く思考法(THINK AND GROW RICH)』です。
この本を挙げる理由は、先ほどお話ししたように、「すべての現象は自らの思考がつくり出している」という核心が、非常にわかりやすく体系化されているからです。
経営において
- 他責にしない
- 自らを源として捉える
- 思考の質が成果を決める
といった姿勢は欠かせませんが、本書はまさにその「思考法」を解説した本だと思います。
これが実践できれば、お金に限らず、あらゆる成果を生み出す基盤が整うと感じています。
本書は読解力も試される部分があり、経験とリンクしないと理解が難しい箇所もありますが、極めれば成功の確度が間違いなく上がる、そんな一冊だと思います。
投稿者プロフィール


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企業の「発信したい」と読者の「知りたい」を繋ぐ記事を、ビジネス書の編集者が作成しています。
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